漂砂の塔 (ひょうさのとう)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087711578

作品紹介・あらすじ

北方領土の離島で発見された、日本人の変死体。
捜査権もない、武器もない――圧倒的に不利な状況で、警視庁の潜入捜査官・石上(イシガミ)が真相を追う!
650ページ一気読み! 怒涛のエンターテインメント!!

2022年、雪と氷に閉ざされた北方領土の離島。
日中露合弁のレアアース生産会社「オロテック」で働く日本人技術者が、死体となって発見された。
凍てつく海岸に横たわる死体。何者かに抉りとられていた両目。
捜査権がなく、武器も持てない土地に送り込まれたのは、ロシア系クォーターで中国語とロシア語が堪能な警視庁の石上(イシガミ)だった。
元KGBの施設長、美貌の女医、国境警備隊の若き将校、ナイトクラブのボス……
敵か、味方か? 信じられるのは、いったい誰だ?
日中露三ヵ国の思惑が交錯し、人間たちの欲望が渦を巻く!

大沢在昌、作家生活40年目の記念碑的ミステリー巨編!!

感想・レビュー・書評

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  • 警視庁からやってきた石上刑事はたった一人で殺人事件の調査を行う。ロシア、中国、日本の3国の企業の合弁会社という時点で調査は難航しそうな予感しかしない。おまけに場所は北方領土。苦労しながら徐々に真実を探り当てていく。
    最初はロシアvs中国vs日本という構図っぽかったが、石上刑事の熱意のせいか、最終的にはみな協力的になってくる。ラストも気持ちよくて読了感も良かった。

  • 北方領土のある島で日本人の男が殺された。ただ殺されているだけでなく、島の昔話を思い出させるよう目をえぐられていた。その島には日中露の合弁会社関係の人しかいない。中国語ロシア語を話せる警視庁の石神(ロシア系クォーター)は、東京でロシア人マフィアに狙われ、雲隠れを兼ねて、現地日本人を安心させるために、犯人を探すためにとその島に単身捜査に入る。この島で絶対的な存在である元KGBの施設長、美人で怪しげな女医、中国側の管理者、ナイトクラブのボス、誰もが怪しく、誰もが何かを隠している。600ページ超の大作、でもあまり派手さはなく、丁寧に書き進めたって感じ。ハードボイルドあり、長いな〜と思いながらもしっかり世界に入れました。孤立無援の石神、3国の利権とともにその人間関係、どのページも気が抜けない。特に最後の方は、息も尽かさず。石神は軟弱そうだけれど、肝が座ってていいね。

  • 北方領土で日中露の合弁会社の社員が殺される。
    異様な死体から、何故殺されたかの捜査が始まる。
    なんの権限も武器も持たない刑事が少しずつ、秘密とされている事に近づき、この島の正体が現れてくる。
    殺し屋あり、マフィアあり。
    美人女医は敵か味方か。犯人は?
    大澤さんらしく、最後の展開にはドキドキさせられる。
    大作で読み応えたっぷり!面白かった。

  • 650ページ、ボリュームはありましたが、大沢在昌に外れはありませんでした。大まかなストーリーは何と無く想像出来ていましたが、最後まで充分面白かったです。シリーズ化はあるのでしょうか。

  • こんなにタブーに満ちた素材をこんなふうに料理することで、こうもエンタメになるのかと、そのことにまず引き込まれた。

    例えば、原子力発電が核兵器転用を含むものだということは、暗黙の了解事項だけれど、日本ではそこに触れられることはない。学校では平和利用だという側面だけを教えられ、他の面を持つことを示唆されることさえない。気づかないままに教えている社会科教員だって少なからずいる。何しろ学習指導要領に則った授業をすることが命題で、そこをクリアするだけでもブラックな労働状況になっているから。
    もっとずっと清濁あわせのむ存在であったほうがいいのに。

    この本には、大きな清濁も、小さな清濁も両方たっぷり入ってる。そこがとても好き。
    紙一重のなにかで、サムライな行動になっちゃうあたりとか、逃げたいやだやだと思いながら、でもやらずにはいられないところとか。
    いいなぁ。この主人公いいなぁ。

    そういえば、この人の本は、初めて読みます。
    もっと読む!!

