慈雨

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 1587
感想 : 253
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087716702

作品紹介・あらすじ

16年前の幼女殺害と酷似した事件が発生。かつて刑事として捜査にあたった神場は、退職した身で現在の事件を追い始める。消せない罪悪感を抱えながら──。元警察官の魂の彷徨を描く傑作ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 柚月裕子さん初読みなのですが、いや〜なんかこう「大人の渋み」を感じましたね〜
    一人の男の生き様、人物像がと〜っても丁寧に描写されている(*ˊᵕˋ*)⸝
    これはじっくり落ち着いている時に読むものですね

    この話は事件そのものが主ではないので、ミステリー感を求めるものではないと思いました

    主人公の男の心情描写(葛藤、後悔、覚悟、執念、家族愛)が読みどころといったところでしょうか

    定年退職した元刑事神場は、妻と四国巡礼の旅に出る
    何故巡礼の旅に出たのか…
    それがこの物語の核となります
    16年間後悔し続けた自分と決別する為の歩き遍路
    この遍路の終わりとともに、人生に大きな覚悟を決めようとする…


    登場人物がみんな良い人なんだけど、
    特に夫を支える妻の香代子がまた可愛い
    普段は余計な事は言わないのに、いざとなると
    「今まで放っておかれたのに、退職された後も置き去りにされるんですか」
    「私は根っからの刑事の妻、なのよ」って
    神場智則、恵まれてるゾ!

    タイトルも作品にピッタリ(๑•̀᎑<๑)و イイネ

    • ヒボさん
      ハッピーアワーさん、こんばんは♪
      柚月裕子作品にハマるきっかけとなった作品ですσ(・ω・`)

      yyさんからもおすすめありましたが、佐方貞人...
      ハッピーアワーさん、こんばんは♪
      柚月裕子作品にハマるきっかけとなった作品ですσ(・ω・`)

      yyさんからもおすすめありましたが、佐方貞人シリーズ&ガミさん(狐狼の血)シリーズは是非‪(っ ॑꒳ ॑c)
      2024/03/03
    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      おぉ〜、ヒボさんだ!
      こんばんは♪
      今ヒボさんの本棚確認しました
      ヒボさんも柚月さんの作品、沢山読んでいらっしゃる!
      柚月ファンとしては、是...
      おぉ〜、ヒボさんだ!
      こんばんは♪
      今ヒボさんの本棚確認しました
      ヒボさんも柚月さんの作品、沢山読んでいらっしゃる!
      柚月ファンとしては、是非とも両シリーズ読んで欲しいってことなんですね
      読むの遅いし色々目移りするのでゆっくりですが、読ませていただきます
      ありがとうございます⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
      2024/03/03
    • ヒボさん
      きっとドハマリしますよ(*^^)v
      きっとドハマリしますよ(*^^)v
      2024/03/03
  • じんわり心にしみる物語。
    慈しみの雨 というタイトルどおり。

    60歳で警察を定年退職した神馬(じんば)。
    妻と二人、四国八十八か所お遍路の旅に出る。
    歩いて、およそ二か月。
    妻は知らないが、神馬には明確な目的があった。
    自分が関わった事件の被害者供養のため。

    とりわけ、16年前に起こった少女殺害事件。
    逮捕された犯人は服役しているが、神馬は納得していない。
    そんな中、その事件に類似する少女殺害事件が起こり
    神馬は旅先から、この事件に深くかかわることになる。

    話の中心は事件の解決ではなく、ほかのところ。
    (ある意味、事件は未解決のまま終わる)
    神馬と家族、元同僚など。
    お互いに通わせる心の繋がりが、深く温かい。
    何より “人として一番大切なことは何か” が常に問われる。

    久しぶりに読む柚月さんの小説。
    期待しながら読み始めたけれど、最初は「あれ?」という感じ。
    「なんか、退屈?」
    ところが、三分の二を過ぎたあたりから、一気に前のめりに。
    逆回りをしている巡礼者から、神馬がヒントを得ると
    もう、ドキドキ が止まらなくなる。

    そして最後は心の中に、タイトルどおりの雨を感じ…。
    さすがです。

  • 話の盛り上がりは少ないが、登場人物の感情などが丁寧に描かれて、素晴らしい作品だと思った。
    得に神場の後輩に対する心境の変化の場面はグッとくるものがあった。


  • 警察を定年退職した神場は、妻と四国の八十八ヶ所を巡るお遍路旅に出る。
    誰にも明かされない胸中に、16年前に起きた純子ちゃん殺害事件の冤罪に関わる秘密を抱えていた。そして今、その事件とよく似た手口で、愛里菜ちゃん殺害事件が起きてしまう。

