ハコブネ

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著者 : 村田沙耶香
  • 集英社 (2011年11月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714289

ハコブネの感想・レビュー・書評

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  • それぞれ違った感覚を持ちそれぞれに思い悩む3人の女性たちの物語。
    19歳の里帆は男性とのセックスが辛い。自分の性に自信が持てない彼女は、第二次性徴をやり直そうと、男装をして知り合いの少なそうな“自習室”に通い始める。
    そこで出会ったのは、女であることに固執する31歳の椿と、生身の男性と寝ても実感が持てない知佳子だった。
    それぞれに悩みを抱える3人は、衝突しあいながらも、自らの性と生き方を模索していく。

    “自習室”と言うのは、私のイメージとしてはネットカフェに近いようなところで(実際にあるものなのかは分からないけれど)、月々決まったお金を払って会員になると入れる、名前通りそれぞれの自習をするための施設。
    里帆のように人目を避けて特殊なことを学ぶために通う人もいれば、椿のように資格用の勉強をするために行く人もいれば、知佳子のようにただその雰囲気が好きで通う一風変わった人もいる。
    物語は里帆目線と知佳子目線の章が交互に続いていくつくりなのだけど、その中心には椿という女を全開に出した実際美人の女性がいて、里帆と知佳子は椿を通して自分を確かめ知っていく。

    自分はこの3人の誰に近いか考えてみたけれど、誰にも似ていないという結論が出た。それぞれのことを理解出来る面もあるし、全然分からない面もある。
    歳を重ねても女であることからは逃れられないことを知っていて、尚且つ美人だからそれを保っていかなければいけない自覚が強すぎる椿がもしかしたら一番痛々しいかもしれない。
    里帆の悩みは歳を重ねることで変化していくかもしれないし、知佳子は悩みというよりも既にそれを受け入れて半分諦めているような兆しが見えるから。

    自分の性に悩むことは思春期ならばきっとよくある話で、望まずとも変化していく自分の心や身体をどうやって受け入れていったのだろうと思い返してみたりしたけど、はっきりと思い出せないところを見ればそういうのは多分理屈じゃないんだろうと思う。

    個人的に面白いのは知佳子だった。
    人と付き合ってもセックスをしても、その人そのものと触れあっている感覚が持てず、宇宙と触れあっている感覚にしかならない、という悩み。
    自分は星の一部なのだという強い感覚。
    ずっと手応えがないままで、本当に好きな人が出来てもやはりその感覚が消えない。
    望みを持っては諦め、を繰り返す知佳子が一番切なく、浮世離れしていて、そして強い。

    村田沙耶香さんの作品は、やっぱり不思議で面白い。生々しくもあるけれど、どこかにふわふわした要素もあって。
    人の感情を巻き込んで読ませるものを書く作家さんだな、というイメージ。

  • 主人公の里帆の戸惑いがとても身近に感じられて読み始めたのだが、読み進むうちに苦しくなってきた。なぜ、どうしてそこまでセックスにこだわるのだろう。「性別のないセックス」という概念そのものが大きな矛盾をはらんでいると思うのだが。
    知佳子の感覚もまた不可解だった。彼女のもつ「物体感覚」はとても興味深かったけれども、人間だけが生物というわけではないのだ。
    作者は、椿という女性をもっと普通の典型的な女性として描いたと語っているが、普通の典型的な女性ってこんなに底が浅いものなんだろうか。
    自分の性に真摯に向き合う姿勢はきっとすばらしいものなんだろうけど、妥協せず、折り合いもつけられないということそのものが、すでに性にとらわれ固執してしまっているということはないのだろうか。そんなことを考えさせられる小説だった。

  • 里帆にとって、夜でも日焼け止めを欠かさず塗る椿が理解できないように、また、椿にとって、ストッキングの伝染を気にしない里帆が理解できないように、知佳子にとっては、世の中の人間たちが自ら作り上げたルールの中で生活していることが理解できない。全部同じようなことなのに、大げさに驚いたり、きずついたり、ぶつかりあってしまうんですよね。里帆が、セックスの辛さをこの先何年も行き場のない欲望を抱えて生きていかなきゃならないことと結びつけて考えていたのが印象的でした。全体的に、特に知佳子の視点は、共感しづらいけど、共感しようとすること自体がおかしいんだよなあ。里帆と椿のふたりも、まさに感覚を共有しようとしたところで、決裂してしまう。

  • 2017/12/13

  • セクシュアリティとセックスをめぐる巡礼旅のような物語。行き着く場所はそれぞれだったが、行き着けて良かった。男性の伊勢崎さんがとても素敵。とてつもない孤独を噛み締めた物語でもあった。社会の虚構性とそこにこそ真実性もあることのせめぎ合いが、泥沼のように苦しい。

  • 里帆の自分の性への葛藤の描写がよかった。
    里帆サイドのストーリーは面白く読めた。
    知佳子の価値観は理解は出来なかったし宗教じみていて怖かった。
    それよりも椿の面倒くささとヒステリックな部分が嫌で強情だなぁ、嫌な女だなぁと思ってしまった。
    女ってそういうものって思うから苦しむのかな?

  • コンビニ人間に衝撃をうけての連読。
    村田紗耶香さんはセクシャルマイノリティ作家なのね。第二次成長をやり直したい里帆はまぁともかく、知佳子の、人間としてではなく星の欠片としてのセックスを選ぶ、って…異次元すぎて新鮮すぎる!天才なの?
    村上春樹は村田紗耶香をどう思ってるんだろう、と余計なお世話だけどちょっと気になった。

  • 村田沙耶香さんの「ハコブネ」、2011.11発行です。「性別を脱いでセックスする」がテーマなのでしょうか・・・? 佐山里帆19歳、平岡知佳子31歳、芹沢椿31歳の織り成す世界、これは「ポエム」と言っていいのでしょうか・・・? 女性と女性、女性と男性、人間二人の間にセックスが成立するかどうか。村田沙耶香さんの性に対するこだわりとつきつめ、そんな香りがする作品です。

  • 好きな相手とでも性交が苦痛な里帆。自分を確かめ直すための場所として選んだのは「自習室」。

  • 性欲はあるのに、どうしても恋人とのセックスが苦痛な里帆。
    女であることを鎧のように完璧に身にまとう椿。
    社会のすべてを”おままごと”と感じ、星の欠片としてしか生きられない知佳子。
    三者三様の女性が乗り合わせたハコブネは、どこへ向かっているのだろう。

    セクシャルマイノリティをあつかっている小説になるのかな。
    特に里帆の性別を超えた先にあるものをみつけようともがく姿は痛々しかった。
    知佳子の、今目の前にあるものすべてアースの一部であり、星の欠片である私たちの中をそのアースの水やエネルギーが循環している、という思考は、突飛なようでいてどこか頷かされる。
    肉体的ではなく物体的なセックス。
    このあいだ読んだ「星を吸う水」に通ずるところが多かった気がします。

    椿視点がなかったのが残念。
    彼女が性について思っていることや、彼女が本当になりたい姿、そういうのを彼女自身の言葉で知りたかった。

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ハコブネの作品紹介

セックスが辛く、もしかしたら自分は男なのではと思い、男装をするフリーターの里帆。そんな曖昧な里帆を責める椿は、暗闇でも日焼け止めを欠かさず肉体を丁寧にケアする。二人の感覚すら共有できない知佳子は、生身の男性と寝ても人間としての肉体感覚が持てないでいた-。十九歳の里帆と二人の"アラサー"女性。三人が乗る「ハコブネ」は、セクシャリティーという海を漂流する。

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