蒲公英草紙 常野物語 (常野物語)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087747706

感想・レビュー・書評

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  • まだ戦争が始まる前の新しい世界に胸を踊らせていた時代。その中で少女時代を過ごした主人公峰子が見ていた日々。その土地に古くから続く名家槙村家に出入りする人々と過ごした幸せな時間とその終わりが描かれてる。
    出てくる人々をとても好きになった。重い病気だけど聡明で勇気のある聡子様、峰子を「ねこ」と呼んでいつも意地悪をしていた廣隆様、小さいながらに自分の運命を当たり前に受け止め「常野」として生きる光比古、ちょっとだらしないけど絵のことから時代のこと国のことまで考えている椎名様...
    この時代を生きてこの村の景色を見たような気持ちになった。「常野」は、この先のこの国に役立てるためにみんなの思いを自分の中に「しまう」。「本当はみんな持ってる力」と光比古が言うのは、槙村の人々がしてきたようにみんなの思いを語り合って後世に伝えることができるということなのかな。
    最後の峰子の問いかけは今の私たちへの問いかけに思える。私たちの国は輝かしい未来に向かって漕ぎ出したはずだった。けれど、日本は負けた。残っているのは飢えた女子どもばかり。これからもこの日本は続くのか、新しい国になるのか、私たちがこれからこの国を作っていくことができるのか、それだけの価値がある国なのか。

  • 再読ですが。
    改めて恩田先生の凄さを感じたというか。
    光の帝国の続編……というよりは、その過去のお話。
    初読では感じていなかったのですが、少女の視点の瑞々しい世界。
    引き継いでいく想い。それが丁寧に精緻に描かれていて。

    かつての日本の原風景。
    そして、さらに富国強兵の後の日本を描いたラスト。
    もう夏休みが終わりますが、ぜひ、中高生が戦時を考えるうえでも読んで欲しい一作でした。

  • これぞ常野物語という雰囲気。「光の帝国」の時よりまだ常野一族以外の人たちとの距離が近かった時代のお話。

    西洋画は瞬間を切り取る、日本画は対象の過去から現在までを読み解く、みたいな解釈が非常に面白かった。そしてこの日本画の方の解釈と常野一族がオーバーラップする。

  • 読み終えるまで、苦労した。
    まったく共感もできず、入り込むこともできずじまい。
    だからなに?そんなことする必要ある?って感じ。
    読みも浅くて、読み返す気もしないからわからないんだけど…
    ふっとばされた子を、どうしてあの子が呼び戻せたのか?親よりも力がある?
    ファンタジー?SF?お伽話?
    想像力が乏しくてごめんなさい。

  • ×

  • 「夜のピクニック」「蜜蜂と遠雷」で、本屋大賞を2度も受賞した直木賞作家、恩田陸。

    この本は、世界の初めには人々が持っていた能力を、他の人々が忘れてしまった後でさえ、持ち続け人類に寄り添って生きた一族「常野」の物語の第2章。

    最初の物語では、あらゆる時空に生きた常野一族を短編風に仕上げてプロローグとし、この第2章は、ちょうど江戸時代から明治時代のニューセンチュリーと呼ばれる時代。

    妻の強い一言で、家財を台車に引いて高台に逃げ、生き延びそしてその僅かな財産で、もう一度村を再建した槙村家の人々を取り巻くお話になっている。

    心臓が生まれつきの奇形で寿命が短かった聡子は文字通り聡明で明るく優しい少女。その槙村家の末娘に、話し相手として屋敷を訪ねる様になったのが峰子、医者の娘だ。

    二人が織りなす濃密な生命の輝く季節の不思議なお話。

  • 常野シリーズ第二弾。第一弾とは違いひとつの大きなおはなし。キャラクターが魅力的だった。

  • 光の帝国とは全く違った雰囲気です。舞台は戦時中の集落で、一人の女性の視点で語られていきます。
    読んでいると暗く重い気持ちになるときが多く、しばらくはこの本を開くこともないと思うのですが、それぐらいに感じさせるもののある作品です。

  • やさしい文体で綴られる。
    タイトル通りのほんわりした雰囲気が全編にあるが、それだけにラストは衝撃的。

  • 文章が美しくてもの悲しくて、
    読み終わりたくないような早く読み終わってしまいたいような、不思議な気持ちだった。
    10年以上前に書かれた本で、舞台も昔に設定されているけれど、「私たちがこれからの時代を作っていくことができるのか、それだけの価値がある国なのか」という最後に書かれていたことは今も色褪せることなくあるテーマで、私も考えたいなと思った。
    あと、その人の歴史を気持ちごと記録するという「しまう」という行為は、超能力だけど、私たちも本を書いたり読んだりすることでできることだと思った。
    図書館で借りて読んだけど、これは手元に置いておきたいなぁ。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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