全一冊 小説 上杉鷹山 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087485462

作品紹介・あらすじ

九州の小藩からわずか十七歳で名門・上杉家の養子に入り、出羽・米沢の藩主となった治憲(後の鷹山)は、破滅の危機にあった藩政を建て直すべく、直ちに改革に乗り出す。-高邁な理想に燃え、すぐれた実践能力と人を思いやる心で、家臣や領民の信頼を集めていった経世家・上杉鷹山の感動の生涯を描いた長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 多分新聞の書評でみて、購入した本だと思いますが、680ページの大作故、手つけていなかったが、読み出せばあっという間の内容でした。歴史物でもあり、ビジネス書でもある。倒産寸前の米沢藩を、養子として弱小藩から迎えられた若干17歳の鷹山(治憲)が改革していくというもの、節約を自らが率先して取り組んだり、士農工商の枠を超えて、殖産興業に取り組んだり、藩民の為にと言った当時にはあまりに画期的な民主的な考えだったり、下級藩士まで含めて直接語りかける等々。小説という点意識必要もある程度史実に基づいていると思われる点、故JFKも尊敬する日本人であげている点なども今回知ったエピソード、当時の歴史理解、ビジネス書としても良著です。

  • この小説は、ベストセラーだったそうだ。

    ●2022年12月27日、追記

    著者、童門冬二さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    ---引用開始

    童門 冬二(どうもん ふゆじ、1927年〈昭和2年〉10月19日 - )は、日本の小説家。勲等は勲三等。本名は太田 久行。

    ---引用終了


    ●2024年1月3日、追記。

    上杉鷹山、そのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    上杉 鷹山(うえすぎ ようざん、寛延4年7月20日(1751年9月9日) - 文政5年3月11日(1822年4月2日))は、江戸時代中期の大名。出羽国米沢藩9代藩主。山内上杉家25代当主。諱は初め勝興、後に治憲(はるのり)であり、鷹山は藩主隠居後の号であるが、この名で知られる。米沢藩政改革を行った江戸時代の名君として知られる。

    ---引用終了

  •  最近読んだ童門冬二氏による「上杉鷹山の経営学」(PHP研究所)に触発されて読みたくなった。文庫本ながら600ページを超える大部なので、ちょっと取り付きにくい感じがしたが、読み始めたら一気に数日で読んでしまった。

     何度涙を拭ったことだろう。感動で先に読み進めなくなる。この感覚は、前出「上杉鷹山の経営学」を読んだ時と同じものがあった。本作品は「小説」としているが、ほとんどが事実に即しているのだろう。

     主題は藩の財政再建ただ一つである。たった17才で藩主の座を継ぎ、思い切った改革を実行していく。いや、「させていく」と言った方が正しいかもしれない。その当時にこれほど民主的な考え方を、しかも封建社会において一途に貫く姿勢は見事というほかない。

     かつてJ・F・ケネディが最も尊敬する日本人として「ウエスギ・ヨーザン」と答えたというエピソードがあるそうだ。さすがにJ・F・Kは素晴らしい見識の持ち主だった。

  • 意外にも感動する小説!

    歴史小説としては、平易な文章で、さらに現在の文言にたとえる解説がついていることもあり、とても読みやすい物語でした。なので、歴史小説と思って読むと、ちょと肩透かしです。さらに小説としては、時間軸がわかりにくいところもあり、また、いくつか「あれ、この件は結局どうなるの?」というところもあって、いまいち。
    なので、歴史小説として読み進めるよりも、「もしドラ」のようなビジネス小説として捉えて読み進めるのがしっくりきます。

    ストーリーとしては、17歳で米沢藩の藩主となった上杉鷹山の藩政改革をそのリーダシップとマネジメント力で実現していく物語です。
    暗い雰囲気の米沢藩、改革に伴う反対勢力、変わろうとしない重臣、けなされ、邪魔され、小ばかにされ、何度も心が折れそうになりながらも、米沢藩の民のために自分の信念を貫き通して、改革を実現していくストーリになっています。
    そして、その中でも、胸を熱くさせるシーンが、反対派に邪魔され、ぼろくそにけなされ、打ちひしがれつつある中で、改革の炭火を北沢に分け与えるシーン。
    この初めての協力者・理解者を得るシーンにはグッと来るものがあります。
    また、重役の反乱にあい、藩士たち全員をあつめて、自分の行いの是非を問うシーン。
    改革を、そして、自分自身を認めてくれているのかどうかを藩士たちに問い、結果、賛同を得るこの場面には、「気持ちは伝わる」ということが心を揺さぶられます。

