慈雨

  • 608人登録
  • 3.74評価
    • (42)
    • (100)
    • (87)
    • (8)
    • (0)
  • 103レビュー
著者 : 柚月裕子
  • 集英社 (2016年10月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716702

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

慈雨の感想・レビュー・書評

  • 16年前の少女誘拐事件で心の傷を負った元刑事と妻がお遍路を通じて夫婦の絆を確かめ合う物語。

    行く先々でふたりは過去の出来事を思い出す。それは決して幸せな事ばかりではなかったけど、ふたりの人柄、相手を思いやる心がヒシヒシと伝わってきて、すぐに私はこの本が好きになると思った。
    お遍路を続け色んな人に出会い皆それぞれ苦しみを背負っているのだとわかっていくが、神場の心の傷はなかなか癒されない。
    刑事ってここまで背負わなければいけないものなのか…。ちょっと背負いすぎではと思う部分もあった。
    彼の苦しみを本当に解き放つのは結局犯人逮捕なのだろうな…辛い。もう悪夢を見ていないといいな。神場には素敵な奥さんがいる。だからきっと大丈夫。

    「人生は晴れの日と雨の日が、同じくらいがちょうどいい。」心にしみる言葉。願わくばその雨は優しい雨、慈雨になりますように。

  • 警察小説でありながら、題名通りのしっとりとした夫婦愛が最後を飾り、涙腺を刺激する。
    定年退職した元刑事が、妻を伴った四国遍路の巡礼と、幼女誘拐殺人事件が同時進行する。
    彼は、16年前に発生した同様の事件で冤罪に加担したという悔いを抱えるため、現在の事件にも進んで関わりあう。
    遅々として進まぬ捜査に、頁をめくるのももどかしくなる。
    しかし、事件解決の端緒を掴んでからの急転直下は、一気読み。
    過去の冤罪事件を暴くことは、警察への信頼と自分たちの立場をも危うくするにもかかわらず、身を挺してでも自らの責任を果たそうとする刑事たち。読んでいて、爽快感に胸が震える。
    警察小説と、夫婦愛小説と、それに彼らの娘に隠された秘密とが融合した傑作ミステリー。

  • 柚月裕子『慈雨』集英社。凄い警察小説だった。新しい形の警察推理小説と言っても良いだろう。

    過去の事件への贖罪の念に苛まれる元刑事を中心とした人間ドラマと共に現在進行形で進展する事件の、どちらも目が離せない展開の面白さ。晴れやかな気持ちになる感動のラスト。新年最初に読んだ小説としては非常に満足のいく作品であった。

    定年退職した刑事・神場智則は妻と共に42年の警察官人生を振り返る遍路旅の途中、16年前の事件と酷似した幼児殺害事件の発生が発生する。16年前の事件が冤罪であることで贖罪の念に苛まれる神場は旅先から非公式に警察の捜査に協力することに…

    清水潔の『犯人はそこにいる』に描かれた北関東連続幼女誘拐殺人事件に酷似した事件が、この小説の根幹を成しており、16年前の事件に苦しめられながらも、未だに事件解決に執念を燃やす男たちの姿が素晴らしい筆致で描かれている。

  • 群馬県警で42年の警察官人生を終え、定年退職した神場智則。
    妻の香代子と四国八十八カ所の歩き遍路の旅に出た。
    警察官人生を振り返る旅の途中で、幼女殺害事件の発生をしり、動揺する。
    16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件に酷似していたのだ。
    神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件にーー。
    元部下であり、娘の彼氏でもある緒方を通して捜査に関わり始めます。
    そして、消せない過去と向き合い始めるーー。

    四国八十八カ所を巡礼している様子。お遍路の途中での人との出会い。
    妻・香代子とのやりとりや二人の長い歴史や過去。
    娘への思い…娘と緒方の付き合いを許せない気持ち…。
    それらが丁寧に描かれていた。
    特に16年前に神場の心に深く刻みこまれた傷や後悔。
    自分と向き合い、正義とは何かを問いかける神場。
    その心理描写がとても丁寧で、読んでるこちらも胸が苦しくなる程でした。
    妻の香代子がとっても素敵でした(*´ `*)
    そして、最後には涙が零れそうでした。

