天使のゲーム 上 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087606461

作品紹介・あらすじ

1917年、バルセロナ。17歳のダビッドは、雑用係を務めていた新聞社から、短篇を書くチャンスを与えられた。1年後、独立したダビッドは、旧市街の"塔の館"に移り住み、執筆活動を続ける。ある日、謎の編集人から、1年間彼のために執筆するかわりに、高額の報酬と"望むもの"を与えるというオファーを受ける。世界的ベストセラー『風の影』に続いて"忘れられた本の墓場"が登場する第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • 前作『風の影』の焼き直しのようなストーリー展開なんだけど、なんだかすごく引き込まれる

    キャラクターがすごく生き生きしてるんよね

    そして魔法のような、ファンタジーのような出来事が起きるんだけど、ちゃんと現実の理由が紐解かれていく下巻にわかるんでしょう
    前作と同じ展開ですきっと
    まぁ読めてるのに面白い

    不思議な世界線

    裏をかいてくる可能性も考慮しつつ下巻や!

  •  1917年、バルセロナ。17歳のダビッドは、雑用係を務めていた新聞社から、短編を書くチャンスを与えられた。
     一年後独立したダヴィッドは、旧市街の以前から不思議と心惹かれていた“塔の館”に住み、5年間偽名でシリーズを書き続けるという過酷な契約のノルマを果たすため、命をむしばみながら、執筆活動をつづけた。同時に、恩人である富豪のゴーストライターとしても活動し、結果、ゴーストライターとして書いた富豪の本はヒットしたが、ただ一冊、ダヴィッドの本名で書いた本は売れなかった。物心つく前に別れた母親にこっそり渡した本も捨てられてしまった。
     絶望の中、ダヴィッドは心の拠り所である古書店“センペーレと息子書店”に向かった。「どうしても守りたい本があるなら、持っておいで」と子どもの頃に言われたからだ。「この本を守りたいんです」母親が捨てたごみ箱から拾ってきた自著本を見せてセンペーレに言うと、あるところに連れていかれた。
     そこは“忘れられた本の墓場”。ダムの底に沈んだきり百年もたった古い教会堂のような建物。中に入り、暗い通路を通ると、巨大なドームを持ち、書棚が何千万冊の本で埋め尽くされた図書館だった。円蓋の頂に向かって登る螺旋階段を入り組んだトンネルが貫いている。元は中世都市の地下通路の下に隠されていた“忘れられた本の墓場”は、異端審問の時代に偏見にとらわれない知識人たちが、“禁書”を石棺の中に入れて隠したのが始まりらしく、何世紀分もの“行方知れずになった本”や“忘れられた本”“破壊されて、永遠に沈黙する運命を背負わされた本”などで埋まっている。ダヴィッドはその書棚の一か所に“守りたい”自著本“を差し入れた。
     “忘れられた本の墓場”には約束がある。その一、この場所のことを誰にも教えないこと。その2、“忘れられた本の墓場”から一冊だけ本を選んで良い。その3、選んだ本を引き取ったら、一生大切に守ること。ダヴィッドは自分と同じイニシャルの著者によって書かれた一冊の革製本の古めかしい本を選んだ。
     同じころ、ダヴィッドは謎の編集人から、一年間彼のために執筆する代わりに、高額の報酬と“望むもの”を与えるというオファーを受けた。羽を広げた天使のマークを付け、なぜか決してまばたきしない、不気味な男。彼のオファーを受けるとまず“脳腫瘍で余命1年”と宣告されていたダヴィッドの健康が不思議と快復し、巨額の報酬が前払いされた。
     
