絵小説

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 279
感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087748161

感想・レビュー・書評

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  • やっぱりこのお二方は親和性が高い・・・どこか恐ろしくてでも美しい・・・。
    皆川先生がチョイスした詩から宇野さんが絵を描き、それをもとに創作した物語・・・という特殊な作りをした1冊です。ううん、豪華だ。
    『蝶』や『影を買う店』ぽくてとても素敵。
    「赤い蝋燭と・・・」タイトルの通り人魚を彷彿とさせますが、人魚のように声を失った女性に惹かれていた少年のお話。
    「美しき五月に」傷付き血を流す愛しい男に愉悦を感じる少女という皆川節炸裂。う~ん「少女外道」!でもこれは、どこかものがなしい。繰り返す痛みは彼か彼女か。
    「沼」は異界へと誘われる母子のお話。皆川先生って北欧神話お好きなんですかね、割とオーディンとかヴァルキューレネタ多いですよね・・・。
    「塔」はいたぶられながらも姉を慕う少年のお話。個人的に一番すきですね!ラストも含めて・・・近親相姦の暗喩ぽくて・・・ラプンツェル・・・。
    「キャラバン・サライ」は早熟な読書家の子どもの服毒自殺のお話。もうこのあらすじからしてヤバイ。また『にんじん』読んでるような幼女だよ・・・皆川節・・・。
    「あれ」はもしや皆川先生の自伝なんだろうか・・・ぞくぞく・・・。そんな気はしてたんだが皆川先生、日夏耿之介お好きなんだな・・・。

  • 夢のコラボ。あとがきも兼ねている最後の収録作「あれ」によると、まず皆川さんが好きな詩の一節を抜き出して、そこからイメージされた絵を宇野さんに書いてもらい、その絵からさらにイマジネーションを得て皆川さんが小説を書く、という順番だったようです。以下メモ。

    ○赤い蝋燭と……(木水彌三郎「幻冬抄」より)
    ○美しき五月に(多田智満子「風が風を」より)
    ○沼(ジャン・コクトオ/堀口大学訳「わるさながらも素晴らしい」より)
    ○塔(吉岡実「僧侶」より)
    ○キャラバン・サライ(イヴ・ポンヌフォア「真の名」より)
    ○あれ(アンリ・ミショー「怠惰」より)

    好きだったのは、孤独な幼女が湖底に沈むキャラバンサライ(隊商宿)の幻想に惹かれる「キャラバン・サライ」主人公が好んで読む本の数々は、おそらく皆川さん自身の記憶なのではなかろうか。

    「塔」はそもそもの「僧侶」という詩がなんとも不気味なので、おのずとホラーじみてくる。ニエッタニエッタとかランチュクチュクとか変な擬音が気持ち悪さを増幅。「美しき五月に」は既読だったかな、輪廻転生もの。全体的に不穏で良かった。

  • 鏡の向こうの様に気づいたらあちらの世界にいて、一度世界に触れたら歯車は動き始めてもう後には戻れないような、二度と振り向かず去って行くような素晴らしい読後感だった。「美しき五月に」が特に好み。官能の記憶の重層美。名を呼んだら窓から腐った内臓が降ってくる「塔」もいい。宇野亞喜良の絵の織り混じる世界を耽読し、気付いたら魂が游いでいたから、私の躰は球体関節人形のように関節が次から次へとはずされていったのだろう。もちろんいい気持ち。

  • 嗚呼、デカダンス!たまりませぬ。日の射さぬ暗い場所に流れる湿った空気。死との境界を彷徨います。特に惹かれたのは「美しき五月に」。少女の切り裂くような官能。うっとり。皆川博子には中毒性があります。ご注意を。

  •  図書館より。

     詩からイメージされた皆川博子さんの短編6編と、宇野亞喜良さんのイラストが収録された短編集。

     初めての皆川さんの小説だったのですが、今まで全く自分が読んでこなかったような世界観の小説ばかりでした。幻想小説のジャンルに当たると思うのですが、感想を書くのが難しい……。

     印象的だったのは『美しき五月に』。常に15歳までしか生きれない、前世の記憶を持ったまま輪廻転生を繰り返す少女が主人公。
     話の内容は正直理解しきれたとは言い難いのですが、それでも文章の美しさに魅せられました。こういう小説が「文学」と言えるんだろうな、と感じました。

     どの短編も内容は理解しきれなかった気がするのですが、どれも不思議な印象が残る小説です。もっと皆川作品を読めばこの良さが分かってくるのかな、と思います。

  • 1時間30分

  • 豪奢な昏い闇。手と手袋のような文と絵。

  • 皆川さんが選んだ詩を元に描かれた宇野亞喜良氏のイラスト。幻想的で繊細で詩とのイメージを重ね合わせてため息をつく。さらにそのイラストをもとに皆川さんが書いた小説が続く。私の周りからは音が消え、少し昔の匂いがやってくる。泥と血の匂い、ざらつく手触り、確かに知っている誰か…。ふっとつめていた自分の息を吐く音で現実の音が戻ってくる。しかしそこで終わりではない。宇野亞喜良氏のイラストに戻るとそれは先ほどとは違う意味を持った鮮やかな色で私を迎えるのだ。そんな幸せな時間をくれる短編が6つ。「美わしき五月に」が特別好き。

  • 華麗なイラストに誘い出された、6つの夢。
    ジャン・コクトーや吉岡実など古今東西の詩をモチーフに、作家とイラストレーターが互いの想像力を掻き立てあう。密やかで美しい、絵と小説のコラボレーション。(アマゾン紹介文)

    赤い蝋燭と
    美しき五月に


    キャラバン・サライ
    あれ

    詩をもとにイラストを描き、そこから小説につなげる…という、刺激的な作品。
    どちらも元より幻想的な作風だけに、コラボした本作は、かなり尖がった内容になっているのではないかと思います。
    『あれ』は流石にどうかという締め方でしたが…。
    『美しき五月に』のエロティックさと『キャラバン・サライ』の静けさが特によかったです。

  • 詩、イラスト、小説のコラボ。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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