箱庭図書館

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著者 : 乙一
  • 集英社 (2011年3月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713862

箱庭図書館の感想・レビュー・書評

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  • なにが凄いって、この装幀!
    今年に入って読んだ本の中では、間違いなしのベスト1です。

    乙一さんが、6人の読者のボツ原稿をリメイクし、巧みに繋げた短編集。
    これにTwitter経由で『箱庭図書館』とタイトルをつけたゆーまさんという方も凄いけれど
    物語の内容と、このタイトルを、まるで身体にぴったり馴染んで
    水の抵抗さえなくしてしまうハイテク水着のように包み込む、装幀の素晴らしいこと!

    リメイク作品を繋げて書籍化するという大胆な試みを「実験」と捉えて
    無菌の実験室のような白い背景に、図形化された均一な文字が配置され、
    でもその文字のそれぞれに、エッシャーのだまし絵を思わせるような
    立体の空間がさりげなく繋がっていて。
    「乙一」の文字も無機質な図形に転換されて横から見ると、英語の「IN」と読めて
    まるで「この箱庭に入ってごらん」と呼びかけているかのよう。

    本文が印刷されている紙まで、単行本には珍しいほどの目に眩しい白で
    「おお、ここまで実験室のイメージを意識してるとは、すごいなぁ」
    とひたすら感心していたら、なんと6篇めが『ホワイト・ステップ』。
    無機的な実験室の白が、降り積もるやさしい雪の白さに一瞬で塗り替えられました。
    もう! 乙一さん、油断ならない作家です。

    テイストも癖も全くバラバラの6篇を、持ち味を損なわないよう
    愛すべきキャラクターとキーアイテムで魔法のように繋げて
    「ここはどうなってるの?」と細部まで覗いてみたくてたまらないような
    緻密な箱庭を作り上げてしまう。

    本の虫を自認する読者なら好きにならずにはいられない、
    本を読み耽っていて遭難しかける図書館員の潮音に会いに。
    「物語を紡ぐ町」文善寺町の小さな通りを散歩しに。
    降り積もった雪にかじかんだ指が綴る文字の、温かさを知るために。
    どうかあなたも、この箱庭図書館を訪れてください。

  • 読むまで知らなかったのだけれど、この本は読者からのボツ原稿をリメイクするという企画だったらしい。読者からという事は、様々な色、様々な書き方だったはずが見事に乙一さんらしいストーリーとなっている事に驚いた。
    同じ街、同じ登場人物を出す事によりファンタジー・ミステリー・青春物など一見バラバラな話に統一感を持たせ、短編集だけれど一つの物語のような気分にさせられるのも流石。
    どの話も面白かったが、最後の話が特に良かった。ホロリとくる…。

  • 乙一さんの小説を初めて読んだ。
    乙一さんの言葉紡ぎ、リズム感は結構好きかも、と感じた。

    のだが…

    「箱庭図書館」は、素人のボツ作品を募集し、乙一さんがリメイクしてできた作品でした。
    あとがきにも、元ネタを多く引用していたりするらしいので、乙一さんの良さなのか元作者さん良さなのかわからないなと。

    でも、おもしろかった。読んでいて気持ちがいい作品が多くありました。

    「小説家のつくり方」
    重度の活字中毒 潮音さんが登場。
    家族じゃないからエピソードが微笑ましい。こんな人がいたら飽きないだろうな。家族だったら…やっぱ大変かw

    「青春絶縁体」
    ぼっちが迷い込んだ文芸部でのお話。
    文芸部の中と外。2つの世界で別々だった2人が交差していく、すれ違っていく。
    青春です! 2人がかわいいよ〜。

    「ワンダーランド」
    ミステリーだ。軽く怖い。冷たいアスファルトの部屋に言葉がコツン、コツンと落ちてくる感じがした。
    サイコな感じも良かったです。

    「ホワイト・ステップ」
    この話、好き。
    ある雪の日の不思議な話。
    お互いが見えない別次元の2人が重なり巡り逢った。
    2人が希望を見つけて歩み出す。とてもやさしい気持ちになれるステキなお話。


    潮音さんを主人公にした話をもっと読みたくなった。

    乙一さんも気になる小説家になりました。

  • 2011年発表。


    読者から募集した投稿作を
    乙一が大胆にリメイクする企画から生まれた6篇の短編集。



    なので純然たる乙一の作品ではないし、
    そもそも小説家として
    どうよという企画だけど(笑)

