終末のフール

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著者 : 伊坂幸太郎
  • 集英社 (2006年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087748031

終末のフールの感想・レビュー・書評

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  • 8年後、小惑星が地球に衝突し、世界は終末を迎える…
    この発表により世界は恐怖と焦りに満ち、治安は荒れに荒れ、強奪や暴力、殺人が氾濫、多くの者が移動して大渋滞が発生、食糧は不足し、ある者は未来に絶望して自ら命を断ち、ある者はひきこもり…
    そんなパニックが小康状態となった、発表から5年後の、仙台「ヒルズタウン」の団地に住む人々の物語。

    面白かった~。伊坂さんの短編って初めて読みました。
    他の章で出てきた団地の人々とときどきすれ違ったりするのもいいなぁ。

    ◎終末のフール
     「馬鹿」が口癖の父と、そんな父に反発して10年前に家を出て行った娘。
     「元気よぉ。あと3年くらいは生きれそう」というお母さんの静江さんがお茶目で、「魔物が棲んでいる」甲子園に魔物退治に行こうとした、亡きお兄さんも可愛い。「失敗作」だと言って息子を追い込み、娘に愛想を尽かされ、それでもそっと寄り添う奥さんに優しくできず。そんな中にも確かに存在する、家族の絆。伊坂さんらしくない(と言ったらアカン?)、冒頭の一話。

    ◎太陽のシール
     優柔不断な僕。明るくあっけらかんとした妻、美咲が、妊娠したようだという。生まれても3年、産むべきか産まざるべきか…。
     友人の土屋くんの言葉が印象的。障害のある息子より先に死ぬことを恐れていたという彼は言う。「みんな一緒に死ねる、俺はすげえ幸せなんだ。ここにきて、大逆転だ。」。世界の終わりがやってくるとは思えない、温かい結末。

    ◎籠城のビール
     過剰な報道で自殺に追いやられた妹の復讐のため、ふざけた報道をしたアナウンサーの自宅に籠城する兄二人。
     報道に対する問題意識を盛り込んだ、伊坂さん流シニカルさを含みながら、なんだか救いのあるお話。

    と、全部書こうとしたけれど疲れたので、あと一つ。

    ◎鋼鉄のウール
     キックボクシングのジムに通っていた小学生。小惑星の衝突の発表で、ジム通いは中断していたが、5年後立ち寄ったジムでは、会長と苗場さんが、普段のとおり練習を続けていた。
     話自体はシンプルなんだけれど、引用で書いた、苗場さんの言葉にしびれました。うーん、深いですね。

    ほか、冬眠のガール、天体のヨール、演劇のオール、深海のポール。題名も笑えますね。

    家族と一緒のひともいれば、家族に死なれてひとりの人もいる。
    宗教におぼれるひともいれば、シェルターの抽選の噂に翻弄されるひともいる。
    ただ日々を淡々と過ごしてその日を迎えようとする人もいれば、その日を自分の目で見て、ほかの人より後に死のうとする人もいる…。
    自分ならどう生きるだろう。
    小惑星の衝突が避けられないならば、3年後の終末まで生きるか死ぬか、どう生きるか、真に迫った問題として考えざるを得なくなるけれど、苗場さんが言うように、本当は、いつ死ぬとしても生き方は変わらないはずで。死ぬ時期のいかんに問わず、どう生きるかはいつでも考えるべき問題なはずで…。
    とはいえ、そんな風には割り切れず、こんな生殺し状態に耐えられるかと自暴自棄になったり、こんなしんどい仕事なんて続けられるかと思ったりするんだろうなぁ。平穏に過ごせる自信はない。
    日本ではほとんど無視されていたけれど、終末論のあった2012年内に読めばよかったです。

  • 8年後に小惑星が落ちてくることが分かった、その5年後の仙台にあるマンション「ヒルズタウン」に住む人々と、その周辺の人々の話。つながりのある短編集。

    ハライチのネタのような目次がツボです。
    太陽のシール、籠城のビール、冬眠のガール、などなど。

    終末のパニックで、犯罪が横行し、多くの人が亡くなった。
    それぞれのお話の主人公の家族も、みんな亡くなっているという設定に、重苦しい気分になる。
    後半になって、その設定に、仕方ないとはいえ、ちょっと飽きてきて、やっぱり著者の作品は合わないかも…という気持ちになってしまった。

    あと3年という時期に、妊娠が分かった夫婦の話、太陽のシールは、好きでした。

  • 「生きる」意義を丁寧に教えてくれる本。
    今、生きている世の中での「辛いこと」なんて、「何てことない」と思わせてくれる。
    読んで良かった!

