- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087745191
感想・レビュー・書評
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奥田さんとは、ほぼ同世代なので、何かと共感できるところが多く、自分の大学時代を思い出しながら楽しく読み終えた
東京に出て、何をしたいかではなく、とにかく窮屈な田舎を出たいとの思いだけで、飛び出してきた奥田英朗ならぬ田村久雄
それも大学に受かったからではなく、すべて落ちたので
予備校に入るために
母親がついてきて、下宿の掃除やら荷物の片付けやらを済ませ、帰っていったあの時の感覚、昨日のことのように思い出した
一人下宿に取り残されたような寂しさと不安、でもこれから一人暮らしが始まるんだという期待
父親の事業の失敗で大学を中退するも、広告代理店で、コピーライターやプランナーとして自活していく
その時々の仕事仲間やガールフレンドとの会話が生き生きと描かれており、飽きることがない
「田村は、このまま一介のコピーライターでいるつもりはないんだよ。何かになるつもりでいるんだ」
「小説でも書けよ。田村の書く文章、結構好きだな」
こうして数年後の小説家奥田英朗の誕生となるのかと、納得し嬉しくなった
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『後輩に対してあれもできないこれもできないなんて考えるな。発想を変えろ。ああ、こいつはこういう事ができるんだ、こういう取り柄があるのか、そういう風に考えろ。いいところを見てやるんだ。』このような考えを持ちながら仕事ができる人になりたい。
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79~89年を描いた話。
良くも悪くも勢いのある話であった。
確かに、バブルというと広告代理店が頭に浮かぶ。 -
内容紹介
名古屋から上京した久雄は、駆け出しのコピーライター。気難しいクライアント、生意気なデザイナー、そして恋人。様々な人々にもまれ成長する青年の姿を、80年代の東京を舞台に描く傑作青春小説。 -
2000年代に書かれたほぼ1980年代の物語。
結構楽しく読めた。
名古屋がソウルとオリンピックを争って敗けたことは知らなかった。
タイトルがもひとつだと思う。 -
主人公は駆け出しのコピーライターの田村久雄。
短編綴りになっており、ジョン・レノンが射殺された日や、ベルリンの壁崩壊の時に、田村がどんな様子で東京を感じ、生きていたかを綴っている。
80年代を主軸にバブルで盛り上がる中、若者の感受性や、価値観を描いています。
ストーリーとしては波があるわけでもないですが、面白く読了しました。 -
70年代後半から80年代にわたる若者の小説。予備校生・大学生・会社員・独立起業と慌ただしい中にも、青春を謳歌し楽しんでいる雰囲気が味わえます。当時は冷戦まっただ中でしたが、現在よりずっと平和だったように感じました。バブル景気を迎える直前で将来に明るさもありながら、古い考えもまだまだ根強かったという面も垣間見られました。
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1978年 青春グラフティ
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H29.03.19 読了。
まず、読みやすい。
ストーリーが面白い。
だから読み進めるのが楽しみで仕方ない。
青春系の話を読みたくて手にとってみたが、
大体今までは青春だけども、面白くない。
ってことが多くて、期待はしていなかった。
が、この作品は青春もしてるし、ストーリーも面白いしで、最高だった。 -
かつて上京する前に読んだときに衝撃を受けるくらいこの雑然とした世界観を好きになった。
その後、曲がりなりにも東京とうい街で生活をして、そしていままた読んでみるとやっぱり素晴らしいと感じる。
『ふと思いだした。今日、ジョン・レノンが死んだのだ。』
『キャンデーズを初めていいと久雄は思った。今度レコードを買ってみよう。』
『ふと、さっきこの子とキスしたことを思いだした。』
『自分にエイッと気合を入れる。誰もいない夜道でシャドー・ボクシングをした。』
『でも悪くない1日だった。東京のエネルギーは、きっと人の多さのエネルギーだ。』
2015.10.7 -
あの頃に戻りたい!なんていうノスタルジックな気持ちになる一冊です。
何度読んでも、胸がキュンとなるような、そんな小説。
特に上京した日の心境など、自分も似たような感じだったので、懐かしくなりました。
大好きな本です。 -
110715
