クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087753264

作品紹介・あらすじ

「四人の少年の運命は日本の運命にほかならない」ローマ、ヴァティカン、ゴア、マカオに取材して八年。若桑みどりが世界史的視野から日本の歴史を問い直す!世界帝国の波涛が押し寄せる信長・秀吉の時代、鮮烈に生きた美しい若者達がいた。遙か世界へと船出した四少年の悲劇の向こうにあたらしい日本が見える。

感想・レビュー・書評

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  •  おもしろい。なんでキリスト教が急に広まったのかやっとわかった。戦国時代のキリシタン大名や宣教師について詳しく述べているので読むのにとても時間がかかるけど面白い。

  • 戦国時代末期から江戸時代初期のキリスト教を巡る日本の状況、ヨーロッパの状況を、学者らしく膨大な資料の中から事実のみ拾い上げています。
    4人の少年の話はむしろおまけっぽいですね。
    ヨーロッパ美術史を専攻した方なので、キリスト教寄りの立場が多いですけど、その辺を割り引いても良書だと思います。

  • 圧倒的。
    ハードカバーで500ページを超すこの大書を読み終えたときは、爽快感と寂寥感がないまじった感動に包まれました。

    戦国時代の日本と世界が交錯する様子を、天正少年使節の4人の少年(クアトロ・ラガッツィ)の人物や彼らを取り巻く環境を中心に、膨大な資料を元に、浮かび上がらせています。

    信長、秀吉、家康らのときの有力者たちが、新たに日本にもたらされた宗教とどう対峙したのか、また逆に、それをもたらした布教者たちは彼ら有力者や庶民とどう向き合ったのかを描くことで、彼ら一人一人の人間像が語られているようです。

    本書は歴史書だと言って差し支えないと思いますが、それらのそれぞれに魅力的な人物たちのお陰で、大作ながら小説のように、どんどんと読み進めることができました。

    4人の少年たちや日本のキリシタンの運命はある意味では残酷であっただろうとは思いますし、彼らに対して胸の痛い思いがしますが、一方で、最終章を読むと、彼・彼女たち本人は自分たちの運命を恨んでなどはいなかったのでは、むしろ彼らは平静のなかに死を遂げていったのではという思いも残りました。

    紛れもない傑作です。

  • 夏休みの課題図書として選んでみたけどボリュームが大きくて返却期限を1日過ぎでの読了。日本の戦国時代とヨーロッパの大航海時代を、宣教師達の活動と、その宣教師達からキリシタンやラテン語の教育を受けた日本の少年達がスペイン国王やローマ法王に謁見しに行く壮大な航海(リスボンまで2年半!)で結びつける超大作。読み応えタップリ。少年達のヨーロッパへの冒険は成功をおさめるが、帰国後は徳川幕府のキリシタン迫害による暗黒の時代に突入。読み終わった後味がドンヨリする。

  • 中世の歴史に興味がある方にオススメです。16世紀終わりに12歳から14歳の4人若者が、8年以上の歳月をかけ日本~ローマそしてローマ~日本という奇跡のような旅をした少年使節団のドラマを軸に、スペインの世界支配という世界史のうねりに巻き込まれた日本人が体験した西洋との衝突を、権力者から一般庶民に至る、それぞれの人生を通して多面的に語る壮大なドキュメンタリードラマです。
    室町時代から江戸時代にかけての本は、国内の争乱についてばかり語ることが多いですが、世界史の視点で語る日本の中世の姿(外国人の視点など)は、現代の我々が中世について掴みあぐねるイメージを鮮明に映し出してくれます。本書に登場する、権力者、宣教師、一般庶民などそれぞれの立場の人たちの生き様は、まさに百花撩乱!
    人間ドラマの宝庫です。主人公である少年使節団の四人のドラマは勿論ですが、キリシタン大名で有名な高山右近の生き様、彼の残した言葉などは、四百年以上経った今でも輝きに満ちており、感動に胸震が震えます。
    かなりの力作なため、ページ数も多いですが非常に質の高いドキュメンタリーであり、後世に残したい一冊であります。

  •     -2023.07.16読了

    長大なる見事な語り世界

  • ☆大陸への時代

  • 天正遣欧少年使節について、何も知らなかったと思い知らされた。これを著するためにどれほどの資料を集め、比較検討したのか。それを読める幸せ。ありがとう!

  • 長かったぁ~・・・けど、戦国時代の捉え方が変わった。
    四人の少年使節の顛末は壮絶。
    それ以上に、スペイン・ポルトガル・イタリアの
    宣教師による布教。
    そして信長の野望と、光秀の決行、家康の構え。
    天下統一へと動いた戦国時代の日本人キリシタン。

    ルターの宗教革命によりプロテスタントが増え
    カトリックは一層の布教活動を行う必要があった。
    「世界経済と世界布教というふたつの大きな波が
    十六世紀の戦国時代の日本に怒涛のように押し寄せた」とある。
    この本は2003年の出版だが、
    同年、千々石ミゲルの墓が発見されている。
    また2017年には、ロザリオとみられるガラス球が見つかり、ミゲルは棄教していなかったのではないか、
    と報道された。
    ザビエルが鹿児島に上陸してから、第一次鎖国令を幕府が出すまでの八十余年、「日本はまさにキリスト教の世紀」を
    迎えていたのである、
    というエピローグに、改めて感動した。

    帰国後の千々石ミゲルの人生を描いた小説『マルガリータ』(村木嵐)を読んでみようかな。

  • 分厚い本だ。それだけに読み応えがあった。前半の光栄と高揚感。それが後半になって挫折と迫害となって襲いかかってくる。いつも、青年は時代の波に翻弄されるのだろうか?

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著者プロフィール

若桑みどり (わかくわ・みどり):1935-2007年。東京藝術大学美術学部芸術学専攻科卒業。1961-63年、イタリア政府給費留学生としてローマ大学に留学。専門は西洋美術史、表象文化論、ジェンダー文化論。千葉大学名誉教授。『全集 美術のなかの裸婦 寓意と象徴の女性像』を中心とした業績でサントリー学芸賞、『薔薇のイコノロジー』で芸術選奨文部大臣賞、イタリア共和国カヴァリエレ賞、天正遣欧少年使節を描いた『クアトロ・ラガッツィ』で大佛次郎賞。著書に『戦争がつくる女性像』『イメージを読む』『象徴としての女性像』『お姫様とジェンダー』『イメージの歴史』『聖母像の到来』ほか多数。

「2022年 『絵画を読む イコノロジー入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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