旅屋おかえり

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著者 : 原田マハ
  • 集英社 (2012年4月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714463

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旅屋おかえりの感想・レビュー・書評

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  • 涙もろい人は、けっしてけっして、電車やカフェで読んではいけません!
    家の中で本を開いた私でさえ、涙と鼻水の嵐で人前には出られない顔になって
    「お願い!どんなにかっこいい佐川男子だろうと、今は宅急便運んでこないで!」
    と、本の神様に祈ってしまったくらいなので。

    まだ寒い4月の角館を、青空の下で咲き誇るしだれ桜を探して歩く
    「おかえり」こと丘えりかの旅に、亡くなった母との最後の旅を思い出しました。
    とはいっても、そのあと入院が決まっていた母と、父、私、娘4人の旅は
    とにかくきれいなものを見よう、おいしいものを食べよう、楽しくおしゃべりしよう!
    と、宿も決めずに春の道南を車で巡る、行き当たりばったりなものだったのですが。

    急ごしらえの旅だったわりに、函館で満開の桜に感動したと思えば
    ニセコでは、もう5月なのにスキーをしてる人がいて驚いたり
    飛び込んだ民宿のご主人が、捨てられた犬猫を拾いまくって育てている人で
    動物大好き♪ な母が、ずっとここにいたいと駄々をこねたり、本当に楽しくて。
    ひと月ほどたって母が亡くなったあとも、父や娘と
    「いい旅だったね。おばあちゃん、楽しそうだったよね」と話していたのですが。。。

    なんとなんと、病院に母を見舞ってくれた従兄弟に聞いてしまったのです。
    「叔母さん、次はアフリカに行きたいって言ってたよ。ライオンが見たいって」
    腹水もたまっていて、美しい景色を探して歩くというよりは、数十分おきに
    トイレを貸してくれるコンビニを探す、道南コンビニ巡りの旅みたいになってたのに。
    。。。このわがまま娘!じゃなくて、わがままママめー!と大笑いしたのですが、
    旅屋 おかえりだったら、最後の入院となった母のかわりに、
    遥かアフリカまでも旅してくれたでしょうか。

    修学旅行中スカウトされ、北海道最北端の礼文島から
    希望に胸をふくらませて上京した、おかえり。
    アイドルとして花開くこともなく、やがて「元アイドルのタレント」、
    「売れないタレント」を経て、今や三十路の「旅屋」となった彼女が
    さまざまな事情を抱えて自分では旅に出られない人たちに代わって
    全国各地に旅をし、旅の「成果物」を持ち帰る物語です。

    この「おかえり」、ただ単に依頼主の要望に沿って旅をするのではなくて
    彼女自身も目いっぱい旅を楽しみ、時には当初の目的を逸脱しながらも
    依頼した人の幸せを願ってお節介を焼きまくるのが、とてもいい。
    なんとしても満開の桜を撮ろうと、ざあざあ降りの雨の中で濡れ鼠になったり
    露天風呂をレポートしようとしてお湯の中に墜落したりするおかえりと一緒に
    泣いたり、怒ったり、笑ったり、心で日本各地を駆け抜ける旅をしました。

    旅を終えて戻ったとき、温かい「おかえり」を言ってもらえる人は幸せです。
    そして、その幸せに包まれた人は、また他の誰かに
    心から「おかえり」と言ってあげることができる。
    温かい「おかえり」をつないでいくために、きっと旅はあるのです。

  • いやぁ~、旅好きで食べることが大好きな僕にはたまらん物語やったし、
    笑って泣いてもうお腹いっぱい(笑)

    原田さんは悩める登場人物たちの心理描写を丹念に描いていくのが上手いし、
    詳細で巧みな情景描写によって
    読むとすぐさまイメージが浮かぶので
    僕にしては珍しく2日でイッキ読みでした(笑)

    北海道は礼文島の小さな島育ちの主人公、丘えりかは
    島を出て、できるだけ遠くまで移動すること、
    海の「あっち側」の世界を見ることが夢だった。
    そして高校卒業後念願叶って
    東京に出てきたものの18、19の時にぼんやり売れて、あとは鳴かず飛ばず。
    そして自らの不注意からスポンサーの怒りを買い、32歳にして唯一のレギュラー番組「ちょびっ旅」が終了してしまう。
    亡き父と約束し、芸能人として花開くまでは、決して故郷には戻らないと固く誓った手前、仕事もお金もない状況にもかかわらず、誰にも相談できないえりか。
    そんな時事務所を訪ねてきた婦人から
    難病にかかり闘病生活を続けている娘の代わりに旅をしてくれないかとの申し出が…。
    不甲斐ない自分を切実に必要としてくれる人がいることに感動したえりかは
    動けない誰かのために旅をする旅代理人、「旅屋」を始めることにするが…。


