海猫ツリーハウス

著者 :
  • 集英社
2.94
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本棚登録 : 156
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713336

作品紹介・あらすじ

25歳の亮介は、ファッション・デザイナーを目指しながらも、実家の農業を手伝うかたわら、「親方」の元でツリーハウス作りに精を出す毎日。地元コミュニティで人気者の兄・慎平の帰郷がきっかけとなり、つかの間の均衡が崩れはじめる…。第33回すばる文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 三人の茶番に対する亮介の感想「勝手に・しろ」
    ↑ここ好き

  • キャラも場所もいいのに、展開で苦手な小説になった。きっとおもしろく読む人もいるのだと思う。けれどもなかなかないなあこんなこと。

    この小説に出てくる要素のなかの希望の部分(香子やツリーハウス)を一生懸命一生懸命削ぎ落とそうとしているように感じてしまう。僕にとってだめな裏切られ方をされた。

  • 25歳の亮介と、地元コミュニティで人気者の兄・慎平。
    ふたりのヒリヒリとしたやりとりに心がざわつく。
    ファッション・デザイナーを目指し、
    実家の農業を手伝い、
    「親方」の元でツリーハウス作りをする亮介の努力を
    慎平はなぜ認めず、貶めるようなことを言うのだろう。

    p111
    ―兄弟だからだ―
    p112
    ―兄弟なんて、言ってみれば生まれたときから
    親の愛情を奪い合う敵同士みたいなものじゃないか―

    すとん、と腑に落ちた。

    慎平のことも亮介のことも
    どちらの気持ちも、少しだがわかる気がした。

  • 海猫 という題名なのにペンギンのぬいぐるみが表紙になっている。そう思いながら、実は海猫を見た事がない事に気づいた。ひょっとしたら、このぬいぐるみは海猫かもしれない。ツリーハウスって良いなぁ 自分でも作ってみたいと思いますが、この本の登場人物でもそうですが芸術家みたいな人でないと難しいんでしょうね。

  • 2昔前に出た小説を今更読む。
    ずっと視界に入るところにあって、引っ越してもそれは変わらなくて、もうこれは読むしかないだろと。

    青森の海の近くの実家暮らしの25歳の亮介。頻繁に見る、ヘリコプターに吊るされぶらんぶらんと揺れている自分の姿の妄想に悩まされている。高校のあと弘前の服飾専門学校に入ったが卒業を待たずに中退して以来、ずっと中途半端な状態。いつかは洋服づくりで身を立てたいと思うものの具体的な行動を起こさぬままに祖父母の農業と地元の先輩のツリーハウスづくりや雑用に紛れる日々。そんなとき、兄の慎平が帰ってきて。

    兄弟の関係、地元のみんなとの関係、家族との関係などなど、丁寧に描いているのに重たくない。全編、会話は殆ど青森弁(八戸辺りだから南部弁?)でそれが唯一読み難い要素ではあるが、作品の味になっている。

    驚いたのが、創作物の描写の巧みさ、再現性。ツリーハウスもそうなのだけれど、香子のミニチュアール、亮介が香子のために作るワンピースなどなどが、文章から目の前に立ち上がってくる。それらは魅力的で、実物を見てみたいと思わせる。この作家自身、文章以外にも何か作ったりしている人なのだろうか。こんな作品、もっと読んでみたい。亮介、頑張れ。

    ちょっと検索してみると今も作品を少ないながらも出し続けており、この後出た作品では芥川賞候補にもなったことを今更ながらに知った。他の作品もちびちびと読んでみよう。

  • 「うみねごヴィレッヂ」と名づけられたツリーハウス建設をしている亮介。服飾デザインを勉強したが、出戻ってきた。兄の慎平は親方「竜さん」に芸名「乱坊」の名で呼ばれ可愛がられている。亮介を親方に紹介したのも慎平だ。だが兄に逆らえない自分に嫌気がさしている。ツリーハウスに出入りするランプシェード職人の原口さんに、慎平は惚れている。そのように真っ直ぐな恋を出来ないことを含め自分を持て余している。
    親方の愛娘香子ちゃんになつかれ、クマの置物をくれたお礼にワンピースを作ってあげるが、親方と兄に転職を告げたことで諍いを起こしてしまう。兄に親方と原口さんの不倫を告げるも、兄はそれを原口さんの口から直接、お腹の子がいることまで聞かされていた。
    香子ちゃんにせめてワンピースを、と思ったが、その約束さえ保護して何故か助けようとした、いつか見た海猫の子供。そいつも無情に飛び立つ。溺れかけ助かり、生きていることの実感だけしかない。

