裸の華

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716658

感想・レビュー・書評

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  • 北海道にある夜の歓楽街”すすきの”には一度だけ行ったことがある。他の街とはちょっと違う賑わいを見せる夜の”すすきの”を歩いているだけで緊張したっけ。華やかなネオンとその裏に潜む仄暗さを併せ持つその街は、こちらが少しでも気を抜くと呑み込まれそうなキケンな雰囲気を醸し出していた。

    ストリッパーとして体を張って長年踊り続けていた40歳のノリカは、公演中の怪我により廃業を決意し”すすきの”でダンスショーが売りの夜の店を構えることにした。
    若い二人のダンサーに、うまいカクテルを作るバーテンダーと共に、自分の店を手探りで創り上げていく。
    気の合う仲間にも恵まれ店の評判も上々となり、”すすきの”の街で見事に華開いたかに思えたけれど…。

    年齢や怪我が足枷となり踊り子に戻ることに躊躇していたノリカも、二人の若いダンサーに良い刺激をもらい、再び踊り子として舞台に戻ることを決意する。
    個人的には、ノリカにはこのままお店を続けていって後継を育てる立場で有り続けてほしかった。
    けれど踊りが死ぬほど好きな根っからの”踊り子”としては、指導したりアシストする裏方の立場ではなく、やはり自分自身が現役で踊りたいんだろう。
    「死ぬまで踊りたい」という強い気持ちが前へ進ませ、行くべき場所へと着地させたのだろう。

    男たちが抱える浮世の憂さを引き受ける包容力と、アスリート並みのストイックさに感心させられた物語だった。

  • 人気ストリッパーだったノリカは、舞台で足の大怪我をしたことをうけ、故郷の札幌に帰りダンスシアターの店を開く。
    バーテンダーと、若い女性ダンサー2人を雇い、店は軌道に乗っていくが。。。
    凛とした姿のノリカが目に浮かぶよう。登場人物それぞれがいい味を出していた。特にオガちゃんのタンバリンは泣けた。

  • ストリップショーの華だったノリカは、足の負傷で踊れなくなった。女40歳、先を案じるノリカの希望となったのは、自分の元に身を寄せた二人の若いダンサーだった。紫乃さんはいつも、ギリギリの環境で喘ぎながらも分相応の幸せを追求する強い女性を描きます。ジリジリと胸を締め付けるような焦燥感はリアルで、苦しい読書です。なのに面白い。ノリカを応援する気持ちは、自分を応援するのと同じかもしれない。紫乃さんの描く女性のように強く潔くなりたいものです。

  • 怪我で舞台を去り、ススキノに戻ってダンスシアターを開いた元ストリッパー。いわくありげなバーテン、新人のダンサーたちとともに店を切り盛りしながら、本当に自分がやりたかったことに気づいていく。

    ストリッパーとしての道を極める姿を、こんなに凛とした女性として描けるのは、作者ならではだろう。背筋を伸ばして努力を重ね、だからと言って決して綺麗事ではなく、生々しい姿も見せる。終盤の師匠の行く末も、目を背けたくなるほど痛々しい。

    結局のところ、何を置いてでも好きな道を最優先したいと望むのタイプの人であるなら、他人が常識的、客観的に見て首を傾げるような選択であったとしても、本人にとってはその道に進むことが一番幸せなのだろう。

    いつもの作品のように、どこかで足元をすくわれてどん底に落ちるのでは…と心配しながら読み進めたが、珍しく登場するすべての人が魅力的で、心根の優しい人ばかり。悪意のない世界はやはりいいもんだ、と素直に胸を撫で下ろして、本を閉じることができた。
    読み終えた深夜、たらこバターとチーズわかめのおにぎり、豚汁が無性に食べたくなった。

  • 再読。ストリッパーとは縁もゆかりもないけど、何故かこの主人公ノリカに憧れてしまう。かっこいい女の生き様。
    その後の話、サイドストーリーも描いて欲しいなぁ。