    自分の人生に後悔を抱えていない人は少ないと思います。
    大きな後悔を抱えてきた人がどう生き直すのか問いかけられていました。
    また、頼るべき存在で心の拠り所の警察組織。
    その警察組織が上っ面の正義だけを守る組織であって欲しくない!
    隠蔽体質は変わった欲しいって思った。

    「ずっと晴れとっても、人生はようないんよ。日照りが続いたら干ばつになるんやし、
    雨が続いたら洪水になりよるけんね。晴れの日と雨の日が、おなじぐらいがちょうどええんよ」
    とっても印象的で心に残る素晴らしい言葉でした。
    お遍路さん行きたいって思いました(*Ü*)

  • ようやく読むことができた。
    期待を込めて読み始めたところ、誰が書いているんだろう、柚月さんの本を読んでいるはずなんだけれどって。まるで男性が書いているという印象でした。しかしですね。孤狼の血、盤上の向日葵同様、男の生き様かな。退職して、お遍路さんの路を行きながら、過去の出来事と向かい合い、刑事としての道を貫いていく。トリックはどうかと思いましたが、正義を貫く姿、人間像、見事に描かれていました。

  • 定年退職した元刑事の神場は妻と共に歩き遍路の旅に出る。過去に冤罪に加担してしまったという後悔を抱えながらの旅の途中、その当時と同様の幼女殺害事件が起こる。かつての上司や後輩と連絡を取り、自らも非公式ながら捜査に加わる神場。正義、警察組織への信頼、自らの立場、家族の問題などを抱えながら犯人を追う。
    ミステリー(警察小説)というよりは、家族の絆を描いている作品。子どもにまつわる問題で、親子間の心理などがもう少し話に出てきてもいいかと思ったが、夫婦間の話のつなぎはよかった。妻の芯の強さの描き方がよかった。

  • ☆4.5かな。定年退職した元刑事が妻とともに四国へお遍路参り…。この設定で、こんなにも泣けるドラマが書けるなんて、柚月さん素晴らしすぎます。構成もしっかりしていて、主要人物の心情や背景がきちんと描かれていました。だからこそのこの感動!ずしりと胸に響く1冊でした!

  • 主人公の後悔が報われそうで良かった。こんな警察官ばかりなら世の中もっといい方向に向かってゆくのだろうな。退職してるのにここまでする人はそうはいないよね。夫婦愛も主人公を支えていたのだろう。素敵な人のまわりには同じような人が自然と集まるのだろうな。お遍路まわりをしてみたくなった。

  • 思っていた以上に、重い話だった。けれども最後は、“希望の光が見える”そんな話。

  • 徒歩でのお遍路旅の風景と、主人公の悔恨が重なる。描写がこまやかで、一緒に四国八十八か所巡りをしているような気持に。
    無口で、マイナス思考になりがちな中、妻の香代子の明るさが救い。
    警察小説というより、神場の刑事としての在り方や、家族の絆を描いた物語。

  • 柚月裕子さんという作家の知識が皆無だったので、男性作家の刑事物が当たり前に骨太だと認識していた私は打ちのめされた。警察の内情や事件の絡繰は本格的に、ひとりの人間の後悔は繊細に描かれ、主人公が妻と退職後のお遍路を進む中で、読者は彼の人生を一緒に振り返っていく。優しく降り注ぐ慈しみの雨。彼の道はこれからも正しく、私もそうありたい。あっと言う間に読了したが余韻は続く。

  • あっという間に読んだ。最高の作品。柚月さんの代表作になるかも。人間って一生懸命生きようとすればするほど、それぞれ後悔や迷いや罪悪感やいろんな物をしょって生きてるのかな?でも、それが時に仲間に助けられたり家族に支えられる人もいる。登場人物の真面目で真っ直ぐな生き方にいい影響をもらった。

