オーダーメイド殺人クラブ

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714036

感想・レビュー・書評

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  • 伊集院光がラジオで名付けた「中二病」と呼ぶと矮小化した感じになってしまうが、自分の回りの極小さな世界で必死だった中学生時代を覚えているひとであれば、「あー、分かる」と思って読むのではないだろうか。

    どうか主人公の小林アンがホントに死んだりしませんように、と祈るような気持ちで読み進めた。

    X デー(嘱託殺人決行予定日)の前と後で、まったく空気感が異なる描き分け能力がすごい。まるで憑き物が落ちたような爽快感だ。

    昆虫系少年徳川勝利君が、超ヤバいやつ兼絵の才能溢れるやつ、という設定は、(元)リア充少女の小林アンといい関係になる(なりそうな感じで物語りが終わる)には、必要な設定なのだろうけど、絵の才能がなくても成立して欲しい関係性だった。

    P366
    自分の世界で手一杯で、人のことが見えず、人の話を聞かない、考えることと人をバカにすることだけ一人前で、隣にいる男子一人が抱えた事情にも気持ちにも気づけなかった、中二の小林アンに、教える。

  • 評価が分かれそうな作品だなぁと思いました

    辻村深月さんの猟奇的な部分が強く出てたように感じます
    ぐいぐい引き込まれるとかってわけでは正直なかったんですけど、これ着地どうするの?ってのが気になって一気に読んでました
    ただなんかこう大人な着地だったかも
    もっと振り切っても良かったなぁ
    編集者の人になにか言われたんかな(邪推)

    澁澤龍彦、自分もちょうど中学生の頃読んだなあ
    背徳感?みたいなのを感じるのが良かったんだろうなあ
    遠い昔をちょっとだけ思い出したました

  •  死に漠然と憧れることって、たしかにある。生命エネルギーがあふれてこぼれそうな中学生のころは特にそうだ。リア充女子の小林アンが、死に憧れたのは、今に危険がないからなんだろうな。命に危険がないからこそ、現実から程遠い死に憧れたりするんだろう。そのことに、アンは気づくべきだと思う。母親のこと、ぼろっかすに言う前に。親いないと、中学生は生きられないのに。ただ、私も中学生のときはアンと似たり寄ったりの考えしかしてなかったから、アンのこと悪くいえない・・・

     「私のこと殺してくれない?」と頼まれた徳川勝利が、「いいの?」と即答したのは驚いた。「本気か?」と思ったけど、本気じゃなかった。徳川くんはアンのこと好きだったのか。普通の男の子だ。表現の仕方が独特なだけの。徳川くん目線で話が進んでいたら全然作風が変わっていたんだろうな。

     女と男はこんなにも違うのか。少女Aと少年Aは、別世界の住人なんだろうなあ。そして、一線を越えられなかった少女と少年は、こうやって大人になっていくんだな。
     かつて私も感じた狂気に、大人になって再会できた気がした。なんだか懐かしくなった。

  • 殺され願望のリア充少女と少年A候補の昆虫系男子の物語。タイトルの通り、少女の殺され方について吟味するなかで中学生らしい胸糞悪い出来事が連続する。リカーシブルとか少女には向かない職業とかもそうだが、そもそもこの女子中学生ものは読み続けるのがめちゃくちゃしんどい。なかなか感情移入できないし、とにかく胸糞悪くて長い。勿論、予定調和のようですが、本作はハッピーエンドで終わるが、少年の立場から考えると、ああなるほどなぁと最後によくわかる仕掛けでした。やっとここで感情移入できました。よかったね。中学生の死に損ないは余生とか言っときながら、けろっと忘れちゃう感じ。それを皮肉った結末の小説、麻耶雄嵩でありましたね

