蒼い時 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087510560

感想・レビュー・書評

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  • 21才だったのですね。引退した歳。

  • 引退して30年以上たち、週刊誌に朝のゴミ出し中のぶっくり太った姿が晒されてもなお復活を望まれる人ってどんな人なんだろう、ただのアイドルじゃあるまい、という興味から、彼女が自分自身について綴ったこの本に食いついたのでした。

    引退後、第二の百恵を狙ったアイドルはいっぱいいたと思う。でも結果的に彼女たちが近づけば近づこうほうとするほど百恵のレベルの高さを際立たせるだけでした。本音を殺し仮面をつけて必死に大衆に媚びるアイドル達は健気さが評価されることが多い。でも百恵という人は大衆に対し真摯な態度であっても媚びてはいなかった。不良っぽさと清潔感という異なる要素を問題なく完璧に両立させることができた稀有な人。既に人生哲学が完成されていたのかもしれない。この本で彼女のぶれない生き方に触れると、小手先ではマネできない彼女の色気は生き方そのもだったとわかります。

    本の中で今の旦那さんに対する想いがすごく丁寧に語られていますが、一人の男性に対する真面目で素直な態度がかわいらしい。でも二十歳そこそこの彼女の決意は女性としてというより人としてのレベルが高い。めちゃくちゃ大人です。同じ年齢だった自分を思い出すと幼すぎてガッカリすることといったら。今の自分でさえまだまだ当時の彼女が大人に見えるなんて、、。

    百恵も最強だけど、彼女が惚れた三浦友和って実はもっとすごい人だったのかもしれません。

  • 百恵ちゃんが活躍していた時代は見た事ないけど、年代を経てもその強さや孤独を纏う雰囲気に惹かれるものがあって好きだった

    百恵ちゃんが歌う歌やどこか鋭い雰囲気、ハキハキと受け答えする姿から本人もどこかそういう所があるからそう見えるのだろうと思っていた。
    が、百恵ちゃんはとても女性的で、女である事を誇りに思っている反面、女らしいと思われにくいという事を悩んでいたのかなと思う

    百恵ちゃんが綴った文章はとても繊細で温かみに溢れていて、深い母性さえも感じられた
    時代的なものもあって今も百恵ちゃんがいた時代も、女性が強く1人で自立する事が進歩した女性として描かれるが、百恵ちゃんが仰っていたように自分の道を自分で決断することができれば何をしていようと自立した人になるのだと思う。

    家庭に入る事が、時代に逆行していると捉えられてしまう時に、自らの愛する人と自分のために決断をした百恵ちゃんを尊敬する、
    この本で新たな百恵ちゃんの姿が浮かび上がってきて百恵ちゃんがもっともっと好きになった。

  • NHKで再放送されていた、伝説のコンサートを観て感動しまくった勢いそのままに購入。武道館コンサートでも21歳とは思えない落ち着いた雰囲気(そういうと本人に嫌がられそうだが…)がこの本でも感じられる。そもそも文章がとても上手。そして色々としっかりしてると感心…自分の21才が恥ずかしい。

    しかしデビューからの7年半は凡人の一生分以上の濃密な時間なんだろうなと思うが、何より家庭環境など大変そうな環境にいながらそれ程悲壮感がないのもしっかりした性格だからなのか。とにかく淡々とした語り口が印象的である。

    途中、同じ歌でも毎日進化していくといった話や馴れ合いのカーテンコールは止めるとかのくだりではちょっとBABYMETALのイメージとも重なりちょっと嬉しかったりも。

    武道館コンサートに感動した人は是非これを読んで余韻に浸ってください!

  • 山口百恵さんがこのような本を書いていたとは、全く知らなかった。

    21歳かぁ…、若さを感じながら、多感な女性だったのだなと感じつつ、21歳にもなれば、真剣に自分の人生を振り返ればこのような思いが誰しもあるのかもな、とか思ったりした。

    とにかく、一冊丸ごとポエムのような文章に、妙に惹かれた。

    山口百恵さんが引退した頃、わたしはまだ生を受けておらず、そんなわたしでもリアルタイムに知っているような伝説感を持った人。
    実家が山口百恵さんのご自宅と同じ場所にあり、駅を通るたびにふと頭を過ぎった。それだけの存在感のある人。

    この本を書いたというのは、『自分を切り捨てる作業』だと。
    結婚を前に、記憶を確認するとともに、過去を切り捨てていく作業をし、新しい運命を生きると。
    そしてそれは、苦痛を伴う作業だった、自分が最も知りたくなかった自分の醜さをも、自らの手で暴くことだった、と振り返っている。

    人は、ある人にはあるのだろう、そんな時期が。
    今、わたしが向き合おうとしているのが、同じような作業であるだけに、運命めいたものを感じてしまった。
    ブックオフでざっと見をしていて、ふと手に取っただけなのに…

