永遠の故郷――夜

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 64
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087748741

作品紹介・あらすじ

詩と死と美を論じ、音楽への愛を語り、世界の誰も書かなかった深みへ至る。不世出の音楽評論家が新境地をひらく記念碑的作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 歌曲エッセイ。音楽を解剖するのではなく、聴いて慈しむ心の働きを、そおっと掬い上げて流麗に綴る。ひとつの音楽会のような書物で、月の光に浸り、恐ろしい美を見詰め、葡萄の芳醇な滴りを口に含む。次第に歌声は小声となって、どこか遠くから微かに聴こえてくるようになると、いつの間にか《子守唄》の調べが流れてきて、おやすみなさい、と終演になった。

  • Rシュトラウス「4つの最後の歌」の説明はあまりにも美しく、この文章そのものが藝術です!「生に疲れ、倦み果て、死の予感に慄えながら、静かな孤独の死を歌った作品だというのに、この音楽がこんなに美しいのは何故だろう?<夕映え>を聞き終わった私が言葉を失った・・・」 アイヒェンドルフの「Tod?」で終わる歌の、1年後に作曲家が亡くなっているという、ドラマティックな物語です。確かにエロイカ交響曲、「英雄の生涯」を思わせる響きがあります。そしてフーゴー・ヴォルフの「メーリケ歌曲集」の説明も「まさに霊妙で、それとなく香りの漂ってくるような、精妙で木続きやすい繊細な感じと宗教的-つまり感覚を超えた精神の領域での音の動きとが一体になった音楽」「音と詩が一つに溶け合って、曲の全体が完結した音空間」という説明も美しく、感覚にぴったりくる表現でした。ぜひこの歌曲集を久しぶりに聴いてみたくなりました。

  • 「すばる」連載中の 《永遠の故郷》 をまとめた第一巻、フォーレ、リヒャルト・シュトラウス、ヴォルフ、ブラームスの歌曲についてのエッセーです。一気に読みました。今後 「薄明」、「昼」、「黄昏」 と続く予定だそうで、楽しみです。ヴェルレーヌ、アイヒェンドルフ、ヘッセ、メーリケ、ゲーテの 「詩」 となった言葉を、深く信頼し、言葉によりそって、言葉を介し、自分の心を、あるいは自分の心で音楽家が書いた歌曲、著者は、ハイネの言葉を 「歌曲とは心の歌にほかならない」 と訳し、歌の中に心を感じ、心を見、心を聴きます。著者は私より40歳年上、しかし何と言う艶、うれしい驚きです。私は音楽に目覚めて以来、吉田さんに心酔してきました。雑誌で音楽批評を読み、単行本で読み、さらに全集を座右に置いて読みました。残念ながら、今は一冊もありませんが...残念と言えば、ドイツ語もフランス語(ちょっと独学で齧ったけれど)も解さないので、せっかくの詩が愉しめません。CD(四巻上梓後にありそうな企画)が付いているともっといいですね。大阪市立中央図書館を覗いたら、1958年ザルツブルグ音楽祭でのエリザベート・シュワルツコップの「ヴォルフ/リーダー・リサイタル」 のCDがありました。さっそく借りて、今、「春に(春の中で」、「アナクレオンの墓」、「クリスマス・ローズ」 ...と聴いています。
    蛇足 最近はよく目にする、クリスマス・ローズですが、カレル・チャペックの 「園芸家12ヶ月」 を読んで熱心に探した頃(10年ぐらい前)にはあまり出回っていませんでした。しかも、ようやく見つけた苗は、種類が違うのか、気候が違うせいか、クリスマスには咲きません、日本では、3月前後に花が咲きます。我が家では、今が盛りに咲いています。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/408774874X
    ── 吉田 秀和《永遠の故郷 夜 20080205 集英社》P24
     
    ── ヴィオラを弾く小林多喜二が吉田家を一二度来訪し、秀和の母と
    合奏したことがある(Wikipedia)
     

  • 『永遠の故郷』4冊はどこから読んでもOKと思っていたが、やはり書かれた順に読むのが適切だったよう。最初に出されたこの一冊を最後に手に取りやっと判る。「肩に力を入れないでぶらぶら歩きをしているうちに、目に映り、記憶の底から浮び上がってきた歌があったら、それを拾い上げてもう一度噛みしめ、味わってみたいと考えてやり出した(p89)」連載と書かれてはいるけれど。
    「拾い上げ」られている歌のほとんどはやはり知らない歌で、それを知らない自分のあわれさを知り、かつここで出会えた事に感謝しつつ読んでいる。出会う歌の数々、それを解説する言葉に満たされる。満たされるほどに自分がこういうものに餓えていたのだと実感する。「美」そのもの、「美をまっすぐに愛するこころ」がここにある。
    吉田秀和氏が汲めども尽きぬ豊かな泉をここに残してくれた。その泉に出会えたこと、本を読むということが自分に許されていることに感謝する。日々の営みでカラカラになるたびここへ戻り欠乏を補充できる。
    一冊ずつがコンパクトな形に作られているのもありがたい。いつでも手に取れる。ずっと手元に持っておきたい本。

  • 最後まで,読めなかった。

    音楽関係の本を読んだとき,わかりやす文章が好きだったのに。
    なぜ,この本が読めなかったのだろうか?

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著者プロフィール

1913年生まれ。音楽評論家。文化勲章、大佛次郎賞、讀賣文学賞。『吉田秀和全集』他著書多数。

「2023年 『音楽家の世界 クラシックへの招待』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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