著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087712728

感想・レビュー・書評

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  • ある日、島を大津波が襲う。
    家族が眠ってから美花と落ち合う約束をしていた中学生の伸之は偶然にも難を逃れることができた。
    島で生き残ったのは、年下の輔と大人3人を合わせ、6人だけ。

    年月は流れ、信之は家庭を持ち平穏な生活を送っている。島で起こった事件を知る輔が信之の前に出現し、信之の生活に陰りが・・・。
    信之は今でも美花のことを思い、輔は信之に対してゆがんだ感情を抱いている。信之の妻も満たされない思いを抱いて生きていて、なぜだか幸せや平穏、安心とは逆の方へ流されていく。


    読んでいると、2年前の大震災を思い出し肌が粟立つが、あとがきによると、2006年に連載が始まったとあった。

    普段、しをんさんの直球勝負の小説が大好きな私としては、読むのが辛い話だった。東野圭吾の『白夜行』を思い出した。(あれ、続編のほうだったかな?)
    天災。犯罪。悪意のある女。振り回される男たち。

    一見、しあわせそうにしていても、人は脆く儚い。
    人々の暮らしを根底からひっくり返す災害に見舞われたら、心を閉ざしたりやけを起こしたくなる人もいたって不思議ではない。けれど、あまりに、希望のない毎日を送る登場人物たちがどこかで少しでも楽になってほしいと思うのに、そうはなりそうもない。

    タイトルの「光」を見いだせなかった。
    最後に信之の妻が持つ覚悟がそれだったか・・・?

  • えっ?私間違った?と表紙を確認。
    確かに三浦しをんとなっている。
    え?そうなの?
    そういうことなの?
    と、驚きは隠せない。
    どこかで、いつものしをん氏が登場しないかと
    思いながら読んだ。
    驚いた、ビックリした。

    それだけで、作品としては成功な気がする。

    何が暴力で何が非暴力か?
    どんな形での暴力でも、それは哀しい。

    誰の心も寂しくする。

  • 暴力、歪み、そういうものについて、桜庭一樹「私の男」よりずっとうまく書き込まれていると感じた。しをんはやっぱりそれなりに実力を持った直木賞作家で、でもやっぱり直木賞作家で。いやでもうまい。しをんのような大衆小説の上手さと純文学の真髄とをうまく語り得る言葉を探してしまう。人間の歪みはどこからくるのか、わたしたちが生きていくうえでふたをする閉塞感とか、もうどこにも逃げられないかもしれないとか、目に見えるわかりやすい暴力ではないけれど確かに暴力だったりするものとか、そういう日常を生きるうえでちょっとずつ見える影を、わかりやすく劇的にして、エンタメにして、世の中の多くのひとはこういうものをたのしく読んで、またがんばってふつうに生きてゆく。きちんと、それなりに。

  • 突然島を襲った大津波。一瞬で島民の命は喪われた。一夜明け、【光】が照らし出したのは、何も語らない死体ばかりの島。
    命拾いしたのは、民宿の娘で島で一番美しい美花とその恋人の信之。信之にまとわりつく輔。灯台守のじいさん。舟を出していた輔の父親と民宿に泊まっていた中年男。

    たくさんの命とともに流れ去った日常、覚えたての快楽・・・。絶望の中、美花を守るために信之はある罪を背負うことになるのだが・・・。

    時が経ち、家庭を持ち【良き夫】を演じる信之の前に、輔が現れたことから平凡な日々は歪み始めて・・・。

    天災・美女・献身・犯罪というテーマの類似性、東野圭吾の『白夜行』に似すぎている気が。。心理描写はしをんちゃんお得意だけど、ミステリ要素なら東野さんの方が上手じゃないかね。。松本清張さんもこの種のテーマ多いですが。。ちょっと『氷点』ぽい要素もありましたね。

  • この人の小説は、流れの激しい川のようだ。島にきた大津波で、三人の子供と、三人の大人は奇跡的に助かった。山の上から見える海に飲まれた自分たちの村には、光などどこにもない。家族を失い、バラバラに大人になった三人に、希望の光はいつさしはじめるのだろうか。彼らはいずれも不幸せで、そして愛が歪んでいる。父親に虐待されていた輔は、兄のように慕っていた信之に異常な執着心を見せる。そして信之は、美しい顔を持ち、島にいる間関係を持ち続けた美花の全てを愛す。ただ美花は…誰でもいいのだ。彼らの思いはすれ違い、相手に真意を伝える術もなく、醜く歪み、そして嫌な結末を迎える。作者の作品でも最も暗いと聞いた本作だが、読みはじめからとても嫌な予感が漂っていた。その空気は物語の結末周辺まで漂い、彼らを飲み干していった。彼らには絶望しかないように思えるがそうではなく、それぞれの光があった。輔は全てを終わらせてほしかった。信之は美花の願いならなんだって聞き届けたかった。美花は誰にでもいいから愛され、幸せに見える生活を送れるならばそれでいい。希望の光の形は、三人にそれぞれの形で叶ったのだ。こちらから見て、悲しみにしか溢れていない光でも。

  • 何なんだろうか。

    自分では光を照らしているつもりなのに、
    光を当てられた相手は、その光が作り出す闇に捉えられている。

    あまりに強い光は煩わしい。

    結局、いくら寄り添っても、人の心はその人にしか分からない。
    信用できる相手に自分の心のうちを伝えたとしても、心に堆積する汚泥は伝えるのを躊躇してしまう。

    澄んだ上積みを見せ、相手を納得させる。
    相手がその部分を信じて行動すると、汚いことを見せびらかし、私の事を理解していないと責める。

    自分じゃどうにもできない汚さをもっているのに、
    理解された振りをされるのも嫌な癖に、知ってほしい、認めてほしいと願う。

    人は結局、自分勝手にしか生きれないのかもしれない。

  • 図書館で本屋大賞ノミネート作品と紹介されていたので、借りてみましたが、気持ちが重くなる作品でした。
    特に今、この時期に紹介すべきはないなでは、と感じます。

  • 重い。三浦しをんさんの別の一面を見てしまったような。津波が島を襲わなかったら、3人の子供達
    はどんな生活を送っただろうか。父親に殺されたかも知れないし、島で穏やかに過ごせたかもしれない。人はいつも何かに怯えて生きている。暴力、他人からの評価、昔の消したい思い出。

  • 暴力には暴力で返すしかないっていう考え方は間違ってる、というのは綺麗事だと思うのは私も歪んでるのかしら。実行するかしないかは別にすれば、人間は本来こんなもんじゃないかと思う。南海子の感情はすごくリアルに感じられた。

  • 三浦しをんが濡れ場を書くのは珍しいのではないか?私はそう思う。津波に襲われ生き延びた三人が成人しての再会。理不尽な暴力に耐え忍んだ輔を殴り殺した信之、信之をうまく使う美花。殺人を犯した夫を黙って一緒に暮らす南海子。光という書名とストーリーの関連は何だろう。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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