暗くて静かでロックな娘

著者 :
  • 集英社
3.43
  • (11)
  • (23)
  • (26)
  • (5)
  • (5)
本棚登録 : 198
感想 : 25
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087714807

作品紹介・あらすじ

盲目の美女ロザリンドとのロマンスを描いた表題作他、全十編の最新小説集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『読んでいる最中は十分楽しめた本』

    10の短編が収められている短編集です。

    話はあっさりとしていますが、読んでいる最中は十分楽しめました。

    収められている短編の内容としては、いわゆる社会の底辺に居ると自覚している人物や周りからそう見なされている人物たちの救われたり救われなかったりする話が主に収録されています。


    グロテスクな描写がされている話もありますが、著者の本の中では本に占める割合や直接的な表現は他の著作と比べると(シンカー、ロケットマン等)としては少ない方であるように思いました。

    だからといって爽やかな話が多い訳でもありませんが。

    個人的に印象に残った物は「おばけの子」「反吐が出るよなお前だけど・・・・・・」、好きな物は「チョ松と散歩」です。
    「おばけの子」は個人的に展開は好みではありませんでしたが描写が上手いと感じましたし、「反吐が出るよなお前だけど・・・・・・」は話の登場人物を作家と読者に置き換えて読むと唸らされる物があります。「チョ松と散歩」は都市伝説的な話に偶にある「子供の頃の変わった友達」的な話ですが、個人的には物語の展開と落ちが綺麗に感じた話でこの本の中で一番好きな話です。

    この本全体の個人的な感想としては、話の描写は上手いと思いますし、話自体も面白いと思うのですが、殆どの話に於いて話の終わり方があっさりとしすぎている様に感じ、読んでいる最中は十分に楽しめはするのですが、話が終わる時に感じるところが少なく、若干物足りないとも思ってしまった本という感想になります。

  • この方の作品にしてはふつう、かな?
    個人的には奇想天外な発想や価値観と、それがあたりまえであるかのように存在する世界観を楽しむ作家さんだと思っていたのですが、
    本作は比較的人間として通常の社会性、倫理観を基盤にしている作品が多い印象でした。
    「日本人じゃねえなら」はふつうに悲しかった。そこらじゅうで交わされる、「日本人か否か」っていう価値観が不気味さを醸している。
    好きだったのは「チョ松と散歩」。この作家さんの作品にしてはえぐさがほぼなく、少年たちの友情と結末は普通に泣ける、珍しいかんじ。
    「兄弟船」、「辺戸が…」、は罵詈雑言とスラングが飛び交うなか人の醜さや憎めなさが醸される面で、「悪口漫才」はえぐさや結末も含めて一番平山作品のイメージに近い話。
    「おばけの子」は、すごかったな…虐待を彼が書くとこうなるのか、という作品。淡々とした進行と、救いのなさが怖い、けど、この結末でこそ意味のある作品だとおもう。
    総じてバラエティ豊かで楽しめましたが、平山作品入門にはおすすめはしないかな、という印象。魅了されるほどの世界観も、クセになるほどのえぐさもなりを潜めている分、より多くの人が読みきれるかもしれないけど、これ一冊で大ファンになる人も多くはないかも・・・?

  • 『他人事』と雰囲気が似ていると思ったら、同じ集英社刊行。
    集英社の平山夢明作品の装丁はスゴく好み!『他人事』は大好きなトレヴァー・ブラウンだし……。
    『他人事』同様、一編30p程度の短編集。『他人事』程の振り幅はない。
    胸糞悪くなる絶望系はあるものの、鬼畜系スプラッター・グロも、SF的なモノも、無国籍ヴァイオレント、クライムorハードボイルド風も……。
    細部の表現、人物キャラのタチ方は実に平山作品的大好物!
    だが、以前のようなアクの強さはあまり感じなかった。4/10、その四割は平山作品にしては先がある(やや、前向きな……、個人的見解)終わり方である気がする
    『~横メルカトル』、『ダイナー』前の助走(平山作品初心者)にはイイが、自分のような人間には、少しモノ足りない。
    個人的には表題作品『暗くて静かでロックな娘』が一番好み!そして、絶望系佳作、一番胸糞悪くなった『おばけの子』が一番らしい作品のような気がした。

  • 相変わらず、壮絶な内容。が、以前の短編集の内容に比べるとややシリアスで同時代的な感じがする。例えば、「独白するユニバーサル横メルカトル」なんかは少しSFチックな雰囲気もあったのだが、本作ではそのような雰囲気はない。同時代的なだけあって、少し陳腐に感じる人もいるかもしれないが、私はむしろ本領発揮しているのではないかと思う。陳腐なもの、そして惨めさの極限を描いているように思える。そのうえで、救済とは何なのか、ということを問うているようにも感じられる。
    例によって、表現は直接的で悪趣味といえるものであるので、その方面に嫌悪感を覚える方にはお勧めできない。

  • 10編の短編で構成された作品。「或るろくでなし〜」は
    全編に死がまつわる作品ですが今回はそういった見える
    テーマや縛りはないまでも...やはり平山作品としか
    言い様のない小説でした。
    登場人物は全てろくでなしのクズで基本、無職w。
    下品でゲスくて口汚くて、不適応者で...挙げたらキリの
    ない底辺っぷり。

    ドロドロのタールでイヤな臭いが鼻をつきながらも
    ヤサグレるでも、怒るでもなく、なんだか静かに
    物悲しい景色が確実に残る作品が今回は多いです。
    だからと言って安易に人にはオススメできない
    救いようのないバッドエンドだし、表現も放送禁止用語
    バンバンです。
    ただし、そういった表面上を持ちながら、この数ページで
    一気に作品世界に全てを持っていかれるところに、
    作家「平山夢明」を求める人が多いのかも。

    表題作「暗くて静かでロックな娘」と
    「反吐が出るよなお前だけれど」が秀逸。
    この人にしか描けない男女間の感情の機微と
    優しさに...不覚にもゾクリ...と来ます。

  • おばけの子、しんどかった。
    実際の事件を下書きにしてるらしいですね…。現実の方が余っ程怖い。

  • 最後の三篇なんて、続けて読めないほど心が揺さぶられちゃって。。。グロいの、怖いのとは一線を画した物語だと思いました。傑作と評されるのも大いに頷けます。いやぁ、こんな物語が読めて幸せです。

  • おばけの子
    評価通り厭な話だった〜
    現実に虐待されてる子は、こんな感じなんだろうか?酷すぎる。

    チョ松と散歩
    この本の中で1番好き話。

  • 文庫が出たけれど、どうしても装丁がこっちの方が好きなのです。クリアファイルみたいな素材と写真が中のイメージと合っている。

  • 生理的に受け付けない描写が多くて読み切れなかった。
    グロいよりも汚い描写が無理…。

全25件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1961(昭和36)年、神奈川県川崎市生まれ。法政大学中退。デルモンテ平山名義でZ級ホラー映画のビデオ評論を手がけた後、1993年より本格的に執筆活動を開始。実話怪談のシリーズおよび、短編小説も多数発表。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)により、2006年日本推理作家協会賞を受賞。2010年『ダイナー』(ポプラ文庫)で日本冒険小説協会大賞を受賞。最新刊は『俺が公園でペリカンにした話』(光文社)。

「2023年 『「狂い」の調教 違和感を捨てない勇気が正気を保つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

平山夢明の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×