ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087607000

作品紹介・あらすじ

ルーの半年限定介護職の相手は、事故で四肢麻痺となった若き元実業家ウィルだった。徐々に惹かれ合う二人だが、彼は尊厳死を決意していて…。命のあり方を問う世界的ベストセラー。(解説/中江有里)

感想・レビュー・書評

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  •  自殺が絶えないこの世界で、「尊厳死」という選択を選ぶ人たちがいる。これは、医師や弁護士を伴い、法的に許された国でしか行えない、貴重な選択である。だから、その分お金と時間がかかるし、尊厳死を許される人も厳選される。
     自ら死を選ぶ、という部分では自殺と変わらないが、「尊厳死」は「自死を選ぶに遜色ない」と、他者が選び、また実行されるもので、自殺とは大きく異なる。
     しかし、愛する人に「あなたには死んでほしくない」と思われる点では同じである。他人が他人の死に方に干渉することは、理不尽だし、余計なお世話かもしれない。だけれども、死にたいという気持ちを、少しでも軽くできるならば、人はどんな理不尽も、どんなお節介もしてあげたくなるのではないだろうか。

     この本は「尊厳死」を取り扱った本だが、そこが主題ではない。死を求める者の周りにいる、「死んでほしくないと願う者」たちが主役なのだ。

     結末は決まっていたことだった。読み進めていけば分かる。この話はラブロマンスでもヒューマンドラマでもなく、ある意味ドキュメンタリーに近い。
    消えかけた灯に、はつらつとした高温の愛を注げば、ひと時は燃え上がり、鮮やかな炎が立ち上がるが、それは生涯続くものだろうか。一気呵成に蝋を使い果たした蝋燭の末路は、火を見るよりも明らかだろう。

     この本を勧めたいのは、「死にたい」と溢した友人や、家族に、どんな言葉を掛ければよかったのかと、内罰的な感傷を受けた人に読んで欲しい。この本に正解が書いてある訳ではないが、少なくとも「この世に引き留めるメリットは何か」とか、「死を選ぶ自由もあるのではないか」などという難解な思考は消える。そして、自ずと答えが出てくるはずだ。

     最後に、「自殺を考えている」人へ。
     我々が生きてく上で、死は自動的にやってくるものだ。それは事件、事故、病気、寿命など、原因は数多にあるが、人生が終わるときは必ず来る。
     それを、自分の意思で終わりを早めるのは、もったいなくはないだろうか。
     今がとても苦しく、辛く、孤独で、逃げる力もないかもしれない。だが、思い出をさかのぼって欲しい。楽しかったことがあったはずだ。それにも必ず、終わりがあっただろう。苦手な教科の授業も、必ず終わりがあったはずだ。つまり、今の現状も、いずれ終わりは来るのだ。それは緩やかに来るかもしれないし、一瞬で終わるかもしれない。この先の人生を、あなたが生きていけば、苦しみが終わる時に出くわすはずだ。その先に楽しさがあるのか、新たな試練が待ち受けるのかは誰にも分からないことだが、少なくとも死に直面するほどの苦しさを乗り越えたあなたにとっては、ほっと胸をなでおろすものとなると思う。だから、自分の人生にいずれはやってくる死を、わざわざ自分から迎えに行くことはしないで欲しい。死は、彼らは常に我々の脳裏に暗い影を落とし、苦々しい存在感を胸中に残すが、我々が無視していれば、向こうからは何もできない。特に今を生きるために精一杯もがいている人には。

     死にたいと思う人々が、人生の苦難を乗り越える力の端々となれればと思いつつ、感想とメッセージを誠に勝手ながら、ここに残す。

  • ロシアで超人気の外国人現代作家10人 - ロシア・ビヨンド
    https://jp.rbth.com/arts/85195-roshia-choninki-gaikokujin-gendai-sakka-10-nin

    世界一キライなあなたに - 作品情報・映画レビュー -KINENOTE(キネノート)
    http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=86888

    ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日/ジョジョ・モイーズ/最所 篤子 | 集英社の本 公式
    https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-760700-0

  • なかなか読み応えがある一冊でした。
    ウィルとルイーザの物語。私自身初めて尊厳死について考える事が出来、命のあり方について考えさせられました。

  • 読むのは三度目だけど、また泣いた。
    決して軽くないテーマだけど、生きるってことを前向きに捉え直せる気がする本。

  • この本はブクログで知ってからすぐに読み始めた。翻訳され、かつそれなりのページ数なことからもっと読みづらいものだと思ったけど、スムーズに読み進められた。

    正直みんなそれぞれに癖が強く、普通の状況ならひどい人たちばっかりだけど全員に共感できた。
    ウィルは多分性格の悪い男だと思う。こんな状況でもなければルイーザを馬鹿にして見下してただろうし。それに6ヶ月だからこそウィルとルーに愛情が芽生えたのであって、仮に結ばれてもっと長い時間一緒にいるとなると、気が合わなくなるんじゃないかと思う。ルーはウィルのお陰で自分の殻を破ることができ、ウィルは楽しい時間を過ごせたのなら、この結末が1番幸せなんじゃないか。だから読後も全く後味の悪いものではなかった。

