みかづき

著者 :
  • 集英社
4.17
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感想 : 601
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087710052

感想・レビュー・書評

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  • 家族と教育をテーマにした物語。その時代その時代においての教育の問題を塾の経営者という目線で展開していくのは新鮮だった。さらに、章が変わるごとに話し手が変わっていき、どの登場人物にも感情移入することができた。ゆとり教育による格差社会の助長など知らないことをたくさん取り上げていて、すごくためになった。また、家族の生々しい様子が描かれていて、少し結婚というものが怖くなった。最初は自分勝手な妻に振り回される吾郎がかわいそうだと思ったが、妻にも妻なりの考えがあり、相手のことを知る重要性を知った。私も今後は一時の感情に任して相手を攻撃するのではなく、相手の考えを知るための対話を忘れないように心がけたい。

  • これは……名作だと思います。
    結構分厚いのですが、一章ごとに移り変わる時代、
    その登場人物たちにあっという間に引き込まれていきました。
    久しぶりに時間を忘れて読みました。

    「教育」を軸に物語は描かれます。
    誰かの想いが誰かに受け継がれて、そしてその人の確かな力になる。でも、教育だけに言えることではなくて、人が生きていく中で、誰かの想いがどれだけ人の力になるのか。
    いかに私たちは力をもらっているのか。
    人の強さと弱さ、その懐の深さを教えてもらったようでした。

  • 教育に人生を捧げた人々の物語。
    教育といっても、舞台は学校ではなく学習塾。
    塾が邪道と批判された時代から塾通いが当たり前となった現代までを描いた作品。
    塾を経営する大島家の面々を通して、当時の教育観や問題点など教育の歴史も垣間見れる。

    かなり綿密な取材をして苦労して書き上げたんだろうなぁという印象。
    森絵都さんらしく、柔らかく読みやすい文章でスイスイ進む。
    親子3世代に渡る長い物語の中では亡くなる人もいて、過去を見ているだけになんだか寂しい気持ちに…
    人生ってきっとそういうものなんだろうなぁとしみじみ思ったりして。

    印象に残っているのが、どの時代のどの教育論もその当時の教育のあり方に悲観している、これではダメだと声を上げている、という部分。
    教育ってきっとどんなに正解に近づこうと頑張ってもモアベターにしかなり得ない。
    完璧な正解は存在しない。
    だからこそ悲観して声を上げる人がいて議論を重ねてどんどん変化していくんだろうね。
    もちろん、時代時代で理想的な教育のあり方も変わるし、政治的要素もガンガン入ってくるし、純粋に教育だけを考えるのは難しいわけだけど…
    だからはまる人はどっぷりはまる面白い世界なんだろうな。

    タイトルの「みかづき」。
    終盤で回収されるけど、ストンと納得できる素敵なタイトルだと思いました。

  • 昭和36年、塾がまだ一般的でもなく世間から批判的な目で見られていた時代。国民学校の経験から文部省の教育政策に批判的な千明と、教員免許は持っていないが子供の教育に素晴らしい才能を持つ吾郎の大島夫婦は塾を立ち上げた。それから現代までの教育をめぐる大島家三代の物語です。

    最初はアララ!という感じだったのです。如何にも「作られた」ストーリー。文章もどこか説明的でちょっと粗い感じがする。
    ところが中盤から熱量が上がり一気に勢いが増してグングンと良くなってきました。そして最後は「ヤラレタ」という感じです。
    ちょっと極端すぎるけど、様々な個性を配置することで分厚い長編を楽しませてくれるエンターテインメントとしてだけでなく、改めて教育とは何かを考えさせてくれる物語でした。

  • 森絵都の中では、ある意味普通の作品。他の作品のような森絵都カラーは少し少なくて残念。

  • 今では当たり前の存在になっている塾。その塾ができたときからの、ある塾と、塾を取り巻く人々、教育をテーマに描かれた話。

    学校が太陽なら、塾は月。
    立場は違えど教育に対する想い、子どもたちへの想いはいつの時代も皆同じなのだ。

    塾ができたての頃は塾に通う子どもたちは後ろめたさを感じていた。しかし、塾が当たり前の時代になると今度は貧困によって塾に通えない子も出てくる。時代の流れに沿って、教育を取り巻く問題も変化していく。

    私は教育はいくら少子化になろうともなくならないと考えている。その理由を、この本のタイトルの意味が物語っていて、「ああ、そうだ。私が言いたかったことはこれなんだ」と、とても腑に落ちた。

    教育の移り変わりが、著者のなめらかなストーリーで彩られ、どの世代にも響く素晴らしい一冊だった。

  • 用務員室に勤務する吾郎は、赤坂千明の誘いで塾の講師として働くこととなる。学校が太陽ならば塾は月のような存在。塾を通うことが当たり前出なかった時代の中、学校教育とは別の立場から子供達を支える立場で吾郎たちは奮闘して行く。


    吾郎、千明、頼子、ふきこの代で完結型かと思っていたら、ふきこ、蘭、ななみ達の人生、さらには一郎、一郎からみた千明、吾郎、と3世代にわたり続く物語
    その代に合わせて変化して行く教育のあり方、問題、また時代の流行や町並みが自然と変化して行く様がとても面白かった!
    つめこみ、ゆとり、格差と今ある教育問題は過去で試行錯誤した上にできたもの
    そしてみかづきみたいな教育、完全はなく常に問題を抱え高めて行く必要のある教育、問題にばかり注目されがちだけど、時代ごとに変えていこうという姿勢が常にあるのが教育なのだなと実感できた

    生きる力を育てる、千葉進塾のモットーは自分が子育てして行く上でも大切にしていきたい

  • 教育現場に携わる家族の成長物語。
    時代の変遷と家族の成長と変化描写が秀逸。460Pの長編だが中盤からは一気読み必至。

  • またもや、一気読みしてしまった。。
    森絵都のものがたりはジェットコースターさながら読者をものすごいスピードであらゆる方向へひっぱっていく。
    で、ゴールで我に帰るというか、落語のようにピタッオチがキマり、読み手は我にかえる。

    戦後の日本、教育、格差の問題を1つの家族の歴史を丹念に追いながら描いていく。
    どの世代に共感するかは読み手次第だけれど、私にはこういうファミリーヒストリー的なものが響く

  • 2017年5月28日読了。テーマは教育だったんですが、戦後すぐから現代まで駆け上がって作品になってました。怒涛の話だったなと思いました。その時代時代の「教育」への在り方は考えさせられることばかりで、人間もそれぞれ変わってきたと思えば、それは教育も変わっていくことで。ただいつも教育は子どもの頭脳と心と体の成長のためにあるものでなければならない、それを必死で大人たちは考えてました、どの時代も。子どものことを社会が守るのはいつの時代も同じなのですね。あと、大島家の家族模様も素晴らしかった。千明がやはり一番強烈キャラでしたね。最初この話の終着点が見えなかった。でも終わってみれば素晴らしい教育論と教育の形があって、そして家族があって、昭和から平成に向けて駆け抜けた人たちの「生き抜く力」を感じました。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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