    芸能事務所「よろずやプロ」唯一のタレントで、
    旅番組のリポーターを職業とする落ち目の元アイドルの丘えりか、32歳(本名は岡林恵理子)。

    作品ごとに魅力的なキャラクターを造るのには定評のある原田さん。
    今作の主人公、丘えりかの
    元気ハツラツで嫌みのないキャラも見事ですね。

    あと、四角いハゲ頭がトレードマークで元プロボクサーの
    よろずやプロ社長、萬 鉄壁(よろず・てっぺき)の
    ぶっきらぼうで強面なのに人情味あって憎めないキャラや、
    元セクシーアイドルで
    今はよろずやプロの事務および経理担当副社長の「澄川のんの」のキャラも
    ドラマ化するなら誰がいいかな~って思わず考えてしまったし(笑) 

    他にもヘアメイクのみっちゃん、スタイリストのミミちゃん、ディレクターの市川さん、カメラマンの安藤さん、ADの奥村くんなど
    まるで旅芸人の家族みたいなスタッフたちもみんなあったくて
    損得勘定ナシにえりかと付き合っていて、
    物語の中でもいつもえりかを支え、それぞれの見せ場があります。

    お年を召した両親の金婚式のお祝いに思い出の地へ行ったり、
    遠く離れた恋人へメッセージを届けたり、
    様々な人々と出会い、その人たちの思いを汲み取り、
    えりかは旅屋の仕事をこなしていくのですが、
    やはり一番印象に残ったのは旅屋を始めるきっかけとなった、
    全身の筋肉が次第に萎縮していく難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う女性のために
    満開の桜を映像に収めてくるエピソードかな。

    いつの間にかすれ違ってしまった父と娘の切ない思いが身に沁みたし、
    病室で旅のVTRが再生されるシーンと
    (雪見酒できる温泉のシーンや旅で出会った人たち総出演のこの映像シーンが本当にいいんですよ!)
    不器用な父の真意にえりかが気付くシーンには
    本当に目頭が熱くなりました。


    僕自身、プライベートやボクシングの試合でいろんな国や
    様々な都道府県に行ったけど、
    人は旅に出て広い世界を知ることで
    普段の生活では手にできない、
    いろいろなことに気づかされるんですよね。

    今日の月と明日の月は同じじゃないこと。
    何かを得るためには
    何かを失わなくちゃならなくて、
    夜の時間は
    昼の時間より進み方が遅くて、
    夜の風は
    音がザワザワして胸がキュウってなる感覚とか。

    心に染み入る月明かりの美しさだって、
    暖かい場所から一度離れてみなくちゃ
    本当は分からないことなんですよね。

    旅から帰ると誰もが普通の日常に戻り、
    やがて旅の記憶は曖昧になる。

    でも、それでいいのです。
    旅先で見た景色や経験は決して消えさったりはしない。

    それは体のどこかに眠っていて必要な時に呼び覚まされるし、
    旅で得たものや美しい景色は
    僕たちを造る揺らがない核となって
    ツラい時、苦しい時、
    どんな時もあなたを支えてくれるハズだから。

    ああ~、ひさしぶりに僕も
    どこかへ旅に出たくなったなぁ~♪

    旅やグルメ番組が好きな人には
    ホントたまらない小説です。

    ではでは最後の締めは
    えりかの決めゼリフでいきますか~(笑)

    『それでは皆さん、ご一緒に。
    旅に出ようよ、明日から。
    いいことあるよ、大丈夫!』

  • 売れないタレントの丘えりか、通称「おかえり」。
    唯一のレギュラー番組だった旅番組が、スポンサーを怒らせたため
    打ち切りになってしまう。
    失意のおかえり。そしてタレントはおかえりだけの弱小プロは危機に陥る。
    そんなおかえりの元に、病気で動けない娘のために旅に出てほしいという依頼が舞い込む。
    それがおかえりの転機となった。

    旅は、自分が行ってこそ意味がある。
    それはあたりまえに思っていたことだけれど、例えば「世界の果てまでイッテQ」や「ぐっと!地球便」は毎週楽しみにしているし、他にも旅番組をやっているとうきうきして観てしまう。
    旅行記も旅行エッセイも探検記も好きで、「いつかこんな場所に行きたいな」と思うときもあれば、「行けないけどいいな」と思うときもある。
    そんな風に自分にはできない人の旅を見聞きするのもわくわくするものだ。
    身体はここにあっても、心だけは自由に旅立ててしまう。
    そう考えてみると、自分でするだけが旅じゃないんだな。

