天切り松 闇がたり3 初湯千両 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 1556
感想 : 110
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087478266

作品紹介・あらすじ

「武勇伝なんぞするやつァ、戦をしたうちにへえるものか」二百三高地の激戦を生きのびた男はそうつぶやいた…。シベリア出兵で戦死した兵士の遺族を助ける説教寅の男気を描く表題作「初湯千両」など、華やかな大正ロマンの陰で、時代の大きなうねりに翻弄される庶民に味方する、粋でいなせな怪盗たちの物語六編。誇りと信義に命を賭けた目細の安吉一家の大活躍。堂々の傑作シリーズ第三弾。

感想・レビュー・書評

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  • 今回も面白かった。このシリーズで1番好きな話が多かった気がする。

    「道化の恋文」の親子関係が良かった。仁太いいやつだ。幸せになってほしい。淡い恋の話も良かったけど、何よりもサーカスでのお父さんの演技は泣ける。

    そして「銀次蔭盃」は涙無しでは読めない。今までは百面相の常兄が1番かっこいいと思ってたけど、目細の安吉親分が断トツだった!かっこよすぎるでしょ。周りで何と言われようとお金とか出世ではなく、親分のことを1番に思える安吉親分はかっこよすぎました。
    そして大事な盃が嫌な奴に渡らなくて本当に良かった!

  • 粋でいなせ。男という商売、職人としての意地という言葉。そして、道化の恋文に涙咽ぶ。

    心意気というものをふんだんに感じるダンディズムの宝庫。されどそれは、生物学上の男性にあるものでは無く、おこん姐さんも体現している。それを考えると、任侠も簡単なジェンダーでは無く、ここでいうダンディズムも、ジェンダーに阻まれるものでもないのかと思う。
    多様性時代だからこそ、逆にこうした男気という価値観もあって良いのではないか。そしてそれを残していくことも大事ではないか。
    本当の男気は、ジェンダー差別を作るものでも何でもないのかも知れない。
    ただ、その流儀を押し付けてしまったら、単純なパワハラになるのだろう。本当の仁義に生きる者は、安っぽい破天荒とかパワハラ、セクハラはせずに、道を生きることにつながるのだと思う。

    どんな流儀で、ルールで動くのか。主義主張を知りつつ、どう折り合いをつけるのか。集まる人たちの共通の価値観、優先すべきルールをどこに置くのか、それが大事な気がする。
    私の好きな主義は、まさにこの仁義の世界だが。。、

    最近のドラマの、不適切にもほどがある!
    を観てみたいと改めて思う。

    そして、アウトローに惹かれるのは、体制側の偏った正義から自由になって、生きる人達を描くからなのかと思う。

  • 天切り松の闇がたりは、冴えわたり、止まるところを知らない
    今や、留置所で闇がたりが始まると知るや、看守が非番の仲間を呼んだり、電話で知らされた署長までが駆けつける始末には、笑ってしまう

    第五夜「道化の恋文」に泣かされた
    康太郎と松蔵に府立一中の秀才仁太という友達ができる
    サーカスの人気道化の息子仁太の恋
    辛さや悲しさを隠し笑うしかない仁太
    切なかった

    バリバリの関西人、関西弁の私には、江戸っ子のセリフの言い回しに痺れてしまう
    むせ返る男の色気、栄治兄ィが一推しだったが、寅弥兄ィの出刃包丁を突き立てての説教にほろり、男気にもメロメロだ

    しかし、今回は何といっても第六夜の「銀次䕃盃」の目細の安吉親分に軍配が上がる
    厳冬の真っ只中、網走刑務所の仕立て屋銀次親分との接見の場面、両者にしか聞こえない闇語り
    銀次も囚われの身とはいえ、さすがに安吉の親分だけのことはある
    いやはや参りました

  • シリーズも3巻目になるとだれるかと思いきや、とんでもなかった!道化の恋文もよかったけど、大泣きしたのは「銀次蔭盃」でした。天切り松も目細の安も、男の中の男!地獄より恐れられたかつての網走牢獄の描写も素晴らしかったです。忘れられない話がまたひとつ。読書って素晴らしい^^

  • すっかり定番となった闇語り。相変わらず雰囲気たっぷりの松蔵の語り口にはついつい口に出してしまいそうになる。時代もの、と思いきやサーカスだランデブーだと大正ロマンの華やかさも散りばめられている。江戸っ子のみずみずしい粋な様子が感じられる。

  • 天下の大器量とは、
    世界で一番辛抱強い男…
    やさしさと強さを兼ね備えるなんぞ
    できもしないのだが
    言い訳をしない男には
    なりたいものだと
    つくづく思うのである…。

  • 昔の泥棒の話は何度読んでもジンと来る

  • 天切り末シリーズはどれも超面白い。

  • 天切りシリーズ、浅田次郎最高傑作

  • 表慶館のある東京国立博物館に行くので、「大楠公の太刀」という一編が読みたくて、父の本棚を浚ったらありました。大正時代、粋な義賊一味が、ある人のために(この時は御物だった)小龍景光を表慶館から盗み出すという大それた計画を立てる人情話でした

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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