天使の柩

著者 :
  • 集英社
3.63
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本棚登録 : 961
感想 : 143
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087715378

作品紹介・あらすじ

恋人の春妃を失って以来、心に深い痛みを抱えてきた歩太。家にも学校にも居場所がなく、自分を愛せないで育った少女・茉莉。傷ついた二つの魂が惹かれあう…。天使の卵から20年、感動の最終章!

感想・レビュー・書評

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  • 村山さんの「天使」シリーズって、それぞれ話が違うと思っていたらそうじゃなくって全て繋がってたのか?!知らなかった…笑 
    大人になった歩太と14歳の少女が猫を通して出会い、歩太の優しさに触れ、自分を見つめ直していくストーリー、っといったところかな(^^) 歩太とその周りの人の優しさに心がじんわりと温かくなりました。

    去年に「天使の卵」読んだけど記憶がおぼろげで内容ほぼ忘れてました(~_~;) シリーズ系は続けて読まないとだめだな〜。

  • 歩太は変わっていなかった。
    「世の中がどんなに責めても、きみの味方をするよ」
    歩太らしい。

    自分を愛せない茉莉との出会い方も「らしい」。
    こんなに大きな心で茉莉に接することのできる人は
    なかなかいないだろう。

    「天使の卵」などを読んでいなくても大丈夫。
    この作品から読んでも迷子にはなりません。
    でも。
    順番に読むとよさが膨らみます。ぜひ。

  • この作品には二つの側面がある。
    大切な人を失った男性の14年後の物語。
    シングルファーザーと二人暮らしの中学生の女の子の物語。

    この二人の物語がどうして交わるのか。
    『天使の卵』の続編、と言ってしまえば簡単かもしれないけれど、ただ続編として描かれた物語ではない。
    「贖罪」というテーマがこの作品にはあるのではないだろうか。生きていく上で知らずに犯してしまう小さな罪を人と人が関わることで贖われていくような。
    物語の表面だけ読めば、中々いい感じにご都合主義に読み取れる。でもそんな物語ではないと思っている。

    『天使の卵』、『天使の梯子』、『ヘブンリー・ブルー』を読めばより楽しめる。
    大切な誰かを失ったことのあるヒトに寄り添ってくれる作品。

  • 歩太も夏姫も、いろんな悲しみを乗り越え、その痛みを知っているから、どこまでも優しい。歩太のお母さんも温かい。
    茉莉は彼らと知り合って、少しずつ心を開いていく…。14歳の茉莉とタクヤの関係、娘との生活を避け、自殺願望をもつ父親、家族を放り出し帰国してしまったフィリピン人の母親、祖母から辛辣な言葉を浴びせかけられて育った成長期…重い設定に違和感を感じ、読み始めから中盤にかけて、なかなか感情が入っていかなかったので、本当なら★3つ。
    だけど、「天使の卵」「天使の梯子」という温かくも切ない前作から、「天使の柩」では歩太が茉莉と出逢ったことで、彼の閉ざされていた心が揺さぶられ、ようやく前へ歩き出せたことが嬉しくて、シリーズ完結作がハッピーエンドだったので★4つ。
    人は、愛おしく大切な人のためには強くもなれるし、まっすぐに生きてもいける。

  • 温かい気持ちになれる物語だった。
    親に見放され、教師にも友達にも心を許せない少女が、1人の年の離れた男性に出逢い、幸せを掴んでいった。
    お互いに傷つきあってきたから、ここまで寄り添える事が出来たのかもしれない、
    やはり、人は傷ついた分だけ優しくなれるのかもしれない。

  • 『天使の卵』『天使の梯子』に続く作品として、30代になった主人公と、彼に訪れた新しい出会いが描かれる。けど、うーん、自分自身がすでに中年となり浮世の塵にまみれてしまったからか(?)この"純愛"にさしたる感想が持ち得なかったというのが悲しい感想。

