夏のバスプール

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087754117

作品紹介・あらすじ

2012年、世界は12月で滅亡するとの噂だが、高校1年生の涼太は、仙台から来た同級生に恋をする。一風変わった彼女には複雑な事情が…?
第23回小説すばる新人賞受賞の畑野智美さん最新作。カバーイラストは「放浪息子」などで人気の漫画家、志村貴子さん描き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 些細な言葉で傷つき
    些細な仕草で悩み
    些細な行動で苦しむ。
    ただ単に──深い意味もなく、そうしただけなのに。
    僅かなすれ違い、ちょっとしたボタンの掛け違いで歯車は狂い始める。
    そんな不安定な、まだ熟しきっていない青いりんごのような時期。
    青の時代──少年少女は、悩み、苛立ち、苦しむ。
    そういう時期を経て、みんな大人になっていくのだ。

    畑からもぎたてのトマトを齧ったとき、じゅわっとあふれ出る果汁のような新鮮な感覚の青春小説。
    この作家の作品は初めてだ。
    今をときめく直木賞作家、朝井リョウ君の翌年の「小説すばる新人賞」受賞者である。
    私は「小説すばる新人賞」受賞作家と相性が良いのかもしれないと、ふと思う。
    年甲斐もなく、この手のみずみずしい胸キュン青春ものが好きだからだな、きっと。
    そして、高校が男子校だった私にとって、共学高校生活というのは今でも憧れなのだ。
    高校時代、クラスに女子のいない学園生活の何と味気なかったことか。
    だから私の中では、共学だった中学と男子校の高校時代の想い出が複雑に入り混じった形で脳内再生して読むことになる。
    甘酸っぱくてほろ苦いあの頃の想い出は今でも宝物だ、いや、たぶん死ぬ間際まで胸の奥に燻り続けるだろう。

    作品全体として軽い感じはするが、随所にきらきらと光り輝く表現が見受けられる。
    特にテンポのある会話が小気味いい。
    作者の会話文のセンスはなかなかのものだと思う。才能を感じさせる。
    主人公『涼太』と思いを寄せる『久野ちゃん』の関わり方も何とも言えず微笑ましい。
    私としては、胸キュンキュンしまくりです。
    朝井リョウ君の「少女は卒業しない」が好きな方は、この作品もお気に召されるのではないでしょうか。
    あの作品と同様の瑞々しさと爽やかさがあります。
    彼に比べれば、心理描写の物足りなさと比喩の表現の独創性にやや不満が残るが、そのあたりをもう少し深く描写し、比喩に工夫を凝らせれば、ここ数年のうちに直木賞候補ぐらいには行けそうな気がします。
    あともう一点、男性の会話文が若干女性的に聞こえてくるのが個人的には気になったところかな。
    それも直せば、潜在能力はかなりあると思う。
    オススメです。
    今後の作品にも大いに期待したい。
    特に現在図書館予約中の最新作「海の見える街」が早く読みたい。
    楽しみな作家がまた一人増えました。

    註:作中にあるように、本当にわが故郷仙台では『バスターミナル』ではなく『バスプール』と言います。
    何故なんだろう? あらためて指摘されると不思議だな。

    話は全く変わるが、昨年末に突然、四十肩? 五十肩? になってしまった。
    右肩を変な方向に捻ると激痛が走る。
    夜中でも、肩から二の腕にかけて痛みがひどくて目を覚ます。
    パソコンのキーボードを打つときでも、少し痛みが……。
    そんなわけで、レビューを書くのさえ、億劫である。
    なんとこの病気、完治するのに一年近くかかるらしいのだ。
    困ったものだな全く。加齢というものには逆らえません。

  • 畑野智美さんの言葉のセンスはやっぱり好きだ。
    作品に出てくる男子はいつもちょっと頼りなくって、でもなんだかんだ芯があって。
    見守りたくなる。
    自分としては、女子が主人公で何を考えてるかわからない男子の話のほうが好み。
    でも二度と戻れない高校時代が愛しいと思わされる。

  • 高校時代は少し狂っている時間だと思う。まっすぐで、くるしくて、自分がなんだかわからなくて、まぶしくて、面倒くさくて、言葉ではあらわせないことばかりだ。でも、あらわしきれないはずの高校生というものが、この本のなかにはたしかに表現されている。もう二度と戻りたくないと思っていた高校時代をもう一度生きてもいいなと思った。

  • 高校生のもやもやした気持ちやドキドキした気持ちなどたくさんの想いや心の揺れをキレのある文章と会話で綴って、内容は重いものを結構扱っているのに暗くはならず、読後感も良かった。魅力的な登場人物に快哉を叫びたい。トマトを投げるシーンは色彩も鮮やかで、最初から引きこまれた。

  • この人の作品初めて読んだけど、序盤~中盤までは「何かウダウダした文章だな~・・・」と少し退屈したけど、後半の主人公の世界が開けてくる(←この表現で適切かどうかわかりませんが。)辺りから、そのテイストが逆に生きてきて、効果として面白く感じられた。

    季節的にいまが旬の作品。読む方はお早めに。

  • 「2012年、世界は12月で滅亡するとの噂だが、高校1年生の涼太は、仙台から来た同級生に恋をする。一風変わった彼女には複雑な事情が…?
    第23回小説すばる新人賞受賞の畑野智美さん最新作。カバーイラストは「放浪息子」などで人気の漫画家、志村貴子さん描き下ろし。」

  • 青春ものを読むのが段々と辛くなってきたのは年だからか。それとも本を読むペースがここんところ落ちてきてたからなのか。

    主人公にあまり肩入できない、というよりいじめ(と捉えられる行動)を行っていた自覚が芽生えた後や、元カノ(と言えるかわからないが)問題や、ヒロインや友達の問題やら、色々放り投げただけの男にしか見えなくなってしまった。

    高校生とはかくもこういうものなのだろうか

  • 夏だ❗️夏休み前の、ほんの一週間くらいの話なのかな。登場人物わりと多めだけど読みやすく、それぞれ問題を抱えていて足掻いてる感じ。爽やかな夏の描写(暑いけど)と青春真っ只中な物語。なかなか面白かった。

  • 最後に急いで終わらせた感じがした。

    あの年代特有の痛い程の青さ?
    黒歴史になるだろう青春がいいなぁと思った。

  • sg

    私には合わなかったなぁ

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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