    それだけに乙一作品にはない
    バラエティー豊かな
    物語の力と
    プロ作家のスゴさを味わえるし、

    そこんとこ割り切りさえすれば
    良作と言っていい出来。



    短編集だけど
    実はすべて
    『文善寺町』という町で起こった
    事件や事柄を扱っていて、

    図書館で働く
    異常なほど本好きの
    山里潮音(しおね)という若い女性が
    物語を繋ぐ重要な脇役として
    どの話にも登場します。



    自分が好きな話は、

    学校で孤立した少年の恋と成長を描き
    最も乙一本来の色が出ていた
    『青春絶縁体』と、


    子供たちが夜に家を抜け出して
    自分たちだけの王国を築いていたという設定に
    無性に惹きつけられた
    『王国の旗』、


    そして降り積もった雪の道に
    音もなく突如現れる
    不思議な靴跡の謎を描いた
    『ホワイト・ステップ』

    かな。


    特にラストの『ホワイト・ステップ』は
    強烈な余韻の残る
    切なくもあったかい傑作で
    コレが読めただけでも元がとれるくらい

    個人的には満足感ある作品でした。




    しかし物語の力って
    スゴい。


    人間ははるか太古の昔から
    誰かのお話や物語を聞くのが好きだったんですよね。


    原始人の時代の
    洞窟の中の壁画に始まり、

    民話や昔話のたぐい、

    子供が親にお話をせがむ習性も
    そう。


    人はずっとお話を待ってた。


    そう考えたら
    人間というのは
    フィクションを必要とする動物で、
    それによって
    勇気を貰い
    自分に当てはめ
    学び取ってきたのかなって思います。



    黒・乙一な
    ダークな話は少なく、

    少し不思議で
    少し切ない話がほとんどなので
    乙一は怖いと思ってる人にも
    オススメします(^_^)v
    (図書館や活字中毒者がキーワードになってるので
    本好きさんなら
    ニンマリできる描写が沢山あります笑)

  • 乙一が、投稿者のボツ原稿をリメイクするという企画モノ。

    「青春絶縁体」の、ぼっち2人の空気感が好きでした。中田永一こと、白乙一らしいセンス。この口の悪さとか、たまらないです。

  • 読者からの投稿で没になったものを乙一さんがリメイクするという一風変わった作品。
    舞台は同じ町で起こるストーリーで全6編。
    「小説家の作り方」「コンビニ日和!」「青春絶縁体」「ワンダーランド」「王国の旗」「ホワイト・ステップ」

    どの話も軽いタッチでさらっと読めるけど、それ故に油断しているとオチでやられます。

    「ワンダーランド」が一番ミステリ色が強かったかな。最後にぞわ~っとします。
    「青春絶縁体」は学校で誰とも溶け込めず唯一話せるのは同じ部活の先輩だけ(部員2名)。
    でもその先輩も実はクラスではぼっちで…という切ないストーリー。
    乙一さんのこういう作品も結構好き。

  • 文善寺町という一つの町を舞台にしたオムニバス形式の一冊。ネットで一般募集した没原稿を乙一さんがリメイクするといった作品の短編集でした。それぞれ別の人が原作であり、設定や世界観が個性があり、そこに乙一さんのテイストが加わってすべての話に引き込まれました。
    中でもお気に入りなのが「ホワイト・ステップ」でした。物語の締めに舞台の町に少し焦点を強く当てて、雪上で登場人物がやりとりをする、少し涙腺にくる内容でした。

    ちなみに潮音さんが好きです

  • ひとりの図書館員の存在で点が線になる、「物語を紡ぐ町」——文善寺町ですれ違うストーリーにはわくわくしました。
    6つそれぞれがそれぞれに違った雰囲気を持っていたのも良かったです。その辺りのことは、あとがきを読んでなるほど納得。

    特に最後の『ホワイト・ステップ』がお気に入り。人にすすめたくなる一冊です。

  • デビュー作読んでこの人無理~と思ったのだけど、ホワイトとかブラックとかあるんですね。
    別名義の青春小説がとてもよかったので、ホワイト乙一さんも読んでみようと。

    ボツ小説の再生工場という本作のコンセプトは知っていてけど、
    バラバラの作品でここまでの連作短編にしてしまうとは
    やっぱりプロの書き手はすごいんだなぁと感心してしまいますな。
    お話しの中だけで完結しない、登場人物にも舞台の町にも
    過去があり未来があり同じ時や場所を共有しているたくさんの人がいて
    という全方向への広がりを感じられて、ちょっとハッとしました。

    「青春絶縁体」と「ホワイトステップ」がよい。
    タイトルがほんとに秀逸だなと思います。

  • 読者の作品を乙一がリメイクしたもの。すべてもとは違う作品だったのに、作品すべてがリンクしている。

    好きなのは「ワンダーランド」、「ホワイト・ステップ」。

    「ワンダーランド」は怖い終わり方をする。鍵が最後までどこの鍵かわからないけど、「王国の旗」でわかるようになっている。

    「ホワイト・ステップ」の主人公は乙一自身のような雰囲気がある。いい話。主人公の後をついて歩く描写がなるほどなと思った。

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