  • 心の奥深くにゆっくり沈んでいくような静かな感動が残る。夫婦の物語としても読みごたえあり。
    知っている景色が流れてゆくのも気持ち良い。

  • 本当に何ごともきちんとしていないと気がすまないタイプなんだろうな。だから、16年前の事件も自分の中でケリが付いていない。
    そんな夫を何も聞かず、夫の様子からだけで察することのできる妻って素晴らしい。
    あたし、こんな妻にはなれないわ。無口なら無理にも喋らせるようにあれこれ質問しそうだしね(笑)。
    相手の領域にズカズカ入っていっちゃダメなのね。うーん、今さら遅いかも……。
    主人公のココロの動きをお遍路と併せているところがいいのかな。

  • 定年退職した主人公の刑事神場がそれまでの贖罪のために妻と四国八十八お遍路の旅に出ている最中に起こる少女誘拐殺人事件に、16年前に神場自身が関わった事件との類似性を感じ、冤罪という重い十字架を背負いつつも、2つの殺人事件が同一犯による犯行との確信をもっていき、真犯人に迫っていく神場の推理力と事件解決に奔走するそれぞれの刑事の姿が良かったですね!
    柚月裕子の作品は登場人物の人間像の描き方が秀逸だと思います!

  • しみじみと読める本で、良かった。
    主人公が元刑事で、仕事を離れてからも現在起きている事件を追うという話になっているけど、事件というよりは刑事の心情の方に視点が置かれている。
    それが丁寧に描かれていて、主人公の性格にも好感がもてたのが良かった。
    表紙からして結構暗い話・・・?というイメージだったけど、読後感は爽やかで希望のもてるものだった。

    主人公は定年退職した元刑事。
    彼は16年前の幼児殺人事件に関わっており、その事件の被害者となった幼児、その家族の様子、さらに加害者とされる男が冤罪だったのでは?という思いをずっと引きずって後悔の念を抱きつつ退職した。
    彼は自分が関わった事件の被害者のため、四国八十八か所巡りを決行し、それに妻も加わり二人で歩き遍路の旅に出た。
    その頃、16年前、彼が関わった幼児殺人事件に類似した事件が起きる。
    もしかして、二つの事件の犯人は同じでは?
    16年前の事件の犯人は捕まっていたが、実は冤罪だったのではないか?
    その思いから彼は事件に興味をもち、娘の恋人である現役刑事の男性に協力をあおぐ。

    主人公の男性は16年前の事件の事をずっと悔やみ、自分を責めている。
    とても実直で誠実な性格の人で、そこまで自分を責めなくても・・・と声をかけたくなった。
    優しくていい人だけど、あまりに自分で背負いすぎているように思った。
    誰も誰かの運命や人生に責任なんてもてないのに・・・。
    その事が刑事の妻や娘、他の人々の言葉からも語られているように思う。

    そんな彼が八十八か所巡りの中で、様々な人と出会い、重荷を背負っているのは自分だけでない、と思う様子がじんわりと伝わってきて良かった。
    舞台が四国という事で、なじみのある場所や行った事のある寺が登場するのも個人的に良かった。

    読み終えたらこの本の表紙がやけに重たい、暗いイメージに見えてしまう。
    もっと柔らかい雰囲気の方がこの話にあってると思うけど・・・。
    タイトル通り、優しい雨のような本だった。

  • 素晴らしかった。過去の事件で後悔を抱えながら警察を定年退職した神場が、妻と共に歩く四国八十八のお遍路の旅。その道程の描写と共に神場の心の変化、そして実際に今起こっている事件との絡みが秀逸で、目を離せませんでした。何より妻香代子の献身ぶりが見事です。刑事の妻の鑑、いや全ての妻の鑑。見習うべき所が多すぎて、爪の垢を煎じて飲みたい気分です。全ての因縁が解け、彼らの老後が平和で温かいものでありますように。とても面白かった。

  • 警察組織を定年退職した元刑事神場はある秘密を抱えながら夫婦で四国巡礼のお遍路旅に出る。その道中、16年前に発生した幼女殺害事件と酷似した手口の事件が発生し、神場は元警察官という立場で事件解決に関わるが、八十八番もの札所を巡礼する中である決心を固める…事件の真犯人へ辿り着くトリックはそこまで凝ったものではなく、ミステリー小説や警察小説という括りよりも、1人の警察官としての生きざまや家族や周りの仲間との人間模様を描いた物語のような気がした。読後は温かい気持ちに包まれる一冊となっている。

