終わらざる夏 上

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713466

作品紹介・あらすじ

第二次大戦末期。「届くはずのない」赤紙が、彼を北へと連れ去った-。北の孤島の「知られざる戦い」。あの戦いは何だったのか。着想から三十年、著者渾身の戦争文学。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和20年夏、3人の男に召集令状が届く。
    弘前で告げられた赴任先は千島列島の国境の島占守島だった。

    著者の戦争小説にハマり、3冊目。
    召集される者を選出する所から、とても丁寧に、1人1人の物語が語られています。
    なので、上巻では島に向かうところまで。
    占守島の戦いについては、まるで知識のないままです。
    役者は揃いました。
    下巻に進みます。

  • 読む手が止まらない。素晴らしい。

  • 悲しいけれど美しい物語。浅田文学の美学。

    「メトロに乗って」や「鉄道員」に通じるファンタジー小説

    空襲、集団疎開、根こそぎ動員などの現実、疎開先から脱走(と成功)、翻訳家の通訳要員としての召集などの非現実(夢物語)。そして、現実と夢の混交。

    主人公たちの戦死という結末は、覚めた夢(もう一つの現実)。疎開先から東京に無事帰還する子供との対比。

    戦争末期に、北辺の島に残された完全無欠の機甲師団。ある意味ブラックユーモア

  • 戦時下日本のさいはて・占守島で起こった悲惨な戦い、それは玉音放送の後ことだった…
    45才にして初めて兵役に出る翻訳出版社編集長の片岡、志高き医学生の菊池、幾度も戦火をくぐってきた軍神・富永。上巻ではこの三人が軸となって、一様ではない「徴兵」のありさまが展開される。
    はたして本人も知らない片岡の「任務」とは?…以下後半へ。

  • 終戦間近の日本が舞台。
    それぞれの人生を送ってきた人々が、終戦直前の召集令状によって理不尽にも集められ、それぞれの人生を背負いながら戦地へと出征していく。

    残った家族の事や、それぞれの人の細かな描写とともに、有無を言わさない赤紙による、本来ならもう出征するはずもない状況の人逹がそれぞれの理由で北海道の最北端へ。

    英語の出来る編集長だったあと数日で出征はしなくてよくなるはずだった片岡。
    身長も視力もほとんど招聘される基準を満たさず、医学を学び人々を助けるために大学の研究室で学んでいた菊池。
    二度の戦地で勲章まで貰ったが指もその戦争で引き金を引くものさえなくなっていたが、荒くれ者の彼を母だけ残して本来なら3度目の戦地などないと思っていたのにかり出された富永軍曹。

    この三人が下巻ではどうなるのか!?

  • 千島列島での対ソ戦に興味があり、手に取る。
    大本営ではじき出した数字でしかない兵員が、具体的な固有名をもつ人間となり、そして「赤紙」が届くまでの過程が描かれる。なかでも、顔の見える範囲で動員すべき人物を選ばなければならない村役人の苦悩は、あまりにリアルで、身近な人同士が互いに疑心暗鬼の状態になったであろう様子が想像できた。
    やや個々の描写が細かくまどろっこしいと感じなくもないが、一人ひとりの人生の重みを感じながら歴史的事象を見るということが、歴史小説の役割だと思えば、それは果たされているのではないかな。

  • 占守島(シュムシュ島)に終戦ギリギリに急遽動員された奇妙な3名 45歳の英語翻訳者 若い反戦医師 やくざな戦争の英雄 彼らが主人公で終戦対策要員として派遣された

    彼らの回りの登場人物に「一人ひとりの人生の価値」を認め、他方国家の意思により、翻弄され、蹂躙される。
    それでも「人生は尊い」ものとして描かれている。
    個々のシーンでは涙する場面も少なくない。

    終戦ギリギリにソ連が不可侵条約を破って侵攻してきた歴史は、満洲を中心に語られるが、樺太も、千島列島にもドラマがあった。特に占守島は日本軍の最強精鋭部隊がソ連軍に壊滅的打撃を与えた歴史の1ページをものにしたが、知られていない。

  • 8月15日の玉音放送の音声が不鮮明で、ポツダム宣言受諾、無条件降服の情報が伝わらない千島列島の北端の島に取り残された最強の戦車部隊。
    終戦に間際に戦後処理の通訳として応召されたXXの運命は。
    満州、樺太でソ連軍が終戦後攻めこんできた話は知っていたが、千島列島の北端の小さな島に最強の戦車部隊が取り残されていたとは、驚き。
    集団疎開先から、脱出した6年生の女子と4年生の男子は、行く先々で親切な大人に出会い、何とか上野駅にたどり着く。集団疎開も、満足な食事もなく、過酷な状況だったようだ。

  • 一億玉砕の掛け声のもとに根こそぎ戦地へかき集められていく男たち。舞台は北千島の占守島なのだがまだ登場人物たちがそこに集まる前のそれぞれの話がほとんどで、いまいちまだ完全には乗り切れない。が、浅田節で、特に東北弁だったりするとそりゃもう涙腺は緩む。。翻訳家で年齢制限ギリギリ、目も悪いのに召集されてしまった片岡の妻久子とその母のエピソードが胸にくる。占守島に古くから住んでいて日本とソ連でいつのまにか分割され移動させられ、傲慢にも「幸せ」を勝手に決められた千島アイヌの人々の話も印象的。

  • たかが紙切れ一枚に人生を左右された人々を、浅田次郎が悲しくも雄雄しく描く。本文中の「空も海も風も、お天道さんだって嘘っぱちにちがいないが、おふくろだけは本物だと思った」を読み、鳥肌が立った。下巻が楽しみだ。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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