悪童 エリカ&パトリック事件簿 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (696ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606201

作品紹介・あらすじ

ロブスター漁の網が子供の遺体を引き上げた。医師ニクラスの娘、7歳のサーラだった。検死の結果、肺から石鹸水が検出され、殺人事件として捜査が開始される。指揮を執るのは父親になったばかりのパトリック、生前最後にサーラと一緒にいた少女から事情をきいたものの、浮かんだ犯人像はあまりに意外で…。小さな海辺の町の人間模様と風土も魅力的、世界で1000万部突破の大人気シリーズ第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • 前2作よりレベル&パワー大幅UPの力作。
    あいかわらずネガティブ心理描写多すぎだがページターナー。
    あとがきに「むしろ群像ドラマに近い」とあるように、捜査だけではなく三代に渡る人間劇が繰り広げられる。

    ただし例によって暗い。女から男への文句が多い。
    著者は結婚生活がうまくいってないのかと思いきやそうでもなさそう。
    子育てにはずいぶん苦労したのかな?

  • 水死事故と思われた子供の肺から石鹸水が検出され、一転殺人事件としての捜査が始まる。
    パトリックをはじめターヌムスヘーデ署の面々は海辺の町に繰らす人々の隠された一面を暴いていく。

    エリカ&パトリックの事件簿3作目。
    もうほとんどパトリックを中心とした警察小説で、今回エリカは新生児との生活に困惑するばかり。そしてその姿さえパトリックの生活のひとつの部分の彩りにされているような印象。
    1作目ではエリカがもっと事件に絡んでいて、それはそれでありかなあと思ったんだけどなぁ。
    警察小説としてのできはいいので不満はないのだけど。
    今回、様々な人間ドラマが展開されていて、それと平行して過去の1人の女性の人生も描かれる。
    この女性が誰なのか、事件とどういうかかわりがあるのかという以前に、それだけでも興味深い物語となっている。
    700ページ弱あるけど、ミステリとしても群像ドラマとしても読み飽きることはなかった。レックバリは巧い書き手に成長しているなあ。
    ラストの展開もあるので、早く続きが読みたい。

  • 人物の心のあり様が丁寧に描かれるので楽しみなエリカとパトリックのシリーズ3作目。分厚い。メインの謎解きに丁寧なサイドストーリーがいくつも展開し登場人物も大勢出てくるので翻訳ミステリに慣れていないと読みづらいかもしれないけれど大変読み応えがあり面白かったです。ただ読後感は1作目2作目に比べると少し複雑で重苦しい。ヤなやつのメルバリ署長が意外にもお茶目な一面を出したりしてそれが救いになっています。

  • 「カミラ・レックバリ」の長篇ミステリー作品『悪童―エリカ&パトリック事件簿(原題:Stenhuggaren、英語題:The Stone Cutter)』を読みました。

    『氷姫―エリカ&パトリック事件簿』、『説教師―エリカ&パトリック事件簿』に続き「カミラ・レックバリ」作品です。

    -----story-------------
    ロブスター漁の網が子供の遺体を引き上げた。
    医師「ニクラス」の娘、7歳の「サーラ」だった。
    検死の結果、肺から石鹸水が検出され、殺人事件として捜査が開始される。
    指揮を執るのは父親になったばかりの「パトリック」、生前最後に「サーラ」と一緒にいた少女から事情をきいたものの、浮かんだ犯人像はあまりに意外で…。
    小さな海辺の町の人間模様と風土も魅力的、世界で1000万部突破の大人気シリーズ第3弾。
    -----------------------

    2005年に発表された「エリカ&パトリック事件簿」シリーズの第3作目、、、

    前作から数ヶ月後という設定のようで、季節は夏から秋に変わり、「エリカ」と「パトリック」には愛娘「マヤ」が誕生し、「エリカ」の妹「アンナ」は前作でDV夫「ルーカス」と離婚したのに、再び「ルーカス」の元に戻り、さらに激しいDVに遭っている… 等々、季節やプライベートな設定が前回と変化した状況下で新事件の解決に挑みます。


