宵山万華鏡

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713039

感想・レビュー・書評

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  • 初めて宵山を見た2013年夏。実際に見た宵山は、勇壮なわけではないのですが、ものすごい喧噪と狂騒を感じさせる、とても強烈な「熱気」でした。

    「夜は短し歩けよ乙女」ですっかり魅了された作家である森見登美彦氏が、その宵山をタイトルに入れた本品を、このタイミングで読んだというのは、運命という言葉を好かないワシであっても、ちょっと、巡り合わせみたいなものを感じます。

    作品自体は、一言で言うなら不思議です。でも、あのお祭りのもつ空気の中でなら、こんな不思議な物語がその裏で、その隣で、その中で紡がれていたところで、不思議ではないかもしれません。宵山を見て、本作を読むと、それがしっくりと来るから不思議です。

    とまぁ、「不思議」の大安売りみたいな段落になってしまいましたが、その他にも、オムニバス形式のような視点切り替えの構成が面白かったです。ただ、物語がフワッとしたまま終わってしまった感はあり、そこには良し悪し意見が分かれそうです。

  • 現実と幻想の間で、複数の物語が少しずつリンクしながら、しかし、パラレルワールドのように進みます。
    子供のころは単純に楽しいお祭りも、少し冷静に見てみれば、一種異様な盛り上がりが感じられ、提灯の灯りなど異世界、非現実の世界への入り口のようにも感じられます。
    色々な表情を見せる万華鏡のように、様々な主人公の視点から宵山の物語が作られる。
    本作でも不思議な世界に迷い込んでしまったように感じられた。
    今、自分が生きている世界は本当の世界であろうか、明日は来るのであろうか。

  • うん。これ好きだな。
    内容も好きだし、こういう凝った構造の話は好きだ!
    シーンによってはとても絵画的で、なんだか絵にしたいようだった。実際描こうとしたら技量不足でうまくいかなそうだけれど。。

    シリアスファンタジーかと思いきや、おちゃらけ青春もの(?)、かと思いきやシリアスファンタジー。
    最後もうちょっとしっかり風呂敷畳んでくれても良かった気はするけど、これはこれでありだな。

    個人的には、びっくり大作戦の宵山金魚の章が一番楽しくて好きでした。
    「太陽の塔」の高藪さんが出てきたのも素敵だった。
    あぁ、高藪さん…良い人なのに。

    森見作品、好きかも知んない。
    一通り読んでみよ。

  • 京都祇園祭宵山を舞台とした6話収録の短編集。
    でも著者お得意のリンクが仕掛けられて、
    聞いたことのある名前がポンポン違うお話にも登場してにんまり。
    どうしようもない阿呆な話や、ちょっと不思議なミステリーや、
    背中がぞくっとくる話もあり、色々なジャンルを楽しめますが、
    全体的に言えばファンタジーなのかな。

    日本三大祭に称される祇園祭の宵山。
    読み終えてから検索してみて驚きました。凄い人人人…・
    こりゃ姉妹も迷子になるわな(笑)

    というわけで、バレエ教室の帰りにはぐれてしまう妹と姉のそれぞれの話や、
    宵山を堪能すべくやってくる友人に、”ニセ宵山”を演出する話や、
    阿呆大学生の青春物語を取り入れた、”ニセ宵山”の舞台裏話や、
    ずっと宵山の1日を繰り返す人のお話などなど、
    個人的には全部印象深く、全部面白く読みました。
    細かなツッコミどころは多々ありますが、
    それを差し引いても恐るべし森見登美彦。
    阿呆とユーモア話以外にもぞくっとする話、なかなかのものですな。

    何よりも読み終えた時に、京都に行きたくなります。
    物語と同じところに行きたくなるって言うのは、
    結構な褒め言葉ではないでしょうか。

  • 宵山を舞台にしたファンタジー。
    ただ少し作者の自己満足で終わってる気がします。

    1つ1つの話ごとに、主人公を変えながら、物語を進めているのですが、
    逆にそれが、複雑に難しくしていると思います。

  • そもそも生まれてこの方5回くらいしか北海道を出た事のない(内2回は修学旅行)私は、表題の「宵山」の意味が解らなんだ。そして祇園祭と葵祭の区別すらつかなんだ。

    ……北海道から出た事ないとか関係ないですね。
    京都府民に頭からお茶漬けをかけられても文句は言えまい。
    いやその前に高校の時の古典の先生から鉄拳を喰らうかもしれぬ。

    あれでしょ。
    葵祭は上賀茂神社・下賀茂神社両社の大祭。
    そして祇園会は八坂神社の祭礼で、夏の疫病除けなんですよね?
    で、祇園会の前夜祭を「宵山」っていうんですよね?
    元々は午頭天王の霊を鎮める御霊会が起源、ってすごいスケールですよね。平安時代ですものね。

