家族のあしあと

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711158

感想・レビュー・書評

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  • 【きっかけ・目的】
    この歳になって再び椎名誠である。原点回帰と言っていい。自分の活字中毒の出発点でもある椎名さんの私小説を手に取る。
    【感想】
    岳物語では自分の息子を主人公にすえて親子の日常を描いているが、今回は自分の幼年期から小学校時代までを題材にして書かれている。
    幼年期の描写はどうも心象風景をそのまま描こうとしたのか迷いがあったのか曖昧模糊とした筆致が読みづらかった。
    時代が進むにつれ書き方も記憶が確かなものになるためかしっかりしたものになり読みなれた文体になっていた。

    昭和30年代高度成長期前の時代、千葉の幕張にいた少年が何を考え生活していたのか、少年椎名の目が家族を見つつ捉える様が面白い。
    父親との関わりの薄さが逆に岳物語での自分の親子の関係の基になったのかと思った。

    【終わりに】
    もう少し、時代背景などを踏まえてその時代の空気感を出してもらいたかったなあと思う。
    ただの親子関係や複雑な家族関係が成長過程の椎名少年にすごい影響を与えていたんだということはすごくよくわかった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    父がいた。母がいた。きょうだいがいた。シーナ少年が海辺の町で過ごした黄金の日々。『岳物語』前史、謎多き大家族の物語。

    今まで沢山の自叙伝のような私小説を書いてきた椎名氏。これもまたその中の一冊なのですが、とうとう総決算として家族の事を書き記しておこうと思われたのですね。少年椎名誠と彼を取り巻く家族の肖像です。
    家族という単位で食卓を囲み集まる期間は驚くほど短いという彼の言葉が想像以上に僕の胸に刺さりました。丁度僕自身、娘が親離れの頃なので、次第に家族がバラバラになっていく実感をしているからなのでしょう。静かな生活になって行って、にぎやかだった我が家を懐かしく思い出すんでしょう。
    ワクワクするような少年小説というより寂寥感漂う小説です。誰もが年老いていずれ去っていく。僕らもそうだし僕らの子供もいずれ通過していく道です。でも少しずつ離れてまた新しい家族の単位を作っていく。それを静かに見守る事が出来る、それは幸せな事ですね。分かっちゃいるけど寂しいです。

  • 椎名誠な自伝小説。岳物語の椎名誠氏の子供の頃の話。子供ごころに、聞いてはいけない家族の話や、近くにいた不思議な大人、ワクワクする工事現場など、今はなくなってしまった日本の原風景である。
    ところどころで、自分にも共鳴できる面もある。全て合理的で、居心地の良い現在が、必ずしも良いわけでもない気がします。

  • 「椎名誠」の私小説『家族のあしあと』を読みました。

    『南洋犬座―100絵100話』に続き、「椎名誠」作品です。

    -----story-------------
    父がいた、母がいた、きょうだいがいた――。
    「シーナ少年」が海辺の町で過ごした黄金の日々。
    『岳物語』前史、謎多き大家族の物語。
    累計470万部突破の私小説シリーズ、感動の最新作!

    家族ほどはかなく脆く変動する「あつまり」はない――。
    海辺の町へと移り住み、大家族とともに過ごした幸福な日々は、「家のヒミツ」と背中合わせなのだった。
    若々しい母の面影、叔父との愉快な出来事、兄・姉・弟に対する複雑な思い、そして父との永遠の別れ…。
    戦後日本の風景を、感受性豊かな少年の成長を通して描く、豊饒な私小説世界。
    -----------------------

    「椎名誠」が、雑誌『すばる』の2015年(平成27年)4月号から2017年(平成29年)2月号までに連載していた私小説『家族がみんなで笑った日』に、書下ろしの『もうじき夏がくる』を加えた作品です、、、

    『岳物語』の前史にあたる、「椎名誠」の少年時代を描いた作品です。

     ■むじな月
     ■長椅子事件
     ■小さな山と浅い海
     ■小学生もつらいよ
     ■トロッコ大作戦
     ■ドバドバソース
     ■おっさんのタカラモノ
     ■蟹をたべなさい
     ■シャックリの大男
     ■かいちゅうじるこ
     ■家のヒミツ
     ■大波小波
     ■もうじき夏がくる
     ■あとがき

    複雑な家庭事情や親戚関係… 世田谷の石垣のある豪邸から、千葉の山村・酒々井(しすい)、海辺の町・埋め立て前の幕張へと移り住み、生活環境が大きく変化する中で、仲間との交流やトラブル、父の死等を経験しつつ、「シーナ少年」が成長する姿を描いた物語、、、

