ゼンマイ

著者 :
  • 集英社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711134

作品紹介・あらすじ

「世の中なんて、不思議な出来事が簡単に起きるくらい、くだらねえもんだな」モロッコへ、オトコ二人の珍道中。見つけたのは一人の女か、それとも人生か。野間文芸新人賞受賞の新鋭による最新小説。

感想・レビュー・書評

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  • 陰茎の穴から噴き出してきたオレンジ色とか黄色の金平糖のような星が百個くらい床やベッドに飛び散るのを眺めながら宇宙を夢想する。陰茎の先に広がる宇宙はたちどころに白濁したものに変わってしまうが、飛び出した瞬間は確かに宇宙。短くせつない恋を主軸に夢と現実の狭間の曖昧な空間をファンタジックに描く。「世の中なんて不思議な出来事が簡単に起きるくらい、くだらない。」すべてがここに収斂していく。成果とか効率に追われる毎日の中でほっこり心に安らかさを与えてもらえた。

  • トラックひとつでのし上がった成金の老人が、遠い昔の純愛を探してモロッコに旅する話なんだけれど、なにしろ竹柴の喋り方やざっくりとした性格が気持ちいい。恋人ハファをはじめサーカス団の個性的な面々も、読んでいて心地よい。ゼンマイが止まると悪いことが起きる気がすると、ゼンマイを巻くことに捕らわれていたり、でもそれすら本当は自身が過去と繋がり続けていたかっただけなんだろうなぁと思わせる描き方。タンジェに戻るトラックを意気揚々と運転する竹柴の姿。そしてあっさり死んでしまう、という描き方。上質なロードムービーを見終えたような読後感さいこう。

  • まるで不思議な力に導かれるような男女の再会の行方。

    バンブー運輸の竹柴社長が、若い頃に出会ったジプシー魔術団にいたハファという女性の行方を探していた。

    竹柴がフランス語ができる人を探して出会った加代と
    ハファの消息を掴み、妊娠中の加代に代わって兄の細谷と
    男2人でハファを探しにモロッコのタンジェを目指した。

    若かった頃の竹柴の数々の武勇伝とハファと過ごした日々。
    ジプシー魔術団の風変わりな人たちと
    それに関わった人たちは竹柴1人を残してみんな死んでしまったこと。

    ハファがくれたゼンマイを回し続け
    社長にまで成長した竹柴の胸にいつもいたハファという女性の存在。

    治安の悪いモロッコで体調の悪そうな竹柴の話を聞きながら
    すでに亡くなっていたハファが残した竹柴宛の手紙。

    男のロマンだねえ。
    面白くて一気に読んだ。映像化も面白そうだなあ。
    竹柴の数々の修羅場を乗り越えてきた人特有の肝が座ってる感じ、人を見る目がある感じ、とにかく人柄がいいなあ。

  • 不思議な設定、読んだことの無い展開なのに、受け入れながらサラサラと読めてしまった。

  • 不思議な話だった。
    ゼンマイに魔力のようなものがあるのではなく、それを信じて続けることに何か力が宿ったのかもしれないな。

  • 昔馴染みの女に会いにモロッコへ。
    現地民に騙されながらも彼女の手がかりをつかむ。
    すでに死んでいたけれども手紙を受け取る。
    よく分からない話だった。
    でもスイスイと読み進めた。
    不思議と引き込まれる。

  • アジアを舞台にしながらファンタジックな面も持つ作品。
    気が付いてみると、思った以上に描かれている世界に入り込んでいる。
    活字に余り触れない人でも読み易い、普段使いの熟語しか使われない感じ。 それが、現実感っちゅうか親しみ易さに結び付いてるかも。
    特に大きな起伏の無いストーリーだけど、淡々と楽しめた。

  • トラック一台でのし上がった七十代のおっちゃん。そのおっちゃんが若いころに出会ったハファという女性を探すため、仕事のない主人公と一緒にモロッコに行く話。タイトルのゼンマイはハファがおっちゃんに渡した文字通りのゼンマイで、これを回していないと、おっちゃんに何かしらよくないことがおこるらしい。
    個人的な感想としては、なんとなく会話が面白い。いろんな登場人物が現れたり、突然消えたりする。そんな不思議な流れがあった。人生って儚いようで面白いような…
    なんだか変な感想になった…

  • かつて魔術団に共に属していた女性をモロッコへ探しに行く男二人の物語。タイトルのゼンマイは、その女性から男に渡されたものであり、巻かずに止まってしまうと災難がおこるというもの。不思議なことばかり。男も個性的に書かれ、全体も緩めの文章。旅行記って感じもあり。戌井さんのペースに乗せられ、一気に読みました。こういうこともきっとあるんだろうな〜。

  • ハチャハチャな人生を送ってきた老人が、その人生に強烈な印象を残した女性を、テキトーにやってきたライターと共にモロッコに捜しに行く。
    アレヨアレヨと読み進めて行くと、それなりの探索劇は終わり、物語もおしまい。
    読み飽きないけど、何も残らない。

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著者プロフィール

1971年東京都生まれ。劇作家・小説家。97年「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げ。2009年小説『まずいスープ』で第141回芥川龍之介賞候補、14年『すっぽん心中』で第40回川端康成文学賞受賞、16年『のろい男 俳優・亀岡拓次』で第38回野間文芸新人賞受賞。

「2022年 『沓が行く。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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