    自分のために、誰かに旅に行ってもらう。
    それもひとつの「旅」のかたち。
    誰かのためにする旅で、人と人との絆を取り戻す。
    おかえりの始めた「旅屋」は突拍子もないようで、素敵なアイデアだと思った。

    最初の娘さんのための旅の話にやられてしまい、うるうるしてしまった。
    親子の確執よりも、夫婦の確執の方が解し難い気がするので、後半の旅は、そんなにうまくいくのかな?とも思ったけれど(笑)
    私が体が動かなくなって、おかえりさんに行ってもらうとしたら、どういう場所を選ぶかなぁ…。

  • 原田マハさんは、文章が巧い。風景も心情も、本当に綺麗な文章で描く。原田さんの描く主人公の女子が、みんな、まっすぐだ。すなおで、まっすぐだ。彼女たちには、好きなものがあるからなんだろうな。
     
     旅が大好きな売れないタレント、おかえりこと丘えりか。旅番組打ち切りとなり、その後始めたのが「旅屋」。
     事情があって旅にでられない人に代わって、おかえりが旅をする。依頼人は、おかえりの旅したDVDを成果物として受け取る。報酬は出来高で。

     秋田県角館のしだれ桜。愛媛県内子町の伝統建築物の街並み。いいなあ。いってみたい。
    「出かけてみなくちゃ、何が起こるかわからない」そうだなあ。おかえり、そのとおりだ。
     よろず社長のしたように、何も考えずふらりと旅をしてみたい。おかえりのように、出発前夜のわくわくを楽しみたい。そして、帰ってきたときに、誰かに「おかえり」を言われたい。
     旅の楽しみ方を考えさせられた作品でした。

     旅にでたい!!

  • あなたの代わりに、全国どこでも旅に出ます!
    唯一のレギュラー番組「ちょびっ旅」が打ち切りになった売れないタレント・丘えりか。ひょんなことから、病気などの事情を抱えた人から依頼を受けて、代わりに旅をする「旅屋」を始めることに。

    明るい頑張り屋のおかえりや、見た目は怖いがあたたかい鉄壁社長、元セクシーアイドルのんのさん。いやな人が出てこないのがマハさんらしいというか、安心して読めるなぁ。

  • あったかい気持ちになれる本です。

    「おかえり」こと、丘えりかは、タレント。
    北海道最北端の礼文島に生まれ育ち、スカウトされてアイドルになったが、あまり売れないまま32歳に。
    感じの良い容姿で、明るい性格、素直なリアクション。
    だが、それ以上のものはなく、プロダクションも弱小だったのだ‥

    唯一のレギュラー番組の「ちょびっ旅」を楽しくやっていたのだが、ミスで降板に。
    もう所属タレントもおかえりしかいないので、プロダクションは存続の危機!
    そこへ、病気で動けない娘の代わりに旅をしてほしいという依頼が舞い込みます。

    家族旅行では見られなかった満開の桜の写真を撮りに、角館まで行ったのだが、なんと急な雨に。
    それでも‥?
    出かけた先の温泉宿の家族も、おかえりの一人旅を心配してくれる番組スタッフも、とてもあたたかい。

    そして、番組復活をかけた依頼が‥?
    プロダクションの萬鉄壁(という名前でそれにふさわしい外見の)社長にも何か関わりが‥

    具体的な旅行案内になっていると同時に、旅というのはこんなふうに楽しいものだと、一緒にわくわく。
    私は旅行しないほうなんですけどね~何だか移動する喜びを追体験できました。

    たまたま、この感想を書くのが遅れて、実は「楽園のカンヴァス」を読み終わったばかり。
    知らなかったら別人の作品と思うぐらい、雰囲気も内容も違います。
    でも知っていると~戸惑いや困難もありつつ、あるときから夢中になっていく熱っぽさや、ふとした出会いで惹かれあう様子に、共通したものを感じますね。
    心通い合うあたたかさが、じんわり心に染みとおります。

  • 諸事情によって
    旅に出られなくなった人達の
    身代わり(ぬいぐるみ等)、を連れて
    旅に出るお仕事がある事をTVにて知った。

    だが、
    だからそれがどう、とか思う事もなく
    ただ
    (そうなんだ。)と、その時はぼんやり番組を
    眺めているだけだった。

    『旅屋おかえり』は
    まさに私にとって(そうなんだ。)のドラマ。

    物語への興味はただひとつ。
    (原田さんはこの仕事の、どこに感動ポイントを
     見出したのだろう?)という事のみ。

    そして読後。
    案の定ハラハラと涙を流しながら
    (旅ってすげ~パワー…!!)
    と、胸をじんじん熱くさせている私がいた。

    主人公おかえり(丘えりか)の旅は
    一人でありながら
    一人じゃなかったのだ。

    そういえば、
    何か素敵な事に遭遇した時に人は
    (あ~っ、誰かに話したいな、見せたいな、伝えたいな。)と、どうしようもなく思うもの。
    写真家なんかもそう。
    辺境の地にて、
    極北の地にて、
    容易く人が踏み入れられない地に出向いて
    (世の中はこんなに素敵だよ、見て見て!)
    と、
    自分の命を顧みず
    皆に伝えたいが為だけにシャッターを切る人とか。