  • 悪化する状況に。
    幼い頃から何度も言われ続けていたら、どれだけ違うと心の中で否定したくとも出来なくなるのだろうな。
    偶然の出会いで触れた温かさを知ってしまったからこそ、その居場所を必死に護りたいがために動いてしまったのだろ。

  • 知人から貰って、初めての作者でなんとなく読み進めていたけど、当たりだった。
    最初の方なんとなくケータイ小説読んでるかのような感覚にもなった(笑)
    読後感爽やかで良かったけど、
    タクヤやその仲間らが不快なので−★(T ^ T)

  • 春妃との別れから止まっていたままの、歩太の人生がやっと進み始めました。
    これしかない、これしかないよ「天使の柩」を一言で言うのなら。やっと、やっとです。安堵と解放、そしてさよならを込めて。

    茉莉の絵を書き上げることが、クライマックスかと思ってました。そうではなかった。はじめの一歩。夏姫が泣くのも無理はない。歩太と春妃の一番近くにいて、誰よりも二人を愛し信用し裏切られ傷つけてしまった夏姫。フルチンというパートナーと出会い、自分だけが許されてしまったことを後悔、懺悔する日もあっただろう彼女が、茉莉の絵を見た時の想い。
    はかり知れないほどの安心と感謝でしょうか。

    読み進めている最中は、茉莉が救われるのか、救われないのではないか、という不安しかなかった。彼女が不幸の場に居続けることは、本人にとっても悲しいことは勿論、歩太が今度こそ立ち直ることはできないだろうから。
    心の限界まで追い詰められ、自分の居場所を得るために自らを危険な目に合わせてゆく。必要とされているという言葉面だけを求め、その裏にあることに目を逸らしながら奈落へ進んでゆく茉莉。歩太やザボンと過ごす日々と、タクヤと過ごす日々の明暗が際立つほどに、茉莉の心を空っぽにしていた呪いが怖い。

    祖母や父親から与えられてしまった呪いの日々が、歩太やザボンたちとのこれからの日々で少しずつ払われていきますように。その呪いが祝福に変わらなくても、取り憑かれることがなくなりますように。


    春妃とのことを話すことで、本当に彼女との日々を過去にできた、過去にする心の準備ができてきたのではないか、と思います。振り返ることはあっても、立ち止まることはないし、戻りたいと思うことはないのではないでしょうか。急にいなくならない、という約束は茉莉だけでなく歩太自身への約束でもあるのでしょう。


    一年前は死者に舞い落ち覆い隠そうとしているかに思えた桜が、今では未来を寿ぐ先ぶれのように思えます。歩太と茉莉だけでなく、春妃にもたくさんの桜が舞い落ちる。
    やっと、やっと時間が動き出しました。

    そうか、桜に包まれて時間が止まっていた歩太は桃源郷に取り込まれていたようなものだったのか。そこは彼が描いていた綺麗だけども色彩のない絵画のような世界。延々と続く変化のない世界。
    そこから出て再び自分の時間を歩み始めた時、桜が咲いていないのは印象的だなぁ。
    感傷的でこじつけっぽいけど、桜の花の美しさ儚さが生と死、二つをイメージさせるっていう話を春妃がしていたような記憶がある。おぼろげだけども。

    やっと再び歩み出した人生。この先多くの困難が訪れても、それ以上の歓喜が二人に降りそそぎますように。
    そうだね。それこそ一面の桜の花びらのように、だね。

  • 天使シリーズというものを初めて知った!
    村山さんの作品はシリーズものが多いんだなぁーと、
    読み終わったあとに思いました。
    天使シリーズ最初の本がまさかの完結、、、過去を知ってる方が一層楽しめそうなのでまた改めて読み返そうと思い期待を込めての星二つで!!

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著者プロフィール

村山由佳
1964年、東京都生まれ。立教大学卒。93年『天使の卵――エンジェルス・エッグ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞をトリプル受賞。『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞受賞。著書多数。近著に『雪のなまえ』『星屑』がある。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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