- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087712964
作品紹介・あらすじ
世界の名作、笑いのツボを新発見。
感想・レビュー・書評
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『文芸漫談』第一弾が面白かったので第二弾のこちら世界編を。相変わらずこちらもちゃんと下北沢タウンホールで実際にお客さんの前でおこなわれた漫談の文字起こし版。そして相変わらず面白くてためになる。
今回すべて既読の作品ばかりだったので、うんうん頷いたり、目からウロコだったり、さらに再読したい気持ちになりつつ読み終えました。小説と物語は実は別のものなのだけど、自分はいつもどうしても物語を見出そうとし、物語として読み解いてしまう(物語を求めてしまう)のだなと改めて気づきがありました。
※目次
〇カフカの『変身』はけっこうベタなナンセンス・コント
〇ゴーゴリの『外套・鼻』はいきなりハイパーモダン
〇カミュの『異邦人』は意外とイイ人
〇ポーの『モルグ街の殺人』は事件ではなく事故でした
〇ガルシア・マルケスの『予告された殺人の記録』は臓物小説
〇夏目漱石の『坊ちゃん』はちょっと淋しい童貞小説
〇デュラスの『愛人』にアナコンダは出てきません
〇ドストエフスキーの『地下室の手記』の主人公は空気を読みすぎ
〇魯迅『阿Q正伝』は文学史上最もプライドの高い男の話詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふたりの掛け合いが最高。名作の敷居が低くなるのに話が深い。
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9つの有名な短編小説をとりあげて、いとうと奥泉が文芸漫談と称して語り合う。取り上げている作品がいずれも短編なので、それらを読んでから本書を読むことが可能。「漫談」の内容は結構硬派だと思うのだが、彼らの楽しそうな対談を読み終えると、古典的な名作も気軽に読めばいいのだな、という気分になる。
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3/30読了
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この二人の掛け合いは面白い。
ライブで聞いてみたいし、それだけ取れば★4なのだが、いかんせん題材にしている作品が古い。
リアルタイムで批評するのは生々しすぎて難しいとは思うが、最近の作品についても聞いてみたい。 -
大分前に読んだ。とにかく、著者二人の視点が面白い。肩肘張らずに純文学を読み解くのを楽しんでいる。この本に紹介されてる本は読みたくなる。そして、このLIVE行ってみたい。
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先日ライブを初めて聴き、その後こちらを読んでいます。
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彼ら二人の『文芸漫談』が面白かったので、世界文学の名作に焦点を当てたこちらの本も読んでみました。
文学論というより、作品論。
自分が読んだことがある作品をテーマにした回は、前作に比べてわかりやすいまとまりとなっています。
今回は、奥泉氏のフルートの話はあんまり出てきません。
ほかに語ることがたくさんあるためでしょうか。
毎回一作を採り上げ、二人で丁寧に物語の情景を追っていきます。
彼らと一緒にテクストを読み解いていく感覚で、読み飛ばした文中箇所や、忘れていた情景を思い出せるのがいいですね。
再読感覚を味わえます。
デュパンとホームズの違いは、彼らというより語り手の進化だという見かたが、新鮮でした。
デュパンの「私」は自然体ですが、ワトソンは大げさなリアクションをとる、太鼓持ち的役割だとのこと。
彼の存在が、主人公ホームズの神格化に繋がったそうです。
デュラスの『ラマン』は、仏文の授業でテキストとして使ったため、自分だけで読むと、つい文法や文体、構造面に注目する、そっけない読み方をしてしまいますが、仏文専門家ではない文章通が読むとこうなるんだと、彼らの見方を新鮮に思いました。
小気味よく、嫌味にならない程度に笑いのネタにしているところがいいです。
文学をきちんと把握していないと、遊びを持たせることはできないため、その余裕に脱帽します。
『坊ちゃん』は、損ばかりしている人間の物語と聞いて、えっと驚きました。
確かに、威勢の良さ、テンポの速さに押されるように読みましたが、考えてみたら成功物語ではなかったですね。
『異邦人』のムルソーは、行動の根拠がわからない、どこか破たんしている謎の人物だと思っていましたが、きちんと読んでいくと、人の話にちゃんと耳を傾けるいい人という設定になっていました。
これは、読みなおさなくてはなりません。
『予告された殺人の記録』は、なんだか登場人物が多すぎるし、主人公は常にフルネームで記述されるため、名前のオンパレードにクラクラしましたが、奥泉氏作成による主人公相関図と共に解説されたため、図示されてわかりやすくなっていました。
「臓物小説」という表現にはびっくり。
読んだ時は、話の流れを追うのに必死でしたが、ピックアップされた該当箇所を読むと、たしかに臓器の描写が突出した作品だと分かりました。
そして、自分が読んだ時には作品のすごさが特にわかりませんでしたが、この二人の解説を聞いて、たしかにノーベル賞をもらうべき凄腕の作家の手による大胆で実験的なものだともわかりました。
自分が気づかなかった小説の読み解き方を教えてもらえるのは、楽しいものです。
文中、さらりといとう氏がウツ病治療をしていたことも語られていました。
ドストエフスキーの作品から、彼がギャンブル好きだということを決定事項としている点にもビックリしました。
『阿Q正伝』は、英語が入ることで、なんとなく得体のしれない気味悪さを感じて、読んだことがありませんでしたが、55ページほどのかなりの短編だとのこと。
それにしても、彼らによる解説を聞くと、なかなかの大作に思えてくるのが不思議です。
彼らの話を聞いて、読み直しのよさや精読の魅力が伝わってきました。
下北沢タウンホールで数年行っているという文芸漫談は、打ち合わせも台本も一切なく、全てアドリブで行っているとのこと。
すごいですね。二人の度量と引き出しの多さに圧倒されます。
とてもおもしろそうなので、私も今度一度、観覧に行ってみようかしら。 -
阿Q正伝が漫談に近いという事がわかった事が、一番の収穫。ドフトエフスキーは変人だという事も判った。