- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087716559
作品紹介・あらすじ
今を生き抜くために必要な事象について、立場の異なる「良書」を批評的に読み、自らの考えを新たに形成する──。格闘技としての読書体験を通じた、武器となる読書術とは? 推奨ブックガイドも収録。
感想・レビュー・書評
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元マッキンゼーのコンサルタントで、エンジェル投資家・起業家という顔も持ち、かつベストセラー作家でもある瀧本哲史さんの読書論及びブックガイド。
タイトルの意味するところは、著者の言葉をうのみにせず自らの頭と言葉で疑い、反証する中で考えを再構築する知的プロセスのこと。
そのエクササイズのために全く異なるアプローチの本を2冊ずつ選び、各章で対抗させながら解説していく。
上で「各章」と書いたが、格闘技よろしく本書ではRoundという単語を使用している。
Round 0 のイントロダクションは以下の2冊。
ショウペンハウエル「読書について」岩波文庫
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瀧本哲史「武器としての決断思考」星海社新書
Round12まであり、ビジネス書、学術書、小説、国語教科書掲載作品、児童書、漫画、絵本と非常に幅広い。
テーマは何か、なぜこの本なのか、どのような本なのか、対抗する本はどのような主張をしているか、両者を比較検討しながら考察していく過程が本書の読みどころ。
その論旨は実に明快で妥協がない。
受動的に読むのではなく著者の言葉を疑えと言われても、何をどう読めばいいのか、何を学べばいいのかが漠然としていることが多い。
本書は痛快なほど王道を行くタイプ。
この本でこれを学びますよ、異なる立場の本はこれですよと掲げ、解説の中でこちらの眠っている頭を幾度もknockしてくれる。
「なぜこの名著がベストセラーとなったのか」という時代背景にも触れており、そこがまた面白いと来る。
おかげでちょっとしたパンチドランカー状態だ。
瀧本さんの主張の全てに賛同できるわけではないが、取り上げられた本の中には興味をそそられるものが多い。また解説の中で印象に残る言葉にもたくさん出会った。
少し列挙してみよう。
「実は本当に仕事の効率を上げる方法は、やること自体を根本的に組み替え、努力を必要としない仕組みをつくることによって桁違いの結果を得ることだ」
「強みというのは市場と競合との関係で決まるものであって、自分の中だけでは決まらない」
「結局のところ、科学技術を突き詰めていけば、神への挑戦に近づいていかざるを得ない」
「本を読み終えた後、しばらくして、その内容を完全に忘れてしまい、その後の思考や行動の変化が何もなければ、それは、冒険に出て宝の山に入りながら手を空しくして帰るに等しい」
「教養について考えるのであれば、自分にとって読むべき本、読む必要のない本を判断することが教養と言えるだろう」
未読の本も多かったが、解説で良書であると分かる。
読書は格闘技だと言う著者の良書の定義はこうである。
「書いてあることに賛同できなくても、それが批判するに値するほどの、ひとつの立場として主張・根拠が伴っていれば、それは良書である」
読みだす前はもっとハードな内容を想像していたが、思いのほか読みやすかった。
そして大変な刺激を受けた。
これまで読んできた本のどれとどれを対抗させることができるのか。
今の私にはそのスキルはないが、自分の頭で考えるという習慣を持って読み続けたい。
可能であれば未読本を読破して著者と感想戦を闘いたいところ。
が、すでに泉下の人となられたのが残念でならない。 -
エンジェル投資家として活動しながら、京都大学で産官学連携活動に従事していた著者の読書姿勢を扱った本。
「読書は格闘技」とは、単に受動的に読むのではなく「本当にそうなのか」と反証的に読む中で自分の考えを作っていく知的プロセスのことである。格闘技的に読むとは、著者と自分の考えを戦わせて考えを新たに形成していくことなので、リングの外から傍観するといった受け身の姿勢は許されないそうだ。つまり、自分もリングに上がり著者と格闘しなければならない。
本書では、(読書における)格闘の方法の一つとして対立軸を設定した読みを行っている。対立軸は、問題意識、背景、テーマなどで決定する。そして、それぞれの本の利点と欠点を整理し論点や課題を浮き彫りにすることで、批判的に読書を行っている。例えば、「心を掴む」というテーマでは『人を動かす』と『影響力の武器』を設定することで、人情vs統計データ、道徳的vs合理的など多様な切り口からこのテーマを深掘りしている。
