MOMENT

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087746044

感想・レビュー・書評

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  • 死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら……。
    病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。そこにある小さいけれど確かな希望――。静かに胸を打つ物語。
    「集英社内容紹介」より

    MOMENTの前に読んだWILLがすごくよかったので、こちらも.4編が1冊に収められている.
    4編がそれぞれ独立したお話ながら、最初に現れた伏線は最後に見事に回収される.「死」をテーマにしながらも、その死が訪れるまでのわずかな時間に「希望」を見つけるお手伝いを神田くんがする.死ぬときに何を願うか、は人それぞれ.復讐だったり、ささやかな希望だったり、人のぬくもりだったり、残された人たちへの想いだったりする.
    患者さんと神田くんの会話が味がある.神田くんの絶妙な切り返しが心をとらえる.
    自分だったら何を願うだろうか.今は思いつかない.神田くんは言う「どうせ死ぬ時になったらいやでもわかるでしょう」.こんなことばで人にわずかでも、たとえ一瞬でも希望を思い出してあげられるようなことばをもちたい.

  • 本多孝好2冊目。この作者は生と死をテーマにしている作品が多いのか、内容的には重い題材でも、その文体と登場人物の性格からか、そんなに重く感じることなく、むしろあっさりとした印象が残る。
    物語は連作短編集。主人公の町田は病院で掃除夫として働いている。そこで、死を目前に迫った患者の願いをたった一つだけ叶えるヒーローなのである。それも、想像するヒーローとは違い、やはり人間。出来ることには限りがあるのだが、またそれもリアルで良い。
    ここからはネタバレ。
    町田が正義のヒーローとなったのは2年前から。その前までは、また違ったヒーローがいた。そのヒーローは、末期の患者の望み、死を叶えてあげる医者であった。その医者は院長の息子であり、留学から帰ってくると、また3年前と同じように、末期の患者に頼まれ望みを叶えようとする。それを知った町田が止めようとして…。
    過去のヒーローの歪んだ正義を止めようとする町田は本物のヒーローです。

  • ある病院には「必殺仕事人伝説」がうわさされていた。死ぬ間際にいる人の願いを1つだけ叶えてくれる黒い服の男が真夜中に現われる…いつしかその「黒服の男」は「灰色の掃除夫」に変化して…。

    人の恨みは死に際になると浄化される表現がドラマには多いけど、なかなかそんなに簡単に「悪」の気持ちが消えることはないな…と思わされた。
    人間ってそんなに単純な美しさはもっていない。
    みにくくても自分の生き方に真っすぐだから、軽蔑もされるし魅了もされるんだ。

  • 久しぶりに、普通に面白かった

  • とある病院の、死を目の前にした患者たちと、必殺掃除人・・間違えた「必殺仕事人」(たち)の話。

    4つの話1つ1つが読ませる文章でした。死を目の前にするとどうしても美談が目立ちますが、そこは人間。死を目の前にしても人間の醜さ・欲色々あるのだと読了後にジンワリと思わせる一品でした。

    個々の章の感想

    Face:良い意味で、患者の行動に裏切られた。この話の前半を読んでいるときは「単なる美談」があと3章続くか?と思ったがそんな想像は「しゃらくせぇ」と一笑された気分でしたよ。

    Wish:女の子ってこわいね。うん。この話の後半に入ると、必殺仕事人(笑)がどんどん不憫に思えてきた。
    でもよい終わり方だった。

    Firefly:一番仕事人が患者に騙されず(笑)仕事をしていたかも。前の2つが患者に翻弄されすぎていたから、むしろ良かったのかも。
    それでもって最後の留守番電話のシーンはジーンときた・・・。情景が思い浮かべられる印象的なシーンだった。

    Moment:すべてを締めくくる章。なぜ必殺仕事人が誕生したのか・・・。それが分かり、また終わらせた文章。


    最後に・・・葬儀屋の可愛さに気づいた必殺掃除仕事人。二人の将来の示すのはたった1行だったが、なんだかほんのりかわいい恋愛を見ている気分だった。
    鈍い彼がもっともっと葬儀屋の可愛さに気づけばよいと思う。

    大いなるネタバレですが、黒衣の必殺仕事人と聞いたとき「幼馴染か!」と疑いました。
    見事に外れでしたが(笑)

  • よく夏の100選で名前を見る作品だな、と思って借りてきました。
    初めて読む作家さんだな、と思っていたんですが3年前に短編アンソロジーを読んだことがあることをさっき知りました。
    6篇の中で一番好きな話書かれてた方だった!

    わたしが予想していた必殺仕事人とは違う人が必殺仕事人でしたが・・・これは予想外でした。
    全部別々の話であるのにつながっていて面白かったです。
    FIREFLYの上田さんが切なくて泣けました。
    脇坂さんたちはどうなったのか気になるし、いったいマイちゃんは何者だったのか・・・。
    最後の問題はすごく難しいな、と思いました。
    確かに少しでも長く生きてほしいと思うのは元気な人間のエゴだと思います。
    自分がもうすぐ死ぬとなったらやっぱり殺してほしいと思うのかもしれないし。
    でも、それでも生きていて欲しいんですよね。一分でも一秒でも。

  • どの話も一捻り加えられてはいるけど、ありがちな設定が気になるかな…。もう少し捻っても良いのでは。会話のテンポとか文体とか言葉の選び方は結構好き。全体として、読みやすいけど、味が薄い。という感じ。

  • 死を目の前にした人の願いを聞く話。明るい雰囲気の作品ではなかったはず。機会があったら再読したい。

  • 予想外に面白かったという印象!
    全4話からなりますが、どれもひと癖あって「ほぅ!」と驚いた
    個人的には2話、3話が好み
    したたかで繊細で脆くて、でも強い女の子たち
    続編(?)にあたるWILLも出てるみたいなので早速図書館へ急ごうと思う

    「デートを終わらせるのは女性の役目です。引き延ばすのが男の役目」

  • 「will」が生き残った人の話なら、
    「MOMENT」は死にゆく人の話であった。
    神田が探しているものを、森野は察している。
    この2人の関係は名前がつかず、つかず離れずなのかと感じた。

    WILLを読むと、2人には必要な時間であったと改めて思った。

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著者プロフィール

1971年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1994年「眠りの海」で小説推理新人賞を受賞。‘99年、『MISSING』で単行本デビュー、「このミステリーがすごい! 2000年版」でトップ10入りするなど高く評価され、脚光を浴びる。以後、恋愛、青春小説を超えた新しい静謐なエンターテインメント作品を上梓、常に読者の圧倒的支持を得ている。その他の作品に『正義のミカタ』『MOMENT』『WILL』『魔術師の視線』『君の隣に』など。『dele』では原案と脚本を担当し、山田孝之と菅田将暉主演でドラマ化された。

「2021年 『チェーン・ポイズン <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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