  • Today is the first day of the rest of your life. Charles Dederich

    終末のフール
     私たちの住む、この「ヒルズタウン」は、仙台北部の丘を造成して作られた団地で、公園は一番見晴らしの良い場所に設けられている。

     正直なところを言えば私は、自分の人生がまだ長い、と信じていた。だから、そのうちに康子のほうから詫びてくるのではないか、と高をくくっていたところはある。まさかその翌年に、「あと八年の寿命」と言い渡されるとは、思ってもいなかった。それも、「私の寿命」ではなく「世界の寿命」だったのだから、まったく、物事は私の予想を超えている。

    小惑星 兄の自殺 

     翌朝、東京に帰る康子を、車のところまで見送った。彼女は運転席に乗り、シートベルトをした後で窓を開け、私たちに手を振った。彼女の左手薬指には指輪が嵌められていたが、それについては、結局、触れなかった。
    「お父さん、お母さんに誤ったほうがいいよ」康子が顔を出した。
    「俺が?」
    「今までずっと馬鹿にしてたんだから。たぶん、お母さんはすごく怒ってるよ」

    太陽のシール
     美咲の顔には苦悩はなかった。楽しそうに僕を見据えて、「産むか産まざるか。選択の時よ。富士夫君の得意な、選択だよ」と言った。

     あれ以降、八月十五日は、終戦記念日というよりも、もっと別な意味を持つ日となった。

     干支をひと回り遡った十二年前、東京の私立大学に通っていた時に僕は、美咲と会った。
     浜松町から池袋 「分かった。じゃあ、わたしが決めてあげるよ。山手線、内回り!」

     十年後、子供と向かい合って、オセロをやる僕だって、確信できた。「ちょっとわたしも混ぜてよ」と美咲がつまらなさそうに言い、「オセロは二人でしかできないんだ」と僕が残念そうに説明をし、「お母さんは待ってて」と子供が生意気な口を利く、そんな、恥ずかしくなるくらいにあたたかい情景すら浮かんだ。

    「しかも、双子かもしれないって」
     言葉を失った。僕はあまりにびっくりして、声を発することができなかった。けれど、次に言うべき台詞は分かっていた。「それならオセロを二組に分かれて、できるじゃないか」

    籠城のビール
     解体新書の発行者と同じ名前を持つ人気アナウンサー
    …「ではここで、コマーシャルです」と杉田が言った。ただ、今でもよく覚えているが、その時に杉田が一瞬だけ、沈痛な表情になったのだ。すぎにコマーシャルの放送に切り替わらなかったため、思わず、自分の正直な感情が表に出てしまった、という様子で、杉田のゆがんだ顔が映った。そして、スタッフに向かってなのか、「悪役はつらいな」と悲しげに、眉をひそめた。
     恥ずかしい話だが、俺はその時、「あ、この男も好きで、攻撃的な発言をしているわけではないのだな」と解釈した。おそらく視聴者の大半は、そう受け取ったはずだ。
     けれど、兄だけは違った。「計算だ」とすぐに呟いた。
    「え」と俺は、兄に聞き返した。
     
    天井裏 手品

    冬眠のガール
    「ほんと書斎って感じだねえ。美智のお父さんって読書家なんだなあ」中学校に入ったばかりの頃、はじめてわたしの家に遊びに来た同級生の子が、この父の部屋を覗いて感嘆の声を上げたのを、覚えている。

    「彼氏なしのまま、終わりなんてさ」

    「そういう人間っているじゃない。相手が持っているものにはケチをつけたがるし、幸せそうに生きている人をちくりと刺して、不安にさせて」

     わたしたちが高校三年の時、まさに受験勉強の真っ最中という時に、例の小惑星のことが発覚したから、高校時代の後半は結局混乱のまま、尻切れトンボのように終了してしまったけれど、それまでの間、わたしは太田隆太とはずっと同じクラスで、何度か席も隣り合わせだった。
    …和室は六畳で、小さなテレビと箪笥、それと隅に仏壇があるだけだ。
     繁々と眺めたわけではないけれど、その仏壇に飾られている白黒写真が、高校時代の太田隆太であることにわたしは気づいていた。
    「実はわたしが読んだ本に、確かビジネス書だったと思うんですけど、書いてあったんです。新しいことをはじめるには、三人の人に意見を聞きなさいって」

