太陽のパスタ、豆のスープ

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713329

感想・レビュー・書評

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  • 「出来るだけ選んでいく。こうありたいと願うほうへ。」それが文字になって記されているのが、ドリフターズ・リスト。
    そして、「こうありたいと願うことこそ私をつくっていく。」その橋渡しの役目を担うドリフターズ・リスト。

    婚約者の譲に突然婚約破棄され失意のどん底にいたあすわ(明日羽)に、叔母のロッカ(六花)がやりたいこと、楽しそうなこと、ほしいものを「あすわの、明日へのリスト」に全部書き出すことを勧める。
    このリストは『ドリフターズ・リスト』と言う。溺れるものはワラをも掴む…溺れていたあすわの場合、掴んだのはワラではなくこのリストであった。

    一.食べたいものを好きなだけ食べる、
    二.髪を切る、
    三.ひっこし、
    四.おみこし、
    五.たまのこし

    このリストにあげた「たまのこし」は、譲との結婚よりを超える結婚への執着心のように感じる。
    そして、リストはすぐに第二弾として、更新される。

    一.きれいになる(髪を切る、エステに行く、服を買いまくる、化粧品を揃える)
    二.鍋を買う
    三.おみこし
    四.玉の輿

    まずは髪を切ったあすは。髪を切りに幼馴染みの京の待つ美容院に迎う電車の中で、顔を上げていた。暗い窓に映る自分の顔を見て、「今私はちゃんと顔をあげている」と気付いた。
    「顔を上げて、上を向いていよう。それだけで気持ちを鼓舞することができる。」これもリストの成果であろうと思う。会社では髪をきったことも指摘をうけず、気軽に会社で話題にしてもらえないような痛々しい存在になったと、思い込む。それでもこの短い髪で堂々と前を向いていようという前向きな気持ちにかわっている。
    また、エステの帰り道、きれいになるとはどういうことかを考える。「はっきりしたものが見えているときは、気づかない。はっきりしているように見えるものこそ疑ったほうがいい。化粧をしたらきれいになれるか、高い服を着ればきれいになれるのか。そして、そういうきれいを私はほしいのか。うん、とうなずいてしまいたい私を引きとめる私がここにいる。こんな、誰でも思いつくような手軽な答できれいになろうなんて、十把一絡げのきれいにしか近づけないだろう。もっと、質問をしよう。ちゃんと、自分を知ろう。」と、少しずつ意識の変化も生まれてくる。この考えがとても素直で、刺激を受ける。

    こうしてドリフターズ・リストに「こうありたい自分」を書いて実行していくことで、今までの自分を見つめ直すことになるのだ。
    失恋から立ち直っていくためにリストに書き留めたひとつひとつを「受け入れる」、「実行する」。単純なとこであるが、それにより少しずつ気持ちが変化していく。そんなあすはの心の変化を感じる場面、場面は、あすはの心と私の心がリンクしたように感じた。

    そして、またリストが更新される。
    五.やりたいことをやる
    六.ぱーっと旅行する
    七.新しいことをする

    そして、最後にキーワードが加わる。

    八.豆

    どんどん、どんどん更新されていくリスト。サルヴァトーレの店長・桜井恵からリストは不可能リストだと言われつつも、その指摘から自分の弱さを見つめなおす。そうして、最終的には「自分を探したって始まらない。私には何にもないんだから。探すんじゃなくて、新しく付け加えるのだ。そうして、なりたい自分になる」というところまでたどり着く。『あすは、ばんざーいだ!』

    ともすれば私なんて…と、他人と比較して、自分を卑下しがちであるが、そうではなくてこうありたい、こんな自分でいたいと願うことが、人生を過ごすために重要であると教えてくれる。前向き人生のための必要なエッセンスが散りばめられている一冊であった。

    こんな気持ちで毎日を過ごしていきたいと思う。

    追伸: タイトルの太陽のパスタは、本作を読むと「え〜、ここにフォーカスするの?」と、思ってしまうが(太陽のパスタではなく、太陽風のパスタだった…)、だからこそその素朴さがかえって新鮮なる。豆のスープって、どうして宮下奈都さんの作品には豆がよく出てくるのだろうか?