     謎の編集人は何者なのか。”忘れられた本の墓場“から持ち帰った一冊の本と関係がありそうだ。そして、引き付けられるように住んだ”塔の館“とも。

     ブクログを始める前に読んだ“風の影”という本が私の読んだミステリー史上(あまり読まないが)一番好きなミステリーだ。ブク友さんのレビューで、シリーズ化されていることを知り、2番目のこの本を読み始めた。
     “忘れられた本の墓場”“センペーレと息子書店”というモチーフが同じ。同じ古本屋のセンペーレ親子が登場したと思ったが、「風の影」は「天使のゲーム」より30年くらい後の時代設定だったらしいので、この「天使のゲーム」に登場するセンペーレの息子は「風の影」では父親になっていたらしい。その他、謎の暗い男に付きまとわれるということ、出版社が火事になるということも同じだ。
     今のところ、ミステリーというよりもファンタジーの要素がかなりあると思う。「人殺しの犯人は誰?」かを追うミステリーというよりも、歴史の犠牲になった誰かの暗い運命を解明していくようなミステリー。今のところ誰が犠牲者なのか、何を解明するのかもはっきり分からないが、100年くらい前のスペインの歴史的で廃れた町並みや光と影や、人々の栄光と影、それから何より古書店や“忘れられた本の墓場”で表されるように“文化遺産”としての図書が大切に守られていた姿が魅力の小説。
    (下巻につづく)

     

  • 「風の影」に続く、忘れられた本の墓場シリーズ第二弾。
    といっても、前作からしばらく年月を遡った1917年のバルセロナが舞台で、この本だけでも楽しめると思う。

    小説家のダビッドが「忘れられた本の墓場」で手にした「不滅の光」の作者D.M.とは誰なのか。
    ダビッドが住む館の前の家主の過去とは。
    そして謎の編集者アンドレアス・コレッリ。
    それぞれとの不思議な縁が気になって引き込まれる。

    上巻は、友情や恋、思い通りにいかない仕事のことなどから、後半にやっと謎の作家D.M.の人生を追いかけ始めたところまで。
    面白くなってきた。

  • ベストセラー「風の影」の続編。
    「忘れられた本の墓場」という秘密の書庫があるという本好きには嬉しい話がまた出てくる物語。
    主人公は違いますが、前作の親子も出てきます。

    1917年、バルセロナに始まります。
    ダビッド・マルティンは17歳。
    父は本も読めない男で、戦後妻に逃げられ、不遇な暮らし。
    息子が本を読むのを好まず、ダビッドは子供時代に「大いなる遺産」という本に魅せられますが、本屋に返しに行きます。
    その本屋が「センペーレと息子書店」

    新聞社の守衛をしていた父が死に、ダビッドはそこの使い走りに。
    「産業の声」という新聞の穴埋めに、小説を書くチャンスを与えられます。
    大金持ちの御曹司で作家でもあるペドロ・ビダルが何かを目をかけてくれ、推薦してくれたのです。
    「バルセロナのミステリー」という妖婦と謎の男が活躍するシリーズでした。

    後にペンネームであやしげな出版社と契約を結びます。酷使される仕事でしたが、夢中で大量の小説を書き続けます。
    「塔の家」という何年も空き家だったいわくありげな館に憧れ、借り受けるまでになりました。
    ビダルの運転手の娘で秘書となったクリスティーナに恋心を抱きますが、相手はいつも無表情でそっけない。
    ところが28歳になった日、ビダルが本格的な文学作品を書こうとして何年も行き詰っていると、クリスティーナが心配して相談に来ます。
    クリスティーナと会いたいがために、ビダルの没原稿に手を入れて清書するのを手伝うダビッド。

    ダビッドには腫瘍が出来ていると宣告され、必死で心をこめた作品を書き上げますが黙殺されてしまい、ビダルの亜流とまで言われます。
    皮肉にも、ビダルのために書いてやった作品のほうは、大評判に。
    アンドレアス・コレッリという謎の人物が近づいてきて、1年かけて期待通りの作品を書き上げれば15万ドル払うという。

    イサベッラという小説家志望の17歳の少女が訪れ、沈滞した館の空気を揺り動かします。
    イサベッラとのやり取りが楽しい。
    みずみずしい文章で陰影に富む内容。翻訳も素晴らしいです。

    さて‥?
    後半に期待!