    そんな感動シーンもありながら、やはり、リーダシップ、マネジメントに関するところが本書のメインでしょう。
    とりわけ、リーダシップという意味では、彼の人に対する取り計らい、取り扱いについてはとてもじゃないけどまねできません。
    通常なら、自分がその組織のトップなわけなので、反対派や邪魔する連中については、厳罰に処することもできるはず。しかし、そのようなことは行わず、彼らが変わることを待ちます。
    自分のことをこれだけ小ばかにする連中なのに、きちんと礼をつくす。そんな姿勢は自分には無理ですね(笑)
    そして、最後の最後に処分を冷徹に下します。さらに、それが感情的なものではなく、論理的な判断からの処分になっているところがスッキリ。
    卓越した人間力を感じます。

    改革とは、組織やシステムを変えるのではなく、人そのものが変わることということが大きなメッセージとして受け止めました。

    また、彼のリーダシップタイプもポイントです。
    江戸時代なのに、専制型のリーダシップではなく、ビジョン型+民主型。
    さらに、統率型なのに、完全な統率型ではなく、サポーターやフォロワーにさまざまな支援を得て、改革を実現しています。
    結果的には統率型リーダだったために、カリスマのようになってしまい、かつ、後継者が育たず別な意味で苦労していますが、愛と人徳をもったすばらしいリーダだったのだと思います。
    格好いいですね。(人徳がないので、まねは出来ないけど..)

  • 人生のバイブル。
    紳士な振る舞い方、マインド、在り方を
    再教育できた。

  • 江戸時代、米沢藩(今の山形あたりにあった)の藩主で、財政難に苦しむ藩を大胆な改革により立て直した上杉鷹山の歴史小説。なせば成る なさねば成らぬ 何事も 成らぬは人の なさぬなりけり、という名言は広く知られているが、彼が実際に何を行ったかを知る人は少ない。
    息子がいなかった米沢藩藩主のもとに九州から婿入りし、17歳で藩主になった。政治腐敗が進み、侍にも藩民にも意欲がなく、藩は巨額の負債を抱えていた。若くして藩主になったはいいが、古い体質の藩では拒絶反応がすごく、ひどい妨害やいじめにあう。彼が目指したものは、藩士(侍)だけでなく、農民や商人を大事にし、皆が富める藩であった。藩民に示すために自ら倹約につとめ、付加価値が高い産物を作ることを奨励した。
    興味深いのは、古い体質を壊すために、外れ者たちを集めて改革をさせたことだ。だんだん鷹山の周りに賛同者が集まり、侍も開拓をしてくれるようになったという。とにかく誠実な人柄で、実務的で、引退してからも呼び声が高く、再び政治に復帰したというから驚きだ。
    この本の特徴は、読みやすさである。歴史小説はどうしても時代背景を理解しながら読み進むので難しいこともあるが、とても平易に書かれている。著者の鷹山への尊敬が浮き出ている。他の登場人物の描き方もうまいと思った。上杉鷹山の話は他の小説で読んだ気がしていたが、後で調べたら案外少なかった。
    故ケネディ大統領が最も尊敬する日本人として上杉鷹山の名を挙げたという逸話も嬉しかった(内村鑑三の書を読んだという)。

  • 童門冬二さんの本。
    さっき、レビューを書いて登録されたのを確認したのに、なぜかレビューが消失している(TT)。もはや先ほどのような新鮮な気持ちではもうレビューを書くことはできないので、さっきの記憶の残骸をたどって、できるだけ復元に努めたい。自身の読書記録として。

    童門冬二さんの小説は、歴史上の人物を扱ったものが多く、その人物から学ぼうというスタンスの作品が多いと思う。よくビジネス教材としても使われるようである。

    だが純粋に歴史小説を小説として楽しみたい私としては、あまり童門冬二さんの小説には手を出していない。その理由は、著者の執筆スタイルにあると思う。

    重要なポイントが箇条書きで整理されていたり、現代に当てはめて考えてみると・・・とか、企業経営に置き換えてみると・・・とかの記述が時おり、小説の流れの中に出てきて、それにどうも興ざめしてしまうんです。

