陸王

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716191

作品紹介・あらすじ

勝利を、信じろ――。
足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。

埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者だ。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。そんなある日、宮沢はふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してはどうか。
社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかし、その前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発、大手シューズメーカーの妨害――。
チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。はたして、彼らに未来はあるのか?

感想・レビュー・書評

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  • 何度もトリハダが立ちました。

    一人では乗り越えられない高さの壁も、
    信じる仲間と力を合わせれば、必ず乗り越えられる。

    度重なるどんな試練だって、きっと大丈夫。

    そんなふうに勇気をもらえる池井戸さんとの出会いは『下町ロケット』でした。
    個人的には、一躍有名になった「半沢直樹シリーズ」よりも、
    こういった昔気質の職人物語が好きです。
    あとは巨大組織に闘いを挑む『鉄の骨』『空飛ぶタイヤ』とか。

    その根底にいつもあるのは”誇り”です。
    誠実に努力していれば、いつしか報われる。
    正直者が○○を見ない世の中だと思いたいんですよね。

    ”千里の道も一歩から”
    受験勉強をしていたとき、ずっと机に貼っていた言葉を、
    読みながらしみじみと思い出していました。

  • 物語としては、足袋の老舗零細企業が生残りをかけてランニングシューズ業界に活路を見出すとゆう話で、ターゲットがエリートランナー向けの靴の開発なので馴染まないまま読み進めていましたが、ソールに新素材を採用する辺りから無茶面白くなってきました。社長の元に集まってくる負組の人材、飯山と村野が加わったことが大きかったですね。並行して故障でフォーム替えて復活目指す選手への靴の提供、邪魔する王手企業の小悪党、時代劇さながらの判官贔屓にスカッとしました。
    最後に就活連敗の大地が面接時に関わってきた新規部門での事を話して大手企業から内定貰いそちらに行ってしまうのですが、企業側によからぬ気配がありそうで心配になりました。

    フォアフットは、つま先から着地することで衝撃を分散し膝に優しく疲れにくい走りができる走法ですが、日本人には習得するのが難しくコンパス長くないと調子よく回せないし6分/km代の市民ランナーには踵から着地するヒールストライク走法のが適してるんですよね。私もフォアフットチャレンジしたことあるのですが逆に走り方変になり駄目でした。
    私的にはソールが薄いと膝を痛めてしまうので厚底シューズを世界で初めて開発したホッカオネオネの愛用者だったりなんですが職人の魂がこもった陸王も履いてみたくなりますねw、クライミングシューズとかにしたら売れるかも?

  • 著者の作品の『民王』という政治小説を連想し、本作の題名は何を意味するのかと思ったら、商品名だったとは!
    中小零細企業主が、周りの人たちの信頼と協力を得ながら、敵役の妨害を排し、様々な障害や困難を乗り越え、目標に向かって邁進。
    業種は異なるが、池井戸潤お馴染の勧善懲悪的パターンであり、結末の予想はあらかじめつくが、やはり爽快な読後感は侮りがたい。
    著者の作品は、「働く人への応援歌」とも称されるが、作中人物の言葉にもそんなメッセージが託される。
    「どんな仕事をしたって、中小企業の経営だろうと、大企業のサラリーマンだろうと、何かに賭けなきゃならないときって必ずあるもんさ。そうじゃなきゃ、仕事なんかつまらない。そうじゃなきゃ、人生なんておもしろくない。オレはそう思うね」
    「大事なのは会社の大小じゃなく、プライドを持って、仕事ができるかどうかだと思うね」
    そちこちに散りばめられた箴言に、著者の作品は、これからも目が離せない。

  • 2017年のTBSTVドラマは観なかったので今さら感がありながらの初読。100年続く中小企業の足袋屋さんがランニングシューズ作りに乗り出し事業拡大を図ろうとする物語だ。池井戸潤の小説に登場する人たちには違法スレスレの悪者も時に登場するが、今回の登場人物たちは一様に正しいビジネス競争をしているだけで、本当の悪人はいない。差があるとしたら、顧客に対する情熱の差だけだ。しかもその情熱が経営の成功に繋がるかどうかは確約されない。この物語のラストもハッピーエンドではなく成長への光が差したに過ぎなかった。それが経営というものなのだと思う。唯一、確実に成長し成功に近づいていくのは人だ。経営者宮沢の息子、大地が陸王開発と父親の背中を見ることで大きく成長していく様が嬉しい。仕事は会社を育てるのではなく、そこで働く人を育てているのだと思う。そこに涙した。

