- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716054
作品紹介・あらすじ
東京の暮らしに疲れ、故郷の富山に帰ってきた脇田千春。父のいない子として生まれた親戚の中学生・佑樹と触れ合ううちに自分らしさを取り戻していく…。富山、京都、東京。三都市の家族の運命が交錯していく物語。
感想・レビュー・書評
-
20年ぶり位に宮本輝の作品を読んだ。
若いころはのめり込むように読んだのに、ずいぶん長いこと遠ざかってしまっていた。どんどん長編化している彼の作品に嫌気がさしてしまったのか、記憶も定かでない。
久しぶりの読んだ彼の作品は思いもかけず素晴らしい作品で、上下巻の長さを全く感じさせる事もなく一気に読んだ。うつくしい日本語で表現される富山の自然、京都の花街、魅力的な人々。全てが調和して物語が生き生きと動いていく。
15年前、絵本作家賀川真帆の父親が富山で亡くなった。九州に出張中だった父はなぜ富山を訪れたのか。真帆から不思議な縁で人々は繋がっていき、最後はある少年にたどりつく。
交差しそうで交差しない真帆と少年のラストシーンはこれ以上ないというほど良い場面だった。思わず涙腺も緩み、あったかい気持ちで満たされて幸せな気持ちになった。
最近撮られたであろう宮本氏のお姿を拝見するとずいぶんと歳をとった。私の印象は“ダバダ~”で止まっていたから(笑)
しかし大御所となった今も、紡ぎ出す作品はまったく古臭いことなどなく新しい感動を私にもたらせてくれた。
富山に行きたい!雄大な立山連峰、うつくしい田園風景を見たい!
もっともっと宮本輝の作品を読みたい!
今はそんな気分です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今まで読んだ宮本輝さんの作品の中で、一番好きです!
最後、佑樹がミニベロを勢いよく漕いで行くところは
清々しく、温かな気持ちでいっぱいになりました。
その角を曲がった先に広がる世界をもっと読みたいと思うほどでした。
東京での暮らしに疲れて故郷に帰る千春と、それを見送る平松。
「いいなァ、大好きな、きれいなふるさとがあって」
その言葉がすべてを物語る、美しい自然あふれる富山が舞台。
千春が故郷で自分らしさを取り戻していく姿に
”やはり野に置けれんげ草”の一句を思い出す。
宮崎でゴルフをしていたはずの真帆の父が、なぜ滑川で亡くなったのか?
不思議な巡り合わせと偶然に導かれていく人々。
「自分の好きな人の思い出話をしているときに、ああ、あの人死んだよって言われるのって、いややろう?悲しいやろう?」
千春がふみ弥の話をしたときに、亡くなったことを言わなかった佑樹。
直樹が存命であれば、この世に生まれることのなかった命。
海歩子が平岩との固い約束のもとに生んだ佑樹は、
こんなに思いやりのある、素直で賢い15歳の少年に育っていた。
幼い佑樹が絵本「やさしいおうち」の作者まほせんせいに宛てた手紙が…。
まほせんせいからのお返事が…胸を打つ。
目に見えない糸で互いを手繰り寄せるような、深い血の結びつきに胸が震えました。
厳しい自然の中で根付き、育まれるもの。
柔らかく耳に響く方言。
自転車、万年筆、砥石、鞄…
職人が使う道具を作る職人。
物を通じて存在する魂のふれあい。
花街で生きるということ。
分をわきまえることの気高さ。
大切な人を、厳しくも温かく見守る人々。
なかでも平岩壮吉の無私ともいえる生き方に感動しました。
やさしい人々 まさに「やさしいおうち」そのものだと感じました。
何度でもこの本を開き、あの善き人々に会いたい。-
こんにちは。
宮本輝さん、若いころよく読みました。
とんと御無沙汰しておりましたが、杜のうさこさんのレビューを読んだら久々に読みたく...こんにちは。
宮本輝さん、若いころよく読みました。
とんと御無沙汰しておりましたが、杜のうさこさんのレビューを読んだら久々に読みたくなりました。
素敵なレビューありがとうございます(*^_^*)2015/09/02
-
-
たっぷりとした長編をこんなに楽しんだのは久しぶり。偶然がいくつも重なり最終章へつながっていく。
佑樹が生まれるに至った経緯は、愚かな行為でしかない。でも、佑樹が生まれなければ真帆は、千春は、海歩子は?どうなっていただろう。大人たちの身勝手なのだろうか?
どうつながっていくか予測しづらかった川辺康平たちもきれいにつながって…
富山の田園地帯に行ってみたくなるし、
村岡花子訳の赤毛のアンを全巻読みたくなった。 -
上巻よりもなぜか登場人物の関係性が理解できて早く読めた。風景と気持ちの描写が相変わらず卓抜。特に人物が行動する際にまったく関係ないことを考えながらやっている描写が多く、自分もそういったことをよくするので非常に入り込めた。
ただし、作品としては満点ではない。一人ひとりを丁寧に描いているが、どれもあと一歩印象に残らない。もっとも気になったのが終わり方。途中で切られてしまったようで、あっけなさを感じた。映画の小津作品のように市井の人の日常生活を描写ながら、人それぞれの成長や感情の起伏を読み取らせる内容だと思うが、この作品は読み取れる内容がやや薄かった。ほとんどの登場人物に対して十分に共感できるのだけれど、あと一歩メッセージ性がほしい。また、舞台となった地も「きれいなんだろうなぁ」とは思ったものの、「絶対に行こう!」とまでは思えなかった。本当にあと一歩で満点。惜しい。。。 -
下巻の途中まではとてもよかったのだけどな。
やっぱり個人的「千春」がいらない。 -
後書きに作者は綴った。「わたしは、螺旋というかたちにも強く惹かれます。多くのもののなかに螺旋状の仕組みがあるのは自然科学において解明されつつありますが、それが人間のつながりにおいても、有り得ないような出会いや驚愕するような偶然をもたらすことに途轍もない神秘性を感じるのです」
美しい富山の自然と、古都京都の歴史と伝統。その中で全く別に思われた人々が繋がっていく。
人生は出会いこそ全てかもしれない。 -
期待して読んだほどは面白くない。登場人物のそれぞれの人生がどう交錯するのか、何か驚きが待っているかもと、期待し過ぎた。あくまでも人生にあるであろう出来事。しかし、あまりに偶然が重なり過ぎてる展開。
人物というより、富山の美しい風景を描きたかったのだろう。流行りの自転車にからめて。
避暑地の猫に衝撃を受けたことが懐かしい。随分時間が経って、自分とともに、作者も歳をとられたのだなと。 -
久しぶりの宮本輝。
読んだ後、気分が明るくなる感じが好き。表紙も素敵だった。
ただ、会話なのに要約されているのが何度も出てきて、気になった。あと書かれている人物紹介は少ないけど、登場人物は沢山で、どういう関係だったのか分からなくなってしまった。
悪人はほとんど出ず、あまりにもいい人ばかりで、少し物足りなく感じた。