  • 映画が良かったので、小説でも一読してみた。映画では触れられてなかった日々の出来事も描かれていて、ルイーザとウィルの気持ちの移り変わりがより深く見れた。
    物事の1つを取って自分を定義することはないと分かりつつ、自分らしい生き方ができないことに苦しむに深い悲しみを感じた。

  • 尊厳死がテーマである。
    大変読みやすい作品。

  • 期間限定の介護ヘルパーになったルイーザが出会ったのは、四肢麻痺になったウィル。ウィルは尊厳死を希望しているため、それを思いとどまらせるためルーが奮闘しはじめる、というストーリー。

    ルイーザのキャラクターが日本の少女漫画ラブコメの一昔前の典型的な主人公みたいよね、と思った。天真爛漫で、ちょっと人とずれてて、でもそれを恐れてない、みたいな。そういうキャラクターはイラつかされることも多いけど、今回は描き方がうまくて魅力的に思えたし、ウィルが心惹かれるのにも説得力があった。

    小説としておもしろいし、設定にもオリジナリティがあるけど、特に個人的には訴えかけられるものがなかった。尊厳死を自死と捉えて、それを罪と考えるのはキリスト教の考え方だから、そもそもその発想に共感できない思想の人間が読むとそうなるのかも。大切な人を失いたくないというウィルの家族やルイーザの気持ちは分かるけど、ウィルの気持ちを特に世間の目という点で反対する観念はちょっとなあと思ってしまうわけで。それが信仰と言われればそれまでで、キリスト教社会での尊厳死のあり方を知るという意味では有意義だけれど。

  • 評判がとてもいいのは知っていたけれど、尊厳死というテーマにビビって、アンハッピーエンドは耐えられない(子どもか!)と思って読まずにいて。そうしたら最近、続編が出るというのを知って、それじゃあアンハッピーエンドじゃないんじゃないの?と早合点して読みはじめた……。
    作品は本当に本当にすばらしかった。
    読みはじめたらものすごくおもしろくて止まらないほど。久しぶりに、寸暇を惜しんで続きを読みたい、っていう気分になった。読みやすくて、センチメンタルすぎるところも暗い雰囲気とかもなくて、ファニーでキュートなロマコメみたいで、楽しい場面ではあまりの楽しさと幸福感で涙が出るくらいで。
    だから、途中から、これはもうハッピーエンドだろうと勝手に思いはじめて。奇跡が起きて病気が治るとかはさすがに思わなかったけど、なんとか生き続ける方向で話が終わるんだろう、と。
    でも、そうじゃなかった。ハッピーエンドを予想して楽しい気持ちで読んでいたから、ショックが大きくて、打ちのめされた。読まなきゃよかったと心底思った。
    これはもう高所恐怖みたいな生理的なアンハッピーエンド恐怖症かもしれない。。。
    尊厳死については、実際に自分自身や大切な人の身に起きたら考えも違ってくるだろうし、簡単に考えられるようなことではなくて。でも、とにかくやっぱり死ぬのも死なれるのもいやだと単純に思うのは、わたしが利己的なのかもしれない。

    尊厳死の話だけじゃなくて、その介護をする、小さな町から出たことがなくて、冒険をしないと決めた主人公が人生を模索している感じもいいし、その家族の話も、サイドストーリーもすべてがよかった。だからこそ、主人公が彼と一緒に人生を進めていく話を読みたかったと思う。そういう話だったらどんなによかったか。手放しで絶賛できたのに。そう思うのもわがままというか利己的なんだろうけど。
    アンハッピーエンド恐怖症だから。
    最近はとくに、実際の人生ってやっぱり思っていたほどうまくいかないし、最後は年をとって苦しんで死ぬんだなとか考えるようになったから、せめてフィクションはハッピーエンドがいいと思うのだ。あくまで個人的に。

    (続き。)
    いったん書き終えたあと、またつらつら考えてしまって。
    正直なところ、主人公ルーの最初の反応と同じく、怒りを覚えたんだと思う。
    愛してくれる人も見つかったし、話したり笑ったりできる相手もいるし、最高にすばらしい休暇も楽しめたのに、ウィルは「それだけじゃ満足できない」「前の自分とは違う」って。
    言いたいことはわかるし、気持ちもわかる。
    でもそうしたら、年とっていろんなことができなくなったりするのもそうじゃない? なにか状況が変わって仕事がなくなるとかそういうこともそうじゃない? 
    しかも、ウィルはお金はいくらでもあって、介護人を雇えなくて介護のために家族が苦労するとかは一切ないのに。ウィル以上に孤独な人とかいくらでもいるのに。
    こう言うのはなぜか抵抗あるのだけど(あたりまえに言われすぎるからかな?)、恵まれてるのに贅沢だ。そうひとことで片づけるのも違う気もするのだけれど。。。
    それでも選択肢は本人にあるのだから、ってことなのかな。。。
    考えすぎてつらくなる。。。

  • 尊厳死の判断ってムツカシイ。その感想につきる…。

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