    事件性に同一犯を疑い始めた神場は、過去の冤罪がなければ、こうした同じ手口による被害者がでる事は2度となかったのではないかと、後悔を募らせる。
    過去の事件を調べようにも、神場は刑事を退職した身だ。警察内で優秀な信頼のおける部下、緒方と連絡を取り、犯人逮捕への強い思いを抱く。

    お遍路の旅を進める中で何度も純子ちゃんの夢を見たり、自分を責める場面が出てくるが、事件解決への糸口は、神馬の助言からであった。
    刑事に強い責任を持ち、国民を守る義務を全うした神場の生真面目さと、冤罪から被害者が出てしまったという後悔がどんな場面からでも窺える。

    犯人逮捕への瞬間は、手に汗握る展開で、読み手に伝わる臨場感が凄かった。
    ドキドキしてサスペンスドラマを一気に見た感覚と似ている。
    またキレのある男前の文章も、刑事の渋くてカッコいいイメージにピッタリだった。

  • 警察官を定年退職した主人公は
    四国88箇所のお遍路へ出かけた。
    途中で 16年前にかかわった事件に酷使した殺人事件が発生した。
    過去の事件にできた 心のわだかまりが
    一層大きくなり、巡礼どころでは ないけど
    という 感じで 主人公の心の揺れと 
    なかなか犯人逮捕につながらない現場。

    凄くどきどきっていう感じではないけど
    じわじわとくる お話でした。

    四国88箇所めぐりとか していたら 
    感情移入しやすいと思います。
    私は 数箇所は見たことがあったので
    イメージしやすかったです。

  • 柚月裕子『慈雨』集英社。凄い警察小説だった。新しい形の警察推理小説と言っても良いだろう。

    過去の事件への贖罪の念に苛まれる元刑事を中心とした人間ドラマと共に現在進行形で進展する事件の、どちらも目が離せない展開の面白さ。晴れやかな気持ちになる感動のラスト。新年最初に読んだ小説としては非常に満足のいく作品であった。

    定年退職した刑事・神場智則は妻と共に42年の警察官人生を振り返る遍路旅の途中、16年前の事件と酷似した幼児殺害事件の発生が発生する。16年前の事件が冤罪であることで贖罪の念に苛まれる神場は旅先から非公式に警察の捜査に協力することに…

    清水潔の『犯人はそこにいる』に描かれた北関東連続幼女誘拐殺人事件に酷似した事件が、この小説の根幹を成しており、16年前の事件に苦しめられながらも、未だに事件解決に執念を燃やす男たちの姿が素晴らしい筆致で描かれている。

  • 群馬県警で42年の警察官人生を終え、定年退職した神場智則。
    妻の香代子と四国八十八カ所の歩き遍路の旅に出た。
    警察官人生を振り返る旅の途中で、幼女殺害事件の発生をしり、動揺する。
    16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件に酷似していたのだ。
    神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件にーー。
    元部下であり、娘の彼氏でもある緒方を通して捜査に関わり始めます。
    そして、消せない過去と向き合い始めるーー。

    四国八十八カ所を巡礼している様子。お遍路の途中での人との出会い。
    妻・香代子とのやりとりや二人の長い歴史や過去。
    娘への思い…娘と緒方の付き合いを許せない気持ち…。
    それらが丁寧に描かれていた。
    特に16年前に神場の心に深く刻みこまれた傷や後悔。
    自分と向き合い、正義とは何かを問いかける神場。
    その心理描写がとても丁寧で、読んでるこちらも胸が苦しくなる程でした。
    妻の香代子がとっても素敵でした(*´ `*)
    そして、最後には涙が零れそうでした。

    自分の人生に後悔を抱えていない人は少ないと思います。
    大きな後悔を抱えてきた人がどう生き直すのか問いかけられていました。
    また、頼るべき存在で心の拠り所の警察組織。
    その警察組織が上っ面の正義だけを守る組織であって欲しくない!
    隠蔽体質は変わった欲しいって思った。

    「ずっと晴れとっても、人生はようないんよ。日照りが続いたら干ばつになるんやし、
    雨が続いたら洪水になりよるけんね。晴れの日と雨の日が、おなじぐらいがちょうどええんよ」
    とっても印象的で心に残る素晴らしい言葉でした。
    お遍路さん行きたいって思いました(*Ü*)

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      しのさんと感動しているところが同じで嬉しいです。
      おばあさんの言葉、香代子さんの素晴らしさよかったですよね...
      こんばんは(^-^)/