    今回の事件は子ども殺しという重いテーマを扱っています、、、

    漁師の網にかかった少女の死体は溺死と思われたが、検死の結果、肺から淡水(風呂で使ったと思われる石鹸水)が検出され、殺された後に海に捨てられたことが想定されることから、殺人事件として捜査が始まる… 「パトリック」が事件の捜査を指揮することになるが、被害者「サーラ」の母親「シャロット」は、「エリカ」のママ友だったことから、私情を挟んでしまい、やり難さを感じながらの捜査となります。

    ここに80年前の美しいが陰険な性格の女性「アグネス」の物語が並行して展開… 全くの無関係と思われた、二つの物語が終盤でひとつの物語となる瞬間は、なかなか感動的でしたね。

    80年間に亘る「アグネス」の物語と原題の子ども殺しの物語が展開する中で、家族や愛、虐待、死、病気、不倫、嫉妬、殺意、変態的性欲(児童ポルノ)、殺人、悪というあらゆるものが登場、、、

    善と悪が単純ではなく、多面的な様相を見せる読み応えのある長篇作品(約700ページ)でした。


    「アグネス」の母「リリアン」と隣人「カイ・ヴィーバリ」の険悪な仲、

    「リリアン」の夫「スティーグ」の病気(前夫と同じ病状?)、

    「アグネス」の夫「ニクラス」の不倫、

    「サーラ」の弟「アルビン」が受けていた虐待、

    「カイ・ヴィーバリ」の変態的性癖、

    「カイ・ヴィーバリ」の息子「モルガン」の先天的な病気(アスペルガー症候群)、

    等々の捜査で判明した事実が、ひとつの真実へと導いてくれます。


    そして、まさかまさか身内の犯行とは… そして、その背景には「アグネス」に育てられた「マリー」の不幸な子ども時代の影響が色濃く反映されていたなんて、、、

    「シャロット」の体型や行動(食欲を抑えきれない)が「マリー」との類似性があるなぁ… とは感じていたんですよね。

    真相が判明した際のパズルのピースが埋まったような感覚… 達成感のある作品でした。


    それにしても、警察官「アーンスト・ルンドグレーン」の無謀な(無能な?)捜査の犠牲となった「モルガン」のエピソードは辛いねぇ… 「アーンスト・ルンドグレーン」の行動は許せない!さすがに懲戒免職だろうなぁ。


    このシリーズの醍醐味は、事件解決のサイドストーリーとして描かれるプライベートな描写、、、

    「パトリック」が遂に「エリカ」に求婚、「アンナ」は「ルーカス」を殺してしまう… という場面で終わるプライベートも気になります。

    続篇を読みたくなるような、巧い終わり方ですね。



    以下、主な登場人物です。

    「エリカ・ファルク」
     伝記作家

    「パトリック・ヘードストルム」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事

    「マヤ」
     エリカとパトリックの娘
     
    「シャロット・クリンガ」
     エリカの友人
     
    「ニクラス・クリンガ」
     シャロットの夫、医師
     
    「サーラ・クリンガ」
     シャロットとニクラスの娘
     
    「リリアン・フローリン」
     シャロットの母親
     
    「スティーグ・フローリン」
     リリアンの夫
     
    「アーネ・アントンソン」
     ニクラスの父親
     
    「アスタ・アントンソン」
     ニクラスの母親

    「カイ・ヴィーバリ」
     元会社経営者
     
    「モニカ・ヴィーバリ」
     カイの妻
     
    「モルガン・ヴィーバリ」
     カイとモニカの息子
     
    「フリーダ・カールグレーン」
     サーラの友人
     
    「アンナ」
     エリカの妹、二児の母

    「ルーカス・マックスウェル」
     アンナの元夫、トレーダー

    「バッティル・メルバリ」
     ターヌムスヘーデ警察署署長
     
    「マーティン・モリーン」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「ユスタ・フリューガレ」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「アーンスト・ルンドグレーン」
     ターヌムスヘーデ警察署刑事
     