  • 結婚目前に婚約破棄された、あすわ。
    失意のどん底のあすわに叔母のロッカさんは「やりたいことや、楽しそうなこと、ほしいもの、全部書き出した明日へのリスト」を作ってごらんと言う。
    リストを作り、一つずつ消していこうとしたが、何をやっても虚しさが残るだけ。
    別の人に「リストなんて作るもんじゃない」と言われればまたフラフラしてしまう。
    そんな時、会社の同僚の郁ちゃんが休みの日に打ち込んでいるものを知る。それは“豆“。
    やりたいことリストも作れない自分に“豆“が見つけられるか?自分と郁ちゃんとの違いって何だろう?
    足掻いても足掻いてもなかなか“豆“は見つけられない。読んでいるこっちも、もうそろそろお話的に見つかってもいいんじゃないか?なんてイライラしてくるくらい(笑)
    でも、これがリアル!
    “豆“なんてそうそう見つけられない。あすわだけじゃない、みんなそうだと思う。
    「あとから思えばあれが豆だったという出来事も、この一週間に起きているのかもしれない。それを活かせるかどうか、気づかずにやり過ごしてしまうかどうかは私自身にかかっている」
    それに気づいたあすわは、もう“豆“を半分手にしかけているんじゃないかと思う。
    どこまでもリアルでとてもいいお話だった。

  • 久しぶりの宮下奈都さん。彼女の著作はほのぼのと幸せな気持ちになれる信頼感がある。本作は、どことなく群ようこさんの「れんげ荘」シリーズや「パンとスープとネコ日和」シリーズの雰囲気に似ている気がする。

    主人公の明日羽にすごく共感できた。歳もほぼ同じ。結婚が破談になり初めて実家を出た明日羽が日常の料理や洗濯といったことの大変さに気付いていくところや、自分にとっての「豆」は何なのか見つけられずに「このままでいいのかな」と焦る気持ち、分かる分かる。私も結婚するまで実家暮らしで、全て母に任せきりだった・・・汗 同時にそうした「毎日」に関わることに時間をかけることが、生きている実感や喜びを得るということにも最近気付いた。そんな今の自分の気分にぴったりな本だった。

    ・がんばれるときに、がんばれる人が、がんばればいいんだと思うよ
    ・まず自分のことをかわいく思えなかったら、周りの人を愛しく感じることもできないんじゃないかしら
    ・ひらめきがなくても、じわじわわかっていけばいいんだよ
    ・私が選ぶもので私はつくられる
    ・できるだけ選んでいく。こうありたいと願うほうへ。
    ・そこにあると思うだけで私に力をくれるものがある

  • 婚約破棄をきっかけに「自分のために」生きていく女性の話。力をもらった。

    女性のひとは、もちろん全員じゃないけれど、結婚や出産が人生の大事な節目だと考えていると思う。私もそのひとりだ。
    パートナーを得て、ともに生きて、支え合う。
    それはとても素敵な人生だけれど、それありきになってはいけない。
    突然ひとりで生きていかなくてはならない状況になっても、だいじょうぶな状態にしておくことが大切なのだなと思った。

    ドリフターズリスト。
    いま、私が作成するとしたら、まず何を書こう、と考えた。
    「とりあえずぱーっとお金を使って、おいしいものが食べたい」とまず思い浮かんだ。
    この本に沿うとすると、だめだめな内容と書き方である。
    はっきりと明確に、正しい書き方で書けるような生き方をしたい。
    やりたいことを、ちゃんとやりきれる根性もほしい。ずっと持ち続ける心も。

    身振りや肩書きなんて気にしなくていい。この空の下にはたくさんの、いろんな人がいる。20代はみんな焦るもの。
    そう思うと私も気持ちが楽になった。

    毎日料理と向き合うこと。その心を持つこと。
    そして人生のどん底にいるときこそ、美味しいものを食べることが必要なのだ。

  • 2歳の娘が台所で鍋に耳をかたむけている。
    「おとうちゃん、なんかぷつぷつ言いようよぉ」
    研いだ米が水を吸う音を聞いているのだ。

    この音に最初に気がついたのは妻だ。
    それから僕と娘を台所に呼んで音を聞かせてくれた。
    娘はこれが気に入ったらしく、米を研ぐたびに「ぷつぷつ」をせがむようになった。