    しばらく、本棚にいてもらおうと思っています。

  • 蒼い時

    著者:山口百惠
    プロデュース:残間里江子
    発行:1981年4月25日
    集英社文庫
    単行本(集英社)は1980年9月発行

    知らなかった。今回、初めて気づいた。山口百恵ではなくて、山口百惠だったとは!恵じゃなくて、惠だった。それともこれはペンネームなのか?表紙と奥付は「百惠」だが、本文中は「百恵」になっていて、最後、あとがきに近い文章の締めくくりには、「倖せになります 山口百惠」となっている。画数でも気にしているのかも。本が売れますように、って。

    この本(単行本だった)は、大学生のころに出て、メチャ売れ、よく行く喫茶店にも置いてあった。僕は山口百恵に興味はなかったので読まなかった。手に取ることもなかったかも。その喫茶店のママは(性的)初体験のこともオブラートに包んで臭わせているのよ、みたいなことを言っていたが、今回読んでみると別にオブラートにも包むこともなく、ハッキリと書いてあった。

    仕事を重ねるうちに山口百恵は三浦友和を好きになっていたが、ある日、三浦から告白されて電話番号を渡された。しかし、電話をする勇気がなく1月半たったころ、電話が欲しいというような請求をされ、初めて電話をした。そして、電話だけの交際がはじまり、8ヶ月後に結ばれた、と書かれている。しかも、本を書いている段階(21歳)で、三浦友和しか男は知らないとも書いてある。

    盛夏。暑い日だった。
    濃紺のワンピース。白い小さなブローチ。
    貫くような蝉の声。加湿器の白い霧。
    ギターの弦を弾く音。
    And I love her
    ―その日、私はごく自然に女になった。


    この本は単行本で200万部、文庫でも100万部売れたみたいだが、最大の売りは山口百恵の出生と性が書かれていることだった。そんなことぐらい誰でも知っていると言われそうだが、興味がなかった僕はこの本で初めて知った。彼女の父親は、母親とは婚姻関係がなく、〝本妻〟が別にいた。彼女と妹はその血縁上の父親に認知はされていたが、いつもいるわけではなく、金銭面でも不充分だったようで、生活費は母親が内職で工面していたという。ラジオ部品の組み立て、人形の洋服づくり。百恵も子供のころに手伝ったという。生活保護で暮らした時期もあったようだ。

    父親は来ると彼女を散歩に連れ出してくれたが、その時に「こわいおばさん」が現れたそうだ。恐らく〝本妻〟なのだろう。父親はお金にとてもだらしない人で、彼女の所属プロダクションに借金を何度もしていた。足利の「娯楽センター」に勤めていたとあるが、この娯楽センターがなんたるかは不明。そこに百恵の所属プロからタレントを入れたが、そのお金も払っていなかったという。

    さらには、親の立場を利用して、百恵の意志も確認せず、プロダクション移籍の話を進め、移籍料を横領していた。入院している病院にマスコミを呼んで、自分勝手な記者会見を開いて、所属プロの悪口を並べ立てたようだ。

    貧しかったから芸能界に入って家計の役に立とうとした、という噂がマスコミで広がっていたらしいが、この本ではきっぱりと否定。子供がそんなことを考えるはずがない、と。単に歌が好き、歌がうまいと言われたから、スター誕生に出ただけ。残るとは思わなかったがテレビ出演し、審査員から「歌手としてはむり」というように言われたが、最後には10数社からスカウト希望が上がった。

    14歳の少女にとって、生理周期を知られるのはかなり嫌だったことだろう。しかし、水着での仕事の関係でどうしてもスケジュール調整しなければいけなかった。ただ、タンポンは使いたくなかったので、なんとか調整してもらっていたが、担当が変わり、その人からの配慮のない一言により、これ以上は生理周期を知られたくないと感じてタンポンにしたという記述がある。

    三浦友和から正式にプロポーズされてはいなかったが、この人と結婚するだろうなと漠然と感じていたある日、ベッドに入って眠りにつく時間に「結婚したら仕事は辞めよう」と思った。それは直感としか言いようがなかったという。そこから、夢に見た光景が現実にあったとかいう変な方向の話があったり、また、その当時にはやっていた「翔んでる女」やキャリアウーマンといった言葉、形ばかりの自立する女性像に対する疑問を呈したりして、自分の決意を補足している。

    前半に、出生、裁判(芸能人交歓図裁判)、恋、性体験、結婚、引退について書かれていて、後半になると、随想として、20話ばかりのエッセイが綴られている。UFOを見ただの、今風にいうと幽体離脱の体験談だの、幼い話も含まれる。

