- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087748505
感想・レビュー・書評
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これは唸りましたね… すごい。このいろんな糸を織り込み絡めたような造り。短編集であり、長編でもあり。このくすの木が引き寄せたのか、人々がここに来てしまったのか。巨大なくすの木が「萌芽」するいきさつから「落枝」し最後に切り取られてしまうまでの、気の遠くなるような木の一生のあいだに、その麓で生きた人間たちの出来事が次元を超えて交錯する。時代ごとに出てくるのではなく、新旧織り交ざり、べつべつの短編に、同じ登場人物や、荻原さんのほかの作品(とくに「メリーゴーランド」と「僕たちの戦争」)を思い出させるような登場人物が出てくる、、ちゅうてね。8つの短編に分かれてはいるのですが、1話で中学時代の話で脇役で名前が出たような子が、3話では大学生になって主人公格で出てくるとか。それも、それぞれの短編のなかにも、すくなくとも二つの時代で、この木のまわりにいた人間たちの話が出てきて、そのバランスが絶妙。ぜんぜん違う出来事を交錯させているようで、それぞれの短編が正義だったり親の愛だったり、ひとつのテーマが奥に流れていて、そしてこの本全体には、妖力をもつほどに成長した巨木とその化身の思いみたいなのがずうっと貫かれていて。複雑。複雑だけどものすごく引き込まれて、イッキに読んでしまいました。 「郭公の巣」の終わり方とか怖いなあ。わが子を守るためならどんなことでもできる母親というものの強さと恐ろしさ。美穂はもう見つからない気がする… 「バアバの石段」は泣きました。そのオンナゴコロ、わかるよ!!!。+゚(゚´Д`゚)゚+。 いちばん好きな1編。いろんな時代を経て、大きく変わってしまったものと、いつの時代も変わらないものと、その二つがあることをすごく考えさせられた…のは私だけかもしれないけれど。この人ほんとすごいなあ。好きな作家は?と聞かれていま文句なしに答えは「荻原浩」です。
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8/6
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木はすべてを見ていた。
ある町に、千年の時を生き続ける一本のくすの巨樹があった。千年という長い
時間を生き続ける一本の巨樹の生と、その脇で繰り返される人間達の生と
死のドラマが、時代を超えて交錯する。
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鎮守の丘の上に、ご神木として奉られている巨樹の<くすの木>のまわりで起こるささやかな人間の営みの物語。
戦国の世から、世界大戦、戦後、現代と、物語の時代背景はくるくると移ろう。
時代は連綿と続き、まるで関係ないかのように思える昔と現在はどこかで繋がり影響を及ぼされているのだ、と思わされる。どこか哀しい、うすら寒い話が多い。 -
生活スタイルは変わっても、人間の本質は変わらないということだろうか。
樹齢千年とも言われる大楠が、人々を操っているのか、それとも実際は何の関係もないのに全てを大楠のせいにしてしまいたいという保身なのか、不思議な雰囲気を持った作品ではある。 -
不気味で切ない。時代を超えていろんな話がつながる。宝物を持って空襲から逃げ惑う少年のチュウインガムの話やバァバの恋の話が好きだった。
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話が沢山交錯してるからちゃんと読まないと凄い分かりにくい。はじめの方は楽しいなって感じだけど最後の方は・・・って感じだった。
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樹齢千年のクスの大木を中心に、過去と未来が交錯する短編8話。「郭公の巣」はゾクリとするホラー、「バァバの石段」はほろっとするラブストーリーでよかったが、残りの6編はいまひとつ。もうちょっとわかりやすい人情話の方がむいているんじゃないかと思う。
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好きな作品です。