    冬の寒い時期は、春夏よりも米の吸水に時間がかかる。
    聞き比べたわけではないが、ゆっくりしっかり吸い上げるので微かに音が聞こえるのかもしれない。些細なことだが待っている時間も楽しい。

    いかに自分が日常の些細なことではあるが大切なことを疎かにしているかに気づかされる。
    悪気はないのに知らぬ間に他人を傷つけている。
    日々の小さな齟齬が降り積もって、いつの間にか取り返しのつかないことになっている。
    毎日を丁寧に暮らすということは、人の心の機微にも繋がることなのだろう。
    主人公のあすわにもそういう部分はあったのかもしれない。
    なんて、男の立場から『譲さん』にも同情してみる。

    それにしても、婚約破棄された後でも元恋人を「彼」でも呼び捨てでもなく『譲さん』と呼ぶ、あすわの心根の優しさ。
    そして登場人物全員がチャーミング。
    それは例えば、ある種のキーワードで一括りにしてしまいがちな『京ちゃん』という人物を一人の人格として普通に描く、作者宮下奈都さんの世界を見る目の温かさ、まっとうさによるものだろう。

    いわゆる「キャラ」と呼ばれる画一的なものではなく、みんながいろんな面を持って生きている。
    『郁ちゃん』の「豆」
    『市さん』の「レース編み」
    『お母さん』の「イタリア語」
    『お兄ちゃん』の「ワイン」
    サルヴァトーレの桜井さんだって、しゅっとした美人の見た目だけど同い年で失恋もたくさん経験している。
    なんとなく『暮しの手帖』や『クウネル』の読者層を勝手にイメージしていた『ロッカさん』がまさかのアレだし。
    お父さんだって会社の上司や同僚だって、読者の僕らだって「キャラ」なんてものはなく、たくさんの側面を持って生きている。

    宮下奈都さんの小説を読むと元気が出てくる。
    それはけっして右腕に力こぶをつくる類いの元気ではない。
    すべての生命を育む太陽のごとくやわらかであたたかく、小さくても滋養に富む豆のように体の内側から活力を湧かせる。
    きちんと生きようと思う。

    (しかし『太陽のパスタ』は予想外だったなぁ。)

  • 結婚2ヶ月前にふられてしまった若い女性がしだいに立ち直り、成長する様子をナチュラルに描いた話。

    あすわ(明日羽)は、ベビー服の会社の事務をしている。
    婚約者の譲さんに「僕たち合わないみたいだね」と言われてしまう。
    いつ頃から別れを考えていたのかと苦しむことに。
    10歳年上の叔母ロッカ(六花)さんは変わり者で、ひょうひょうとしているが、何かと気に掛けてくれる。
    ロッカさんの前でわんわん泣いてしまった後、何をやりたいかを全部書き出すドリフターズ・ノートを作るように勧められる。
    「食べたいものを好きなだけ、食べる、髪を切る、ひっこし、おみこし」などと最初は書く。
    お祭りが好きらしい。

    髪をベリーショートにしたら、会社では誰も触れない。それほど痛々しいのか。
    引っ越しはすぐしようとロッカさんにリードされ、近くの1DKに越す。良く一緒に食事するようになる。
    ロッカさんの作った「太陽のパスタ」はトマトが入っていて、アイデアは良いが、伸びきったまずい物だったというのが、面白い。
    ジュリーのコンサートに行ったロッカさんは「がんばれなくても、ええんちゃう」とジュリーの真似をしてくれる。

    鍋を買う、毎日使う、などとリストは増えていく。
    ル・クルーゼの鍋を買うのだ。料理の本に載っているものをすべて作ろうとしたのは挫折するが。
    エステに行く、と書いて、リンパドレナージュ初体験。

