団地の女学生

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713398

作品紹介・あらすじ

あの女の凋落を私こそが見届けなければ!切なく愛しい「昭和の生き残りたち」桜草団地の住人たちが大暴走。

感想・レビュー・書評

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  • 朝日新聞の書評欄で見つけたホン
    著者がゲイだとかNOKKOと中学校の同級生だとか
    ノイズに邪魔されつつ読了
    団地住民としてオモシロかったです
    2編あって
    「爪を噛む女」
    団地の現在、
    高齢世帯の暮らしをあてにする
    単身の美弥が介護ヘルパとして未だ住まう
    言い得て妙
    同じ団地住民の同級生がシンガーソングライターとして
    華々しくデビュー
    落ちぶれて未だ団地に住む美弥にちょくちょくアクセスしてくる
    団地住民として
    高齢世帯をお客さんとする仕事への正義感と
    団地を出て行った同級生に対する嫉妬と毒づきなど
    バラバラな気持ちが交互に出て来て
    割と気持ちが悪の主人公なんだけど
    浄化されてく出来事が多い
    団地に悪人は似合わないようです
    「団地の女学生」
    こっちは高齢の女性が
    埼玉の団地から出身地の高崎へ
    墓参りと幼なじみの様子を伺いに
    ワンデイトリップする話
    お供に、仕事で忙しい実の娘ではなく
    隣に住む無職のぽっちゃりゲイ40歳ミノちゃん
    世話好きを連れて
    団地の懐の深さがあらわれるサクヒン
    高齢者とかアラフォー女性とか
    描き方が無理なく上手で驚きます

  • 「爪を噛む女」の主人公の心の叫びに共感。でも、あたしは、あんなに影響を受ける友人もいないような……

  • 団地に住む人たちのそれぞれの人生。

    優秀な学生時代とは裏腹に、夢に敗れ独身のままヘルパーとして働く美弥。

    輝く若かりし頃の思い出だけを頼りに、家族に見放された孤独な老人たちの世話をする毎日のなか
    幼馴染でミュージシャンになった都と再会することになった。

    子供の頃は物静かだった都が、今では人気スターとなって美弥の目の前にあらわれることの嫉妬と羨望にもがき

    人気も落ちかけてきた都の良き友人を装いながらも
    彼女は美弥の気持ちに気づくこともなく、彼女を置いていってしまう。

    他、団地に住む老女が、かつて自分に好意を持ってくれていた古き幼馴染を、隣人のホモの40代フリーター男と一緒に訪ねるまで。

    切ない現実。でもこれが現実。

    本能のままに生きればいいの?都のように、鈍感に。
    いろいろ考えちゃったほうが結局損しているのかなあ。

  • 中編ふたつが収録された一冊。
    どちらも老朽化した団地を舞台に、そこで暮らす人々や関わりのある人を描いている。

    こんなはずじゃなかった。成功した幼馴染みに猛烈に嫉妬する独身女の語りから始まり、ヘルパーなしには生活もままならない独居老人やその家族の姿がありのままに晒される。
    けれども、他人に見せている顔がその人の本質とは限らない。
    仕事用の顔は勿論のこと、正気を失ったからこそ見えた顔、本人も意識していない顔、歳とともに身に付いた顔…。
    そんなものが詰め込まれ、何とも言えない不思議な心持ちになる作品でした。

  • タイトルに惹かれて。

  •  2010発表、伏見憲明著。団地で介護の仕事をする主人公の、有名歌手になったかつての友達Miiyaへの嫉妬「爪を噛む女」。老女瑛子が、隣に住む中年男性ミノちゃんと故郷を訪れる「団地の女学生」。
     表紙を見てもっとポップな小説なのかと思っていたが、全くそんなことはなかった。どちらも実に純文っぽい文体で、皮肉とユーモアを絡みつかせ、辛辣な現実が露骨に描かれている。
     特に「爪を噛む女」は、男である著者がどうやって書いたのか感心するほど、嫉妬する女の心理描写がリアルだ。読んでいると本当に主人公は嫌な女だなと思いつつも、何となく同意できてしまう部分もあり、それがまた余計に後味が悪い。
     「団地の女学生」の方も、取り残されてしまった老人の寂しさがよく描写できていると思う。また、ミノちゃんの掴みどころのない気持ち悪さが、ほどよくパンチになっている。ただ一点だけ若干気になるのは、途中まで瑛子寄りの三者視点で書かれていた文章が、不意にミノちゃん寄りに変わる部分。「ミノちゃんの」といった呼称で書かれているので瑛子が彼のことを観察しているのか思ったら、そうではない。完全に神の視点である。節が変わってそうなるのなら納得できるが、こうも平然と書かれてしまうとちょっと無神経だなと感じる。