  • スペインの友達が、「風の影」よりおもしろいよ!といってて、それからもう4、5年?忘れたころに発売されててびっくり。電車の中でよんでると出勤時間があっとゆうまの寝れない本。よかったまだ下巻があるへへへ、って幸せになれる。バルセロナの綺麗で暗い雰囲気もまる。忘れられた本の墓場、いってみたい。

  • 読み始めて数ページ目で涙が出そうになり、そのまま上下巻わーっと夢中で読んだ『風の影』。その続編が刊行!静かにコーフンしながらすばやく購入。続編というよりは、姉妹作品なので、『風の影』の細部を忘れていても、つながりはゆるやかなので違和感なく読めました。忘れられた本の墓場と、センペーレと息子書店を覚えていれば大丈夫。解説を読むと、四部作のうちの2作目だそうで、あと2作もこの世界が読めると思ったら幸せな気分になりました。3作目も既に本国スペインで発表済、早く訳してほしいです。バルセロナの旧市街を舞台に、詩的な雰囲気の状況描写とひねりのあるセリフを堪能しながら読み進んでいたのですが、後半は意外なほどに激しいアクションとバイオレンスの連続で驚かされました。最後の最後に出てきた、この本を『風の影』とつなぐエピソードが、まさに前作を読み始めて数ページで泣きそうになったあのエピソードだったので、そうだったのか!という驚きと感動もひときわ大きかったです。内容をザックリ説明したいと思うものの、いろんな要素があり過ぎてうまく書けません。親子の情愛、師弟愛、友情、恋愛、裏切り、陰謀、オカルト、サスペンス、バイオレンス、に満ち満ちた作品。帯の通り『風の影』を超えたのかどうかはともかく、何度も繰り返し読みたい作品です。満足して読了。『風の影』を再読したくなりましたが手元に残ってなくて今は無理。でも売れる本しか置いておけないっぽい昨今の書店事情のなか、『風の影』はだいたい置いてありいざとなればスグに手に入るから安心です。

    • niwatokoさん
      「風の影」を評判をききながら読み逃していたので、やっぱり読もうかなと思いました! akatenkobanさんのお墨つきならなおさら!
      すご...
      「風の影」を評判をききながら読み逃していたので、やっぱり読もうかなと思いました! akatenkobanさんのお墨つきならなおさら!
      すごく読みごたえがあっておもしろそうですねー。
      2012/08/03
    • akatenkobanさん
      こんにちは。風の影、私はとても好きです。少年の成長物語がお好きでしたら、特にオススメです!
      こんにちは。風の影、私はとても好きです。少年の成長物語がお好きでしたら、特にオススメです!
      2012/08/03
  • 一九一七年十二月、バルセロナの新聞社で雑用係をしていた十七歳のダヴィッドは短編小説を書く機会を得た。作品は好評でシリーズ化され、一年後ダヴィッドは新興出版社と専属契約を結び独立。それを機に以前から気になっていた市中に異容を誇る「塔の館」に移り住み、執筆に励む。

    新シリーズも好評だったが、契約に縛られ読者受けをねらった作品ばかり書き続けるダヴィッドに失望した恋人は別の男と結婚してしまう。失意のダヴィッドに謎の編集者からオファーがある。高額の報酬と望むものを与えるかわりに彼のために本を書けというのだ。

    専属契約を理由に一度は断るダヴィッドだったが、契約を結んでいた出版社が放火され契約は無効に。事件を疑う刑事に追われる身になったダヴィッドは、「忘れられた本の墓場」で手に入れた『不滅の光』の著者にして「塔の館」の前の住人、ディエゴ・マルラスカについて調査を始める。ところが、彼の行く先々で人びとは謎の死を遂げるのだった。

    『風の影』で世界的大ヒットを飛ばしたカルロス・ルイス・サフォンの「忘れられた本の墓場」シリーズ四部作の第二部。主人公が「呪われた都」と呼ぶバルセロナを舞台に、前半のゴシック・ロマン風幻想小説のタッチから後半のハードボイルド探偵小説ばりのアクションまで無理なく運ぶ筆の冴えは前作を軽々と越えたといっても過言ではない。

