- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716061
作品紹介・あらすじ
震災、原発事故、子供の死、義理の家族との軋轢…抗いようのない形で人生が進んでゆく4人の30代の男女。四者四様の思いが絡まり合い、人生の葛藤が鮮やかに描かれる。4年ぶり渾身の長編小説。
感想・レビュー・書評
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これって長編小説?
色んな書評に長編て書いてあるけど連作短編集じゃないの?
まあ、いいや。
金原ひとみの作品を読むのはこれで二作目。
彼女の作風とかイマイチ分かってない。イメージ先行。
情緒不安定、エキセントリック、エロい、とか。
いやいやいや、この本を読んでわかったけど意外にバランス感覚に優れた人なのね。客観的に物事見てるんだと感心。ごめん、偉そうで。
「持たざる者」というタイトルが示す通り、何かを失ったり捨て去ったりした4人の主人公がそれぞれ一人称で登場する。
作者本人がこれをかかなくては作家を続けられないと思った東日本大震災の事や、子供を失う状況、日常に潜む突然の喪失感などが描かれる。
一番良かったのは震災後放射能汚染を案じ妻子を西へと移住させようとする修人の章。第二章の主人公でもある千鶴と放射能汚染について議論を巡らせる会話が何と言っても面白かった。
小説の域を超えて生々しく迫ってくる。
敢えてここまで正面切って議論することはなかったけれど、あの時私にも同じように考えていたことを思い出した。
でも口に出しては言ってはならないような空気が蔓延していたのも事実だ。
ここまで赤裸々に書いちゃう金原ひとみはなかなかすごい。
他にも単に震災が一つのテーマになっているとは言え、それぞれの人生の行き方や人に対する劣等感だったり逆に優越感だったり色んな事がリアルに迫ってきて非常に面白かった。
結局何を言いたいのか絞りきれてないのが残念だけれど。
それにしても金原ひとみの人気?期待?はすごい。
久しぶりの作品というのも一因だろうけれど書評の数がまあ多い。
メジャーな新聞や雑誌はほぼ取り上げている感じ。
人気ありますねー。
次作も期待しています。 -
東北で震災と原発事故があって、東京に住んでいながら放射能の情報に振り回される修人。直接の被災者でなくても、遠くに住んでいるのに、人生が変わってしまう。当時、被災者ではないたくさんの人がこんな思いをしたのかと、人の心理の繊細さにハッとさせられた。
私が一番共感できるのはおそらく登場人物のなかで一番凡人の朱里。「きっと、私がここから別の道を歩む事はないだろう。私は、子どもと夫と共に、それらを後ろ盾に生きていくしかないのだ。」
けど、嫌な義兄夫婦が家から出ていくことになって「こんな幸福が人生にあるなんて、思いもしなかった」と。
朱里の感情が、理解できる。
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連作長編。正直、朱里の章を読むまでは私は何を読まされているのだろうと思ったり。例の原発事故による放射能漏れへの対応や感じ方、徹底の仕方で不和になり離婚した夫婦とか、海外に逃げたシングルマザーとか。結局2人ともかなり経済的に余裕がある。それこそ海外逃げたくても逃げれない人なんてたくさんいるのにと、頭をよぎり、別に1番不幸な人以外の不幸は大したことないなんていう傲慢な考え方をしてるわけじゃないけど、移住した先での寂しさや文化の違いなんて別に原発事故云々全く関係ないわけで。著者本人も原発事故後パリに移住したらしいからその気持ちが否応なく反映されているのだろうが。
で、朱里の章の何がいいかって、単純に面白いんですよ。図々しい義兄夫婦、気の弱い姑、久々の日本なのに絶望的な我が家の有様。 -
面白い
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世界が変わる瞬間、自分を保つことが出来るかどうか。
意外とそんな時に自分を保つことができるのは、
誰かの支えや温かい思い出と同じくらい
誰かへの恨みや罪悪感、呪いのような思いもあるのかもしれない。
自分以外のことを考えれば考えるほどうまくいかないこともある。
それは相手のことを考えているようで、その人からの目線を気にしてるだけなのかもしれない。 -
自分は持たざる者だと思うけど、誰かにとっては持ってる人で。
#持たざる者 #金原ひとみ #読書記録 -
原発事故の後遺症による目に見えない恐怖に苛まれ家庭も仕事もなくしてしまう男の話から始まる短篇集、その心情の吐露は自らもフランスへと生活の場を移した著者ならではのリアリティに溢れるもの。
連作の主題は「自分の居場所」だろうか…なんのつながりもないように見せかけて放射能汚染で住めなくなった土地を下世話な家庭内トラブルで占拠されてしまった住まいにつなげる修辞はやはりこの人ならではのセンスだろう。
最近は容姿も大人びて文章も直木賞作家のような佇まいであるがエッジの効いた感性は健在、金原ひとみは正常に進化している -
やはり、金原ひとみ好きです。
頭のいい人だなあ、
常識的な人、すごく冷静な人。
いつもそういう印象を持ちます。
震災の原発から逃れるために避難する母子の話、
という知識はあったのですが、
やっぱりそれだけじゃない。
子持ちではあるけれども
いろんなタイプの女性が出てきて、
その1人1人にどこか共感できる。
作品を通して金原さん自身の
女として、もしくは母としての
成長(というと上から目線になってしまいますが)
が感じられて、そういうのも
この人の本を読む楽しみの一つだなあ、
なんて思います。 -
東北の3・11をきっかけに人生が変わってしまった4人の男女を描いた連作短編集。
この純文学小説で作者が言いたかったのは、4人の人生を通して、震災直後にフランスへ移住した自分の心情なんだろう。
本小説の4人目、朱里は長いイギリス生活に疲れ、熱望していた日本での生活を再開するが、そこでの家族問題に巻き込まれ、帰国したことを後悔する。これって、日本ではいろいろなものに束縛されてしまった作者自身の恐怖なんだろうか。日本を離れることで「持たざる者」となり、フランスで創作活動と育児を続けるという作者の決意表明? -
震災とそれに続く原発事故を背景に、大切な何かをなくした4人を主人公にした連作短編集。特に1、2話はテーマが重い。
被爆に過敏になるが余り妻子に去られた男性の話は、当時を思い出すと大袈裟だと切り捨てることはできない。
喉元過ぎれば…で、いつの間にか鈍感になっているけれど、原発の影響については、特に小さい子を持つ親であれば、行き交う情報の何を信じればよいのかもわからず、誰もが過敏になっていた。私も例外ではなく、東京の水瓶が危ないと聞いた時には、子どもの体への影響を考え途方にくれたものだった。
1話目は、震災のサイドストーリーとしても、意味のあるものだと感じた。
全体の構成としては、それぞれ関係のある人が登場し連作としてつないでいくのだが、ぐるりと回りきらずに放り出されて終わってしまったのが残念。
やはり、連作であるからには、エピローグとして全員のその後をちらりと見せて、輪っかを閉じて終わらせて欲しかった。
いやぁ、読者にそう思わせるのだからスゴイ!
作者は、かなりのテクニック保持者と思われます。
いやぁ、読者にそう思わせるのだからスゴイ!
作者は、かなりのテクニック保持者と思われます。
コメントありがとうございます♪
金原ひとみさん、芥川賞を受賞した作品をはじめ初期の作品を読んでないのでなんと...
コメントありがとうございます♪
金原ひとみさん、芥川賞を受賞した作品をはじめ初期の作品を読んでないのでなんとも(^_^;)
もっと読んでみないことには・・・、と思っています。