ある男の聖書

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 28
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087733518

作品紹介・あらすじ

恐怖の「文化大革命」時代を背景とした性と愛。暗く、またみずみずしい青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • ・「おまえ」の語りは新鮮だった。誰かが問いかけ、呼びかけているような感じ。三人称とはまた違う、何者かが上から見ているような感じ。
    ・何が起きているのか分かりづらい文体ではあったと思う。言葉足らず気味の文体。語りきらない文体。元々文革の用語や時代背景がよく分からなかったり、登場人物が多くて混乱したりで、ちょっと中盤迷子になっていた。どこまでが作者の狙った効果なのか分からない。
    特に彼が加害者となっていた革命のさなかに関して、登場人物の言葉の含みが分からない。含みがわからないからそれに対するリアクションの動機が分からない。しかし、この言葉の意味の不透明さと、それが生み出す不自由さ、人間関係と政治の複雑さは、彼が描こうとしている時代の特徴でもあったのではないだろうか。
    そうした猥雑さは、農村に行くに至ってクリアになるし、「おまえ」目線での女性との関わりにはあまりなく、やはり意図した文体の効果だったようにも思う。
    ・少年時代のノスタルジーが切ない。
    ・性的なエピソードの数々も読み応えがあった。ぐだぐだと農村での出来事を振り返ったりするのは、どこの伝統だっけ。

  • ノーベル賞を授賞したフランスへと亡命した中国人作家高行健氏の自伝的作品『ある男の聖書』を読了。
    文体や手法は翻訳ものだから正確には分からないが自分がおかれた状況における自分という存在の意味やその変化を巧く書き出した作品だと思った。ましてや主人公が経験したのがあけ名高い文化革命である。この作家の作品は中国では発禁処分となっているらしい。文化革命時の人々の混乱具合と巻き込まれた人たちのサバイバルの様子が見事に描きだされており、今の中国のベースを作った時代の変化にかんして知りたい方にもおすすめです。読むのにはページ数も多く重い本だが一読の価値はある。

  • 2000年度ノーベル文学賞受賞の中国人作家、

    文化大革命、天安門事件を経てフランスに政治亡命、
    中国では全作品が発禁

    恐怖の「文化大革命」時代を背景とした性と愛。
    暗く、またみずみずしい青春小説。

    文化大革命・天安門事件・毛沢東・周恩来などに関する本はたくさん読んできたが、自らの体験を文学の形で、読む者を引き付ける力は凄い。

    毛沢東に対する評価、文革期の人間の精神、
    中国の若者がこの本を読むことができる時代が、近い将来に来ることを切望する。

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