ジャガーになった男 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087487121

感想・レビュー・書評

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  • 自分は戦でしか生きられないと知っている。
    平穏な生活への憧れのようなものも持っている。
    葛藤に苦しむと、やはりと自分を戦場に送ってしまう。

    日本の女、イスパニアの女、インディオの女
    日本の男、イスパニアの男、インディオの男
    ところ変われば人も変わるが、権力持つもののおぞましさはみな共通している。

    20歳の若者は、10年の歳月を経るうちに俯瞰して見るようになった。
    俯瞰して俯瞰して、そして神の化身であるジャガーになった。

  • 己の夢を追いかけて追いかけて見事に散った情熱の武士のお話。どうしても女性の心情に寄り添ってしまうのでこんな男は最低だと思うけど。自分勝手でストイックで仲間思い、夢みがちで寂しがり屋で惚れっぽくて、どうしようもなく魅力的なんだろうなぁと思う。

    最期の死に様はあっぱれだったけど、死をもってしか満足できない生き様には少しかなしくなった。男のロマンってこういうことなのかなと思った。

  • 佐藤さんの出世作となった中編を、大幅加筆したもののようです。
    歴史小説というより伝奇小説というべきでしょうね。
    舞台は江戸初期の伊達藩からイスパニア、更には新大陸のペルーへと飛びます。そういう意味ではスケールが大きい。そして別の見方では、ちょっと変わった武士道小説とも言えそうです。
    寅吉もベニトも武士道(騎士道)に生きようとする主人公です。もっとも大らかなところは含んでいるのですが。それと従者のぺぺがなかなか良い味を出しています。
    ただ、少々最後のシーンに納得でき無いのが残念です。

  •  太平の世が訪れようとしていた江戸を飛び出し、遣欧使節に加わった伊達藩士の寅吉。たどり着いた先イスパニアでの寅吉の冒険と恋を描いた西洋歴史ロマン小説。

     久々にこんな気持ちのよくて、そしてバカな男の話を読んだなあ、という気がしました(笑)。ある意味憧れますが、でも一方で反面教師にしないといけないような、彼の生き方は何とも複雑な気持ちにさせられます。

     戦国時代が終わったものの、戦いと冒険を求める根っからの武士である寅吉。だからこそ、戦国時代が終わり安定した政治が始まろうとする江戸時代の日本を捨てイスパニアに向かいます。

     イスパニアに行ってすぐ冒険があるわけでもなく、寅吉はそこで恋をし、家庭に治まろうともします。しかし、戦いや冒険が忘れられず傭兵として戦いに向かい、何度も恋人を泣かせます。寅吉も反省し自分に嫌気が差しつつも、それでも冒険に向かわずにいられません。

     この小説は徹底して男のロマンが詰め込まれていると思います。惚れた女を泣かせつつも、結局ロマンを求め冒険に向かってしまう男。少しレトロさすらも漂う男のロマンですが、それをこうも真正面から書くからこそ清々しい!

     ストーリーが後半に向かうに従い前半に輪をかけてハチャメチャかつ、それはないだろう…、という展開になりますが、どんな展開があっても「これがロマンだから!」の一言でどうにかなってしまいそうなのが、この作品のすごいところ(笑)。ただ女性側からするとこれはあんまりだ、って気もしないでもないですが。

     タイトルの『ジャガーになった男』の真の意味が分かるのは最後の独白のシーン。本当にタイトルのまんまの話にちょっと可笑しかったです。なかなか無茶苦茶なこともましてや冒険なんかもできない現代だからこそ、こんな物語はとても貴重な気がします。

    第6回すばる小説新人賞

  • 夢を追い続ける人々のお話。
    新大陸の冒険譚が驚きでした。

    佐藤賢一氏の基盤ここにありという物語だと思います。

    夢は主人公にとって完璧な現実でありながら、
    でもやはり夢は夢。儚いもの。
    そこで生き切るしかない強い意志を持ち、
    風のように流れていくのか
    流されていくのか。

  • 「スペインにおける『ハポン姓』にまつわる時代ロマン」ってなところでしょうか。
    娯楽作品として、とても楽しめます。

  • スペインに渡り兵士となる武士。
    男のロマンです。
    戦国時代の日本からスペインへと戦場を渡り歩く男。いつも死と隣接してるからこそ、眩しく生きる男。かっこいいです!

  • 何だか、とりとめのない話でした。

  • 舞台を南米に移すあたりから随分とブッ飛んだ印象になり、さすがにデビュー作だけあって、些かの粗さは否めないが、ストーリーテリングの上手さはこの頃から間違いがない。

  • 伊達藩士・斉藤小平太寅吉は恋人を捨て、冒険を求めて、支倉常長遣欧使節に加わった。着いたイスパニアはすでに全盛期の栄光を失っていたが、一人のイダルゴ(戦士)と意気投合し、共に戦場に赴くために、帰国する使節団と訣別する決心をする。壮大なスケール、波欄万丈の歴史ロマン。第6回小説すばる新人賞受賞作に大幅加筆、600枚の長編となったロング・バージョン!

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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