失われた時を求めて 4 第二篇 花咲く乙女たちのかげに 2 (集英社文庫)

  • 集英社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087610239

感想・レビュー・書評

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  • 第2篇は第1次世界大戦による中断を経て書かれ、1919年の出版時にはゴンクール賞を受賞している。この時期になってもフランスでは貴族階級、ブルジョワジー、プロレタリアートが厳然と区別された階級社会であったことに驚きを禁じ得ない。もちろん、本書はそうした社会の中で有閑ブルジョワジーに属する主人公の回想として語られるのだが、貴族との距離の親近性とは対照的にプロレタリアートは遠い位置にいる。もっとも、サン=ルー侯爵はプルードンに傾倒したりもしているのだが。そういう意味では、階級社会そのものの再編期だったのだろう。

  • 3.2

  •  「失われた時を求めて」通読マラソンも第4巻ということで、まだまだ先は長いのだが、上質な暇つぶしの時間を堪能できている。今回の恋の対象は花咲く乙女たちであるが、例によって自分から声をかけることができず、誰かに紹介してもらうことで恋愛がスタートする。
     彼女たちが学校の試験で出された問題について議論するシーンがあるのだが、これがなかなか面白かった。さしずめ戦国時代の英雄が大河ドラマの俳優に手紙を出すとしたらどんな内容になるかといった問題だが、最初に構成を考えないと失敗するといったことが議論されており、まるで小論文対策のようで面白かった。

  • 相変わらず心情の分析がすごい。
    自分がほとんど考え及びもしない心の動きを一つひとつ解きほぐすように表している。

    ただ、いくら回りくどく描かれてあっても、主人公が女の子に目移りしまくっているのは分かった。
    個人的にはサン・ルーともっと仲良くして欲しい。

  • ヴィルパリジ夫人の甥であるサン=ルーは一体どういう存在、キャラクターとしての登場なのかわからなかった。
    花咲く乙女たち五人組が登場してから知り合うまでが長い。アルベチーヌと知り合ってからは面白かった。だが、彼女の考えがわからずアンドレに惹かれようと思う主人公。
    主人公がなんとも童貞で、少女5人に恋してるってのが面白かった。

  • 堪能できた。

  • 「どんなに聡明な人でもあっても」と彼は言う、「その若いころのある時期に、思い出しても不愉快になる消してしまいたいような言葉を口にしたり、あるいはそういう生活を送ったりしたことのない者はいやしません。でも、これを頭から否定して後悔するには及びません。その人がなんとか聡明な人間になり得たというのも、最終的にそうなりきる前に、滑稽な人間だったり厭うべき人間だったりしたというさまざまな段階を経てきたからこそなのです。私は知っていますよ、名士の息子さんやお孫さんに当たる若い人たちで、中学のころから家庭教師に、精神の高貴さや道徳的な気品を教えこまれた人たちがいる。この人たちは、たぶん自分の生活から切って捨てなければならないものなど、何ひとつ持ちあわせていないでしょう。自分たちの口にしたすべてのことを公表し、それに署名することもできるかもしれない。けれども、こんなものは貧弱な精神だし、空論家の無力な子孫です。こういう人たちの聡明さは否定的で不毛なものだ。聡明さは人から教わることのできないものです。これは、誰にも代わってもらえない道程、誰もわれわれから免除してくれるわけにはいかない道程をたどった後に、自分の力で見つけ出さなければなりません。なぜって聡明さとは、一つの物の見方なのだから。あなたが感心されるような生き方や、高貴な態度だと思われるようなものは、一家の父親だの家庭教師だのによってしつらえられたものではありません。それはその前に周囲を支配している悪しきものや凡庸なものに影響されて、まるで違った形で始められた時期を持っているのです。それは闘争と勝利とを示しているのです。私には、駆け出しの頃の自分たちの姿が今では見分けのつかないものであり、いずれにしても不快なものであることが、よく分かる。でも、これを否定してはならないんです。だってそれは、本当に生きてきたという証拠だし、私たちが人生と精神とを支配している諸法則にしたがって、生活のつまらない要素からーーもし画家だったら、アトリエだの芸術上の党派だのといった生活からーーそれを超えるものを引き出したという証拠なのですから。」

    この一文がずっしり響いた。「失われた時を求めて」は数十ページに1つくらいの割合で心にくるものがありますね。

  • 幼虫から蛹になり蛹から蝶になった。素敵な花園を見つけたのであちらの花こちらの花と飛び回っていたが花と見えていたのは幻だった。
    遠い昔の楽しかったあの頃、あれは夢か幻だったのだろうか。

  • 凡例
    はじめに
    第2部 土地の名・土地(続)
    訳注
    主な情景の索引
    本巻の主な登場人物
    エッセイ 未知のガリア―夢想のほとりで 吉田加南子
    (目次より)

  • 「土地の名・土地」の続き。語り手の私がお祖母さんとフランソワーズと一緒に海辺の避暑地バルベックで過ごし、新しい重要人物、シャルルス男爵やアルベルチーヌ、今後重要ではないかもしれないが、気取り方ばかりを気にしている社交人たちとは違う意味で私に影響を与える画家・エルスチールなど多様な人物が登場する。またこれ以前の巻では通りすがり程度にしか出てこない人物が伏線をもって再登場したりもし、構成の楽しさもだんだんと味わえるようになっている。語り手の私が成長したせいか、都会のごちゃごちゃした社交界から少し離れたせいか、「そんなふうに私は自分の印象を祖母の判断に委ねるのだったが、それというのも、祖母に教えられないと、ある人にどれほどの尊敬を払ったらよいかも分からなかったからだ」と言いながらも、前の巻よりも余程のびのび人物評価をするようになって楽しかった。――「ブロックの属している環境では、社交界に対して浴びせる揶揄と、にもかかわらず「きれいな手をした」一人の男が備えるべき折り目正しい態度に対する十分な尊敬の念とのあいだに、一種特別な妥協があって、それは社交界の風習とはかけ離れているが、それでも一種のこの上もなくいまわしい社交性なのだった。誰かに紹介される時になると、彼は疑わしげな微笑と大げさな敬意を浮かべながら頭を下げて、相手が男の場合だと「はじめまして、ムッシュー」と言うのだが、その声は自分の発する言葉をばかにしており、しかも声の主がばかではないことを意識している声だった」

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