  • 団地を舞台に繰り広げられる人間模様。
    個人的には表題「団地の女学生」が一番面白かった。
    団地って、秋の夕暮って感じだな・・・と思った。

    狭い空間での人間関係は密で、団地を舞台にした小説は魅力的だ。

  • 40代中年太めの男性ミノちゃんと、老年の女性瑛子のちょっとした遠出。瑛子が学生時代自分を好いていてくれた男性に、約60年ぶりに会おうと思い、遠方に出向くに対し、ミノちゃんは掲示板でその場限りにセックスできる男性を探す。こちらは『魔女の息子』のように、中年のゲイの男性と、老年の女性が出てくるが、もう一つ収録されている「爪を噛む女」は、これがまた女性の嫉妬の話で意外だった。同級生を見下し、自分が面倒を見てあげていると思っていたが、その同級生はスターとなり、しかも学生時代自分のことを実は慕ってくれているわけではなかった。しかも結局、美弥の学生時代からの1人相撲だったっていうのが、すごく切ない。でも、どちらの話も、「人は人、自分は自分」スタイルで終わり、読後感は良い。瑛子もミノちゃんがゲイと知って驚くが、ミノちゃんに嫌悪感を抱くわけでもなく、昔の固定観念ゆえに「親がミノちゃんの育て方を間違ったのか?」と思ったりもしたようだが、結局は「不思議ねぇ」というふうに、ミノちゃんを思う。老人もアラフォーもゲ男女関係なく、そしてゲイも書けてしまう伏見さんは、すごく人間観察がうまいのでは。

  • 三浦しをん「本屋さんで待ち合わせ」より。表紙の絵が変だけど、意外と面白かった。2編入ってるけど、最初の「爪を噛む女」が断然良かった。表題作は団地に住むおばあさんが隣の40代のゲイと一緒に実家に戻るお話。途中急にゲイの語りが差し込まれるのが嫌。携帯の出会い系でさくさくと旅先の一夜の相手を決めてしまうことと、60年ぶりの幼馴染との再会が同時に起こってるって、現代はすごいなと思ってしまう。多種多様になったのだ。で、最初の爪…は、非常に身に迫る。38歳独身女性。やっぱ仕事があって良かったなと思う。私のおひとり様を支えるのは、経済力に他ならない。立派な中年となった息子とその嫁にたかられる内海香代さんはほんとに気の毒だ。こんな親不孝者は死ねばいいと思う。虐待じゃないか。ヘルパーさんはこういう人たちをたくさん見てるんだろうな。友達だった人が有名人になるって今のとこ私にはないけど、こういう複雑な気持ちになるんだろうな。

  • 団地の女学生
    伏見憲明(著)
    (出版社) 集英社
    (価格) 1260円
    (ISBN) 9784087713398
    あの女の凋落を私こそが見届けなければ!切なく愛しい「昭和の生き残りたち」桜草団地の住人たちが大暴走。
    (図書館)

    未婚でアラフォーで3K仕事でワーキングプアの美弥。 一方、かつて は『格下』で冴えない幼なじみだったはずが、今は一躍スター歌手としてもてはやされている都。二人が20年ぶりの再会を果たす。
    都への嫉妬と憧憬に苦悶する美弥の内面のドロドロっぷりがとにかくすごい!完全に一人相撲なんだけど…。ラストにはなにか救いのようものが描かれているのだが、どこか倒錯気味であるのが悲しい。。。でも、わかるなー、こうゆう感じ。人生ってやっぱり不平等だし、いくら自分は自分と割り切っても割り切れきれないものが残る。文体はいたって写実的だが、著者的には『コメディ』らしい。てか、『コメディ』って言ってもらわないと、痛くて切なくて読んでられないと思う。

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著者プロフィール

1963年生。作家、ゲイバーのママ。慶応義塾大学法学部政治学科卒。1991 年に『プライベート・ゲイ・ライフ』にてゲイであることをカミングアウトし、90 年代のゲイ・ムーブメントに大きな影響を与える。2003年に『魔女の息子』で第40回文藝賞を受賞して小説家としてもデビュー。2013年、新宿二丁目にゲイ・ミックス・バー「A DayIn The Life」を開店。2017年、ウェブマガジン「アデイonline」を開始。

「2017年 『エッチなお仕事なぜいけないの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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