著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716030

作品紹介・あらすじ

晶子は離婚したのち、一人で子育てをし、やがて娘は大学生となった。ところがある日突然、その最愛の娘が溺死体として発見される。いったい何が起きたのか? 小説すばる新人賞作家が描く、衝撃作。

感想・レビュー・書評

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  • 娘の自殺の原因を探っていくうちに、Rという男に行き着いた母親の復讐の話。そのRは引っ越ししていて、刑事上がりの探偵に調査を依頼し、住所を突き止め、その近所にアパートを借り、Rと同じコンビニで働くことに。
    イメージしていたのとはまるで違い、Rは爽やかな美形の男だった。果たして自殺の原因を突き止めることができるのか、そしてその時母親がとった行動は。
    ここからはネタバレ
    自分の立場になって考えると娘と同じように犯行現場に立ち会った母親がとった行動として、自分を刺すというのはちょっと考えられない行動かと思った。個人的には、Rがきちんと罪を償う形をとってほしかったと思う。
    探偵が言うようにRはその母親が怖くて逃げだしたのか。それとも単に面倒になって逃げて新しい土地で犯行を繰り返すのか。その後の行動については、読者に委ねられるところではあるのかな。

  • 120真っ直ぐに生きようとした母娘の悲劇と再生の物語。今風に感情の読めない出来損ないの人間が対比されて描かれるけど、勝ったのは誰か。それを考えると溜飲が下がる。重いストーリーだが最終章での爽快感が優っている。

  • 娘を奪われた女の絶望と執念。探偵を雇い命懸けの追跡。罪と罰の意味を問う。娘が自殺。何故自殺をしたのか?母は財産を全て自殺の原因を調べようと。探偵から娘が付き合っていたRの居場所を探して貰い同じコンビニで働きRを見張る。Rの生い立ち等調べていくうちにRは犯罪を犯していないが今まで女性が自分から身を引くように仕向けひどいことんしてきた。結局裁くことは出来なかったがコンビニの皆や探偵さんと仲良くしてまた生きていこうと前向きになる。

  • 一人娘が自殺に追い込まれたシングル・マザーがその真相を探る物語。推理小説ではない。かといってサスペンスともチト違う。復讐譚でもない。

    ストーリーは主人公のシングル・マザーのモノローグ。物語の決定的な日を縦軸に、そこに至るまでを横軸として話がすすむが、第5章の終盤(260ページ過ぎ)まで大きな動きがなく、現時点と過去を往復しながらむしろ淡々と綴られる。それなのに、なぜか目が離せないというか止められないのは著者のストーリーテラーとしての筆力の確かさ。

    惜しむらくは、第3章で登場する神父の伏線が今イチ回収されていないことと、第6章でモノローグが一部崩れること。特に後者は、このエピソードはもう少しうまく処理できていれば言うことないのに。

  •  一人娘が自殺し、精神的にバランスを崩した女性が主人公。不誠実な夫と別れ、母子二人で生きてきた。娘に対する思い入れは人一倍あるだろう。そんな娘を亡くした悲しみを思うといたたまれない。別れた夫に責められ、自身も娘の苦しみを分かってやれなかったことへの後悔。娘の性格をよく知る主人公は自殺を選んだことに納得いかず、死の真相を探るため、娘の交友関係を探偵に調査依頼、彼の協力の元、ある男と交際していた事実を突き止め、さらに彼を探ることに・・・見た目美しい青年だが人とのコミュニケーションには問題のありそうな人物、調べるにつれ、彼の本性を知り、娘の死の真相へと行き着くが、驚きのラスト。でも、前向きな終わり方、悲しみを乗り越え前を向いて生きていくところが良かった。

  • 何故、娘は自殺することになったのか?娘を自殺に追い込んだ男とのあいだに、いったい何があったのか。探偵を雇って娘の死の真相を探る母親は偽名を使い、娘を自殺に追い込んだ男と同じコンビニで働き、娘の死の真相を探ろうとするが・・・

  • 凄まじい…
    Rが恐ろしかったです。

    この作家さんの作品はハズレがないです。

  • 娘・楓子の自死の真相を追う母・晶子の無念さや苦悩にこちらの感情も揺さぶられ、終始つらさや苦しさ、怒りが渦巻いていた。
    自死の原因となったであろうRの性癖(潔癖症であることなど)が明らかになり、Rの過去や育ってきた環境から楓子の死までが少しずつ繋がってくるが、知れば知るほど人間として必要なものが決定的に欠落しているRに愕然とした。
    Rに良心のようなものが少しでもあれば晶子も救われる部分があったかもしれないが、それに期待できない分怒りと虚しさばかりが募りいかんともしがたかったところだと思う。

    最後までRの口から楓子とのことを語ることはなかったが、おそらくRにとっては本当に語ることがなくその程度としか思っていなかったということであり、Rの性質を上手く表現していると思う。
    Rについて「一方的な物語の主人公であり、おのれの望みは悪魔のように完遂するのに、相手の望みには応じない。相手の想いなどはRにとってはただの面倒でしかない。」と書かれている通り、他人が関わる人生も二次元のゲームと同じだと思っているところにこの不幸がある。
    楓子の死も、シミュレーションゲームで選択肢を間違えてバッドエンドになったくらいにしか思っていないから「彼女死んだ。なにも言わないで」というメールを送れるのだ。

    人を好きになる気持ちはどうすることもできないし、それについて責めることは誰にもできないが、あまりに大きな代償となってしまった楓子の恋が本人にも晶子にもひどい悲しみしかもたらさなかったところに心が痛む。
    そしてその性質ゆえまた同様のことを繰り返すだろうRを思うと、罪と罰とは何なのかを考えさせられた。

    最後に晶子がとった行動の意味は私にはまだよく理解できていないが、晶子の気持ちの整理がついたところと啓太の人間性に救われた。
    そして、晶子が知らなくていいと受け取らなかった楓子とRの最後のやりとりを今後も知らないままでいて欲しいと思った。

  • 恋愛下手な女性は要注意。
    騙されても幸せな女性って、間違ってるの?
    男はイケメンだったらそれでいいの・・・?

  • ひいき目でなく賢い素敵な娘楓子の自死。なぜを問い詰める母が行き着いた境地とは。3作とも作風が違う作家の今後に期待。

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著者プロフィール

1964年生まれ。作家。早稲田大学第一文学部卒業。編集者・ライターを経て、『八月の青い蝶』で第26回小説すばる新人賞、第5回広島本大賞を受賞。『身もこがれつつ』で第28回中山義秀文学賞を受賞。日本史を扱った他の小説に『高天原』『蘇我の娘の古事記』『逢坂の六人』『うきよの恋花』などがある。

「2023年 『小説で読みとく古代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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