    「アンニカ・ヤンソン」
     ターヌムスヘーデ警察署事務官
     
    「ダーン・カールソン」
     漁師、エリカの昔のボーイフレンド
     
    「トード・ペーデシェン」
     イェーテボリ警察管区法医学室監察医

  • 始め良し 中だるみ 子育ては私もやったけど
    作中の母親達との共感もないし・・・
    あれこれゴチャゴチャと煩く 余程途中で
    読むのを止めようと思ったのだけど それも癪なので
    延々と読んでしまった。
    やっと過去と現代の繋がりが出て来て
    終わって ホッとしたような(笑)

  • エリカ&パトリックシリーズ第3弾。

    孫娘の中にその曾祖母と同じ悪意を見た祖母。
    しかし、自分の母親と孫娘の血は繋がっていなかった。
    悪意はDNAではなく、環境がつくるのだろうか。
    それとも、孫娘の目の中に見た悪意は、
    祖母の中の悪意を映したものだったのだろうか。

    それにしても見事なサーガ。
    動機に関する自白がとれなかったパトリックには悪いが、
    読者に対してはきっちりと描かれていて面白かった。
    しかも、端々の人物までもがしっかりと描かれていて楽しい。

    前作でひどい目に遭っていた署長にさらにひどいことが起きるのかと思いきや、
    ちょっとほっこりして良かった。
    エリカへのプロポーズ、エリカの妹の殺人容疑、新しい女性警察官、
    同棲を始めた若い刑事と次回作への期待は膨らむばかり。

  • エリカ&パトリックシリーズ第三作。
    今回は少女殺し。被害者がADHDということが動機になるのかが気になる。
    エリカは完全に脇役。マヤという子供が出来たものの、育児の喜びよりむしろノイローゼにでもなるのでは?と思うほど追い詰められている。
    被害者の母シャロットは実家にいるから楽かと思いきや、これまた苦しそう。
    これほど追い詰められている母親たちを見るのは辛い。
    同時進行する昔の話の登場人物が誰になるのかを考えると自然と犯人は分かるが、今回もなんともモヤモヤする結果。
    さらにDV夫と暮らすエリカの妹は更に追い詰められているし、もうどうなる、エリカ。

  • 2005年発表
    原題:Stenhuggaren

  • 後味悪。
    こどもが殺される話です。
    その子供は実はADHDで扱いにくい子供と周囲からみなされていた。
    その母親はエリカのママ友。エリカは自分の典型的姑の愚痴や育児の悩みを彼女に打ち明け、彼女もまた自分の典型的な毒親について語る。
    誰が彼女を殺したのか?
    毒母と喧嘩している隣人? もしくはその息子で同じくADHDであるプログラマー? 
    優しくハンサムな医師である子供の父親とその両親もなにやら一癖ありそう。
    誰もかれもが怪しい。
    そして同時進行でとある女性の人生が挿話されます。
    おそらく関係者の物語なのですが、その女性のビッチぶりは典型的で読んでいて胸が悪くなります。
    我儘な美少女がまじめな石工に欲情して、火遊びのあげく孕みます。彼女を溺愛していた父親の怒りはすさまじく、彼女は感動されお嬢様から貧乏な主婦へと転落。
    彼女はこれを不当なものと考え、憤り、元の正しい道へと変えるために画策。
    今回のテーマは親と子、しかも片方が問題を抱えている状態の親子だから、かなり重苦しい。
    近年いろいろな障害が言われているが、躾が出来ていない子供と切って捨てられた時代からも親の苦悩は変わらない。
    毒になる親というものは存在するということがこんなに知られても子供の方からなかなか離れられない。

    さらに、エリカの妹のアンナは夫から監禁され暴力を受けながらも姉に救いを求められない。
    彼女らもまた、母親の無関心という虐待の被害者で、少なからずその影響が出ている。
    最後、アンナがわが子と自分を守るためにする選択。
    え?ここで終わるの?とびっくりした。
    エリカよりアンナの行く末が気になるよ。

  • 時間軸の異なるもう一つの物語が一体どこでつながってくるのか???だったけど、ようやく話がつながってハアーって思いました。犯人が当たってたのでちょっと快感!
    事件の行方もだけど、エリカとパトリックの赤ん坊や周囲の人々への対処の仕方とか日常的なことが面白く読める。
    それにしてもアンナは一体どうなってしまうの~?この終わり方ズルイ~!

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