王妃の離婚

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087752489

作品紹介・あらすじ

15世紀末フランス。時の権力者ルイ12世の離婚申し立てに、王妃ジャンヌ・ドゥ・フランスは徹底抗戦の構えを示す。弁護側証人までがルイ側に寝返る汚い裁判。ジャンヌの父、悪名高い暴君ルイ11世に人生の奈落に突き落とされる苦い過去を持つフランソワだったが、裁判のあまりの不正ぶりへの怒りと、王妃の必死の願いに動かされ、遂には長い長い逡巡を振り切り、王妃の弁護人を受け入れる。崖っぷちからの胸のすく大反撃!法廷サスペンスの書下ろし傑作巨編。

感想・レビュー・書評

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  • ハッピーエンドなのかな?
    終盤までのそれぞれの登場人物の悲しみが、心にいつまでも残る。突き刺さっている感じ。
    佐藤賢一さんは、以前、『傭兵ピエール』を読んだのを思い出した。どこまで事実なのかわからないけど、当時のリアルであろう描写に、グロテスクだなと思った一面も。
    でも、それが美化するより、事実を学べて良かったり。

  • フランソワが弁護を引き受ける場面が1番好き。私もこういうふうに生きられたら、と思う。
    街中の民衆含め、全ての登場人物が生き生きとしていて魅力的。誰も聖人君子じゃなくて、極悪人にもならないのが良い。私はオーエンが特に好き。最期のシーンももちろん好きだけど、やっぱり「ルイ11世の犬だ」ってなるところが一番好き。こんな風に盲目的に尊敬できる人がいるのは憧れる。
    結婚や、男女や、キリスト教について考えさせられる本だった。結婚観よりも、人間関係の答えを見た気がする。誰もが夫や妻、キリスト教や、君主などを絶対的な主として生きてるって考え方は、自分にも当てはめられる部分があるかもしれない。
    でも、それよりも共感できたのは学問観。「インテリは権力に屈してはならない」もそうだけど、何のために勉強してるのか、私の勉強はどんな時に役立てるべきなのかを考え直せる。紙の上の学問ではない感覚がある。フランソワの裁判記録の授業は生きた感覚のものではない、と言っていたけれど、反対に私も、勉強の時に何か過去に目を通した時に少しでも生きた感覚を多く感じられたら、と再認識した。普段もそう感じていたけれど、こんなに面白いレベルまでは想像したことがない。特に、離婚裁判なんてつまらないという先入観があった。それを本当に覆されたから、自分の想像力の欠如の方に問題があったのだと気付かされた。

  • 読み応えのある作品でした。特に裁判が始まってからはどんどん引き込まれて、当時の結婚の完成、という観念や、今と変わらない男の身勝手さや、逆に今とは違う思うに任せない結婚事情などとても興味深く読めました。なかなか女には屈辱的な場面あり、そこまでするのか・・・と思ったりもしましたが。フランソワの攻める姿勢、譲らない誇り等、ちょっとリーガル・ハイを思い出してしました。もちろんコミカルな所など皆無ですが。最後に分かった意外な事実には驚き。多分ハッピーエンド。王も離婚できて良かったのかな。その後はダメっぽかったけど。

  • 舞台設定のせいなのか、はたまた若干持って回ったかのような言い回しのせいなのか、序盤はどうにも読み辛く、とっつき難かった。
    いや、たぶん模擬裁判風の問答のせいかな。
    ところがフランソワ・ベトゥーラスが王妃の弁護を引き受けるあたりから、俄然物語は吸引力を増す。
    もちろんフィクションだから、力技のご都合主義を感じぬわけではないが、それを差っ引いても娯楽性は十二分。
    どちらかといえば直球のストーリーに、程よくスパイスを効かせる具合のミステリー性も見事に好バランスを生み出している。
    そして何といってもラストが抜群にいい。
    うん、面白い話だったな、と比較的ライトな心持ちで読了しようとしている読者の心を一気に揺さぶる秀逸のラストシーンに、星5つ。

  • ルイ12世から離婚をせまられた正妻の公女ジャンヌ。
    その裁判に、かかわりあうことになる敏腕弁護士フランソワ。
    そして、彼の若き日の恋人ベリンダとの過去が明らかになってくる。

    男と女とは、結婚とは、についていろいろと考えさせられる。
    また、若さとは、暴力とは、そして、失われた青春と、自分のなくしてしまったもの、についてもね。

    キャラがたってるし、テンポがいいので、読みやすい。
    ベリンダの弟のオーエン、教皇庁から派遣されたアルメイダ、そして有能な学生フランソワ。

    あのチェーザレ・ボルジアもでてくるし、ルネッサンス期のヨーロッパが好きな人ならとっても楽しめる。
    是非青池保子さんに漫画化してほしい

    フランソワ:
    インテリは権力に屈してはならない。意味がなくとも、常に逆らわねばならない。

  • オフクロに薦められた一冊。

    佐藤賢一さんが同郷ということもあり、親近感を持ちながらも、
    最初は読みづらいのかなぁ、なんて思いながら・・・。

    中世フランスという、なかなかなじみにくい時代が舞台ではあるが、
    なんのなんの。後半に行くにしたがって
    小説としてのテンポの良さが心地よく、ぐいぐい引き込まれる小説だった。

    前半にある、「女性蔑視」とその対比。
    あれよあれよと弁護に立ち、
    その手腕たるや、さすがインテリ。
    うん。爽快。

    そうなっちゃうんじゃないか、っていう
    ある意味僕の期待通りの・・・。

    面白かったですよ。

  • 初読は10年前ですが、何度でも読みたくなります。
    登場人物がとにかく魅力的で、最後まで一文も無駄がない。
    "負"を背負わされた人間が生きるために戦い、自力で勝利を勝ち取る爽快感。読む価値のある快作です。

  • 中世フランスにおける、国王ルイ12世とその王妃との離婚裁判をテーマにした小説。

    ラストはどうなるかと思ったが、なかなか良い終わり方でした。
    西洋歴史小説に手をつけたのは初めてだったが、非常に面白く読めた。

  • ▼福岡県立大学附属図書館の所蔵はこちらです
    https://library.fukuoka-pu.ac.jp/opac/volume/030104863

  •  この佐藤賢一の歴史小説は初めて読んだ。人物の会話を独特な文体で記載するところが特徴的だった。設定も独創的で、フランス国王の離婚裁判をテーマにしながら、そこに一弁護士の物語も織り交ぜている。雰囲気もいいし、おすすめしたい本。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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