著者のスタイルで読書することは、自分が批判的に考えることを要求するので、負荷がかかる。しかし、ただ単に知識を頭に入れるのではなく思考力を身につけるという目的で読むなら、この負荷は避けられない。それを再確認することができた。 -
読書好きにはたまらない、刺激的な一冊。
将棋の感想戦のような、著者の読書の楽しみ方や頭の中を覗かせてもらえる内容。
こんな読み方があるのか、こんな本があるのか、とたくさんの本が紹介されているので、これから読みたい本が一気に増えるはず。
既に読んだ本について書かれている部分では、自分の感想と対比でき、著者とそれこそ感想戦ができて楽しい。
闘うべき本を求めて、武者修行の旅、冒険へ旅立つぞ。 -
いかにもなMBAの名著が並ぶ前半~中盤。
勉強になりつつ、まーこんなもんでしょとも思っていたら「未来」というテーマでベーコン「ニュー・アトランティス」とオーウェル「1984年」、「教養小説」のテーマでゲーテ「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」とあだち充「タッチ」を取り上げる。
普遍的なテーマに時代など関係ないこと、18世紀末のヴィルヘルム・マイスターとバブル直前の高校球児を並べると変わった読み方を味わえる。こんな取り上げ方ができるのが、この著者の味であろう。 -
昨年亡くなった著者の作品。テレビで著者のドキュメンタリーを見て興味をもち何冊か読んでみようと思い手に取った一冊。
あるテーマに基づいて、異なるアプローチの本を対比的に論じ考察をする作品。
読書から何を得るのか、得ようとする意思をもつことの重要や鵜呑みにせず批判的な視点をもつべきであることを確認した。 -
読書は格闘技。
ただ、「良書」と言われてるものを読む(信じる)のではなく、
考察しながら読む、というその方法が記されていた。
「批判しながら読む」と書かれているが、
実際はただただ否定的に読むということではなく
その本が書かれた時代背景や著者の置かれた状況、
今に置き換える場合どのように参考になるか、
あるいは考えるべき点はどこか、など、
実際の本を使い、更には対照的なもう一冊を掲げて比較しながら解説してくれるので
面白いしわかりやすい。
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著者がよく考えて読書しているのが伝わった。また、多くの図書が紹介されているのもよい。
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「読書とはこういうもの」という押しつけ感がある。自由に読みたいものです
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インプット量がすごそうなイメージのある瀧本さんが、どういう所を意識して読書してるのか気になって読んだ。
ベースの考え方はディベート。
だから、良書の定義も反駁する中身のあるものと置いているのが面白い。
読書についてはスタンスが分かれる所だけど、ただ読むだけならたしかに頭でっかちになるが、読書はゆっくり考えながら進められるからそうはならない(読み過ぎなくらいでいい)と思ってる。
·瀧本さんもいわゆる列買いするらしい
·読書は格闘技という考え方に立つと良書とは正しい主張ではなく、1つの立場として主張根拠が伴っているもの
·著書の背景から主張を察する
·自分と遠い例示は一度抽象化させて自分に置き換えることで吸収される
·成功者のキラキラエピソードだけではなく地獄の景色も意味がある、失敗には再現性があるから
·根拠の筋道がハッキリしているものこそ格闘技向き
·創造力のためにフィクションは有効
そして誤った信念を強めていきやすい…。
主張・根拠がしっかりした言説...
そして誤った信念を強めていきやすい…。
主張・根拠がしっかりした言説というフラットなポイントがよいですね。
それだけの言説を持った著者・書籍を選びとれる知性が先ず希求されますね。
まさに言われる通りです。
異なるアプローチの本を読むだけでなく、対抗させるために選び取る。
なかなか出来ることではありませ...
まさに言われる通りです。
異なるアプローチの本を読むだけでなく、対抗させるために選び取る。
なかなか出来ることではありません。
ひとは見たいものを見て信じたいものを信じる。
なのに自分は客観的で中道だと思い込んでいる。
気を付けなばなりませんね
非常に良い学びとなった本でした!