天龍院亜希子の日記

著者 :
  • 集英社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711363

感想・レビュー・書評

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  • ラブカに感動したので他の作も。
    こちらがデビュー作なんですかね。

    どうやら作者さまは同い年のようです。
    私はこんなに書けません。

    男性の一人称視点なのだが、
    違和感なく読めるので、すごいなぁと思う
    (私も男性心理なんて分かんないけど)

    日々仕事に忙殺され
    心をすり減らしていったり、
    プライベートのできごとで浮上して
    仕事にも万能感や生きがいを感じたり、
    でもやっぱり辛いことがあって、
    何か心の支えを必要としたり。

    誰にでもよくあるようなことで、
    身近に思いつつ、
    前向きにさせてくれる
    よい作品だったと思います。

    それにしても、いまだにこんなにマタハラや
    女性による女性蔑視ってあるんだろうか。
    そりゃ職場にもよるのだろうけれど、
    私は非常に恵まれていたんだろうなぁと思う。

    そして、派遣業ってよくは知らないけど
    派遣先との面談に一人ひとりついて行ったりするもんなの?そんなに手厚いもんなの?
    って思ってしまった。

    昔の悪行をふと思い出して、
    罪悪感にさいなまれること、あるよね。
    しばらく引きずっちゃったり。
    自分では全く記憶に残っていないことを
    他の人はめっちゃ覚えてたりとか。

    付き合いのない同級生と
    偶然再会するとか
    偶然アカウントを見つけるとか
    あんまりないことかとは思うけど、
    案外世間は狭いもので
    出会えちゃったりすることもあるよね。
    それが交わるかどうかは場合によるけど、
    人との出会いって、やっぱり面白い。

    お義父さんのセリフが素敵だったな。
    希望を持てる。

    • 本ぶらさん
      こんにちは。はじめまして。

      これ、面白そうですね。
      いい本を教えてもらいました。
      こんにちは。はじめまして。

      これ、面白そうですね。
      いい本を教えてもらいました。
      2023/12/05
  • 人材派遣会社に勤める田町譲・27歳。
    ブラックな職場での長時間勤務に疲れ果て、プライベートでは彼女との仲がうまくいかない。なんとなく惰性で流れていく日常。そんな平凡な男の日々を勇気づけるのは、幼い頃に憧れていた野球選手と、長らく会っていない元同級生が書く穏やかな日常のブログだった——。

    タイトルの”天龍院亜希子の日記”はインパクトを持たせるための小道具だったのだろうか。と思わせるぐらいに亜希子の日記はあまり響いて来なかった。それ以上に、恋人の父親・馬場先生との出会いが、主人公・田町を奮い立たせることになったと感じた。堕ちたヒーロー・野球選手正岡のエピソードで巧く表現されたと思う。最初、十数ペ-ジぐらいの同僚とかわされる会話になかなかついていけなかったが、元プロ野球選手・正岡の薬物スキャンダルのニュースが出て来て、実際に思い当たる節のある事件で親近感を持てた。
    田町は成り行きでお見舞いに行った恋人のお父さんに出会い、父親に好感を持つ。結婚する運びとなり、両家同士の顔合わせで、お父さんと田町が雑談する場面での会話に、父親の人柄が籠められていた。
    「もう正岡はダメなんですかね。返り咲けないのですかね」と、田町がこぼす。
    『するとお父さんは(元教師)年輪の多い木のような穏やかさで、俺のバカみたいな質問を真面目に見届けていた。左手を杖から離すと少しだけその体は傾いだ。「長い事教師をしているといろんな奴に出会う。薬物とか、ああなっちゃうと確かに更生は難しい。でも、話はずれるけれど、もし君が彼を信じたいなら信じてあげた方がいいんじゃないか。それが巡り巡って君のためにもなるような気がする」馬場先生は象のような眼差しをしていた。「君が彼を信じようが信じまいが正直彼には何も伝わらない。正岡が君の想いに気づくことは一生ないだろう。だけど、君は正岡を信じることで、自分が知り得ない誰かからの善意を信じることができる。自分が本当につらくてどうしようもない時に、何の証拠がなくとも、もしかしたらこの世の誰かがどこかでひそかに自分を応援してくれているかもしれないって呆れた希望を持つことができる」そういうことを信じられたら、我々は生きるのが少しは楽になるのかもしれない』
    「呆れた希望」とはあきれるほどとてつもない希望だ。そんなことあり得るはずがないと考えれば儚く消える。でも信じたら、苦境に陥った時自分を奮い立たせてくれる武器となるはず。