    そんな超伝統行事を舞台に、登場人物達が交錯する『宵山万華鏡』。
     
    正直、私にはホラーに等しかったです。

    やれ提灯だ行灯だ、出店の焼き鳥だ林檎飴だベビーカステラだ、って視覚的・嗅覚的な描写が非常に丹念で、実際に宵山に足を踏み入れた事はないけれど、実際に雑踏の中でもみくちゃにされているような息苦しさが伝わって来るんですね。で、幼少の頃に行ったお祭の記憶が芋蔓式に蘇る。

    私は祭の喧騒の中で迷子になる事にかけてはプロ級、と自負してやまない者ですが、30過ぎた今でもはっきりと覚えてますもん。幼少期の迷子体験を。
    つないでいた手をほんの一瞬離しただけなのに煙のように消えている母、とか。父だと思って見失わないように追っていた背中が他人、とか。もう、思い出しただけで身震い。

    行ったきり戻って来られない。
    この怒涛のような恐怖感&不安感を最初に叩き込まれるのって、お祭の場だと思うんですよね。 だからどんなに提灯が灯っても、林檎飴がキラキラしても、たこ焼きが香ばしくても、やっぱりお祭って怖い。表面上は物凄く楽しそうなだけに、フラフラ吸い寄せられてしまうのが怖い。
     
    「宵山姉妹」「宵山万華鏡」
    姉とはぐれてしまって心細い妹、ほんと見てらんなかったです。
    でも姉ちゃんは大冒険で意外と楽しそう。風船より妹の心配しなさい!姉として!
    特に「姉妹」の方は森見ギャグとかもあんまりなくて、さながら長野まゆみの如しであった。

    「宵山金魚」
    森見作品に欠かせない「変な友人」、ここに出てました。そしてこれ以降、ますます変になります。
    奥州斎川孫太郎虫?嘘かと思ってたよ。で、ネットで調べたら実在していたよ。

    「宵山劇場」
    『夜は短し歩けよ乙女』劇中劇、「偏屈王」の裏方2人がまさかの登場。
    なんか、普通にいい話なんですけど。芝居の小道具作ってる時とかって一番楽しいよね!

    「宵山回廊」「宵山迷宮」
    この恐ろしき「宵山」の根源に迫る2作。ひたすらに切ない。
    あ、『四畳半神話体系』みたいな日常無限ループネタも、相当怖いですよね。

    読後感はまさに、祭の後。
    楽しかったんだけど、怖かったんだけど、早く帰りたいんだけど、でももうちょっと遊んでいたいんだけど、あ、もうおしまい?少し寂しい。そんな感じでした。

  • 表紙の絵が、森見氏の頭の中って感じw
    きっとこんなこと考えてるんだろうな~って。

    京都、宵山に関する短編集です。
    皆少しずつリンクしています。
    短編集なのに、さっき読んだような・・・デジャヴのような・・・・
    この感覚は、『四畳半神話体系』に似てる感じ。

    宵山劇場では、
    乙川の壮大な釣り(騙し)行為に笑ってしまいましたが、
    段々とファンタジー要素が強くなってきて、
    最後の宵山万華鏡で最初に戻る感じです。
    この不思議な感覚は森見ファンじゃなくても、クセになると思う。

    それにしても、表紙絵がタマラナイw

  • 爽やかな読後感。

    発売当初,綺麗なイラストの装丁に惹かれたものの,読めずにやっと今。

    ネタバレ無しで読んだので,初めは世界観についていくのが大変だった。
    読み進めるうちに感覚を理解し追い付いた感じ。
    何度か振り替えって伏線を確認した。

    こういう「短編が実は繋がっている」系がわりと好きなので,ワクワクしながら読めた。
    けど,もっと繋がれるところ繋げてもよかったんじゃないかなぁとも。ほんのちょっぴり物足りない。

    けど,読んでいると目の前に情景がぶわっと広がってきて魅力的な景色を見せてくるので,宵山を訪れてみたくなった。

    イラストそのままに原作そのままに,アニメ化希望。

  • きっとアニメ−ション化したらきれい

  • 京都祇園祭りが舞台。

    同じ日に起きた出来事を様々な視点から描いた、ミステリーな、ファンタジーでもある作品。森見さん得意のドタバタ劇や、細かいところを執拗に突いてくるところが個人的に大好き。
    美術監督の山田川が打ち合わせの際に、高藪先輩に「奥州斉川孫太郎虫」を食べさせることになる場面は、特に笑えた。「オレは虫なんか食えねえよ・・」心優しい先輩の愚痴を簡単に退け、明るい顔になる山田川、それに伴い泣きそうになる心優しい高藪先輩のくだりは、もう最高!!

    また、『夜は短し歩けよ乙女』の作品とも関連性もあり、森見ファンには堪らない1作品でした。

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著者プロフィール

1979年、奈良県生まれ。京都大学大学院農学研究科修士課程修了。2003年『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。07年『夜は短し歩けよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。同作品は、本屋大賞2位にも選ばれる。著書に『きつねのはなし』『有頂天家族』など。

「2022年 『四畳半タイムマシンブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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