    ゲーテの『ファウスト』や、ディケンズの『大いなる遺産』といった先行するテクストを下敷きに、この作家ならではのジャンルを横断した「読ませる小説」をめざす試みは見事に達成されている。周到に準備された伏線、夢の記述の多用、主人公である話者の昏倒や泥酔による語りの中断といった叙述上の工夫が凝らされ、作品の完成度を上げている。

    戦争被害者であった父親の虐待を受けて育ち、その殺害現場に立ち会うといった主人公の生い立ちや、安心して住まう場所を持ち得なかった境遇から、ダヴィッドが精神的に追い詰められていく状況を的確に診断すれば、一見幻想小説風仕立てに見える筋立ての中に謎解きミステリとしても読める手がかりが残され、フェアな叙述になっている。エピローグは、伏線を生かしたファンタジー小説風の結末であるが、崩壊の危機にあった主人公の人格が十五年という歳月をかけて回復を果たしたことを示すものを読めば、その解釈はまた変わってくる。

    クリスティの『誰がアクロイドを殺したか』以来、一人称の語り手の証言は一度括弧に入れて読まねばならなくなってしまったが、まずは、カタルーニャ・モデルニスモの奇矯な建築で彩られた異郷バルセロナを舞台にしたゴシック・ロマンの風味を堪能し、しかる後再読、三読して謎解きミステリの醍醐味を味わうのがお勧めだ。

    前作『風の影』未読でも本作を堪能するに何の支障もないが、すでに『風の影』を読んだ読者には、エピローグは何よりのプレゼントになっている。そういう意味では、『風の影』を読んでから本作を読むほうが意外性が増すということだけ伝えておきたい。

  • 20世紀初めのバルセロナの描写が素晴らしい。現存する通りや街の当時の様子を思い浮かべながら、ミステリーは進んでいく。欧州、歴史好きの自分には休日の読書として最適の一冊だ。

  • あぁもう、みんなにこの本買ってあげたい。
    そのくらい素晴らしい!

    サフォン、すげえ、すげえよ!!
    前作で物語の素晴らしさは折り紙つきだけど
    またとんでもない物語を紡いでくれました。

    たしかに前作とは主人公も違って書き手側で
    多少重くて、暗いお話かもしれん。
    ある契約に基づいて物語を作っていくのだけど
    誰のため、何のためか分かってくる後半は
    暗い幻想に溺れながらも読む手は止まらない。

    ただ、アシスタント役のイサベッラが素敵すぎ♪
    暗い主人公をパーフェクトに支えてくれます。
    こんな人に出会えたら、一生離さないと思う。

    ラストの手紙、最後の一行は
    書く事を仕事にする人にとっては最高の言葉よね。
    この一行で泣きました。今でも泣きます。
    だけど、主人公の彼は生き続けるので
    もしかしてすごく悲しいお願いなのかも…

    結局天使のゲームとは
    誰とのゲームだったのか?
    暗闇から逃れる代償はなんと大きいものか。
    たまらないカタルシスでした。

    風の影、天使のゲームと
    ほぼ完璧な物語を聞かせてくれるサフォン。
    なのに、まだ4部作の半分なのです。
    本国スペインでは3作目がすでに出てますが
    日本語になるのは何年先だろうなぁ…
    今世紀最高の4部作になりそうです。

    すべての方に激しくオススメしますけど、
    ただ一つ、お願いというか必須条件です。
    前作、風の影を読んでてください!
    本作を読み終わって、ふと風の影を開くと
    1ページ目でもう感涙必至よーー

  • ずっと住みたいとおもっていた塔の館。作家ダビット・マルティンは、その呪われた館に住むことになった。前作と同じく、過去と運命の様に重なっていく。前の持ち主とマルティンと。謎の編集者コレッリの依頼の意図は、何なのか?イサベッラが可愛くていいですね。一途な力強さがあります。下巻が楽しみ。

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