    自分なりに考えを巡らせながら読み進めていくところに読書の醍醐味があるし、人物を観るにも他人の視点ではなく、自分の目で見てみたいという気持ちがある。それに、その時代から急に現代にもどされたり、小説の世界が流れているところに、急に現実の世界に戻されるのはあまり気持ちはよくない。

    まぁ、そういう点を抜きにして見れば、第9代米沢藩主・上杉鷹山の改革はとても面白かったし、多くのことを学ぶことができたと思う。

    藩政改革の話だったので、ついつい中学生のころに社会の時間に習った江戸三大改革のことを思い出した。徳川吉宗の享保の改革、松平定信の寛政の改革、水野忠邦の天保の改革。享保と寛政の間くらいに田沼意次の改革というのもあった。だけど、上杉鷹山の改革を社会の時間に習った記憶はなぜかないんだな(寝ていたか?)。

    本書の中でも、ちょうど同時期ということもあって、田沼意次の改革と鷹山の改革が比較されるような形で登場する。田沼の改革が金権政治によるもの、鷹山の改革は人心をつかんだ改革として書かれ、著者としても人心をつかんだ改革であったからこそ鷹山の改革は成功したのだと訴えたかったのだと思う。

    しかし思うに、客観的に考えれば、鷹山は当時たかだか17歳で他地(九州)から養子として迎え入れられた若造藩主である。

    それに比べて、田沼は老中、しかも当時の幕府財政の再建で一定の成果を上げていたのだからむしろ田沼の金権政治のほうが当時の常識だったはず。その常識に、まったく違った(むしろ正反対の)政策方針で、藩政を貫き、結果を出したのだから、鷹山という人はやはり並の人ではなかったのだろうなという強い印象を持ちました。

    そのほか、知的に障害のある妻を、生涯大切にしたエピソードが紹介されていたり、そもそもこの藩政改革が、貧しい藩民の生活改善を目的になされたということからしても、人格的にも素晴らしい人物だったということが想像できました。

    読後に、ネットでどんな顔しているのか調べたくなり、上杉鷹山と田沼意次の画像を見比べてみました。瓦絵のような二人の画像が出てきましたが、鷹山にはなんとなく品格が感じられたの対し、田沼のおやじのほうは、どうも銭に敏い面に見えたのは、先入観によるものでしょうか?(笑)

  • いかにも童門さんらしいタッチで、鷹山を最上の人格者として描く。若くして聡明過ぎる仕立てに虚構を強く感じないのは、現代の施政にも通じ、役立つよう分かりやすく表現されており、大いに共鳴できるからだ。この作品などは、まさに政治、そして公務に携わるもののバイブルだと素直に思う。

  • 経営者・サラリーマン向けの本だな、という印象を受けました。
    歴史小説としてみるなら、そういったメッセージ性が強すぎてちょっと白けるなぁ、という感が否めません。

    分厚いのですが、分かりやすく読みやすいです。

  • まずは歴史からっということで
    「成せばなる」という名言でおなじみの江戸期の偉大な名君のお話です
    今でいうと夕張市のような破産した地方自治体である米沢藩を
    一代で立て直したすごいお殿様です。

    こんな凄い日本人がいたのかーっと思います。
    「領民のための政治」を理念にしたのもこの方がおそらく
    日本史上では初めてだったとおもいます。
    個人的にベスト3に入る尊敬できる人です。

    アメリカのケネディー大統領をして尊敬する日本人と言わせた方です
    今こんな政治家がいれば・・・・・っと感じてしまいます。
    自分も少しでもこんな素晴らしい方のようになれればと思っています。

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著者プロフィール

歴史作家。東京都知事秘書、広報室長、企画調整局長、政策室長を歴任。退職後作家活動に専念。人間管理と組織の実学を歴史の中に再確認し、小説・ノンフィクションの分野に新境地を拓く。『上杉鷹山』『小説徳川吉宗』など著書は300冊を優に越える。

「2023年 『マジメと非マジメの間で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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