  • 最初は微妙かなと思って読んだけど、読み始めたらものすごくしっかりした文章だった。構成も、寓話も、成長も全てある。この中に、本当の意味で悪い人はいないのかもしれないなあ。

    人は信じるものが揺らいだとき、自分の人生の生き方もまた、揺らぐのではないだろうか。
    信じるものが揺らいで、そのなかでもあくせく生きていく。別のものにすがろうとするけど、それすらもしっかりと、人一人の思いを受け止めてくれる器は、実はない。

    最後はきれいに収束したけど、筆者の願いが反映されているのかもしれない。

    系統としては桐島部活やめるってよと同類。
    ただ、後半は筆者の独特のスタイルが良く出ていた気がするので、そっちを突き詰めたほうがいいのでは。

  • 会話シーンのテンポの良さ〜。相手の言わんとすることを察して先回りして「あ、〇〇ですか?」と言える瞬発力がさりげなく何度も出てきて羨ましい気持ちになった。
    出てくる人物がほぼ全員ちゃきちゃきしていて、主人公もぼんやりして無感覚そうな描写をされているけど実際かなりフットワークが軽い。

    何か物事が起こった時にとりあえずそれに対処しつつも文句も言う、という流れが一貫していて、それが「田町くんは博愛」という発言に集約される気がした。
    わたしは即興性が無いのでそんなにパッと対処出来ないが文句は言ってしまう人間なので、この合気道のように来たら受け流す生き方にかっこよさすら感じた。

    主人公の、来た球を打ち返していたらこんなことになりました、みたいな感じ憧れちゃいますね…。

  • 結婚しちゃって大丈夫なのか…?

  • ブラックな人材派遣会社に勤める田町は仕事も恋愛ももやもやした思いを持ちながらなんとなく過ごしている。それがあるちょっとしたきっかけで前に進む方向に向く話。タイトルは偶然見つけた昔ちょっといじめてた同級生のブログからだけど一日の終わりに更新されているのを読んでほっとする、という働きでしか出てこない。でもそういったわずかなものが日々を進む糧になっているという日常を上手く描いていると思う。彼女の父親の呆れた希望を持つ話をする所に全てが詰まっている。岡崎さんの糧を馬鹿にする人は多いと思うけどこれとても大事だ。でも最終的な読後感はいまいち合わず。

  • 付録の靴下目当てに買った雑誌に広告がありまして。

    なんとなく読みはじめました。営業マン田町の日常。流れていく日々。
    側で主人公を見守ってるような不思議な気持ちになり、夢中で読んでるうちに終わりました。

    こういうの、私は好きです。

    • aoihitoさん
      何か淡々と、でも何か日常と違うことがちょっとあって、こういう作品って世界に入り込めます。「見守る」感じ分かります(^^)
      何か淡々と、でも何か日常と違うことがちょっとあって、こういう作品って世界に入り込めます。「見守る」感じ分かります(^^)
      2018/09/23
  • BGM ココロネ / indigo la End
    やさしさって信じること気づくこと。いい小説読んだ

  • 3冊目の安壇美緒さんは、こちらがデビュー作です。

    主人公は「天龍院亜希子」ではなく、人材派遣会社に勤める田町譲、27歳。ブラックな職場での長時間勤務に疲れ果て、プライベートでは3年付き合っている彼女ともなんとなくうまくいっておらず、ただ惰性に毎日を過ごしていた。そんなある日、小学校時代の同級生・天龍院亜希子のブログを見つけ…。

    朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』の桐島以上に出番の少なかった天龍院亜希子さん。

    特に山場があるわけでもなく、でもだからといって退屈なわけでもなく、なんとなく惹き込まれて読まされてしまう、不思議な読み心地でした。

    現代のリアルな若者像を等身大に描いていて、仕事に対しても結婚に関しても、そんなんで大丈夫なの?とつい心配になってしまいます。

    日々の糧となる推しの存在って大事ですよね、残念ながら今の私にはいないなぁ…私にも「推し」欲しいなぁ。

    元・小学校の教頭先生だった彼女の父親の「呆れた希望」の話がとてもよかった。ここだけなんか文章のテンションが違っていて、きっと安壇さんが一番書きたかったことなんだろうなと。あとマサオカを信じることと亜希子のブログを読むことは、どちらもこの「呆れた希望」に通じることなのかな、と思いました。

    天龍院亜希子さん側からのお話も、読んでみたくなりました。

  • リアルとフィクションの微妙な狭間が上手く描かれていて良かったです。

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