    「椎名誠」は、どちらかと言えば、私よりも両親の世代に近い人物なのですが、私の育った環境は中国地方の山村だったので、私の少年時代とシンクロする部分が多く、感情移入しながら読めました。

    木登りをしたり、瓦屋根の上に登ったり・そこから庭に飛び降りたり、山や川を探検したり… トロッコはなかったけど、建設現場のボートで勝手に遊んだり、町の親戚を訪ねた際の路面電車の記憶や、実家ではあり得ない丼ものやラーメンの出前等、、、

    あと、子供の頃って、関係が良くわからない親戚や、大人からは近寄るなと言われていた不思議なオジサン、オバサンもいたよなぁ… そして、何事もおおらかで、自己責任で危ない遊びもしていたような気がします。

    懐かしい少年時代を思い起こしながら、ちょっとノスタルジックな雰囲気に浸りながら愉しく読めました。

  • 10代後半から20代半ばまでの頃、ほとんどの著作をむさぼるように読んだ作家・椎名誠。椎名さんの著作にはいくつかの流れがあって、特に好きだったのが紀行ものと私小説だった。なかでも『岳物語』シリーズは、掲載誌「青春と読書」(集英社のPR誌)を定期購読して読んだほど好きな作品だった。本書はその流れを汲む作品になる。モデルは自分自身で、幼いシーナ少年と自然に満ちた千葉の風景が描かれている。

  • 椎名誠が自身の子ども時代をモデルにした「岳物語」の父親バージョン。
    主に、戦後の千葉・幕張で過ごした就学前から小学校までの誠少年の一家の物語。幕張メッセやディズニーランドができる前の海辺の町。みぼうじん会(未亡人会)があったり、金物集めのおじさんがいたり、埋め立て地造成のためのトロッコがあったり、書いておいてほしかった時代だと思う。

    「岳物語」と、それに続く孫との関りなどの一連の家族成長物語の根幹は、ここにあったのだなあ。

  • 海辺の町で暮らした椎名誠氏の少年時代のエッセイ。複雑な大家族のなかで暮らす日常やいたずら小僧たちとの日々が、「昭和」という時代の残影とともに描かれている。
    浜寺という海辺の町で少年時代を過ごしたぼくには、むかしは夏になると浜辺に掘っ立て小屋のような脱衣場を兼ねた「海の家」が林立し、海水浴に来た客たちに飲み物や軽食を提供していたという遠い過去の記憶が鮮明に蘇ってきた。

  • 椎名誠が、自身の幼少期を思い出しながらつづった一冊。

    豪快でハチャメチャで愉快な探険隊シリーズをはじめ、作者のエッセイを夢中で読んでいたのは、数十年前。独身だった当時、こんな人と結婚したい!と言ったら、職場の先輩に家族は大変よ~と言われたことを思い出す。
    今ならその意味は十分理解できるけれど、当時は奥方である渡辺一枝さんのエッセイまで読むほど憧れの存在だった。

    そして最近、新聞で椎名氏の取材記事が連載されていたのを目にし、そんな懐かしい気持ちがよみがえり本作を手に取る。
    作品としては、幼少期の記憶を思い出すがままに書き連ねているため、特にオチがあるわけでもなく、そこで終わり?というエピソードの連続で、久し振りの再会としてはいささか拍子抜け。
    仲間や家族のことは客観視しておもしろおかしく書けても、自身の曖昧な記憶を頼りに脚色もせず読み物とするのは、やはり難しいようだ。

    かつて夢中になった作家が、時を経てからもおもしろく読めるとは限らない。
    が、その昔『岳物語』が大好きだった私としては、少年だった岳くんのその後やお孫さんたちの様子は気になる。今さらながら、未読のそちらも読んでみようかな。

  • 年なのかな、結構寂寥。

  • 椎名誠さんの幼少期を描いたエッセイ。時系列は前後したりするが4-5歳頃からの自身の記憶や家族の言動などをたぐりよせながら描いたと言う。今だから書く気になれたと言う。家族全員で笑って食卓を、囲んだ時というのは思い返せば一生のうちで、そう何回もなかったのだなと回想するシーンが心に残る。家族との時間はかけがえのないものだと気づく。

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著者プロフィール

1944年生まれ。作家。1988年「犬の系譜」で吉川英治文学新人賞、1990年「アド・バード」で日本SF大賞を受賞。著書に「ごんごんと風にころがる雲をみた。」「新宿遊牧民」「屋上の黄色いテント」「わしらは怪しい雑魚釣り隊」シリーズ、「そらをみてますないてます」「国境越え」など多数。また写真集に「ONCE UPON A TIME」、映画監督作品に「白い馬」などがある。

「2012年 『水の上で火が踊る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

椎名誠の作品

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