    会社で一番仲の良い女の子・郁ちゃん(渡邊郁未)とも微妙な距離感がある。
    週に一度、金曜日には二人だけでランチに行くことにしていた。
    楚々として可愛らしい郁ちゃん。
    叔母に誘われて出かけた青空市場で、郁ちゃんが豆の店を出しているのに驚く。とても美味しい豆スープ。
    郁ちゃんはどうやって豆を見つけたのだろう。自分にとっての豆はあるのだろうか。

    学生時代からの大事な友達・京は美容師で忙しく、気軽には呼び出せない。
    本名は京介だがスカートをはいて生きている。
    とても綺麗で何でも出来るのだが、家族とは上手くいっていない様子。

    一人暮らしに慣れ、料理のレパートリーが増えていったり。
    家に戻ったときに有り難みを実感したり。
    仕事に新鮮さを感じたり。
    あらすじだけでは何ということもなくなってしまうが、ちょっとしたユーモアをまじえていく具体的なエピソードのつなげ方がうまくて、細部のリアリティがよく出ているのね。
    いじいじしたり、駄目さを再認識したり、内心はそう明るくはいられないけれども。
    そうそう…生きていく感覚ってこうなんだよね…と納得。
    応援したくなります。

    初出2008年「青春と読書」
    2010年1月単行本発行。
    著者は1967年福井県生まれ。2004年デビュー。

    • kwosaさん
      「そうそう…生きていく感覚ってこうなんだよね…」に共感。

      sanaさん

      遅ればせながら花丸とフォロー、ありがとうございます。
      sanaさ...
      「そうそう…生きていく感覚ってこうなんだよね…」に共感。

      sanaさん

      遅ればせながら花丸とフォロー、ありがとうございます。
      sanaさんの膨大な量の蔵書(?)に驚くと共に、その魅力的な本棚にわくわくしています。
      どうぞこれからもよろしくお願いします。
      2013/01/13
    • sanaさん
      kwosaさん、
      こんばんは☆
      花丸&フォロー&コメント、ありがとうございます~!
      kwosaさんのレビューは独特で、素敵ですね~。
      楽しみ...
      kwosaさん、
      こんばんは☆
      花丸&フォロー&コメント、ありがとうございます~!
      kwosaさんのレビューは独特で、素敵ですね~。
      楽しみに拝見します。

      膨大な蔵書ですか~? あはは、読んだのは確かですが! こんなふうに全部目の前に並んでいるわけじゃありません。ブクログは所有欲をいくらか満たしてくれるところもありますね。
      魅力的な本は、ほんとにたくさんありますよね~。
      よろしくお願いいたします♪
      2013/01/14
  • 独身時代に読みたかった。
    そう感じさせる話だった。
    婚約者との破談に打ちのめされても、ドリフターズリストを手がかりにどうにかひとすじの光を見い出す。どうにもならない苦しみがあっても、人はどうにか生きるものだ。無難な方へと流されて生きる人には決して味わえないものがある、そう言われている気がした。

  • 主人公と私とは、年齢も環境も違うけれど、生活していくなかでの気持ちの流れとか、共感できる部分がたくさんあって、一気に読めた。
    自分が主人公ぐらいの年(30歳前後?)のときの気持ちともリンクするし、現在(仕事をやめて休んでいる)の気持ちとも合うところがあって・・・結局成長してないのか、私(^^ゞ?

    事件もないし、夢物語でもないし、日常と言えば日常だが、そこからちょっとだけ、前に進めた、という感じの物語。

  • いいなあ!!
    と、思わず声に出して言ってしまうほど、この本の主人公あすわは
    たとえ挙式直前にあっけなく婚約破棄されようが、
    それを補って余りあるような素晴らしい家族や友人に愛されている。

    娘に「明日羽」と希望に満ちた名前をつける両親を始めとして
    やつれた妹に、唯一の得意料理の甘くないホットケーキを大量に焼いてくれる兄や
    男性として生まれながらも女性としてしなやかに生きている幼なじみの京、
    食糧危機に目を向けて豆料理を浸透させようと
    ささやかにがんばっている、会社の同僚の郁ちゃん。