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世の中がバブルへ向けて大きく舵を切り始める1980年代が時代背景。田舎がいやで親の反対を押し切って上京してきた主人公久雄の20代を浪人、大学中退を経て、コピーライターとして一人前に成長していく様を6篇の短編にてつなぐ。単純なストーリではあるが、読み応えはあり。ジョンレノン殺害、ベルリンの壁崩壊など、各編ごとに象徴的な出来事をうまーく絡めてその時々の主人公の心の揺れを繊細かつ大胆なタッチにて書き込む。アンド泣きと笑いを絶妙なタイミングで織り込む事で、物語に強いリズムが生まれてくるのであろう。さすが奥田作品!!バブルを経験した人はタイムスリップでき、知らない人は仮想体験できるすばらしい出来栄えです。初夏にもってこいの爽やかな気分に浸れますよ~。
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奥田英朗の本は、いつもいつも読まされてしまう。どんどん、読みたくなる。
1人の男の人の物語。
東京で起きた出来事と絡まりながら、1日のことを描いている。
聞いたことはあっても、知らない出来事ばかりなので、主人公のストーリーとともに楽しめた。 -
ジョンレノン
ウランバーナの森読み返す -
とってもよかった! 著者の中高生時代を振り返ったエッセイ「田舎でロックンロール」がたいそう面白く、その中で「この続きは『東京物語』で」と書かれていたので、早速読んだのだが、小説であるこれも傑作。
主人公の田村久雄は、著者そのものではないにしても、ほぼご自身のことだと思われる。解説の豊崎由美さんが、そのように読むことを「読者に特権的に許される確信犯的誤読」と書いていて、さすがだなあと思った。(この解説がまた、とてもいい。豊崎由美さんが文庫解説を書いているのってわたしはあまり知らない)
六作の短篇で構成されているが、それぞれにその時代の気分をあらわす出来事が背景として(というよりもっと直接に)描かれていて、もう、気持ちは当時へと飛んでいきそうになる。キャンディーズ解散、ジョン・レノン殺害、ルーキー江川の初登板などなど、どれもこれもその時自分が何をしていたか、思い出さずにはいられない。
特に、著者と同い年のわたしとしては、オクダ青年が上京したのがキャンディーズ解散コンサートの日(1978.4.4)だというのには、あ、わたしも!と「お仲間」気分になった。わたしは東京ではなく京都だけれど、田舎の家で解散コンサートの中継を半分ほど見て、その後夜行に乗ったのだった。憧れて行きたくて行きたくてたまらなかった大学へめでたく向かうというのに、やっぱり夜行の寝台で泣いちゃったんだよなあ。
ジョン・レノンが死んだ日の夜は、大学近くのビートルズだけがかかる(知る人ぞ知る)喫茶店にいた。その日ばかりはジョンのソロアルバムがかかっていた。口数の少なかったマスターの横顔が目に浮かぶ。
とまあ、そういうあれこれがまざまざとよみがえるような思いにさせてくれる小説なのである。言うまでもないことだろうが、もちろん、本作はそうしたノスタルジーに寄りかかっただけの小説ではない。主人公久雄の「青春」が、甘さと苦みの入り交じったものとしてしみじみ胸に迫る、どの年代の人が読んでもすぐれた青春小説だ。笑えるところも、アイタタ!となるところも、ジーンとするところもある。まったく、豊崎さんが言うように「魅力のある一行一行が延々と連なって」いて、細部のリアリティが周到に積み上げられているのだった。
ラストシーンでは、久雄は友人たちとともに、ベルリンの壁崩壊を伝えるテレビを見ている。あのとき、多くの人が確かに世界が動いていると思った。よく見えない未来ではあるけれど、それは間違いなく良いものであるはずだった。現実はどうか。
そう思うと、この終わり方は切なく、ほろ苦い。若い頃は誰も、オジサンオバサンになった自分を想像することなどできないし、行く手にどんな世界が待ってるかはもっとわからない。ふざけながらテレビを見ている一人一人が愛おしくなった。 -
2015.1.2読了
きっと一度読んでるな。一生懸命は一生懸命なんだけど、調子に乗っていたり、勘違いしていて、でも憎めない。私の上京は歳をとってからだったけど、あの日のあの感じを思い出したな。(図書館) -
平凡な一青年が大人になっていく、モラトリアム期の、キラキラして、でも何も普通と変わらない日常を切り取ってる。日々のちょっとした充足感、思い返すとすごく輝いてる。
今の自分と過去の自分を重ね合わせて読んでました。
思い上がりや、苛立ち、時に調子に乗って、時に勘違いをしたかのように人を好きになってみたりして、そうやって成長していく。
青春が終わり、人生は始まる。
いい言葉。
若者だけと言わず、一生舞台に上がって生きていきましょう。 -
年代や年齢での差をはかる気はないけれど、いわゆるバブル期を過ごしてきた人たちは、なにか違う。その人に染みついた空気なり空間の記録は、飲み屋で聞いた話のよう。