    尊敬する人 理解できない人 新しく出会う人
    45° 45℃ 全部温度みたいにしていた
    家庭教師

    鋼鉄のウール
     苗場さんが現れると、ジム内の雰囲気が変わった。五年前まで、そうだった。

    天体のヨール
    「直系十キロの小惑星。秒速はどうなんだろう、二十キロくらいかなあ」

     車を走らせて、大学を目指した。二ノ宮の住む町から、仙台市街地へと国道を走っていくと大きなトンネルにぶつかり、そこを越えて、くねりくねりと道を曲がっていくと、青葉山に出る。片道三十分、という行程だった。その山の敷地内に、俺たちの通ったキャンパスはある。

    演劇のオール
    役者目指し上京

     マンションに出戻った時、両親は呆れもしなければ、怒りもせず、淡々としていた。「こんな娘を許してください」と挨拶すると、父と母は愉快げに顔を見合わせて、「かわりに、おまえもいつか、誰かを許してあげなさい」と言った。

    深海のポール
    屋上 櫓

  • 印象に残ってるセリフ
    「自殺なんてしたら、ぶっ殺す」

    終末のフールやら太陽のシールやら題名の語感から、ハライチが浮かぶのは僕だけか(^O^)

  • 設定が面白いです。もしも自分が主人公たちと同じ立場に立ったら、何をするのか考えさせられました。

  • ちょっと今、ない頭を使うを難しい作品を読んでるので、人を食ったような作者独特の軽い文章を求めて箸休め的に読んだ作品。

    1話目は身近にいるあの方達に読んでもらいたいなぁ…はぁ…(´・_・`)

    結局、箸休めにはならなかった…伊坂さん恐るべしm(_ _)m参りました、素直に読んで良かった作品でした。ありがとうございます

  • もし近い将来地球に隕石が落ちるとしたら、人々はそれからの人生をどう生きるのか。

    登場人物それぞれの、心の葛藤を描いた物語であった。
    恐怖のあまり、自らの人生を終わらせるものもいれば、最後まで信念を貫いて生きようとするもの。
    自分だったらどちらを選ぶのか。前者を選んでしまうかもしれないし、後者を選ぶのかもしれない。その時にならないと分からない。
    ただ、読んでいて思い出したのは高校の先生の言葉であった。
    「死ぬことはいつでも出来るが、生きることは一度しか出来ないない」
    きっと、自分の頭に「死」の文字が浮かぶ度に、この言葉を思い出し、踏み止まることになるのだろう。

  • 伊坂さんの短編集。だけどそれぞれがふんわりと繋がっています。

    目次を見て、??
    終末のフールではじまって、太陽のシール、篭城のビール、冬眠のガール、、、
    「はらいち」のネタかよ!って思った人は私だけじゃないと思うw

    小惑星が地球に落ちてくる。
    八年後に地球は滅亡する。とわかった五年後の話だ。

    混乱の五年が過ぎて世の中が次第に落ち着き始め(諦め始めた?)
    あと三年で滅亡すると知っていながら暮らす人々を
    それぞれのドラマをもたせながら一つ一つ語られてる。

    どの話もが、編みかけで編み目を一旦休ませたような状態で
    次の章へ。
    どのパーツも編み目は休んだまま、完成は遠いような。

    わたしは、こんな事態になった時、
    いったいどの人のようにすごしているだろう。
    冬眠のガールがとても気に入っています。

  • この人って、なんかこう小説職人というか、「うまい」んだよなあ。これもどんでん返しとかハラハラとかではないけど、設定がやっぱりうまいので面白い。
    3年後に世界が滅びるとわかっていて、子どもを産むかどうか悩むという話が泣けた。
    だってどうする?自分なら?って。
    自分が母となった今ならきっと「産む」ほうだけど、母になる前ならどう思ったんだろう??
    とかいろいろ本気で考えてしまった。
    生きるのに意味とか考えてたら生きてけないんですが。強くあることと鈍感であることは紙一重なのかもしれん。

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