    殊に、人の話を聞いているのか聞いていないのかわからなくて
    伸びきったゴムのようなスパゲティを
    「太陽のパスタ」と言い切って食べさせようとするくせに
    家族よりも早くあすわのただならぬ様子に気づき
    毎日ご飯時にご飯をたかりに来た風情で、
    あすわを気遣い、外へと連れ出し、おおらかに見守る叔母のロッカさん♪

    ロッカさん愛読のジャンプを毎週買って、毎晩おいしいご飯を用意して待ってるから
    ぜひ私ともお近づきになって!と言いたいくらい素敵な人だ。

    辛い時には「ドリフターズ・リスト」
    (漂流する者たちの指針となるリスト)を書いてごらん、と
    ロッカさんに言われたあすわが
    広告の裏に書きつけた「やりたいこと」に挑戦し、修正しながら
    「こうありたいと願うことこそが私をつくっていく」と思えるようになり
    「そこにあると思うだけで力をくれる、一切れのパン」が
    いつも自分のまわりにいてくれた人たちであると気付くまでの
    あたたかくて、おいしくて、やさしい物語。

    読み終えたら、黄色いル・クルーゼのお鍋で
    色とりどりの豆をコトコト煮たくなること請け合いです♪

    • kwosaさん
      まろんさん

      「ああ、いい本を読んだなぁ」というのが素直な感想です。そしてこの本を「いい」と言える人間で良かったなぁ、と思っています。
      今年...
      まろんさん

      「ああ、いい本を読んだなぁ」というのが素直な感想です。そしてこの本を「いい」と言える人間で良かったなぁ、と思っています。
      今年を締めくくるにふさわしい幸福な読書でした。いろんな気持ちが胸にあふれてきて、レビューを書くにはまだまだ熟成期間が必要なようです。

      読後の余韻に浸りながら、まろんさんの素敵なレビューを拝読。おもわずコメントをしてしまいました。

      2013年が、まろんさんにとって素晴らしい一年でありますように。
      良いお年をお迎えくださいませ。
      2012/12/31
    • まろんさん
      kwosaさん☆

      あけましておめでとうございます。
      ひ弱な私は、年末にひどい風邪をひいて寝込んでいたので
      ベッドの中でうんうんうなりながら...
      kwosaさん☆

      あけましておめでとうございます。
      ひ弱な私は、年末にひどい風邪をひいて寝込んでいたので
      ベッドの中でうんうんうなりながら、
      kwosaさんはじめ、ブクログ仲間さんたちの温かいコメントにとても励まされました。
      ありがとうございます!

      ひとがひとを当たり前のように温かく支え、
      誰かのおなかを満たすために、丁寧にコトコトお豆を煮る。
      そんな素敵な物語で2012年を締めくくったkwosaさんのこと、
      きっと2013年も心に残る本との出会いがたくさん待ち受けていることでしょうね。

      この本を「いい本」と素直に評価してくださるkwosaさんに出会えた昨年は
      私にとって、とてもうれしい年でした。
      今年も、本への愛情がひしひしと伝わってくる素敵なレビューを楽しみにしています。
      私も、寝込んでレビューが途切れないよう、今年は少し身体を鍛えてがんばりますので
      どうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2013/01/01
  • 太陽のパスタ、豆のスープ/宮下奈都
    ●ドリフターズ・リスト…波間に漂う人間が流木に縋るように、それを支えに生きていくためのリスト
     
    婚約を破棄されて、自信をもてない主人公にすごい共感した。「私には何もない」っていう不安。ラストは前向きになれます。リストってそんな意味があったんだって納得。



    個人的には登場人物の中で幼なじみの「京」が一番好き。だって主人公がリストを書いて焦ったり自分らしくもないことに挑戦したり右往左往しながら成長していくのに、物語の序盤で一番大事なことさらっと言ってるから。

    「自然にしていればいい。ちゃんと黄色を選べたんだから。そのうちあたまがゆるんで、身体も心もゆるんでくるよ。慌てることないよ、あすわはあすわだから。」

    このセリフ!あすわ気付いてほしい!
    一番あなたのこと分かってる人がここにいるのって、読み直してから思いました✨

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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