  • 面白かった!まさにエンターテイメントだって感じ。

    後半のあけみさんの言葉には社長ならずとも私もウルウルしちゃったよ~

    陸上選手がいる。その足にはシューズが。そのシューズを1つ作るにしてもいろんな会社、人々が携わっている。
    大手もあれば、今回のこはぜ屋という足袋業者という未知なる会社が挑んできて、紆余曲折しながらも選ばれていく。

    茂木選手の信頼を勝ち取っての勝利!
    やっぱり感動!

  •  いやあ、池井戸潤さんはやはり面白い。一生懸命にモノづくりに取り組む人たちの、何とかっこいいことか。私も彼らのようにかっこよくありたいと、今回も思った。

     足袋づくり。百年の老舗がランニングシューズに挑む。こはぜ屋の社長、宮沢さんをはじめとする社員の皆の真摯な情熱が素晴らしい。シルクレイを開発した飯山さんの仕事に対する情熱も素晴らしい。シューフィッター村山さんの、選手と向き合う情熱も素晴らしい。茂木君が、損得を抜いて、最後の最後に、自分と「陸王」を信じた選択も素晴らしい。
     そして、今回もライバル社の社員さんの悪ぶりも素晴らしい(笑)この世にこんな失礼な社員たちっている?と思うくらい悪すぎて笑えた。それが、池井戸テイストなんですけどな(笑)

     もがいて、苦しんで、悩んで、そして選んでいく。仕事も人生も一緒だな。諦めたら、そこで終わり。仕事は人だ。金も大切だけれど,やはり人とのつながりが最も大切だ。今回もたくさんのことに気付けて、たくさん泣かせてもらった。もう、一気読みでした!!

  • なにげに活字でははじめての池井戸潤
    ドラマを観ていたので、余裕で脳内再生できました。

    いち市民ランナーとして楽しく読ませていただきましたが、この人の作品は活字よりも映像向きなのかな、とも思いました。

  • どん底に落ちた人が復活を目指す物語だ!

    斜陽産業であえぐ経営者
    怪我で世間から忘れられようとするランナー
    会社を潰して隠れて暮らす開発者
    思う仕事ができずにもがく銀行員
    自分の理想とかけ離れた上司と会社に失望するシューフィッター
    採用試験に落ち続ける若者

    彼らが復活する中で見つけるのは『信頼』だ
    人と人との繋がりだ!
    時には裏切られることもあるかもしれない
    だが諦めずもがき真摯に向きあい正直に生きることが道を開くのだ!

  • 成功という頂きに立てるのは、強い覚悟を持って挑んだものだけ。
    それは花火のような一瞬の煌めきの覚悟ではなく、
    細く長く小さくとも消えないロウソクのような覚悟なのかもしれない。

    (以下抜粋)
    ○一朝一夕にできる解決策はない。軽くて丈夫で、柔軟性に優れた素材。日々、それを探し、研究している連中がいるんですよ。コンペへの入札以前に、その見えない闘いで勝利しなければ、彼らに勝つことはできません。(P.106)
    ○「あんたは今まで手抜きをしたことながないだろ」(P.145)
    ○会社にとっての本当の危機とは、実際にお金に困ることになるずっと前にあるのではないか。往々にして、そういう時の会社にはまだ余裕がある。(P.224)
    ○「よかったね。よかった」
    不意に素子の声が揺れ、目から涙が溢れ出した。
    長く連れ添ってきたが、こんなにも簡単に涙を見せる女ではなかった。それがわかっているだけに、じっと耐え忍んできた素子の気持ちが、飯山の胸に突き刺さるようだ。(P.230)
    ○「だから人生の賭けには、それなりの覚悟が必要なんだよ。そして、勝つために全力を尽くす。愚痴を言わず人のせいにせず、できることはすべてやる。そして結果は真摯に受け止める」(P.358)

  • この本は あるタビヤの 新規事業の物語に
    その社長の 息子の 成長記録とも 読めますね。
    ドラマで見ていたので
    大体の あらすじは 分かっていたのですが
    一気に 読んで しまいました。
    さすが 池井戸作品は 最後は スカッとしますね。
    7月7日からの ノーサイドゲームが 楽しみです。

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著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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