日本の深層 縄文・蝦夷文化を探る (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087481785

作品紹介・あらすじ

かつて東北は文化の先進地だった。亀ケ岡式土器に代表されるように、繊細で深みのある高度な縄文文化が栄えたのである。著者は東北各地を旅しながら、宮沢賢治など詩人たちの心の深層に耳を傾け、また土着の信仰や祭りの習俗・アイヌの言葉に、日本人の隠された魂の秘密を探り当てる。原日本文化論の新たな出発点を印す意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • カーボン鑑定によると、メソポタミアの土器が紀元前8千年に対して日本の土器文化が1万2千年から発生し、5千年経った前8千年頃縄文式土器の文化が始まる。
    日本が韓国、中国から影響を受けるのは紀元前三百年頃の稲作農業の始まる弥生時代以降である。
    「縄魂弥才」、3千年から2千年前くらいまで、東北、特に津軽の地には日本最高の狩猟採集文化があった。蝦夷はほとんど縄文人と同じ概念となる、稲作農業文明をもってきた倭人の到来によって土着日本人は蝦夷となり、またこの渡来人たちの国家建設と、日本征服の結果、蝦夷の住処はだんだんと少なくなり、ついに北海道の一角に追いやられたものがアイヌになった。
    昭和初年の金田一と柳田という権威に築かれた言語学と民俗学の壁に大胆に挑む梅原の日本起源仮説。
    別章1と2は少し惰性的な内容の薄い論文と感じた。

  • 【由来】
    ・梅原さんの「人類哲学序説」を読んでいる時に、正剛さんは彼のことをどう見ているのだろうということが気になって千夜千冊で調べてみたところ、この本が出てきた。なお、図書館に文庫版はない。

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • 縄文時代は学校ではほとんど教わらず、無視されることが多いけど、日本の歴史をきちんと知りたいなら外せない時代だと感じた。

    • wrckamenosukeさん
      今は学校でも教わるかなあ
      今は学校でも教わるかなあ
      2018/03/05
    • wrckamenosukeさん
      歴史はあってもなくてもいい知識の気もせんでもない
      歴史はあってもなくてもいい知識の気もせんでもない
      2018/03/28
  • タイトルはとても堅苦しい学術書のような雰囲気だが、さして重くもない旅行エッセイ。梅原先生が仙台多賀城をスタートに東北を巡りながら考察する。かなりの弾丸ツアーで漏れた場所も多いが、非常におもしろく、こういう旅がしたいと強く感じた、そして次の旅行の行き先を選ぶのにも非常に参考になった。先だってからとらわれている長野の文化、土偶、火焔土器、それに形代などの事を考えるにも役に立った。おもしろかった。

  • 怨霊史観に基づいて、聖徳太子、藤原不比等、柿本人麻呂といった歴史上の人物についての大胆な仮説を提示してきた著者が、さらに時代を遡って、日本文化の深層に迫ろうとした本です。

    著者は、その日本古代史研究を通じて、津田左右吉の系譜を引く実証主義的な歴史観に対する厳しい批判をおこなってきましたが、本書ではアイヌ学の先駆者であり、日本文化とアイヌ文化の間に鋭い切断線を設けた金田一京助が批判されています。著者は、日本人の精神の深層を形成している縄文文化が、アイヌ文化の中に受け継がれていたと主張し、その研究の必要性を訴えています。

    ただし本書は、あくまで著者の縄文・アイヌ文化研究の旗揚げを宣言するにとどまっており、その具体的な成果にはあまり触れられていません。東北地方のフィールド・ワークを通じて著者が得た印象と、宮沢賢治や石川啄木、柳田国男といった、東北の伝統にゆかりのある人物についてのエッセイといった印象です。

  • 梅原著作を網羅しようと思いました…!今まで読んでこなかったのが恥ずかしいし悔しいしもう色々。

  • ちょうど30年前に発行された本。東北の文化の基層を縄文や蝦夷に探るという視点で書かれている。生活や文化の基盤である生態系が稲作地域の照葉樹林帯とは異なるという視点と同じ立場にあると考えられる。

    東北は、縄文時代には木の実がとれるブナ・ナラ林によって繁栄し、日本の人口の9割を支えた。8世紀以降、大陸から持ち込まれた稲作農業を基盤としてつくられた「国」によって支配が進められる。詩や民謡の分野で優れ、故郷のイメージに最もふさわしい。会津では、結果的に幕末の悲劇を招くほどの正直を尊ぶ道徳を育て、今でもそうした精神は「あいづっこ宣言」の形で生きている。歴史時代を振り返れば、東北の人々は度重なる自然災害や飢饉にも我慢強く耐える気質を持っていることをうかがわせる。政治的には統一されても、縄文・蝦夷の時代から続く文化や精神は今も根強く残っていることが見えてくる。

