エンブリオ 1 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087478730

作品紹介・あらすじ

エンブリオ-それは受精後八週までの胎児。天才産婦人科医・岸川は、人為的に流産させたエンブリオを培養し臓器移植をするという、異常な「医療行為」に手を染めていた。優しい院長として患者に慕われる裏で、彼は法の盲点をつき、倫理を無視した試みを重ねる。彼が次に挑むのは、男性の妊娠実験…。神の領域に踏み込んだ先端医療はどこへ向かうのか。生命の尊厳を揺るがす衝撃の問題作。

感想・レビュー・書評

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  •  患者からの信頼の厚く国際的にも評価の高い産婦人科医の岸川。彼は人為的に流産させた胎児の臓器移植や男性の妊娠実験などを成功させ国際学会でも発表するのだが…

     冒頭からいきなり胎児の臓器移植の場面があって、「おいおい、まじかよ」となりましたが(笑)、しかし読んでいくと岸川の色々な実験や手術はグレーゾーンの範囲内ということが分かります。

     自分はてっきりこの手の行為は中絶や不妊治療といったものを除いてほとんど違法だと思っていたのですが、どうやら法律は追いついてなくて、学会の倫理ガイドライン程度の規制しかないみたいです。ガイドラインもあくまで目安程度のもので、破れば罰則があるというわけでもないらしいです。その上、岸川は学会に所属してないので実質、個人の倫理だけの問題になります。

     岸川についてはちょっとナルシストかな、と思うところはありますが、治療は基本患者のためであり、不妊や親子の関係性を考えるためのものであり、医学の発展という点では岸川の行為は全く責めようがないように思われます。

     読んでいて自分の中の生命倫理を考え直してみたのですが、作物の遺伝子組み換えをやったりペットの去勢手術と、よくよく考えると人間ってすでに人以外の生命に関しては結構干渉してるんですよね…。そう考えると岸川の行為は医療が発展した上での当然の帰結のように思えます。

     印象的なのは岸川が国際学会で男性の妊娠実験を発表した時の他の研究者の反応。欧米の研究者もいるのでてっきりもっと反発があるものかと思っていたのですが、みんな好意的で興味津々という感じだったのが意外でした。先端を行く人にとっては人の誕生って高尚なものじゃなくて好奇心の対象なのかもしれませんね。

     医学や実験の話、倫理の話など興味深いところは多かったのですが、小説としては今一つ流れが見えてこないのが気になるところ。下巻は話をどう進めるのかな?

  • 天才産婦人科医による、法の網をかいくぐる生殖医療、あるいはもはや生殖産業か。
    生命倫理を考えるととんでもない医療技術なのだろうけれど、あくなき探究心で次々に新しい研究を進めていくのはとてもエキサイティングなのだと思う。医学の進歩には、過去に多くの黒歴史があり、その上に現代医学が成り立っていると考えれば、この小説のようにエンブリオを利用した技術がすでにどこかで開発されていたとしても決して不思議ではない。
    倫理、善悪を抜きにするならば、興奮でぞくぞくしてしまうほどの研究の数々。なじみのない生殖医療の用語もわかりやすく、読みやすい。
    下巻はどのような展開になるのか楽しみ。天才医・岸川がドナーになり続ける心の闇が解かれることに期待。

  • 天才産婦人科医、岸川。
    胎児から取り出した脳や卵巣を使っての移植手術、またファームにて人工的にエンブリオを作り出し、臓器培養も手がけている。
    そして次に行っているのは男性の妊娠。

    次巻に続く。

  • 天才が野心を持つと狂気をはらむのか。
    冷静で、人間関係もそつなく軽やかにこなし
    スマートで知的。

    だけど怖い。怖すぎる。

    どんな道を歩んでいくのか下巻も興味深い。

  • 医療小説は割と好きなんだけど、本作はちょっと苦手なタイプでした。。
    なるほどっと思う部分もあったけど、顔を顰めたくなる内容や描写も多くて、、
    途中挫折しかけたけど、下巻もあるしなんとか最後まで読み切った。
    さて、下巻はどうなるのか、見届けます。。

  • コンセプトコーナー2012年 7月「主人公はお医者さん~医者として、人として、医療と向き合う人々~」の選書です。

  • エンブリオ―それは受精後八週までの胎児。天才産婦人科医・岸川は、人為的に流産させたエンブリオを培養し臓器移植をするという、異常な「医療行為」に手を染めていた。優しい院長として患者に慕われる裏で、彼は法の盲点をつき、倫理を無視した試みを重ねる。彼が次に挑むのは、男性の妊娠実験…。神の領域に踏み込んだ先端医療はどこへ向かうのか。生命の尊厳を揺るがす衝撃の問題作。

  • 天才産婦人科医の胎児を使った様々な研究。
    下巻へ。

  • 1

  • 「エンブリオ」というのは受精後八週までの胎児のこと。
    産婦人科医の岸川は、人為的に流産させたエンブリオや、様々な手を使って手に入れた卵巣等を培養し臓器移植をするという異常な医療行為を行っていた。
    その技術は異常ながらも、世界の最先端をいっている。
    しかし、そうなるともう歯止めが効かなくなってくる…次は男性の妊娠実験…
    とにかく、全体的にかなり衝撃的な内容。

    2018.11.25

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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