六月の輝き

著者 :
  • 集英社
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感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713855

作品紹介・あらすじ

もどりたい。いちばん美しい季節の光あふれる世界へ。幼なじみの美奈子と美耶。11歳の夏、美耶の「ある能力」がふたりの「特別」な関係に深い影を落とす…純粋な想いが奇跡をよぶ、「絆」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ある能力を持つ美耶。六月の誕生日が同じ、隣同士の家に生まれた美奈子と美耶の物語。
    明るい話ではない。第二章の冒頭に、このようなくだりがある。人は生まれながらにそれぞれ荷物を負っている。各々の荷の重さは千差万別。羽毛のように軽いものもいれば、膝をついてしまいそうなほどのそれを課せられたものもいる。(中略)つまりは、人生は不平等だということ。(後に続く)
    少女の友情物語と思っていたが、これは深い、好きな感じだと読み入る。時間は取り戻せないってことではないでしょうか。あることが元で、友情にヒビが入る。しかしお互いはずっと意識し合っている。美耶の特殊な能力に絡め、二人が過ごした年月、二人を支える人々の抱える苦悩、現実が連作で絡めて綴られている。
    お花見のところで泣き、美奈子がリコーダーを吹くシーンでは涙腺崩壊した。泣かせる感じでも、ラストに向かって感動をまとめる感じでもない(個人的にはそう思う)。自然とあふれ出てしまうのだ。それは心情描写の巧みさ。心が弱っているとき、落ち込んでいるときの気持ち。大切な人を思いやる心、身を削ってでも相手に尽くすこと。胸が締め付けられるような切なさ、苦しさの中、ラストには輝きが見えた気がする。
    大切な人が私にくれた感情のすべてが自分をきらめかせてくれる。
    儚く優しく純粋(きっと美耶は強い)な美耶。そういう人を知っているから余計感情移入できた。
    余韻からなかなか抜け出ることができませんでした。夏に読めて良かった。

  • タイトルから想像できない内容で思ったより重苦しい気持ちになってしまった。

    自由がないと優しくはなれない

    確かにそうなのかもしれません。

  • 相反するような家庭環境で生まれる、美奈子と美耶。

    美奈子の救いは美耶に、美耶の救いは美奈子にある。

    美耶が持つ不思議な能力に、本人も、周りも翻弄されて、そこに正義がなくて、人の身勝手さだけが色濃く残る。これが本当に腹が立つ。
    完璧な人間もいないから、完璧な家族も居ないし、不思議な能力も持て余すよね。

    現実的に、美耶の能力を何かに置き換えて考えてみる。治すとか直すとかではない、うーん、何だろう?

    桜の木のシーン、映像にしたらどうなるんだろうって思う。どんなに美しくて切ないだろうと思う。

  • 切ない、切ない物語だった。
    美耶の左手の力は一体なんだったんだろう。
    自分の時間を相手のために使うということの象徴的な意味を持っているような気がした。
    現実には存在しない力を設定することで、明らかにされることがある。小説にはそれを描く力があるのだ。
    平田という少年の章では、「自由」ということの本当の意味がくっきりと描き出される。
    嫌ったり憎んだりすることは不自由なことなのだ、と。そこから抜けだしたとき、心は自由になる。美奈子を覆っていた固い殻に亀裂が入った瞬間は、読んでいても息を飲むような衝撃があった。
    美耶を愛せない母親の恵子も切なかった。誰もが障害や不幸を受け入れて強く生きられるわけではないのだ。それでも最後は美耶のためにお粥をたいてやろうとする姿が切なかった。

    時間は取り戻せない。巻き戻せないのだ。
    頭ではわかっているつもりでも、気づけば浪費してただ漫然とやり過ごしている。
    美耶の左手は、ほんのちょっと奇跡を見せてくれるけれども、それを本当の意味で受け取ることは意外と難しい。
    最終章でまた二人に特別な絆が戻ってきてよかった。
    「どんな暗いことを書いても最後は明るさを感じさせるものにしたい」と作者は語っていたが、まさにそういう感じのラストであった。静かで明るくて力強い。

    「自分の生命力を分け与えることで他人の傷を癒す」というアイデアは他でも読んだことはあるけれど、美耶くらい無私の人はいなかったなあ。美耶は体は弱かったけれども、心は誰よりも強く自由だったのかもしれない。

  • こんなに深く結びついた友達を持ったことがない私は、羨ましいと同時に少し恐ろしさも感じてしまった。
    人間の心って難しいようでいて単純なのかなー?と考える。
    お母さんの話から涙が止まらなくて、読み終わってからもしばらくぼんやりしていた。
    読了後にまた序の文章を読み、少女の頃の仲良しだった二人と、結末の二人をそれぞれ想像する。切ないけど、とても暖かい。

  • 半分まで読み進んでも、つらくて、放置すること3週間。

    いい加減、返却期限もきることだし、半分以上は読んでるわけだからー

    と、思って読みきった。

    最後まで読んでよかった。
    つらかったし、誰の思いも報われなくてイヤだったけど、救われたよ!

    数人の登場人物の視点から、話はなる。

    あることをきっかけに、2人の女の子の関係が崩れる。この子たちが主だ。

    決して、ハッピーエンドではない。
    ?ある意味、ハッピーエンドなのかもしれない。

    涙をこらえるのが、きつかった。

    途中、読むのがつらくなっても、最後まで読んでほしい。
    読み終わった景色は違うはず。

  • 2023.8.19 読了

    2人の女の子、美奈子と美耶の
    小さい頃から 10代の間の話を
    いろんな人の目線で 語られてゆく。

    小さい頃は なんの屈託もなく
    仲良しだった二人。

    あることが きっかけで 関係が変わる。

    だんだん大人に近付き、気付くこと。


  • 結局、その力の原因も、詳細も不明のまま
    六月の輝きとして
    幕を閉じる

    そんな、小説です

  • 「どんな病気や怪我も癒す神様の娘」
    そんな大げさな呼び名がつけられた少女にすがる人々。
    気味が悪いと嫌う母、娘の力で金儲けする父。親友は去り、能力はもう使えなくなった…?
    『純粋な想いが奇跡をよぶ絆の物語』
    確かに純粋なんだけど、ちょっと辛いものがありました。
    「幸福な王子」「きみにしか聞こえない(乙一)」を彷彿とさせます。
    切なくもの悲しい…。

  • ラスト感動した。

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著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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