  • アンソロジーで柚月裕子さんの短編を読んでから気になり、県内在住ということもあり読んでみた。
    刑事の覚悟、刑事の妻としての覚悟みたいなものを感じた。この先もみんなに慈雨が降っていることを期待したい。

  • 退職して四国遍路回りをする元刑事が現在並行する事件に関わって解決に導く。
    遍路をしながら自分の警察人生を振り返り、心にひっかている事件に向き合う。
    何か重荷を抱えたような遍路回りが読んでる側にもずーんと重くのしかかる。
    最後けじめをつけた刑事たちがカッコいい。

  •  柚月裕子、ハズさないなあ。冤罪が大きなテーマになっているのだが、実際は男たちの心の葛藤や人としての生き方に比重が置かれていて、それが実に見事に描かれている。
     刑事を退職しても、16年前の事件に縛られながら妻とお遍路を回る男、神場。そんな神場の元に元部下で娘の彼氏である刑事の緒方から電話が入る。今回起きた事件に対するアドバイスがほしいという。今回起きた事件は、神場の呪縛となっている16年前の事件に酷似していた。
     16年前の事件とは、神場が担当した事件で、犯人を捕まえたのだが、後に冤罪ではなかったかと疑問に感じている事件であった。
     今回起きた事件が解決に向かうにつれ、必然的に過去の事件が浮き彫りにされてしまう。その時神場が下した決断とは。
     男たちの生きざまに心打たれる作品です。

  • 私たちが刑事ものを読んだときに、最後の砦、というか無意識に立っている場というか、それは当然のことながら「警察の正義」である。彼らが正しく悪とたたかってくれている、という安心感、私たちを守ってくれている、という信頼感。
    なのに、その根本的なものが揺らいでいるとしたら。そこに正義のためでなく自己保守のために真実に目をつぶる意識があるとしたら、私たちは何を信じていけばいいのだろう。
    16年前の幼女誘拐殺害事件の真犯人は誰なのか。組織のためいったんは目をつぶり見逃した証拠を心に抱えた元刑事とその妻、娘、上司と部下。警察とは、その存在意義とは。なんのために警察官になったのか、なにを守るためにそこにいるのか。彼らの葛藤と迷い、そしてそれを支える家族の思いひとつひとつに胸が熱くなる。警察モノを書かせたら天下一品の柚月裕子、そこに家族愛が加わり無敵の一冊に。

  • 3.5 最近お気に入りの作家さん。冤罪、定年後の刑事、四国お遍路。ミステリーとしてよりも人間ドラマとして楽しめる作品でしょうか。

  • 警察を定年退職した刑事が妻と共に遍路をする。ちょうどその時、過去の事件と類似した事件が発生した。
    こんな設定の物語ですが、感動の大作です。
    主人公の元刑事の過去とお遍路する間の心境の変化、現場の刑事の閉塞感。そういったものが丁寧につづられています。
    物語の終わりとお遍路の終わりが重なって、否が応でも物語を盛り上げてくれます。
    ほんのちょっとしたきっかけから、物語が急展開するあたりから、読んでいる方もドキドキしてしまいます。
    今の日本で必要なのは主人公みたいな人なんだなと昨今の企業の組織ぐるみと思われる不祥事のニュースを見ると思います。
    正しく生きる勇気が湧いてくるお勧めの一冊です。

  • これは…主人公が「普通の人」だからこその良さがあるのだろうな。同じ題材で2時間ドラマの主人公ならば、中盤でトリックに気がつき、事件は一気に解決。普通の人間だから深く傷つき、怯え、後悔し、一生をかけてトリックに気がついた。華やかさにはかけるがこれはこれでいい。

全103件中 1 - 25件を表示

慈雨を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

慈雨を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

慈雨を本棚に「積読」で登録しているひと

慈雨の作品紹介

16年前の幼女殺害と酷似した事件が発生。かつて刑事として捜査にあたった神場は、退職した身で現在の事件を追い始める。消せない罪悪感を抱えながら──。元警察官の魂の彷徨を描く傑作ミステリー。


ツイートする