    『<ヴィジュアル版>ラルース 地図で見る国際関係: 現代の地政学』と合わせて読むと、面白さ倍増。

  • 648ページは長すぎると閉口していたが中だるみなくスッと読み終わった。さすがの作家さんでした。
    北方領土と言われる島々にもあまり知られていない歴史があるようだ。アイヌの人々が暮らしていたころの物語は読んだ覚えがあるが、近い過去にもいろいろあったのだろうなと思えた。

  • 星4つにしているが、本当は星3.5といったところ。

    北方領土の歯舞群島にある〈春勇留(はるゆり)島〉で日本人が刺殺され両目を抉られるという事件が起きる。
    ロシア・中国・日本の合弁会社の関係者とロシアの国境警備隊しかいないその島で、事件を調べるために潜入捜査員でロシア人を祖母に持つ石上が派遣される。
    捜査権も逮捕権もない、殺人事件捜査の経験もない、鑑識の知識もない石上はどこまで真実に迫れるのか。


    設定から「海と月の迷路」みたいな感じかなと思って読んでいたが、これはかなりエンタメ寄り。
    北方領土は日本の領土、とは言いつつ実質はロシアの支配下にあり日本人の警察官と言っても公権は何もない、ロシアと中国と日本がそれぞれの国益利益思惑がせめぎ合い駆け引きし合う中であがきながら地道に捜査をするのかと思いきや、合弁会社の最高責任者は協力的だし、中国人も日本人もロシア人も反抗的だったり嘘を吐いていそうな人間はいるものの割とサクサクと色んな情報を教えてくれる。

    最初は手口からロシアンマフィアか中国マフィアが絡んでいるのかと思いきや、九十年前に当時この島に住んでいた日本人が多数殺害され目を抉られていたという事件があったらしいことがわかり、金田一シリーズのような様相を帯びてくる。
    ところがそこにやはりロシアらしい様々な怪しい組織やら石上と因縁のあるマフィアも現れて危険がいっぱいな展開へ。
    この島の歴史と秘密とサスペンスとが絡まり、テンポよく読めていった。

    ちょっと気になったのは、石上が潜入捜査員としての経験が長い割になんでも素直に聞くしなんでも素直に喋るところ。こういう島なのだから電話の盗聴やメールのハッキングや個室内のモニタリングやら気にしなくて良いのだろうか、と読んでいるこちらがハラハラした。更に簡単に美人女医さんと仲良くなってしまうし。これは読者へのサービスシーンなのかも知れないけれど、素人ながらもう少し慎重になるべきではないかと思ってしまった。
    終盤からは大沢さんお得意のドンパチ。石上は事件の真
    相にたどり着き、無事に島を脱出出来るのか。

    本の厚みの割にはサクサク読めるし、中身の割には爽快感もあるのでエンタメ作品としては良い。
    ちなみに舞台になっている島の名前も合弁会社も架空のことだそうだ。

  • 軍艦島とか北方領土とか、最近はクローズドサークルでの作品が多いような。

    安定して面白い。中期の新宿鮫やのような爆発的なエネルギーを感じる面白さや佐久間シリーズのような痺れる緊張感の面白さはさすがにないけれど、一定以上のクオリティの面白さ。

    タチアナ女医の魅力はあまり伝わらないけれど、主人公の石上は魅力的だ。今のハードボイルドだと、ロシアと中国は出さないとなかなか書きにくいんだろうなあ。
    ただまあ、盛り上がりに欠けるといえば欠ける。最後は銃撃戦なのだが、緊迫感とかそういうものはない。ミステリーもとしてもちょっといまいちかなあ、という印象。
    だけどね、いいんですよ。面白いから

  • 11月-8。3.5点。
    歯舞諸島の小さな島で、ロシア・中国・日本合弁でレアアース採掘。
    現場で日本人が殺害される。警視庁の潜入捜査官が、社員のふりをして捜査に乗り出す。

    600頁超だが、一気に読めた。流石の筆力。
    大沢節炸裂という感じ。まあまあだった。

  • 648の大作。中盤まではスリリングな展開に手に汗握ったが、後半はやや間延びした。ある意味密室のため犯人が限られてしまっていたのが原因か。贅沢言えばもう一波乱あっても良かった。

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著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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