オーダーメイド殺人クラブ

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714036

感想・レビュー・書評

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  • 辻村さんの作品にしては暗くて、グロい場面もある。
    けれど、思っていたのと違って物語は進んでいき、最終的には良い終わり方のように思えた。

  • 10代の時に感じた『特別な存在になりたい』という感情が、アンから手に取るように分かった。それが一時の(その時はもちろん本気)の感情であることも今なら分かる。この結末でよかった。

  • 中2を思い返すと恥ずかしくなる。
    そんな思いは誰にでもあると思う。
    大人にとっては些細な、けど渦中にいる中2たちにとっては、すごく大きくて重い問題。
    押しつぶされて不登校や自殺してしまう人もいる。

    この本の中のように、オーダーメイド殺人がおきず、知らない間に大人になっていく。そんな当たり前の人生の素晴らしさを感じられるラストが良かった。

  • わたしは少女のままで死にたい。

    家族への不満、学校での微妙な序列、男女の複雑な関係、教師への不信、それらを軽く超越する人間の存在。主人公アンの考えは、自分と同じだと思う人が必ずいるだろう。中学二年生は、本文中にもあるように、「中二病」とも呼ばれる痛い自意識に振り回される時代だ。

    中学二年生のアンは、死の臭いに魅入られ、自分が今の少女のままで死ぬこと、しかも特別な存在として死ぬことを夢見る。バスケ部に所属するアンは、決してヒエラルキーが低い存在ではないが、友人との微妙な関係に疲れてもいる。様々な日常のあれこれに苛立ったアンは、徳川というクラスのヒエラルキーでは下位に位置する少年と、自分の殺人事件の計画を練る。

    死ぬための計画は、いつしか生きるためのよりどころになっていく。自分を殺してくれる徳川は、自分を助けてくれる存在になる。アンは芹香や倖より、少しだけ精神的に大人だったために、しかし、それほど大人でもなかったために、人間関係に振り回されてつらい思いをする。大小の差はあれど、思春期に人間関係の煩わしさに悩む人は多いだろう。その結果、死を夢見る人も多いし、死を選ぶものも多い。自分であれ他人であれ、死を考える。しかし、多くは、死を選ばず、その時期を卒業してしまう。アンは、自分で望んでいたような「特別」ではない。ただ、自分で自分を認められれば、世間で「特別」と思われなくてもよいのだ。アンは気付く。徳川が、自分以外を殺さないように、徳川の「特別」になることで、乗り越える。

    いわゆる「中二病」という時期は、思い返せば恥ずかしいことばかりで、「黒歴史」と呼ぶように、なかったことにしたい過去かもしれない。でも、死を思うことは大切だと思う。死を思うことで、生が見える。アンは「余生」を生きている。憑き物が落ちたような大学生になるエピローグは、なくてもよかったように感じた。それでも、こうやって乗り越えたアンが描かれたことで、アンはまた読者がさらに共感できる存在になる。この時期を過ぎた人にも、現在進行形の人にも。

    なんとなく、アンは志田未来、徳川は神木隆之介のイメージだ。

  • 良かった!大きなテーマがあるので先が気になるし、クラスの人間描写も上手くて引き込まれる。終わり方は良かったのではないかと思う。

  • 焼けつくような感覚を、僕たちは大人になると忘れてしまう。
    あの一時期の独特で切実な感性は一体どこからやってきて、いつのまに消えてしまうものなんだろうか。

    中学のとき。
    程度の差はあれ、誰だって経験しているはず。

    成長に伴うホルモンバランスの変化なんだろうか。

    風邪をひいたときに咳のしすぎで、喉の内側がヒリヒリと痛い。
    そんな感覚の作品でした。

    好きか嫌いかで言うと、よくわかりません。
    でも、ここまで丁寧に文章で表出してくれると、僕は安心するんです。
    この感情は、みんなあるんだなと。

    乙一のGOTHに似ている世界。
    でももっと生々しくて、生きて悩んで考えている、そんな中学生の日常。

    世界的にスロウハイツとつながっていて、
    そしてきっと冷たい校舎とも同じ世界の中。

    少年Aって、その一線をまたいでたくさんいるんだよ、きっと。

  • 趣味が異なり話が通じない母親にも、口を開けば他人の悪口と恋愛話ばかりの友人との関係にも、閉塞感を抱く小林アン。書店の片隅で見つけた『臨床少女』という球体関節人形の写真集を心の拠り所とし、リア充を演じながらも、「本当は周りと自分は違うはず」という思いを密かに抱いている。しかし、自分がスクールカースト上位にいることの優越感は捨てられない。しかし、ある時、ふとしたきっかけで仲良しリア充グループから「外された」。それをきっかけに彼女は、「特別な存在」となるために、同級生の「昆虫系」男子・徳川勝利に「自分を殺して欲しい」と依頼する…。

    思いがけずとても好みの話だった。こういう話に惹かれるということは、私自身がまだ中二病を引きずっているから、かもしれない。徳川のキャラがとても良いし、彼もまたアンのようなスクールカースト上位の女子を好きになるというのが妙にリアル。自分はアンとは程遠い中学生だったのに(本書の登場人物にたとえるなら、美術部のえっちゃんが中学校時代の自分に近いと思う)、なぜかアンに感情移入して読んでしまうのは辻村さんの文章の力か。

    最後、少しだけ素直になったアンと徳川の今後が気になる。著者の他の作品のように、この2人にまた別の作品で会うことがあるだろうか。

    これに似たストーリーをどこかで読んだ気がしたのだが、多分漫画の『惡の華』だ。

  • 高校生の時のことをぶわっと思い出した。誰も味方がいないのに、それでもあそこで過ごさなくちゃいけなかった時間と空気を思い出して泣きたくなった。それと同時に、自分はこの子たちと価値観が違うと言い聞かせて何とか保っていたプライドと優越感も、思い出した。アンはあの時のわたしだ。徳川に当てはまるような立ち位置にいた異性もいた。なんだこれ。まるで高校時代の黒歴史を様々と見せつけられているようなこっ恥ずかしさにたまらなくなった。
    辻村深月作品の心情描写がとても好きだ。この人の描く中高生が自分と重なって仕方ない。学校の世界が全てだったあの頃に、この人にきちんと出会っていたかった。時間を戻せるならと後悔してしまう。

  • すがすがしいほどにイタさ全開。
    辻村さんの書く廃れた女の子好きです。
    中学生というか、中学校って楽しいこともいっぱいあるけど、危うくてめんどくさい制度の中に成り立ってると感じる。アンちゃんはなんだかんだ夢見がち。徳川は歪んでるけど、純粋で一途。二人の一生懸命さに惹かれました。結局お互い求め合って、心の支えにしてたんだろうな、と。
    ただ、実際殺人事件が起こると予想して読んでたのに…ちょっとがっかり 笑
    まあ、ハッピーエンドで何よりです。

  • ラストの1割は爽やかで、ほっこり、救われた

    徳川が殺したくないって思ってくれて嬉しかった

    徳川側目線の話も読んでみたい

    徳川は、冷たい校舎の時は止まるを読んだのかな?(女子は血に慣れているってとこ)

    芹香とかさちとか、昆虫男子とか、おたく系美術部とか、本当中学!痛々しい

    死ぬのを希望に生きている姿が不思議

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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