    解説を書かれている赤坂さんの本も読んでみたい。

    ・白村江の戦いによって朝鮮半島との関係が失われて以降、大和朝廷はエネルギーを東に転化し、東北への侵略を始めた。
    ・多賀城は8〜14世紀に陸奥の国府があった。その後、前線基地は伊冶城、胆沢城、志波城、徳丹城と時代とともに北上した。
    ・10世紀に安倍頼時のもとで蝦夷が結集されたが、出羽国を支配していた清原武則の助けを得た源頼義によって滅ぼされた(1062年、前九年の役)。その後、奥六郡を支配した清原氏は、源義家とともに藤原清衡によって鎮圧された(1087年、後三年の役)。※藤原清衡は安倍頼時の娘と宮城県亘理町の豪族藤原経清の間の子で、前九年の役後、母親とともに清原武貞に引き取られた
    ・狩猟採集生活をする先住民族は、平野部に稲作が広がると山に隠れて山人になった。国をつくった稲作農業の里人に従わない者たちは、律令時代に鬼とされ、鎌倉時代には天狗にされ、徳川時代には猿にされたと柳田国男は考えた。
    ・縄文時代後期に、いったん書いた縄文を消す磨消縄文土器があらわれ、土器の種類もきわめて多くなった(亀ヶ岡文化)。
    ・津軽が中央政府に統治されたのは鎌倉時代以降。それ以降も、安倍氏の子孫を名乗る安東氏に統治をまかせた。津軽は渤海や宋にも使いを通じていた。
    ・会津の恵日寺は、東国に仏教を布教した徳一の本拠地のひとつ。恵日寺は武力を持って源平の戦いの時に平家側についたため、木曽義仲に滅ぼされた。
    ・保科正之は、文治の基礎を朱子学におき、日新館をつくった。彼は、家法の第一条に将軍に対する忠誠をおき、この倫理は正直を尊ぶ縄文の道徳ともあっていたが、幕末の悲劇の遠因ともなった。

  • なんでも縄文につなげて考える。研究というよりは、ひとつの切り口でいろんなものをみると面白いというエッセイだと思うととても面白い。文体もリズムが良く読みやすい。

  • 宮城県生まれの梅原猛さんが、東北・縄文の歴史を読み解く。

    東北は、いわゆる日本の歴史、つまりボクたちが学校で習う「日本史」の中では傍流という位置づけだろう。なぜなら、ボクたちが当たり前だと思っている「日本史」は、大和朝廷の視線で語った歴史だからだ。もちろん理由がある。古事記も、日本書紀も大和朝廷が残した歴史書であり、彼らが自分たちを語った歴史書だから。だが、大和朝廷の視線とは異なる歴史を語るとき、たとえばそれが東北蝦夷の視線であれば、歴史はまた異なったものになる。梅原さんは、本書を通してその仮説と検証を試みる。

    本書の中に、梅原さんの問いが随所に出てくるが、そのうちのひとつが「人間は死ぬとどこにゆくのか」ということだ。この問いは、おそらく人類にとって太古以来、もっとも難しく同時にもっとも重要な哲学的問題だっただろう。そして、何万年かの思索の間に人類はひとつの答えを生み出したと説く。

    だから、梅原さんはいう。「私はやはり縄文時代でもっとも大切なのは宗教遺跡であると思う。(中略) 私は、その復元にはアイヌ文化の研究が必要欠くべからざるものであると思う」と。

    東北は北海道と繋がっていて、そして、それは樺太を経てユーラシア大陸と繋がっていた。最近の北海道の考古学もそれを示している。奥尻島からは、有力者では持ち得なかった糸魚川産の水晶の勾玉も出土している。視線を畿内から東北に移すとき、そこには脈々といまに繋がっている歴史が現れる。そこにわくわくする自分がいる。

    千夜千冊にも紹介されている一冊だ。

  • 梅原先生特許=読者と個人授業

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著者プロフィール

哲学者。『隠された十字架』『水底の歌』で、それぞれ毎日出版文化賞、大佛次郎賞を受賞。縄文時代から近代までを視野に収め、文学・歴史・宗教等を包括して日本文化の深層を解明する〈梅原日本学〉を確立の後、能を研究。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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