  • バスケ部に所属し、リア充中学二年の小林アン
    赤毛のアンが好きでいかにも「赤毛のアン」的な家を作り出したママを
    美しいのに肩透かしで愚かな母親と思っている。
    学校では、友達にはぶかれカーストの底辺に…。
    アンには絶対に人に言えない自分が本当に好きな事がある。
    殺人事件や自殺や大量死の事故で悲惨で印象の強い新聞記事をスクラップしたり、
    頽廃的な人形の写真に心を奪われる…。
    何処かの中学生が自殺したり、事件に巻き込まれたり、或は殺人事件を起こしたり、
    そういうニュースを見ると、その子達に遅れているんじゃないかと、少し焦る…。
    普段は気にもとめない昆虫系男子(イケてない男子)徳川勝利の異様な行動を目にしてしまう…。
    衝動的に『自分を殺して欲しい』…。
    普通の中学生とは違う『特別な存在』となる為
    今迄になく、斬新で人々の記憶に残る…殺人事件を計画する二人…。

    辻村深月さんの 本大好きです。
    でもこの本は、何とも言えない嫌な気持ちになりました。
    途中で読むのをやめようか…とまで思ってしまった。
    アン自身も認めている中二病…女の子同士のややこしさ…。
    焦燥感・閉塞感・孤独感…良く伝わっては来ました。
    しかし、共感出来なかった。
    でも、ラストはとってもホッとした気持ちで読み終える事が出来ました。

  • 一組の中学生カップルが、“死”に向かって進む一冊。
    一人は殺す側に、一人は殺される側に。

    変わっているのは、殺される側の女子が、
    “理想的な死”を演出してもらおうとの依頼をしている点。

    人々の記憶にいつまでも刻まれるような、
    そんな“死”を迎えたいとの想いに突き動かされて。

    さて最後、彼らは“死”をどのように迎えるのでしょうか。

    ハリネズミのような痛い青春の群像と、そう感じました。
    自分の時はここまで“死”を考えていなかったなぁ、とも。

    どこか冷めたような、それで熱いような、
    そんな人の描かれ方も含めて、なんとも辻村さんらしい、そんな一冊。

  • 「これは悲劇の記憶である。」からはじまっていたことをラストで思い出した。
     ”すごい事件”の計画を書くノートのはじめに書いた言葉がそれだ。
    「記録じゃないのか」と訊かれるなど、記録と記憶の違いを読み手に印象付ける
    ところがうまい。
     現在進行形で起こっていたのかと思ったら、事件決行日のあと、
    月日はどんどん先へいき、大学入学前になる。
     そしてそれが現在、今。記憶だったのだ。

     中学生の心理描写に安っぽさも子供っぽさもなく、想像だと思わせられたりもしない。
     必死に流れていく中学生の日々が本物と変わらずそこにある。

     けれど、全体的にみるとなにかが足りなかった。
    寄り添えるものがなかったのかもしれない。
     

  • らしさ全開。辻村さんは特にとんがった10代女子を書くのが抜群に巧いと思う。
    まず題名からして物騒なことこの上なく、内容も不健全といってもいいかもしれないけども、世の中のことをわかってるつもりでわかっちゃいない中2の世界なんてこんなものだよなぁとリアルさも感じました。
    この話のように、物事が起きること、または起きないことはほんのちょっとの紙切れ一枚程度の差なのかもしれない。

    辻村さんに限らず、教室の中での力関係を「カースト制」という言い方をしている小説を最近よく見かけるけど、確かに言いえて妙なんだけど、そこまで認めたくない抵抗感があるなぁとモヤモヤします。

  • 美しい死に様に憧れ、完璧に死ぬことを求めるアン。
    自分を殺してもらう加害者にはクラスの昆虫系男子、徳川を選ぶ。
    2人の美学は同じ。
    何がかっこよくて何がダサいと思うかが同じ。
    徳川が描いた絵を介して、最初から惹かれあっていた2人。
    殺人計画を練りながら、クラスのヒエラルキー問題や父親の再婚なども交え、通じ合わせていく。
    それまでのおぞましさを忘れさせるような、最後の最後でさわやかにまとめ上げた話の結びがすごかった。

  • 2人の関係がすごい微妙でそれがいい
    クラブの意味がわかった気がする

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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