    *******

    三浦友和と共演して映画に出始めた。百恵は女優になりたいと思うようになっていた。芸能界には、歌手よりも女優の方がより知的だという不文律のようなものがあった。

    桜田淳子とは品川中学で一緒に机を並べた仲良しだったが、似ていると言われていて、双子や姉妹だとも言われた。テレビのディレクターですら、桜田淳子のところにいって「百恵ちゃん、音合わせね」と間違えることもあった。

    ********

    それにしても、残間里江子がいまだにこの本を自分の看板に使っている。ことがあるごとに話を持ち出している。

  • 私には世界が違いすぎていまいち共感が出来ないというか、文章が入ってこないというか。そんな感覚で読み終わってしまった。細切れに読んだのも良くなかったかな。
    ただ、当時21歳が書いたとは思えない洗練された文章で、山口百恵のイメージを壊さない本だった。
    ご本人はそう言われるのに飽き飽きしてるかもしれないが、大人びているという感想を持つのは自然だと思う。賞賛です。

  • 1980年の出版当時、或る意味で「社会現象」のような様相を呈したと見受けられる大ヒット作ということになるが、なるほど面白い。偶々出くわして凄く善かったと思う。
    「蒼い時」と表題を冠した“あとがき”的な内容が在って、本書の執筆に関連する事情のようなモノに触れられている。歌手・女優を退くことを決めた際にエッセイ集を刊行するということになり、約4ヶ月間に亘って執筆に勤しんだのだそうだ。
    この「蒼い時」という一節は、執筆に向けて用意したという「山口百恵」と名前が入った原稿用紙―この時代には作家が名前入り原稿用紙を用意するというのをよくやっていたようだが…―に万年筆で書いたモノをそのまま見せるような形式になっていた。
    本書は前半部に横須賀、出生、性、裁判、結婚、引退という「自叙伝」的内容のやや分量が多い篇が集められている。これらを読むと、必ずしも恵まれていたのでもない境涯から歌手デビューを果たし、女優活動も展開した彼女の歩み、交際と結婚、結婚後に歌手・女優活動を退くこととした経過等がよく判る。
    これらの各篇の後は19篇の随想が在る。人生のいろいろな場面で思ったことというような文字どおりの随想で、各篇なかなかに好いと思った。歌手・女優という「表現者」として重ねていた活動に纏わる様々な想いもこの各篇の中に在る。そして“あとがき”的な「蒼い時」に連なる。
    時代をリードするような活動を展開した歌手・女優のエッセイだが、「活動した時代」というような範囲に留まらない内容が在ると思う。
    巡り合った仕事で一定以上の成功を収めた中、出会った人が在り、交流を通じて「この人と人生を歩みたい」と強く願うようになって行った。表に出る活動から退こうと決意した中、少女時代から近年迄の様々な出来事を思い出しながら綴っている。そういう感じがする。
    こういう「一人の女性の想い」という意味で、「時代を超えた普遍性」を帯びているというように思った。
    或いは?父親との関係のような複雑な事柄に「自身の中での区切り」を設けてみたかったか、結婚を決めて行ったことに関して伝えられた「在ること無いこと」に草臥れて「本人の言明」を世に問いたかったのか、色々なことを想像しないでもない。が、なかなかに確りした筆致で、前半の方は「有名作家の私小説」でも読んでいるかのような気分にもなった。
    エッセイ集の刊行に向けてプロデューサーが在って、彼女をサポートする体制も整えた中で精力的に綴った本書であるようだ。これはステージで1曲を精一杯歌うというような集中力が発揮されたのであろう。
    聞けば、本書の随想という部分に載っている篇の一つが「国語の教科書」に載った例が在るとか?そういう程度になかなかに好い文の本だ。
    40年も前の本であるが、思い付いて読んでみて、好い経験が出来たと思う。

  • 山口百恵、21歳にして完成されすぎてて逆に共感できなかった。何十年も前の本なのに違和感なく読めた!結局、時代や価値観のアップデートとかそういう話ではなくて本人次第だね〜

    「自立した女性」の正解にこの時代にして辿り着いてて、さすがだなと思った。

  • いや、これはとても面白いのだけれど、なんていうか「自分で書いたの?」と聞きたくなる内容だった。タレント本にそういうものを求める私が浅はかなのかもしれないが。なんというか、端々に出てくる感情表現などが、やたらオーバーで自分の感性に酔っていて、う~ん、これ、自分で自分のことを表現するときには書かないのでは?と思った。どちらかと言うと、百恵ちゃんを神聖視していたり、キャラクターを創造しようとしている人が行う表現のような……
    しかし、とても興味深い部分もいっぱいあって、私はぐいぐい読んでしまった。まずその運命の特殊さ。出生から芸能界に入り、どんどん糸が複雑に絡まりあって、その中から一人の男を見つけるドラマチックさ。フィクションのような内容である。私の年齢のときにはもう全てを終えて結婚していたかと思うと、私の人生の薄さに眩暈がしてくる。

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