  • *舞台上の怪我で引退を決意した、元ストリッパーのノリカは、故郷で店を開くことに。ダンサーを募集すると、二人の若い女性が現れて―。踊り子たちの鮮烈な生き様を描く、極上の長編小説*

    息が詰まるような生々しい感情や痛いまでのリアルさにぐいぐい引き込まれてしまう作品。ノリカの焦りや苦悩、諦めや哀しみが心に沁みます。一見強くて凛とした女性に見えるけれど、矜持一つで胸を張って生きようとしているような姿が切ない。行間にあふれ出る、大人の情緒をじっくり堪能しながら読みたい物語。

  • ススキノというキラキラした歓楽街なのに、どこか退廃的なアナログな臭いが漂うダンスシアターだった。みのりへの複雑の感情の描き方がすごく表現豊かで面白かった。生まれながらにして持った才能への嫉妬、親心のような気持ち、踊りの世界を生きる先輩としての先輩風の吹かせ方など...
    瑞穂とみのりの間が泥沼化しなかったのは、救いだった。この二人の関係はいつ壊れてしまうのだろうとヒヤヒヤしていたので。バーテンダーのJINもミステリアスな魅力ある人物で想像が膨らんだ。JINと関係を持つものだと思っていたけれど、想像を裏切られた。
    読み応えのある長編でした。三日かけて読んだかいがありました。

  • 本作は2015年に小説すばるに発表されたストリッパーもの。『星々たち』の「隠れ家」(2012年)のストリッパーとは設定上は無関係。
    一気読みして、作品より作家に興味がでてきた。

  • 桜木紫乃の作品を初めて読んだ。既にいくつかの文学賞を受賞している、世代的には自分に近い女流小説家である。


    今回読んだ『裸の華』の粗筋は、大雑把に書けば下記の通り。

    舞台出演中に脚を骨折してストリッパー復帰を断念したフキワラノリカは、ストリッパーとしての過去を清算して札幌でダンスシアター『NOROKA』をオープンさせる。雇ったのは、二人の若い女性ダンサーとバーテンダー(彼が実はかつて銀座の宝石と呼ばれた有名なバーテンダーであったことが後に明らかになる)。店はそのダンスショーのレベルの高さとカクテルの美味さが評判となり、雑誌やテレビで取り上げられ繁盛していく。そんな中で、ノリカのストリッパー時代のファンであったタンバリンさんが訪ねてきたり、借りている箱の元ママ(実はニューハーフ)との出会い、店のダンサーと常連客との恋愛そして妊娠、さらにもう一人のダンサーの映画デビュー話を経て、ノリカは断念していたストリッパーへの復帰を果たしていく。


    登場人物の描写にやや雑な面がみられる箇所があったものの、元ストリッパーだったノリカの心境や、バーテンダー、ダンサー達の店での振る舞いが頭の中に浮かんできて切ない。読み手としては、ノリカがストリッパーに復帰することへの是非に思いを巡らせる事となる。札幌での店での経験は、ノリカの人生の中で一段と光っているように感じられた。この作品、書こうと思えば続編が書けるだろう。この先のノリカの生き様を、札幌の店で働いていたダンサーやバーテンダーのその後と併せて知りたくなった。

    ん~、夜の世界を使った秀作だろう。

  • 今年は100冊読みたいなっと

    ってな事で新春1冊目は、桜木紫乃の『裸の華』

    脚の怪我を負って逃げる様に地元北海道に戻って来たストリッパーのフジワラ ノリカ。

    ストリッパーへの復帰を脚の怪我で断念したが、踊りへの情熱は冷める事なくシアターダンスの店を出す事に。

    そこで出逢う若いダンサー、バーテンダー、お客等々ノリカを助けてくれたり、育っていくダンサーを横目に自分自身のルーツを沸きたてさせたその先は……。

    これ新春一発目に最高な内容じゃったかな

    強くて弱い女性の生き様と言うか、ラストは何じゃけど頑張って生きてる女性に読んでもらいたい感じじゃね♪

    映画化して貰いたい本じゃった

    2018年1冊目

著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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