    これ作者が年取って読んだら顔から火が噴くくらい痛いんじゃないかしら?って思ったら四十路辺りで書かれたものなの? 大学生じゃなければ許されない痛さだしなんだか古いと思う‥‥それに賞あげたすばるの人々はお年を召してらっしゃるんだろうなと思いました(偏見)。これ一時代の人しか理解できない、そういうノスタルジーがある人しか理解できない作品だと思うよ‥‥そして私はそれに当てはまらないから共感できないし面白くないと思いました。特に最後、香子ちゃんにワンピースあげていたらそれで文句なかったんだよな‥‥親を含めて信頼できてなかった少女がわずかでも心預けてくれた大人がクズって辛い。ワンピースあげなくても良い、約束だけは守って喫茶店行こうとした、くらいの描写が欲しかったんだ‥‥いやクズ主人公らしくていいクズエンドでした。

    勝手に・しろ。そっくりそのままお返ししたいセリフである。てめえだって尊敬していない兄貴や竜さんに陰口言われたくらいでなんなの? まずは変な幻影見てる時点で病院行こ? 俺可哀相にあめでる(腐ってる)主人公も、現実すら舞台上の喜劇or悲劇役者みたいな気でいる兄貴も、不倫相手に恋している後輩を上っ面で応援している親方も、誰一人好きになれない。気持ち悪い。そんなんでくすぶってなれあっているのが八戸っていう田舎なんだって描き方なら地方小説としてこれ以上マイナスないなって思った。わざわざなんで一地方を名前を挙げてこの舞台にしたんだろう?

  • 最後って・・・なんで?
    モノローグは良かったのに

  •  八戸出身の著者が、八戸を舞台に、登場人物たちに八戸弁で語らせた八戸フリークな物語だ。第33回すばる文学賞を受賞している。

     全体を通して八戸弁で語られているためか、とても感情移入した。ツリーハウス以外の周りの景色などは、実在の八戸そのままであり、読みながら実際の映像が脳裏に浮かんできた。

     自分には兄弟がいないので、もし兄なり弟がいたら、こんな確執も生まれるのかなと思うと、ちょっとゾッとした。でもこんな心理描写ができるところが「現代の太宰治か」といわれるところなのかもしれない。

     最近、地元紙のデーリー東北で木村友祐氏による「空飛ぶ鉄犬」という小説の連載が始まった。これもまたファンタジックな物語のようだ。お話の続きに期待したい。

    • yama40さん
      地元では久々の若手作家登場に、マスコミをはじめみんな高揚感に浸っている感がある。しばらくは八戸出身の作家といえば三浦哲郎しかいなかった。三浦...
      地元では久々の若手作家登場に、マスコミをはじめみんな高揚感に浸っている感がある。しばらくは八戸出身の作家といえば三浦哲郎しかいなかった。三浦文学も確かに面白いが、晩年は自己主張が強過ぎて老害様相を呈していた。この木村さんのような若手作家がドンドン出て文学界を活性化させることを期待したい。
      2015/02/21
    • yama40さん
      ところで表紙の絵に騙されたとかいうレビューを書いている人もいるが、私に言わせると、なぜペンギンに見えるのだろうと思う。よく見て欲しい。全然違...
      ところで表紙の絵に騙されたとかいうレビューを書いている人もいるが、私に言わせると、なぜペンギンに見えるのだろうと思う。よく見て欲しい。全然違うではないか。ウミネコを見たことがない人が勝手にペンギンだと思い込んだのだろう。ぜひ現物のウミネコを見に蕪島を訪れて欲しい。
      2015/02/22
  • 2014.9.21読了
    次男の亮介の視点で物語が進んでく。亮介の心情表現は納得ができるし、わかりやすい。けど、長男のあれはあかんでしょう。次男ってそんな楽なもんじゃないし、上に好きがってされたら嫌にもなるでしょう。それも報われないのに、好きがって言われてなんか窮屈だ。親方も原口さんも最後は人間の中の悪の部分が出ちゃって、なんやら人間って酷だなと。兄ちゃんの言う暮らしの前に、やらなきゃいけないことあるんじゃないのと。
    なんか愚痴を言いたくなる作品だった。

  • 兄弟の愛?憎は細かく描かれていたけど、読んでいる途中もラストの唐突さも、いまいちな話。文芸〜。
    (すばる文学賞)

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著者プロフィール

1970年、青森県八戸市生まれ。2009年、「海猫ツリーハウス」で第33回すばる文学賞を受賞しデビュー。小説に『聖地Cs』(新潮社、2014年)、『イサの氾濫』(未來社、2016年)、『野良ビトたちの燃え上がる肖像』(新潮社、2016年)、『幸福な水夫』(未來社、2017年)、『幼な子の聖戦』(集英社、2020年、芥川賞候補)。

「2020年 『私とあなたのあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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