一、ニ、三、死、今日を生きよう! ―成田参拝―

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087748246

作品紹介・あらすじ

異景を見に行った、幻想に巻き込まれた、一旦死にかけた、時代の敵が見えた-文学と成田、ただ一瞬の触れ合い。

感想・レビュー・書評

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  • 「成田参拝」
    やや唐突に成田。著者が千葉に引っ越してから千葉について調べるうちに関心を持たれたらしい、成田空港建設反対の三里塚闘争。いたるところに監視カメラがあり警備員のいる地区に突撃、なんだか潜入ルポみたいな出だしだが、マンドラゴラよろしく地面から引っこ抜かれた子供が道案内してくれたりと随所でシュール。

    「一、二、三、死、今日を生きよう!」
    愛猫モイラの死から立ち直れない時期、著者は突然「メイニチムイカ」という言葉を聞く。自分は11月の6日に死ぬのだと覚悟して、身辺整理を始めるが・・・もちろん死なずにすんだので今も執筆中なわけですが。

    「語、録、七、八、苦を越えて行こう」
    11月6日に死に神を「明治政府ちゃん」と呼ぶことで追い払い無事生き永らえた著者は、以来「極楽」を見るようになる。極楽は、突然地面から生えてきたり、自身の尻尾として生えてきたり、めのうに脚が生えてシンバルスタンドになったりするなど様々な出現をする。極楽の描写は突拍子もなくマジックリアリズム的で好きでした。ただ個人的に、日本の政府を擁護する気持ちはないけれど、木戸孝允の肩は持ちたいので「明治政府ちゃん」のことは悪く言われると少し悲しい。

    「羽田発小樽着、苦の内の自由」
    『金毘羅』で伊藤整文学賞を受賞したため北海道まで羽田から人生二度目の飛行機に乗った著者(ちなみに一度目は泉鏡花賞受賞時の金沢行き)。『金毘羅』を書き上げ、論争も一段落した矢先のモイラの死後まだそれを受け止めきれない内面の葛藤と、論争の名残りと、新しい神々についての発見。

    「見えない自分を見るために」(あとがき)
    いつも思うが、笙野頼子は「あとがき」が抜群に明晰だ。たぶんこちらのほうが地の、というか素の文章で、作品のほうはなんらかのフィクションで粉飾(?)されているのだろう。


    ※収録
    成田参拝/一、二、三、死、今日を生きよう!/語、録、七、八、苦を越えて行こう/羽田発小樽着、苦の内の自由/見えない自分を見るために

  • (後で書きます。「語、録、七、八、苦を越えて行こう」の極楽がものすごすぎる)

  • 持って行かれそうになります。

    笙野頼子の現実とも小説ともつかない世界観がリアルな息苦しさみたいな物読む手を止めます。
    「金毘羅」後の離陸までの小説。後半に従ってメタ度が低いようで作者への共感が上がっていて、つい読者が幻想世界に浸ってしまっているという作者の作戦には舌を巻きます。

    あと(る)(る子) に説明はないが好き。

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著者プロフィール

笙野頼子(しょうの よりこ)
1956年三重県生まれ。立命館大学法学部卒業。
81年「極楽」で群像新人文学賞受賞。91年『なにもしてない』で野間文芸新人賞、94年『二百回忌』で三島由紀夫賞、同年「タイムスリップ・コンビナート」で芥川龍之介賞、2001年『幽界森娘異聞』で泉鏡花文学賞、04年『水晶内制度』でセンス・オブ・ジェンダー大賞、05年『金毘羅』で伊藤整文学賞、14年『未闘病記―膠原病、「混合性結合組織病」の』で野間文芸賞をそれぞれ受賞。
著書に『ひょうすべの国―植民人喰い条約』『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』『ウラミズモ奴隷選挙』『会いに行って 静流藤娘紀行』『猫沼』『笙野頼子発禁小説集』『女肉男食 ジェンダーの怖い話』など多数。11年から16年まで立教大学大学院特任教授。

「2024年 『解禁随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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