    話はそれたが、
    おかえり、の目は依頼者の目、読者の目、私の目、皆のファインダーであり、
    タレントでありながら、そんなピュアな気持で仕事を続ける彼女が見た胸震えるような光景を、共に体感出来た事は、嬉しい事だった。

    この仕事に従事している人には特に、読んで欲しいな、と思えた物語。

  • この本を読むと、非常に旅がしたくなる。
    そう、「おかえり」といってくれる人がいるから
    「ただいま」と帰る場所があるから、旅に出れるんだなぁ・・・・
    いろんな人に出会える、素晴らしい景色を見ることができる。だから、私も旅が好きだ。

    「おかえり」さんは、依頼を受けて旅にでるんだけど、仕事以上に自分もその旅を楽しんでいて、彼女のひたむきで真っ直ぐなところが大好きだ。
    彼女にも「おかえり」と待っていてくれる人がいるから、心から旅を楽しむことができるんだなぁ。
    「ちょっび旅」ファミリーの温かさが心にしみた、そして旅にでたくなるような素敵な本でした。

  • 原田マハさんの本は3冊目。

    「キネマの神様」に次いでまた泣かされてしまいました。旅好きなので琴線に触れる本でした。

    ちょっと前に原田さんはどんな人なのかと思って公式サイトを見ていたら、

    5月25日放送のNHK Eテレの日曜美術館、『原田マハが挑む 貴婦人と一角獣』に原田さんが出演とのことで録画し鑑賞。

    「貴婦人と一角獣」を題材に小説を書いている原田さんが貴婦人と一角獣と対面して感想を述べたり、執筆中の小説のことを語ったりしていました。

    原田さん曰く、小説を書いてる時に「ある場面がパッと見えるんですよね。映像で見えるんです。あるフレーズで降りてくることがあんまりなくて映像で見えることが多いですね」とのこと。

    貴婦人と一角獣を題材にした小説も面白そうなので出版されたら読んでみたいです。

  • 前々から図書館で見かけて気になっていた、原田マハさんの一冊。
    不思議と手にとっていなかったのですが、今回は何かに呼ばれたようです。

    相変わらずのさわやかな読後感で、素敵な“旅”を物語ってくれました。

    主人公は、ひたすらに旅好きな「丘えり」という“元”アイドル、
    所属事務所も零細で、ブレイクの気配すらない彼女、、

    旅を題材にしたレギュラー番組でどうにか食いつないでいたのですが、、
    その唯一のレギュラー番組が打ち切られたところから、物語が始まります。

    困りに困った上に始めたのが、、「旅屋」というサービス。
    一言でいえば、依頼者の代わりに旅を代行するサービスとなります。

    そのきっかけは、本当にささやかなモノで、、
    すれ違いを続ける家族を少しでも手助けしたいとの「角館」への旅でした。

    その後、旅屋が軌道にのりはじめ、半年ほど過ぎたころに、
    物語の軸となる「内子」への旅が始まります。

    ラスト、旅屋を続けるか、打ち切られた番組を復活させるのか、
    そんな選択肢を前にした「丘えり」の選択は、さて。

    最初のモチーフは「角館の桜」、季節は巡り「内子の紅葉」、
    その四季の移り変わりを感じさせてくれるのもまた、美しく。

    人と人とのつながりはどこか“旅”のようで、
    そんな連環の中で出会い、別れ、また、つながっていく。

    旅は“人の心を軽やかに”羽ばたかせてくれる、そんな風に感じた一冊です。

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旅屋おかえりの作品紹介

丘えりか、通称「おかえり」、32歳、職業はタレント。
プロダクションの社長からスカウトされ、アイドルとして華々しくデビューを果たすも、鳴かず飛ばずな日々を送る。
ある日、彼女の唯一のレギュラー番組が打ち切りとなってしまう。
しかし、そんな「おかえり」の元に「病気で動けない娘の代わりに旅に出て、様子を報告して欲しい。」
という依頼が舞い込む。
そうして、彼女の人生は大きく動くのだった。

旅に出ます、あなたのために。

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