      しのさんと感動しているところが同じで嬉しいです。
      おばあさんの言葉、香代子さんの素晴らしさよかったですよね。
      後悔を抱えていない人はいない、そうですよね。
      特に人を守ったり助けたりする人たちはその数も重さも凄いと思います。
      今日はまた慈雨を思い出せてよかったです。

      娘が帰ってきていたのでゆっくりコメント出来なくて遅いコメントですみません。
      2016/12/26
    • しのさん
      こんばんは(#^^#)
      コメントありがとうございます。
      そうですね~おばあさんの言葉、ずっしりと胸に響きました~とっても素晴らしい言葉で...
      こんばんは(#^^#)
      コメントありがとうございます。
      そうですね~おばあさんの言葉、ずっしりと胸に響きました~とっても素晴らしい言葉でしたね(*'▽')
      妻の香代子さんもとっても素敵な人でした。
      大きさは様々でしょうが、自分の人生に後悔のない人っていないと思います。
      この主人公の様に警察官だとその重さや大きさは計り知れないでしょうね。
      私のとってお遍路さんは身近に感じる存在なのでいつか…いつか回れると良いなぁって思っています( *´艸`)
      2016/12/26
  • 退職した刑事の後悔と執念
    重たい過去を抱えながら自分の人生と向き合う
    本当の刑事もこんな人ばかりだったらいいなぁ

    ■お遍路巡り
    主人公は現場には出向かず安楽椅子探偵みたいだった
    過去の冤罪事件に関わった自分を攻め続け、お遍路巡りをしながら自分なりの贖罪をする
    神場も鷲尾も悪夢を見続けるほど悩み苦しんでいてこちらも胸が苦しくなった
    握りつぶした上層部も同じ気持ちになっているのだろうか

    ■道徳が通じない時代
    子供は小さい頃から知らない人に付いていってはいけないと教えられる
    最悪の事態が起こらないようにそうするしかないけどやっぱり悲しい
    悪人基準でルールを決めなければいけない世の中はいやだなぁ

    ■人生はお天気とおんなじ
    『日照りが続いたら干ばつになるんやし、雨が続いたら洪水になりよるけんね。晴れの日と雨の日が、おんなじくらいがちょうどええんよ』
    名言だなぁ
    幸せはどうしても人と比べて測ってしまう
    人生は理不尽で努力しても報われないことも多いけど、見る角度を変えればまた幸せの度合いも変わってくるのかな

    ■刑事も人間
    神場が刑事も私情があることを認めていることが良かった
    長い捜査でモチベーションを保つためにプラスの方向に私情を向けることは重要だ
    被害者や遺族のことを想い、犯人に強い憤りを感じ何としてでも逮捕するという気持ち
    こんな刑事が捜査をしてくれたら被害者の無念を少しは晴らせると願いたい


    クライマーズ・ハイに続いて熱い仕事人の小説を読み胸が熱々だ
    やっぱり胸熱小説が読みたい!

  • ●2020年7月22日、読み始め。

    柚月裕子さんの作品を読むのは、初。
    1968年、岩手県生まれの方である。


    ●2020年7月23日、読了。

    定年退職(だったか)した刑事、神場智則(じんばとものり)と妻・香代子(かよこ)が、四国88か所を巡礼を開始する場面が、ほぼ冒頭にある。
    そして、巡礼と並行して、刑事時代にやり残した仕事をする、まあ、そんなストーリー。

    この巡礼だが、私には縁のないものと思っていたが、この作品を読み、興味を持った。全部を歩いて回ると2か月位かかるとのことで、実際には巡礼することはないと思うが。

    ●2021年10月10日、追記。

    著者のことを、ウィキペディアで見てみた。

    柚月 裕子(ゆづき ゆうこ、1968年5月12日 - )は、日本の小説家・推理作家。岩手県釜石市出身。山形県山形市在住。釜石応援ふるさと大使。

  • すごい良かった。警察を定年退職をした神場が妻と御遍路周りをしながら、現在と過去の幼女殺害事件を通して自分と向き合い葛藤する。
    場面が過去と現在と何度も切り替わるが、いつもは訳がわからなくなる私でも、不思議と振り回されず、自然な流れとして受け入れられている。
    また、視点も御遍路廻りをしている神場と現在の殺害事件を追っている緒方とが切り替わるが、迷子にならずにこの物語に効果的に作用していると感じる。
    何度も涙が浮かんできた。
    「悪人と、行き連れなんも、弥谷寺 ただかりそめも 良き友ぞよき」
    心に響いた。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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